その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

今年も応援団に背中を押され・・・第9回水戸黄門漫遊マラソン 完走記

2024-10-30 07:30:20 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)

2年ぶりに水戸黄門漫遊マラソンに参加してきました。2月の東京マラソン以来、8カ月ぶりのフルマラソン。その模様を、ほぼ自分用記録目的で書き残しておきます。なので完全個人メモです。

【レース前】
・2年前と同様、今回も前日に水戸入りし前泊。前夜のカーボローディングは、とんかつ定食のご飯お替りとホテルの夜食ラーメン。更に、脚吊り防止に向け、同僚にお勧めされた鉄分サプリゼリーを摂取。日本シリーズ第1戦のベイスターズVSホークス戦をTV観戦し、22:30就寝。

・当日は6時10分起床。6時半からホテルのバイキングで朝食。エネルギーゼリーも一つ。

【当日、スタート前】
・朝から雲一つない晴天。絶好のマラソン日和とも言えるが、気温が高くなることが怖い。天気予報の最高気温は23℃。左ひざ下に痛みがあるのでサポーターを兼ねてランニングタイツは履くが、暑さに備えて、上は半袖Tシャツにする。日焼けクリームを顔、首、腕に。

・ホテルを8時半にチェックアウトし、スタート地点へ。この大会の市内前泊は、スタート時間直前まで部屋で待機でき、トイレ行列に待つことも無いのが有難い。スタートエリアに朝日が低い角度で眩しく差し込む。最高の晴天。8時45分からスタート前のセレモニー。谷口博美さんや増田明美さんがスタート台に上る。増田明美さんは10年ぶりにマラソンを走るとの事だ。スタート10分前に、レース前最後のアミノ酸ゼリー。

・レースプランは32kまではキロ5分35秒ペースが目安。残り10キロは徐々にペースは落ちるのを織り込むが、キロ6分は維持して、毎度のことながらサブ4ギリギリでゴールがレースプラン。前半にペースを上げないことが大切だが、この日は暑さに耐えうるかどうかが、分かれ目になりそうな予感。

【スタート~10k】
・9時にスタートの号砲。集団に混じって走り始める。気になるのはストップウォッチGarminの正確性だったが、さっそくがっかり事態発生。1キロのガーミンのアラームが、コースの1キロ表示の100メートル以上手前で鳴る。「やっぱり、だめか~」とがっかりしながら、もう一つベルトの切れたストップウォッチをサブで持ってきたので、ラップタイム測定はこちらを使うことにする。

・2年ぶりの出場でコースの特徴を忘れていたのだが、最初の5キロは思いのほかアップダウン(それも全般的に下り)があって、ペースを整えようしてもなかなか難しい。ペース維持には、ラップタイムと心拍数を気を付けているのだが、2キロのキロラップが5分15秒、心拍数が130超え(目安は120前後)で明らかにオーバーペース。これではハーフで撃沈確実。

・加えて、照り付ける陽射しが強い。汗をさほどかかない体質の私は、練習時は4キロぐらいから汗出始めるが、2キロで額から汗が滴り落ちてきた。ますます難レースとなる予感。

・5キロ地点ぐらいからコースが平地になるので、何とかペースを落ち着かせた。それでもキロ5分25秒くらいで10秒早い。レースの興奮、集団の靴音、そして応援の背中押しが、いつもの走りを忘れさせてしまう。

・10キロのラップは53分台。

【10k~ハーフ】
・中盤はひたすら平地なので、ここでペースを維持して、整えるかが大切。プランより早めのラップは続いていたが、1番気になったのは気温と汗。ハンドタオルをエイドステーションで取った水で湿らせ、常時、首や顔をぬぐいながら、体温の上昇を抑えるようにして走る。

・心底有難かったのは15キロ過ぎぐらいの私設エイドで、ビニール袋に氷を入れたものを渡して頂く。夏の甲子園のかちわり氷のようなものである。これは、効き目抜群で熱した体を局所的ではあるが、冷ましてくれる。完全に溶けるまで30分ほど、お宝として持ちながら走った。「ありがとうございました!」

・何キロ地点か記憶が飛んでるが、干し芋のエイドもありがたかった。一気には食べれないので、ずーっと手に持ちながら時々口に含む。

・ハーフの前後で線路をまたぐ立体交差を上って下る。そして折り返して、また上って、下る。ハーフ(中間)のラップタイムは1時間53分台。ペース的にはちょっと早いもののほぼ理想だが、これまでの暑さによる体力消耗が気になる。ただ、天気に変化が出てくる。雲が出てきて、太陽が影ってきた。これは助かった。

【ハーフ~30k】
・さぁ後半戦だ。その一方で32キロまではペース落とすことなく走りたいので油断は禁物。足がだいぶ棒になりつつあるのが分かり、不安。

・過去に何度か紹介したが、この水戸黄門漫遊マラソンの素晴らしいところは、エイドステーションのボランティアや沿道の皆さんの応援。集落ごとに応援団が応援してくれる。少年野球や中学生の野球チームやサッカーの子供たちとのハイタッチ。ハロウィンの仮装で応援してくれる子供たちも多く見かけた。特養のお年寄りの方々からも車いすで応援頂き、地元企業の皆さんも揃いで、出場の職場仲間に加えて私たちにも声援してくれる。こうした応援がなければ、決してこのマラソンを完走することなどできない。

・25キロ過ぎてエネルギーゼリーを摂取。30キロラップは2時間42分台。そろそろゴールが見えてきたが、ここまでが前座。これからが本当のフルマラソンの醍醐味だ。

【30k~ゴール】
・32kで2時間55分台いよいよ後半。大きく千波湖に向かって坂を下る。そして千波湖の公園に入る。これまでトイレを我慢してきたが、最後の10キロちょっとここで体をリセットしようと思い、33k地点手前のトイレに駆け込む。ロスタイム約1分。トイレは思いのほか体を軽くし、体に対する心配事を軽減してくれた。



・このコースはこの33kからのラスト9kがとってもきつい。千波湖周回コースは平らだが、反対側に先行ランナーたちが見えるのが精神的に辛いし、千波湖を出た後の上りは、疲れた体にこたえる。「淡々とマイペース、マイペース」、「エンジョイ、リラックス」と自分に声をかけながらとにかく脚だけは前に出す。

・内臓に無理がかかっているのがわかる。本当はエイドで取った羊羹とか、最後のエネルギーゼリーを摂取したいのだが、気分が悪くて口に入れる気になれない。

・坂を上り切ったあとで、トンネルに入る。いつもながら、このトンネルの応援はほんとに大きくて、素晴らしい。疲れ果てた体に最後の喝を入れてくれる。



・トンネルを出た瞬間に、道路のちょっとした突起物につまずいた。危うく転倒するとだったが何とか持ちこたえた。しかしながらその時に体を庇って、捻ったため、その後思いように動けない。40キロ時点で、3時間43分台で、残された時間は17分。

