テリーギリアムの初オペラ監督公演として話題のイングリッシュナショナルオペラによるベルリオーズ作曲「ファウストの劫罰」を見にいきました。テリーギリアムは、私が一時マニア的にはまっていた近未来映画「未来世紀ブラジル」の監督であり、私としてはMUST SEEです。
それにしても、驚くべき舞台でした。オペラもここまでできるのかと。さすがテリーギリアム。幻想的で美しいセット、ブラックユーモアたっぷりの作り、映像、照明も駆使したプロダクションで、ギリアムワールド在庫一掃の大売り出しとも思えるような公演が楽しめました。
歌手陣も皆さん好調で素晴らしいものでした。特にメフィストフェレス役のChristopher Purvesの迫力ある低音と血気迫る演技が舞台全体を引き締めていました。ファウスト役の Peter Hoare、マルグリートのChristine Riceも声量、声質もぴったりで文句なしです。歌が少ないし、舞台が派手なことから必然的に歌手の演技が気になるのですが、歌手と言うより俳優と言うぐらい上手に演じていました。
コーラス陣も素晴らしい。大きな合唱曲が何曲も散りばめられてますが、ある曲ではその美しいハーモニーにうっとりし、別の曲ではその迫力に蹴散らされそうな音圧を生で感じるものでした。
全く初めて聴く曲なのですが、美しいメロディに満ち溢れています。Gardner指揮のオーケストラも完璧な演奏で全く脱帽です。
ただ、全体として、舞台の印象があまりにも強いため、オペラとしての歌や演奏が相対的に目立たなくなってしまうのが、残念でした。
自分としては、舞台の意味合いについてどこまで理解できたていたかは、疑問が残ります。19世紀後半から20世紀半ばまでのドイツに時代設定をおいて、ナチズムを隠喩として、ファウストを描きます。マルグリートもアウシュビッツに連行され、そこで神に召されるという筋です。つい先月にアウシュビッツを訪れた私としてはあまりいい気はしませんでしたし、ナチスやユダヤ人のやりとりをかなり茶化すような場面があるのですが、このあたりの感覚は私には良くわかりません。日本だと、戦時中日本の日本人と朝鮮人のやりとりを茶化したりしたら、間違いなく「けしからん!」というようなコメントが出そうなので、一種のタブーの雰囲気ってある気がしますが、ドイツとユダヤの関係ってまた違うんですかね?欧州人の感覚ってどうなんだろうと思いました。
いずれにせよ、まだ数回公演がありますので、興味のある方はギリアムワールドの世界を是非お楽しみください。私は時間が取れればもう一度行きたいぐらい。帰り際、廻りのイギリス人達が、しきりに"Amazing"と言ってましたが、「こいつはすげ~」です。
(FT紙のHPより)
(Peter Hoare)
(左からEdward Gardner,Christopher Purves,Christine Rice )
Total running time: 2hrs 40mins
Credits
A co-production with De Vlaamse Opera, Antwerp
Creative team
Conductor Edward Gardner
Director Terry Gilliam
Set Designer Hildegard Bechtler
Costume Designer Katrina Lindsay
Lighting Designer Peter Mumford
Movement Director Leah Hausman
Video Designer Finn Ross
Translator Hugh Macdonald
Cast includes...
Faust Peter Hoare
Marguerite Christine Rice
Mephistopheles Christopher Purves
それにしても、驚くべき舞台でした。オペラもここまでできるのかと。さすがテリーギリアム。幻想的で美しいセット、ブラックユーモアたっぷりの作り、映像、照明も駆使したプロダクションで、ギリアムワールド在庫一掃の大売り出しとも思えるような公演が楽しめました。
歌手陣も皆さん好調で素晴らしいものでした。特にメフィストフェレス役のChristopher Purvesの迫力ある低音と血気迫る演技が舞台全体を引き締めていました。ファウスト役の Peter Hoare、マルグリートのChristine Riceも声量、声質もぴったりで文句なしです。歌が少ないし、舞台が派手なことから必然的に歌手の演技が気になるのですが、歌手と言うより俳優と言うぐらい上手に演じていました。
コーラス陣も素晴らしい。大きな合唱曲が何曲も散りばめられてますが、ある曲ではその美しいハーモニーにうっとりし、別の曲ではその迫力に蹴散らされそうな音圧を生で感じるものでした。
全く初めて聴く曲なのですが、美しいメロディに満ち溢れています。Gardner指揮のオーケストラも完璧な演奏で全く脱帽です。
ただ、全体として、舞台の印象があまりにも強いため、オペラとしての歌や演奏が相対的に目立たなくなってしまうのが、残念でした。
自分としては、舞台の意味合いについてどこまで理解できたていたかは、疑問が残ります。19世紀後半から20世紀半ばまでのドイツに時代設定をおいて、ナチズムを隠喩として、ファウストを描きます。マルグリートもアウシュビッツに連行され、そこで神に召されるという筋です。つい先月にアウシュビッツを訪れた私としてはあまりいい気はしませんでしたし、ナチスやユダヤ人のやりとりをかなり茶化すような場面があるのですが、このあたりの感覚は私には良くわかりません。日本だと、戦時中日本の日本人と朝鮮人のやりとりを茶化したりしたら、間違いなく「けしからん!」というようなコメントが出そうなので、一種のタブーの雰囲気ってある気がしますが、ドイツとユダヤの関係ってまた違うんですかね?欧州人の感覚ってどうなんだろうと思いました。
いずれにせよ、まだ数回公演がありますので、興味のある方はギリアムワールドの世界を是非お楽しみください。私は時間が取れればもう一度行きたいぐらい。帰り際、廻りのイギリス人達が、しきりに"Amazing"と言ってましたが、「こいつはすげ~」です。
(FT紙のHPより)
(Peter Hoare)
(左からEdward Gardner,Christopher Purves,Christine Rice )
Total running time: 2hrs 40mins
Credits
A co-production with De Vlaamse Opera, Antwerp
Creative team
Conductor Edward Gardner
Director Terry Gilliam
Set Designer Hildegard Bechtler
Costume Designer Katrina Lindsay
Lighting Designer Peter Mumford
Movement Director Leah Hausman
Video Designer Finn Ross
Translator Hugh Macdonald
Cast includes...
Faust Peter Hoare
Marguerite Christine Rice
Mephistopheles Christopher Purves