〈芸劇のオルガン〉
私にとって最後の芸劇でのN響定期。プーランクとガーシュウィンという同世代の20世紀の作曲家のプログラム。変化に富んで、楽しめた演奏会だった。
1曲目は若い女の子たち(=牝鹿)の戯れを描いたバレエ音楽を組曲化したもの。全く初めて聴く楽曲だったが、女の子たちの楽しいお喋りや笑いが目に浮かぶような明るく活気ある音楽で聴いているだけで楽しい気分にさせてくれる。中でも長谷川さんのトランペットの清明な音色にうっとり。
2曲目も初めて聴く音楽。芸劇のオルガンを聴くのも初めてじゃないかな。同じプーランクでも1曲目とは全く異なる暗く内省的な音楽。ラトリーさんの多彩で神秘的なオルガンの音に魅せられる。ステージは弦楽とティンパニのみ。弦楽とオルガンのコラボがオルガンの音を引きたてて、研ぎ澄まされた厳粛さを感じさせる。この日の3曲の中では一番印象的だった。
アンコールはボエルマン作曲 ゴシック組曲 作品25 第4曲「トッカータ」
そして、休憩なしで、ガーシュウィンのパリのアメリカ人。理屈抜きに楽しい音楽。変化に富んだ曲だが、まったく乱れないアンサンブルを聴かせてくれるN響、流石。贅沢な話ではあるが、逆にちょっとまとまりすぎているではないか。もっとはちゃめちゃさがあっても良いんじゃないと思うぐらい。ここでも長谷川さんのトランペットは光ってた。
ドゥネーヴさんの指揮ぶりは、ノリ良く、明るいポジティブなオーラに溢れている気がする。オーケストラを統率しているさまは、聴衆にとっても視ていて気持ちがいい。今後も定期的に振ってもらいたい。
いよいよ9月からはNHKホールに戻る。あのホールはホールで長年のお付き合いなので愛着もあるのだが、今後も何本かは芸劇でやってもらいたいなあ。当たり前だが、ホールの音響って演奏会の満足度と大きく相関があるということを再認識させられた、N響の芸劇定期だった。
第1960回 定期公演 池袋Cプログラム
2022年6月17日(金)開演 7:30pm(休憩なし)
東京芸術劇場 コンサートホール
指揮:ステファヌ・ドゥネーヴ
オルガン:オリヴィエ・ラトリー
プーランク/バレエ組曲「牝鹿」
プーランク/オルガン協奏曲 ト短調
ガーシュウィン/パリのアメリカ人
No. 1960 Subscription (Ikebukuro Program C)
Friday, June 17, 2022 7:30p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre
Stéphane Denève, conductor
Olivier Latry, organ
Poulenc / "Les biches," ballet suite
Poulenc / Organ Concerto G Minor
Gershwin / An American in Paris