・そして最後1キロを切ったところでコース名物の壁に入る。タイミングよく、目標タイム4時間のペーサーさん達の集団に追いつかれる。「さあ、ここから皆さんで声出して頑張っていきましょう。笛鳴らしますから、ついてきてください!」とぺーサーガ声をかける。何とかこの集団についていこうとするが、もう足も体も動かない。あっという間抜き去られ、ついていくこともできず。何とか残りの時間を半歩き走りで足を動かした。

・ようやく最後の直線の500メートルの花道につき、遠い前方にゴールが見える。ゴール写真を撮る余裕も無く、とにかくゴール。公式のグロスタイムは3時間59分台、手持ちの時計のネットタイムは3時間57分台であった。

・「ふう~」。いつもながらの、ぼーっとしながら、サブ4を達成できた安心感と達成感が入り混じった思いで、完走メダルや完走記念品を頂いて、導線に沿って歩く。

【まとめ】
・返す返す、沿道の応援団やボランティアさん達に支えられるレース。来年は10回目の節目になる大会。来年もでるぞ~。


(天気)晴れのち曇り
(気温)スタート時19℃、最高気温23℃
(風)ほぼなし
※ガーミンでは走行距離42.49km

 

2024年10月27日

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ブロムシュテット祭 最終日: N響10月Cプロ、指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、シューベルト交響曲第7番/第8番

2024-10-29 07:30:24 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

10月のブロムシュテット祭もいよいよ最終プログラム。この1カ月、トラブル無く完走頂いたことに感謝の気持ちで一杯だ。もっとも団員さんのポストだと、「団員は厳しいリハーサルに疲労困憊になっていく一方で、マエストロは日増しに元気になっていく」、ということらしいので、どういうメンタルとフィジカルを持ったかたなのだろう。ドジャースの大谷翔平くんも翁には叶わない。

Cプログラムはシューベルトの交響曲7番〈未完成〉と8番<ザ・グレート>のカップリング。私の音楽を聴く力と筆力では、書けば書くほど原体験が損なわれるので、多くは書けないが、今回の「祭」の最終を飾るに相応しいプログラムであり、演奏であった。2曲とも、音楽ってこんなに純粋で、美しく、深遠なんだと、感じさせてくれた。感情と構造の調和、一音一音に籠められた意思が現れる力強さ、そして紡がれる音楽の若々しさ。道を究めて、悟りを開きながらも、更に高みを目指す。そんな姿勢も見て取れる。

N響の演奏も憑かれたような集中力を示していた。川崎コンマスの力強いリードとともに、弦陣のアンサンブルはただ美しいとか、揃っているとかとは別物の一体感あって、有機的で前向きな動きを感じた。8番での吉村さんのオーボエソロを始め、管陣の音色も音の中に自らが溶けこんでいくような感覚になる。弦・管・打それぞれが嚙み合って音楽が流れて行く交響楽の醍醐味だった。

〈ザ・グレート〉の第4楽章はフィナーレに向かう翁とオケの気合が最高潮に達して、異次元の空間が生まれる。聴いている者にもこみ上げるものがある。繰り返しは、ずーっと何度も繰り返してほしい。この幸せな時間が終わってほしくない、そんな気持ちだった。

満員のNHKホールは、満員とは思えない静まりの中でステージを見つめ、耳を傾ける。これだけステージと聴衆が一体となった空間は本当に素晴らしい。終演後の拍手は演奏への感動以上に、感謝の気持ちが一杯につまったもので、翁にとっても、旅の思い出としてしっかり持って帰って頂けるのではと思った。

来年のプログラムにも既に翁の名前は記されている。健康第一で。その次で良いので、来年の再会を心から待ち望みたい。

 

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2021回 定期公演 Cプログラム
2024年10月26日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

PROGRAM 曲目
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D. 759「未完成」
シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D. 944「ザ・グレート」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2021 Subscription (Program C)
Saturday, October 26, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Schubert / Symphony No. 7 B Minor D. 759, Unvollendete (Unifinished Symphony)
Schubert / Symphony No. 8 C Major D. 944, Große (The Great)

Conductor
Herbert Blomstedt

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経験の無いブーイングの嵐・・・東京二期会/コンヴィチュニーの『影のない女』(R.シュトラウス、指揮:アレホ・ペレス)

2024-10-25 07:52:38 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

東京二期会『影のない女』を鑑賞に東京文化会館へ。上演前からX(旧ツイッター)上で、その改変が物議を醸していたが、私はオリジナル作品を見てないし、ワールドプレミアでもあるこのオペラを0ベースで楽しむつもりで出かけた。2010年5月にフィレンツェ五月音楽祭で、ズ―ビン・メータ指揮でのチケットも確保したのに劇場のストライキで涙のキャンセルとなった、私には因縁の作品でもある。

終演後は、私の日本でのオペラ鑑賞歴では経験の無いブーイングや怒号の嵐で苦笑いだったが、このブーイングにはもろ手を上げて賛同できる演出であった。

私にとっての一番の難点は、今回の演出が音楽を損なっているように見えた点。初めて聞くオペラ・音楽だが、「サロメ」の緊張感と「ばらの騎士」の甘美さの双方を持ち合わせた音楽。だが、この舞台は、この楽曲の甘美さに全くそぐわず、音楽がむしろ損なわれる印象だったのが最も残念であった。

また、舞台上の斬新さや目新しさの主張が目立つ一方で、舞台設定の納得感なく、人物造形もよくわからなかった。霊界の皇帝の世界を地下駐車場、バラク夫婦が住む人間界を遺伝子操作研究の世界に置いたり、エピローグでの高層ビルでの高級展望レストランなど、設定にどういう意図を込めて、どういう効果を狙っているのかわからない。人物キャラの描き方も弱いと感じた。ついでだが、舞台そのものではないが、カーテンコールではバラクの妻が主役としてコールに応えていたのにも混乱した。

個々の表現も不快に感じるところが多い。出産での鉗子摘出シーンや露骨な性交シーンなども、「日本のオペラ愛好家は真面目過ぎる」とかいう問題ではなくて、作品のテーマを描く表現手段としての効果や意図がわからない。「舞台芸術として美しい」というポストをされている方もいらしたが、私には醜悪としか見えなかったのが正直なとこである。

音楽は素晴らしいので 途中から目をつぶって音楽と歌に集中したが、字幕は見たいので時折目を開けると、舞台が目に入ってしまう。そのたびにがっかりさせられる。現代読み替えとかの問題では全く無く、舞台として納得できないし、生理的にも合わなかった。オリジナルを知らない私がこの感想だから、オリジナルの四分の1を削っているというこの舞台に、オリジナル経験のある人が許しがたい気持ちを抱いたのも理解できる。

ピットに入ったアレホ・ペレスの指揮と東響の演奏は、そのドライブ感といい、緊張感と甘美さの表現といい素晴らしかった。チェロの独奏や低弦部の合奏、管楽器や打楽器の炸裂、シュトラウスの世界全開で味合わせて貰った。歌手陣も熱演で舞台を盛り上げた。とりわけ、皇后役の冨平安希子と乳母役の藤井麻美の歌唱、演技が印象的。

終演後、私は演出家の術中にはまるような気もして、ブーイングは他の方にお任せし、相乗りしなかった。Xでの相互フォロワーさんから「炎上商法だから」と絶妙なワーディングを送っていただいたが、まさにその通りと思った。一方で 素晴らしかった東響とこの演出に「耐えた」歌手陣には大きな拍手とブラボーを送った。

日本ではここまで合わない舞台にお目にかかることは少ないが、ロンドン在住時にはロンドンやドイツの歌劇場でしばしばこうした残念な舞台に遭遇した。矛盾するようだが、こうしたサプライズやがっかりも観劇体験の面白さといえば面白さである。ある意味記憶に残る観劇体験であった。

(いくつか自分のための追記)
・ブ―イングは幕が下りた時と演出者が登場した際に吹き荒れた。特に、幕が下りた時は、怒号と併せて騒然とした雰囲気であった。歌手陣や指揮者・オケに対しては、素直なブラボーと拍手が飛んだ。この聴衆の気持ちは演者に届いたと思う。ただ、幕が上がって最初のコールを受けた歌手さんたちは、幕が下りた際のブーイングの興奮の余韻が聴衆に残っていて、賞賛と入り混じった拍手となり、お気の毒であった。

・個人的な話だが、4階左サイド1列目に陣取ったが、となりのおじさんは上演時間の95%は完睡していた。終幕直前に起き上がり、カーテンコールではスマフォで写真撮りまくって、さっさと帰っていった。不思議な方であった。カーテンコールの写真はOKということを知らず、写真を撮り漏れた自分は残念組。

 

影のない女
〈ワールドプレミエ〉

オペラ全3幕 op.65
日本語および英語字幕付原語(ドイツ語)上演

台本:フーゴ・フォン・ホフマンスタール
作曲:リヒャルト・シュトラウス

公演日時:2024.10.24 (木) 17:00開場 / 18:00開演
会場:東京文化会館 大ホール

指揮:アレホ・ペレス
演出:ペーター・コンヴィチュニー
舞台美術:ヨハネス・ライアカー
照明:グイド・ペツォルト
ドラマトゥルク:ベッティーナ・バルツ
合唱指揮:大島義彰
演出助手:太田麻衣子、森川太郎
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:佐々木典子
公演監督補:大野徹也

10.24(木)

Der Kaiser 皇帝:伊藤達人
Die Kaiserin 皇后:冨平安希子
Die Amme乳母:藤井麻美
Der Geisterbote伝令使    :友清 崇 (全日出演)、髙田智士 (全日出演)、宮城島 康 ※(全日出演)
Erscheinung eines Jünglings若い男の声 :高柳 圭
Die Stimme desFalken鷹の声       :宮地江奈
Barak, der Färberバラク :大沼 徹
Sein Weibバラクの妻:板波利加
Des Färbers Brüder バラクの兄弟:児玉和弘、岩田健志、水島正樹 ※

Chorus合唱:二期会合唱団
Orchestra管弦楽:東京交響楽団

DIE FRAU OHNE SCHATTEN
Opera in three acts
Sung in the original language (German) with Japanese and English supertitles

Libretto by Hugo von Hofmannsthal
Music by RICHARD STRAUSS

Thu , 24 Oct ,2024 17:00 Open/18:00 Start

Venue: Tokyo Bunka Kaikan

staff
Conductor: Alejo PÉREZ
Stage Director: Peter KONWITSCHNY
Set & Costume Designer: Johannes LEIACKER
Lighting Designer: Guido PETZOLD
Dramaturg: Bettina BARTZ
Chorus Master: Yoshiaki OSHIMA
Assistant Stage Directors: Maiko OTA, Taro MORIKAWA
Stage Manager: Hiroshi KOIZUMI
Production Director: Noriko SASAKI
Associate Production Director: Tetsuya ONO
Conductor: Alejo PÉREZ
Stage Director: Peter KONWITSCHNY

CAST

Thu,24Oct

Der Kaiser: Tatsundo ITO
Die Kaiserin: Akiko TOMIHIRA
Die Amme: Asami FUJII
Der Geisterbote: takashi TOMOKIYO (all days), Satoshi TAKADA (all days), Ko MIYAGISHIMA (all days)
Erscheinung eines Jünglings: Kei TAKAYANAGI
Die Stimme des Falken: Ena MIYACHI
Barak, der Färber: Toru ONUMA
Sein Weib: Rika ITANAMI
Des Färbers Brüder: Kazuhiro KODAMA, Takeshi IWATA, Masaki MIZUSHIMA,

Chorus: Nikikai Chorus Group
Orchestra: Tokyo Symphony Orchestra

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せんがわ劇場芸術監督演出公演「ドクターズジレンマ」(作:バーナード・ショー、演出:小笠原響、翻訳:小田島創志)

2024-10-23 07:30:07 | ミュージカル、演劇

名前は良くお見かけするが、芝居は観たこと無かった演出家・小笠原響氏による「ドクターズジレンマ」(作:バーナード・ショウ、翻訳:小田島創志)を初日に観劇。仙川劇場の芸術監督に就任され、その初演出とのことである。

ベテランと若手の役者陣が良く組み合わさった、見応えある心理/倫理サスペンス劇だった。結核の治療法を開発した有能な医師が、命を救うべき患者の絞込みに倫理的、論理的、そして個人的な愛情の間で迷い、最終的な行動を取る。主人公とその友人の医師たちや患者である将来を嘱望される若手芸術家とそのパートナー、夫々の社会的地位や価値観に基づきながら、交わされる会話は密度が濃く、ユーモアを含ませつつも、その展開は緊張感一杯。テーマについても観衆にも問いかける問題提起型の作品とも言える。1900年代初頭の作品らしいが、今でも全く古さを感じず、良くできた脚本だと感心した。

役者陣の安定しつつ、熱意籠った演技も光った。主人公の医師リジョンをはじめとした医者陣は、夫々が個性的で、キャラクターの人物造形を明確に演じベテランの味たっぷりだった。また、天才芸術家とそのパートナー(妻)を演じた若手二人も、社会的地位と責任を持つ「大人」の成熟と思考との対称性が際立っていた。石川 湖太朗さんの奔放な芸術家ぶりが、とりわけ印象的。

舞台はUの字型に舞台を取り囲むつくり。観衆の集中力が三方から舞台に向かい、役者と観客の一体感がある。私は一辺の最前列だったので、今にも役者さんとぶつかるんではないかと言うぐらいの至近距離で、臨場感がMaxだった。

最近、シェイクスピア悲劇の観劇が続いていたので、また違った演劇の面白さを味合わせて貰い、とっても充実感ある観劇体験であった。

 

せんがわ劇場芸術監督演出公演「ドクターズジレンマ」
2024年10月18日(金) 
会場: 調布市せんがわ劇場

キャスト CAST
佐藤 誓 Sato Chikau
髙山 春夫 Takayama Haruo
清水 明彦 Shimizu Akihiko
山口 雅義 Yamaguchi Masayoshi
内田 龍磨 Uchida Ryuma
佐藤 滋 Sato Shigeru
大井川 皐月 Oigawa Satsuki
石川 湖太朗 Ishikawa Kotaro
なかじま 愛子 Nakajima Aiko
星 善之 Hoshi Yoshiyuki ★

スタッフ STAFF
演出 小笠原響
翻訳 小田島創志
美術 乘峯雅寛
美術アシスタント 酒井佳奈、関 由樹
小道具 出崎健太(高津装飾美術)
音楽 日高哲英 (HP)
照明 石島奈津子(東京舞台照明)
音響 藤平美保子(山北舞台音響)
衣裳 加納豊美
舞台監督 伊達一成
舞台監督助手 西條義将
演出助手 深堀絵梨 (HP)(HOLIDAYS HP) ★
制作助手 平松香帆 (JAPLIN HP) ★
宣伝美術 チャーハン・ラモーン
宣伝撮影 福山楡青 (HP)
音声ガイド 藤井佳代子
字幕 松田香緒
鑑賞ナビゲーター 佐川大輔(HP) (THEATRE MOMENTS HP) ★
鑑賞サポート 舞台ナビLAMP (HP)

主催 公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団

芸術監督 小笠原響

★せんがわ劇場DELメンバー

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ブロムシュテット祭り2公演目:N響10月A定期、ブラームス交響曲第4番ほか

2024-10-21 07:30:47 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ブロムシュテットさん(以下、敬意を込めて翁)月間の第2弾の演奏会。NHKホールは満員の大入り。開演前から熱気でむんむんです。

この日のコンサートマスター川崎さんに支えられて、楽団員と一緒に入場する翁。先週のサントリーホールよりステージが1.5倍は広いので大変そうです。会場は感謝と歓迎の気持ちに溢れた拍手に包まれました。

プログラムはオネゲル交響曲第3番とブラームス交響曲第4番の組み合わせ。後半のブラームスが圧巻でした。

3階席から視覚的に印象的だったのは、川崎コンマスを筆頭にした弦陣の動き。翁の指揮に併せて、音楽と一体となったメンバーは前のめりに体で音楽を表現するかのよう。第1楽章後半や第4楽章では波が繰り返しうねっているかのようでした。そして、弦陣だけでなくオーケストラ全体から、この演奏に全身全霊で向き合う「気」が痛い程伝わってきました。

ただ、それでも、紡がれる音楽は熱量が前面に出るというようよりは、熱量を内に秘めながらも、純粋で清々しく聴こえました。ホールに来る前に代々木公園を歩いていた時に見上げた秋真っただ中の青空のように曇りがない。指揮者や演奏者の意図というよりも、音楽そのものの良さが最大限に引き出されていると感じます。

第2楽章の美しさは、何回もこの曲の演奏を聴いているはずなのに、まるで初めてのように、ハッとさせられる場面もいくつか。そして、第4楽章は、力の籠った演奏に負けじと前のめりで聴くのですが、終わりに向かってどんどんと突き進んでいくのがなんとも悲しい。少しでも、この幸福な時間が長く続いて欲しいと思っていたのは私だけでは無いのでは。

前半のオネゲルの交響曲第3番は全く初体験でした。曲タイトル通り、第1楽章<怒りの日>は厳しさに溢れる音楽でしたが、第2楽章<深い淵から>は美しいメロディにうっとり。言い訳っぽいですが、美しく優しい旋律に、軽く意識を失いかけました。そして、第3楽章はぐいぐいと堂々とした音楽が展開しつつ、終盤は再び美しく優美なメディに回帰しました。曲や演奏を、コメントする力はありませんが、神聖で魂に訴えてくるものを感じた音楽でした。

余談ですが、この日はNHKホールを埋め尽くした聴衆も素晴らしかったです。もちろん、咳などの生理現象が全くなくなるわけではないですが、演奏中の集中度や演奏後の静寂は、とても満員のホールとは思えないほど。聴衆の皆さんがこの演奏会を非常に大切なものとして、この場に向き合っているのが良く分かった気がします。

ブロムシュテット祭りもいよいよ来週のシューベルトプログラムを残すのみ。毎回が奇跡を目前で観ているような瞬間の連続です。最後、私も集中力マックスで、その場に居合わせる幸運を噛みしめたいと思います。

定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2020回 定期公演 Aプログラム
2024年10月20日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

オネゲル/交響曲 第3番「典礼風」
ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

 

Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2020 Subscription (Program A)
Sunday, October 20, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Honegger / Symphony No. 3, Liturgique
Brahms / Symphony No. 4 E Minor Op. 98

Conductor: Herbert Blomstedt


(翁への参賀(ソロ・カーテンコール)が終わった直後。こんなにお客さんの残ってます)

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10月シブラクに喬太郎師匠登場!

2024-10-18 08:13:52 | 落語

喬太郎師匠目当てで、久しぶりに渋谷らくごへ。似たような人が多いらしく、会場は私には過去経験無いチケット完売の満員。整理番号順に入場が許される。開演前から熱気で満々だった。

開口一番は二つ目春風亭朝枝さんの鈴ヶ森。面長の菊之丞さんに似た雰囲気。落語も端正で正統派。今後、期待です。

続いて登場したのは二つ目の桂伸べえさん。こちらは変化球系。演目は〈広末写真集〉という新作もの。まくらでは、滑舌がもう一つでハラハラさせられたが、本題に入ると、慣れた演目なのか、のびのびと話していた。広末涼子の写真集を買った中学生とその友人や家族とのやり取りが描かれる。私の好みとしては、微妙。

休憩挟んで、真打ちの歓之介師匠が登場。今年4月下席の浅草演芸ホールで主任を務めてらした時に聞いて以来。演目は〈竹の水仙〉。さすがの真打ちの貫禄で、二つ目さんたちとは、一味もふた味も違う安定した話芸を披露頂いた。

そしていよいよ喬太郎師匠の登場。どんなまくらから入るのかと思って、固唾を飲んで見守っていたら、着座と同時に本題が始まった。いきなりで面食らったが、そんな驚きもあっという間に置き去りにして、話の世界にぐぐっと引き込む師匠の迫力が凄い。

初めて聞くシリアスな駆け落ち逃避行の物語。登場人物毎に表情ががらっと変わる。小さなユーロスペース、それも前列3列目に座っていたので目をそらす間も与えてくれない。緊張感溢れる話に没入した30分だった。

話が終わり師匠から噺の一言紹介が。円朝師匠作の「品川発廿三時廿七分」で、前後にも話がついているようだ。期待とは違った展開ではあったが、喬太郎師匠の力を見せつけられた演目であった。

 

渋谷らくご3日目

10月13日(日)17:00-19:00
「渋谷らくご」

春風亭朝枝-鈴ヶ森
桂伸べえ-広末写真集
柳家勧之助-竹の水仙
柳家喬太郎-品川発廿三時廿七分

大入り満員 

 

(付録)

久し振りに〈やしま〉を訪問。昔はセンター街の外れにあったよね。

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堀田創、尾原和啓 『ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みを作るAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社、2021)

2024-10-17 07:32:19 | 

似たような企業は多いと想定するが、弊社でもAI活用が事業・業務における課題であるので、そのヒントになればと思い、本書を手に取った。共著者の1人である尾原和啓さんは数年前に読んだ『アフターデジタル』(藤井保文氏との共著)が、オンライン世界がオフライン世界を呑み込んでいく(一体化していく)世界観が示された良書であったので、本書にも期待したところである。

AI活用にあたっては、ネットワーク効果により買い手と売り手の双方が増加していく仕組みを整え、その仕組みの中で、データを継続的に収穫できる仕掛け(ハーベストループ)を構築することが重要であること。そしてそのループは1つに頼ることなく、2つ以上のループを構築し、回すことによって、継続的にビジネスが成長していくことが大切と言うのが本書のポイントだ。加えて、ハーベストループの作り方、実装にあたっての注意点についてまとめている。

網羅的かつ構造的にAIの活用法について解説されているので、導入本として優れていると感じた。プラットフォームビジネスにおけるネットワーク効果や、ネットワーク効果を最大化させビジネス戦略に中に織り込むことでプラスのスパイラルを生んでいく必勝パターンは、アマゾンやウーバーなどのケースを例に散々語られてきていることだが、AIの時代になってもその原則はそのまま当てはまるということなのだろう。

一方で、やや中途半端さを感じるところもある。考え方は構造的に理解できるものの、紙面の都合からか、実装や運用までを具体的にカバーしているとは言い難い(言及はある)。また生成AI時代前に書かれたものであるため、AIの活用もこれからアプローチが代わってくる可能性も大いにあるだろう。

そうした手の届かなさは感じたものの、ループ構造をいかに築き上げるかという点をAI活用の柱に置いた本書のメッセージは明確だ。あとは、如何に自らの環境に適用できるかを自分で考えて行くことだ。

また、最終章で語られる共著者の堀田創さんの指摘は、エンジニアであり起業家である実体験に基づいた納得感の高いものだった。事業には「できること」を増やすことよりも、「なぜやるのか」と言ったパーパスがより大事であること。そして「パーパス」を頂点に「ハーベストループ」と「UX(ユーザエクスペリエンス)」を車の両輪で回し、3項関係で考えていくことの重要性を強調しているが、その通りだと思う。

 

(抜き書きメモ)

・ハーベストループ:売り手がたくさん集まって、回答及び買い手がたくさん集まって、さらに売り手を呼ぶ。こういった相互のネットワーク効果、そしてそれをつなぐ取引データがどんどん溜まっていき、そのデータによって最適化を実現すること、これをハーベストループと言う。(p.28)

・ループ構造を作らないまま、AIを活用しようとしても、やがて行き詰まる。AIに食べさせるデータを用意できなければ、AIは成長できないからだ。AIにデータをフィードバックして強化すると言う学習プロセスを忘れないこと(p.151)

・まずは、「増大させる最終価値 (売り上げ増大/コスト削減/リスク損失予測UX向上/AD加速?)」を見極め、そのうえで「競争優位を築く戦略」を考える。そして、更にループ構造を作って、競争優位を持続させる

・ダブルハーベストループ(p.148~)

成長するAIを駆動力とするハーベストループ最初のループが原動力となって、もう一つ別のループが回り出すこと。

・パーパスを見出すアプローチ法:

その1)MTB(マッシブ・トランスフォーマティブ・パーパス):野心的な変革目標2つの問いに対する答えを記述する。

 1どんな大きな問題に取り組むのか? 2.それをどのように解決するのか?

 この問題/解決をアウトプットする際には、対象となる顧客のことを想定しながら、10年から30年の大きなスパンで考えることが推奨される。その解決策を徹底的に極めるとどのような変革を生まれるのかを書く。(p.237)

その2)自分自身がどんな未来を作りたいのか?と言う問いかけを発送の起点にしてみる(p.239)

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新国立オペラ、素晴らしいシーズンスタート! ベッリーニ「夢遊病の女」

2024-10-15 07:24:37 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

新国立オペラのシーズン開幕公演の最終日に鑑賞。Xのポストは絶賛ポストが溢れてたし、私自身、舞台付きオペラは今年の5月以来でうきうき気分。

評判通りの素晴らしい公演だった。歌手陣、合唱、オケ、演出がハイレベルに統合され、ベルカントオペラの醍醐味を味わった。

アリーナ役のクラウディア・ムスキオは透明感あって、繊細な歌声。容姿の美しさもあって、まさにはまり役であった。舞台映えする歌手で、これからが楽しみだ。エルヴィーノのアントニーノ・シラグーザは伸びやかで聴き惚れるテノール。この人、1964年生まれというから今年還暦なのだが、とてもそうは見えない外見と若々しい歌声。この二人がしっかりとした軸になっていたので、舞台の安定感が抜群だった。

脇を固める日本人歌手陣もすばらしい。外国人歌手陣に引けを取らず、ロドルフォ伯爵役の妻屋秀和、リーザ役の伊藤晴、テレーザ役の谷口睦美らが、夫々の演技と歌の両面で舞台を盛り上げた。

いつもながらであるが、新国合唱団にる村人たちの合唱も美しい。これは演出の意図だと思うが、村人たちは終始無表情である。その無表情さを保ちながら美しい合唱が繰り出されるのは、却って不気味で、「個」の無い群衆を印象付けた。

ベニーニ指揮の東フィルの音楽も優しく抒情的で胸を打つ。オケが前面に出る機会はあまり無いが、歌唱と一体化した演奏はしっかりと全体を支え、さすが東フィルと唸らせる。現場の名匠のベニーニの手腕あっての今回のハイレベル公演と思う。

演出は所々、私には解釈不能なところもあったが、過度に主張しすぎることなく、出演者を支え、舞台効果を高めていた。ダンサーたちが、アミ―ナに絡んでいくのは、その意図は良く分からなかった(アミ―ナの深層意識を表現していたのだろうか?)が、ステージにダイナミックな活力を与えていたし、(4階席からなので奥は見切れているのだが)照明効果も美しかった。謎だったのは、第1幕で舞台中央に立つ高いもみの木のてっぺんに二体の男女の人形(血が出ているように見えた)がつるしてあったのだが、あれは何だったのだろう。リンチに遭った人体のようで気になった。

最終公演とあってか、カーテンコールでは舞台、観客席ともに熱い興奮で一杯だった。ムスキオ、シラグーザの二人も全公演を歌い切った充実感が溢れていた。観客も熱狂的なブラボー、ブラビー、拍手で、ここまでの熱い反応は、新国オペラではあまり記憶無いぐらい。私も手が痛くなるほど拍手を送った。シーズン開幕公演として大成功と言えよう。来月は長尺のウイリアムテルである。こちらも楽しみだ。

 

ヴィンチェンツォ・ベッリーニ
夢遊病の女<新制作>
La Sonnambula / Vincenzo Bellini

全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
公演期間:2024年10月3日[木]~10月14日[月・祝]
予定上演時間:約3時間(第1幕85分 休憩30分 第2幕65分)

スタッフ
【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演 出】バルバラ・リュック
【美 術】クリストフ・ヘッツァー
【衣 裳】クララ・ペルッフォ
【照 明】ウルス・シェーネバウム
【振 付】イラッツェ・アンサ、イガール・バコヴィッチ
【演出補】アンナ・ポンセ
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【ロドルフォ伯爵】妻屋秀和
【テレーザ】谷口睦美
【アミーナ】クラウディア・ムスキオ
【エルヴィーノ】アントニーノ・シラグーザ
【リーザ】伊藤 晴
【アレッシオ】近藤 圭
【公証人】渡辺正親

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

共同制作:テアトロ・レアル、リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場

Co-production with Teatro Real of Madrid, Gran Teatre del Liceu, Teatro Massimo di Palermo

OPERA La Sonnambula
2024/2025 SEASONNew Production

Presented by New National Theatre Foundation, Japan Arts Council, Agency for Cultural Affairs, Government of Japan

Music by Vincenzo Bellini
Opera in 2 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE

3 Oct - 14 Oct, 2024

CREATIVE TEAM
Conductor: Maurizio BENINI
Production: Bárbara LLUCH
Set Design: Christof HETZER
Costume Design: Clara PELUFFO
Lighting Design: Urs SCHÖNEBAUM
Choreographer: Iratxe ANSA, Igor BACOVICH
Associate Director: Anna PONCES

CAST
Il conte Rodolfo: TSUMAYA Hidekazu
Teresa: TANIGUCHI Mutsumi
Amina: Claudia MUSCHIO
Elvino: Antonino SIRAGUSA
Lisa: ITO Hare
Alessio: KONDO Kei
Un notaro: WATANABE Masachika

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra

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97歳ブロムシュテッド、極東の地に降臨 @サントリーホール

2024-10-13 07:30:35 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ブロムシュテッドさん(以下、敬意を持って翁)が、郷古コンマスに支えられながら、団員と一緒にステージに現れる。指揮台に据え置かれた椅子に座るまで、どこかで滑りはしないか、固唾を飲んで見守られながら、椅子に座る。もう十分に名声を馳せた97歳になった翁が、10時間以上のフライトを経て、この極東の地を踏み、1月近くも滞在して6回もの演奏会を指揮する。このモチベーションはどこから湧いてくるのか。使命感なのか。そんな思いはどうでも良くて、ただただ、翁への感謝の気持ちあるのみ。そんな聴衆の思いは、歓迎の大拍手に明確に現れていた。

それからは、夢のような1時間40分だったのだが、とりわけ印象的だったのは後半のベルワルドの交響曲第4番。皆が見守る中、椅子に就いた翁が創り出す音楽は、瑞々しく、清明で、若々しい。P席から見る翁の表情は実に活き活きと、エネルギーに満ち溢れている。全く初めて聴く楽曲だが、ベートーヴェンの交響曲4番や8番のような小気味よい明るさを感じ、初めてとは思えないぐらい体にすんなりと浸み込んできた。

N響も力みなく、自発性を感じる演奏で、ポジティブな「気」がステージ上に舞い上がっていた。弦管打楽器の各プレイヤーが前のめりで、この瞬間をとっても大切なものとして感じているのも伝わってくる。濁りなく推進力を感じる演奏は、青天を衝くという表現が相応しい気がした。

前半も良かった。シベリウスの「ツゥオネラの白鳥」での池田さんのイングリッシュ・ホルンの独奏を聴くのは何年ぶりだろう(確か前回、N響が「四つの伝説」を演奏した際は、独奏は池田さんでは無かった覚えがある)。この日も、柔らかく、ふくよかで、抒情的な音色が耳に残る。

ニルセンのクラリネット協奏曲は伊藤圭さんの技巧が光った。正直、初めて聴く楽曲で、ついて行ったとはとても言えなかったのだが、目まぐるしく変化する音楽を伊藤さんはN響メンバーと息を合わせながら、吹き切った。

アンコールはN響のホルン今井さんとファゴット水谷さんも加わって、ニルセンの木管五重奏曲第2楽章から抜粋(フルート、オーボエ無し)。アットホームな雰囲気がなんとも魅力的であった。

来週はA定期でブラームス、再来週はC定期でシューベルト。まだまだ10月ブロムシュテッド祭りは続く。何卒、健康管理留意頂き、元気に残り四公演を完投頂きたいと、切に願う。

 

定期公演 2024-2025シーズンBプログラム
第2019回 定期公演 Bプログラム
2024年10月11日(金) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22─「トゥオネラの白鳥」
ニルセン/クラリネット協奏曲 作品57
ベルワルド/交響曲 第4番 変ホ長調「ナイーヴ」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
クラリネット:伊藤 圭(N響首席クラリネット奏者)

Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2019 Subscription (Program B)
Friday, October 11, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall

Program
Sibelius / 4 Legends, sym. poem―The Swan of Tuonela
Nielsen / Clarinet Concerto Op. 57
Berwald / Symphony No. 4 E-flat Major, Sinfonie naïve

Artists
Conductor: Herbert Blomstedt
Clarinet: Kei Ito (Principal Clarinet, NHKSO)

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土井善晴『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫、2021)

2024-10-11 07:30:39 | 

自主読書会の課題図書として読んだ。「一汁一菜」をキーワードに、日本人の食事、生活についての筆者の思いが打ち込まれた一冊。

「栄養的に一汁一菜で本当に大丈夫?」「復古主義的過ぎないか?」と感じるところもあったが、食事の意味合いや重要性について、私自身、日常であまり意識していないことが、分かりやすく言語化されていた。改めて食について見直す機会になり、気づきの多い書である。

文化・伝統・自然としての食事の意味、「ハレ」と「ケ」の区別、家庭料理の重要性、家庭料理・チェーン店・料理店(レストラン)の機能の違い、箸・茶碗・お膳なので食器類の重要性などなど、子供の時からの今に至るまでの今までの食にまつわる自分史についても振返ることができる。

「一汁一菜」という表面的なアウトプットに目を奪われるのではなくて、その考え方・思想について理解し、日常に取り入れるところまで実践したい。一方で、時間の余裕無し・誘惑多しの現代社会においては、実践にはそれなりの意思が必要だろう。まずは、これまでの人生で単身赴任期間を除いて殆ど料理をしてこなかった自らの行動改革から始めるとするか。

 

(自分のための引用メモ)
・人間は食事によって生き、自然や社会、他の人々とつながってきたのです。食事はすべての始まり。生きることと料理する事はセットです。(p15)

 ・一汁一菜とは、ただの「和食献立のススメ」ではありません。一汁一菜と言う「システム」であり、「思想」であり、日本人としての「生き方」だと思います。(p16)

・人間の能力の1つ発達してきたものが、それぞれの風土の中で民族の知恵となりました。ですから、食材に触れて料理すると、意識せずともその背景にある自然と直線的につながっていることになるのです。(p21)

・私たちがものを食べる理由は、おいしいばかりが目的ではないことがわかります。情報的なおいしさと、普遍的なおいしさとは区別するべきものです。(p26)

・家庭料理を失った食文化は、薄っぺらいものです。家庭料理は人間の力です。(p31)

・日本には、「ハレ」と「ケ」と言う概念があります。ハレは特別な状態、祭り事。ケは日常です。日常の家庭料理は、いわば家の食事なのです。手をかけないで良い。そのケの料理に対して、ハレ晴れにはハレの料理があります。両者の違いは「人間のために作る料理」と「神様のために作る料理」と言う区別です。 (p32)

・人間にとって人生の大切な時期に手作りの良い食事と関わることが重要です。新しい家庭を築く始まりに、また、子供が大人になるまでの間の食事が特に大切だと思います。そして、自分自身を大切にしたいと思うなら、丁寧に生きることです。(p.45)

・料理することのない人生は、岡潔が「生存競争とは無明でしかない」とすることにも重なるのかもしれません。無明とは、仏教で言うと、人間の醜悪にして恐ろしい一面です。(p.46)

・家庭料理に関わる約束とは何でしょうか。食べることと生きることとのつながりを知り、一人一人が心の暖かさと感受性を持つもの。それは、人を幸せにする力と、自ら幸せになる力を育むものです。持続可能な家庭料理を目指した一汁一菜で良いと言う提案のその先にあるものは、秩序を取り戻した暮らしです。一人ひとりの生活に、家族としての意味を取り戻し、世代を超えて伝えるべき暮らしの形を作るのです。そしてまた、一汁一菜は、日本人を知り、和食を知るものでもあるのです。(p96)

・人間の暮らしで一番大切な事は、一生懸命生活することです。料理の上手、下手、器用、不器用、要領の良さでも悪さでもないと思います。一生懸命した事は1番純粋なことです。そして純粋である事は最も美しく、尊いことです。それは必ず子供たちの心に強く残るものだと信じています。(p.99)

・お料理と人間との間に、箸を揃えて、横に置くのは、自然と人間、お天道様から生まれた恵みと、人間との間に境を引いているのです。私たちは「いただきます」という言葉で結界を解いて、食事を始めるのだと考えられます。(p.139)

・よそ行きのものよりも、毎日使うものを優先して、大事にしてください。人間は道具に美しく磨かれることがあるのです。家族それぞれ、自分に自分のお茶碗や湯のみ、お箸と決められたものを「属人器」といいますが、日本を含む東アジアの一部だけのことらしいです。それによって、自分だけが使うものに強い愛着、心(愛情)を持つのです。 (p.170)

・お膳を勧めるのは、お膳の縁が、場の内側と外側を区別して、結界となるからです。(p178)

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映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(監督・脚本:アレックス・ガーランド)

2024-10-09 07:30:53 | 映画

久しぶりに映画館で映画鑑賞。アメリカ内戦を描いたということで、公開前から話題に上ってたので、気になっていた。

米国内で起こった内戦の取材で、前線に入って取材しようとするフォト・ジャーナリスト達を描く。

う~ん、私的には消化不良。分断のアメリカを描く社会派映画かと勝手に想像していたら、戦争アクションのようでもあり、ロードムービーのようでもあり、どっちつかずで中途半端な印象。宣伝では、意味不明だが「ディストピア・アクション」映画。

長い戦闘シーンや人が簡単に殺されていくのも、緊張を強いられ、観ていてつらかった。世界では、国家間、内戦問わず、これに近いことが行われていると思うと胸も痛む。

映画の作りはつらかったが、俳優陣は主演のキルステン・ダンストを始め好演。映像もスケール感、臨場感が素晴らしく映画ならでは映像体験ができる。

 

監督 アレックス・ガーランド
製作 アンドリュー・マクドナルド アロン・ライヒ グレゴリー・グッドマン
製作総指揮 ティモ・アルジランダー エリーサ・アルバレス

キャスト:
リー・スミス: キルステン・ダンスト
ジョエル: ワグネル・モウラ
ジェシー・カレン: ケイリー・スピーニー
サミー: スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン

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楽天モバイルパーク宮城に行ってイーグルスを応援して来た!

2024-10-06 08:18:53 | 日記 (2012.8~)

先日、仕事で仙台へ出張した折りに、立ち寄った東北営業所の仕事仲間から、楽天の応援に誘っていただいた。外野のボックス席を取っているのだが、1人分まだ余裕があるという。「行く、行く」と即答し、終業後、一緒に球場へ。

楽天モバイルパーク宮城を訪れるのは初めて。コンパクトな球場で、いろんなお店やイベントがある。レフトスタンド奥には観覧車まであって、まさにボールパークとしての楽しさが一杯。天候も暑すぎず、寒すぎずで、これ以上のナイター日和はないほど。


(1塁側内野席からの眺め。自席は外野席だが、スタンドを自由に動いて回れる)

ボックス席というか東京ドームとかにある年間予約席なのかと思ったら、まさに外野バックスクリーン横にテーブル付きのボックスが仕切られていて、6.7名のグループで楽しめるようになっている。テーブルと椅子が設置されているボックスもあれば、相撲の升席のようにただ人工芝が敷いてあるだけのボックスもある。そこなら、大人は寝転がって観戦できるし、小さな子供も放っておける。

我らが陣取ったテーブル・椅子付きのボックスからは、フィールド全体を俯瞰できるうえに、ピッチとの高低差もあまりなく、とっても見やすい。試合観ながら、宴会で、一粒で2度おいしいとはまさにこのことだ。

クライマックスシリーズ進出を左右する大事なゲームだったが、楽天は攻撃振るわず、途中で同点に追いついたものの、その後マリーンズに追加点を許し1-2の敗北に終わった。まあ、これだけ打てなきゃしょうがないね。

試合終わっても、ボックス席の宴会は続いて、そのまま反省会。私を除いた6名中5名はユニフォーム着用だから、ああでもない、こうでもないという戦評が続いた。選手と今シーズンの実情にも疎いので私には発言機会はないが、銭湯内のような野球談議は聞いているだけでも面白い。

帰りは仙台駅まで徒歩で。20分弱ぐらいかな。駅チカの飲み屋が集まった飲み屋フロアで2次会。散々、酔っぱらって、午前様前に解散となりました。応援スタイルも土地土地の楽しさがあるわ。

(付録)仙台飯紹介

ランチで食べたマーボー焼きそば。上げ麺の上に麻婆豆腐がかかっている。仙台のどっかの中華料理屋さんが賄料理として作ったのが、広まったらしい。麻婆豆腐は、辛さも痺れもしっかりした本格麻婆。それが、揚げ麺にしっかり馴染んでとっても美味しい。ただ、同僚によると、「店によっては全然美味しくないとこもあるから注意です」とのこと。

その麻婆焼きそばのおかげで、夜の球場宴会では殆ど食べず。ホテルに戻ってから、ちょっと小腹が空いたので、仙台と言えば、そばの神田。いつも盤石の美味しさです。

 

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース W.シェイクスピア『リア王の悲劇』(演出:藤田俊太郎)

2024-10-04 07:29:19 | ミュージカル、演劇

私には今年3つめの「リア王」の公演。今回は滅多に上演されないフォーリオ版(シェイクスピア自身が『リア王の物語』(クオート版)を改訂したもの)です。翻訳者の河合祥一郎氏によると「フォーリオ版はリア王の長女と次女たちの言い分もしっかり描いてあり、世代間価値観の相違という問題が浮き彫りになっている」(プログラム)とのことです。

木場勝己が演じるリアの圧倒的な存在感に痺れました。王の威厳が滲み出る気魄から段々と認知がおかしくなり狂人と化し、一人の弱き老人と変わっていく寂しさを演じ分けるのは見事。とても今年75歳には見えず、格好いい。

エドマンド役の章平の悪役ヒーロー振りも舞台映えしました。私生児としての逆境を跳ね返すため、肉親も陥れ、打算的に権力者の妻たちの気を引き、自らの立身のために利用する。これだけ徹底していれば、返って清々しいぐらいですが、そのヒール役に章平が綺麗に嵌っていました。

男性陣では、加えてグロスター伯爵の伊原剛志も強い印象が残りました。息子エドマンドに嵌められながらも、主人リアを想い、目をえぐられ、野で遭遇したエドガーを実の子と知らず、手を取られ導かれる姿は涙を誘います。

二人のリアの娘、ゴネリルとリーガンの水原希と森尾舞は凛とした王家の娘らしい演技でした。フォーリア版故か、意地悪さよりも論理的というか、言うことは言う強い女という印象です。コーディリアと道化の2役を演じた原田真絢は、道化役の活き活きとして柔軟な動きや美しい歌が良かった。

これは演出家の考えで、役者には何の責めは無いのですが、土井ケイトが演じるエドガーはエドマンドの姉という設定になっていたのは首を傾げました。女性が男性役をやるというのなら分かりますが、設定そのものを女性に変えてしまうというのは、その意図が良く分からず。いくら今がジェンダーレスの時代とは言っても、役の性別を変える狙いは何なのだろうか。土井ケイトのトムの演技がとっても良かっただけに、個人的にモヤモヤ感が張れなかったのは残念でした。

舞台は大きなステージを目一杯使い、装置も玉座や金属パイプで積み上げたジャングルジム風のグロスター家の屋敷など効果的。嵐のシーンでは強い霧雨を舞台上から降らせ劇的効果を高めていました。風の仕掛けがあればもっと良いのにとはちょっと思ったところはあります。

台詞も適度に削ってあるので、シェイクスピアの日本語劇で時々感じる言葉の洪水的な感じはせずに、自然なスピードと量の日本語劇になっていました。音楽も挿入されて、全般的にとっても今風に仕上がった舞台で、閉幕近づいていることもあってか、とっても完成度が高まっていると感じました。

今回は前列2列目正面のチケットを採れたのも良かった。全然迫力が違うわ~。カーテンコールで役者さん達と目が合う距離で拍手を送れるのも嬉しかった。

 

2024年10月2日 KAAT神奈川芸術劇場

【作】W.シェイクスピア 
【翻訳】河合祥一郎(『新訳 リア王の悲劇』(角川文庫))
【演出】藤田俊太郎  
 

【出演】

木場勝己 
水夏希 森尾舞 土井ケイト 石母田史朗 章平 原田真絢 
新川將人 二反田雅澄 塚本幸男 
伊原剛志

 

稲岡良純 入手杏奈 加茂智里 河野顕斗 宮川安利 柳本璃音 山口ルツコ 渡辺翔

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中村 計『落語の人、春風亭一之輔』(集英社新書、2024)

2024-10-02 07:24:03 | 

一之輔の落語は、ホールでの三人会や独演会で聴いていて、その毒舌や落語のリズムが醸し出す、斜に構えたり、緩かったり、締めるところは締めるメリハリといった独特の雰囲気にいつも取り込まれる。著者が一之輔や周辺の人々へのインタビューを通じて、一之輔の人や考えを炙りだそうとする一冊。

冒頭の「はじめに」で、サブタイトルで「長い言い訳」とした通り、今回の企画がいかに難しいものだったかが長々と記載されている。「はじめに」以降も筆者の苦労がにじみ出ている。捉えどころがなく、変化球の多い一之輔への取材をどうまとめて、読者に何を伝えるかが、相当もがいたのだろうと思わせる。

確かに、読んでいて、焦点がぼけているというか、核心に触れられないもどかしさは読んでいて感じるところではあった。ただ、段々とこの万華鏡的な、個々の要素はバラバラで、多様に変化はするのだが、総体としてバランス取れてまとまっている。これが、一之輔の生きざまであり落語道であり美学なんだという自分なりの納得感を得た。古典も大胆に改変する、寄席を大切にする、人情噺も泣かせないといったポリシーも彼なりの拘りなのだ。

落語初心者の私には、筆者の合間合間での解説や一之輔との会話を通じて、一之輔以外の落語界の知識も増えありがたかった。師匠と弟子の関係、寄席の「ビジネスモデル」(入場料の半分を寄席が取って、残りを出演者に比重分配)、鈴本演芸場と落語協会の関係、落語協会と芸術協会のカルチャーの違い、落語家から見た客席/客層、立川流などなど、「そうなんだ~」「なるほど~」のところも多々あった。

一之輔ファンであってもなくても、楽しめる一冊だ。

 

【目次】
はじめに ~長い言い訳~

一、ふてぶてしい人
前座時代の一之輔が放った衝撃のひと言/不機嫌そうに出てきて、不機嫌そうにしゃべる/「自分の言葉に飽きたらダメなんです」/挫折がなさ過ぎる

一、壊す人
YouTube著作権侵害事件/西の枝雀、東の一之輔/保守的な落語協会と、リベラルな落語芸術協会/「跡形もないな、おまえ」/師匠を「どうしちゃったの?」と驚かせた『初天神』/食わせてもらったネタ/たった一席の二十周年記念/逸脱が逸脱を生む「フリー落語」/一之輔の稽古は「うーん」しか言わない/同志、柳家喜多八

一、寄席の人
談志の弟子にならなかった理由/寄席への偏愛/寄席は落語家の最後の生息地/「捨て耳」という修行/劇っぽくなってきた落語

一、泣かせない人
人情噺に逃げるな/泣かせる側に落っこちてしまうことが怖い/泣く一メートル手前までいく人情噺/一朝は一之輔に嫉妬しないのか

おわりに ~頼むぞ、一之輔~

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