その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

釧網本線に乗って夕刻の釧路湿原を楽しむ:2024年夏 道東旅行(1)

2024-07-30 07:30:07 | 旅行 日本


(北海道上空)

今年の夏は長期休みは取らず、週末に1,2日の休みをくっつけて、短い連休をいくつか楽しむつもりです。第1弾は釧路湿原マラソンへの参加とJR花咲線の鉄旅をメインにした道東旅行を敢行。

初日は、お昼過ぎに釧路たんちょう空港に着陸したので、ウォーミングアップがてら夕刻の釧網本線釧路湿原の巡りを計画しました。

空港を出て最初の感想は、「涼しい。いや、寒い」。35℃前後の灼熱地獄の首都圏と20℃前後の釧路とは別世界。首都圏にいると、気温の感覚が麻痺していて、「釧路20℃」と天気予報サイトにあっても、その情報を解釈できなくなってました。涼しいとか寒いというのがどういうものか分からなくて、今回持参した長袖衣類はシャツは1枚。これから大丈夫か少々不安に。

空港バスで市内に向かい、遅い昼食を取って、ホテルにチェックイン。釧路湿原の列車観光と言えば、観光列車ノロッコ号が有名ですが、日に2便しかないので、この日は間に合いませんでしたので、ローカル線に乗っての湿原巡りです。

 

【釧路駅から塘路駅へ】

16時29分の網走行きに乗車。2両編成です。ノロッコ号ではありませんが、ノロッコ号の終点が塘路駅なので、そこまで約30分の短い汽車旅としました。


(昭和を感じる駅舎)

釧路の街を抜け、次の東釧路駅では下校したての高校生たちが乗ってきます。車両は満席で、床に座ったり、立ってスマフォ弄ったり。座っている生徒たちは、単語帳開いて勉強したり、あっという間に完睡してたり。この生徒達の家はどこにあるのだろう?1日に4本しかない電車での通学なんて 大変だ。

まもなく、列車は釧路湿原の林を走ります。夕刻になるにつれて曇りから薄日が差し込み、湿原や林の緑が美しく反射していました。夕陽なのに、朝日のような瑞々しい光です。

塘路駅で折り返しのため下車。逆方向の釧路行き列車まで1時間あるので近くを散策することにしました 若干湿り気はあるものの気温は23°c。東京の暑さとは桁違いの別世界です。そよ風が気持ちいい。車窓からも何匹か見ましたが、蝦夷鹿が普通にうろうろしてます。塘路は湿原のカヌーツアーの基地になっているようですが、そのカヌー業者さん以外のお店類は何もないですが、こういう何もないところに、特段あてもなくうろうろしているというのも、非日常で楽しい。


(塘路駅出た左手にある簡易展望台からの眺め)


(鹿がそこらにウロウロしてます)


(塘路湖)

 

【塘路駅から釧路湿原駅へ 細岡展望所】

塘路駅18:11発の釧路行きに乗り、釧路湿原駅に向かいます。列車に乗っていて一つ気が付きました。運転手が汽笛を鳴らす時や スピードを急に落とした時は大抵、運転手が鹿を検知した時なのです。列車先頭から前方をを見ていると、何度も線路の上や脇にいる鹿を見かけます。急にスピードを抑えますが、運転手さんもヒヤヒヤものでしょう。線路を横切ってそのまま、前(列車の横)に逃げればいいものをなぜか 線路に沿って逃げる鹿もいて、これでは追いかけっこになってしまいます。こういうのは大抵、小鹿で、列車に慣れてないのか、危なっかしい。いつかは衝突間違いないので、とても見てられなくなり 先頭で車窓を追うのは諦め、自席から車窓を追った方が良い。衝突した鹿は運転手さんが線路や脇から運び出す作業がある。運転手さんは大変だ。


(車両後方から 線路右側に鹿)

釧路高原駅で途中下車し、日没が見られるのではというかすかな希望をもって、細岡展望台に行きます。 だが、残念ながら、夕日が沈む西方面は完全に雲がかかっていました。北方向は雲が切れていますうが、夕陽を見るとか夕焼けになるには雲が厚く、少々がっかり。

それにしても釧路湿原は広いです。日本ではなかなかお目にかかれない。ロンドンの郊外のリッチモンドヒルからの景色や南イングランドにも似たような景色は無いことは無いですが、このスケール感には及ぼないかな。日没の鑑賞はできませんでしたが、夕暮れ時の湿原見学をたっぷり楽しみました。30分ほどで私以外に訪れたのは小さいお子さん2人を連れた4人家族1組と若いカップル1組だけ。ほぼ独り占めでした。

前回、この展望台を訪れた3年前、蚊の集団に襲われ、その傷の治療に1月以上かかったので、今回は蚊対策(露出肌を最小化し、虫よけスプレーをかけるぐらいだが)を万全にして出かけました。何とか凌ぎましたが、それでも後でホテルに戻ったら数か所刺されてました。 

釧路湿原駅に戻り、釧路駅行き最終列車(19時41分)を待ちます。小さな山小屋のような狭い駅舎は、うす暗い白熱灯がついていますが、本を読めないほどの暗さ。フォームに出ても外は真っ暗。聞こえる音は水が流れる音と虫の鳴き声だけ。こんな完全な静寂は久しぶりです。たまにはこういう時間もいいものです。(ただ女性の一人旅にはこの時間帯のお移動は全くお勧めできません)


(これ逃がすと明日迄で列車無し)

 

(道東旅編 つづく)

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都響/アラン・ギルバート: リムスキー・コルサコフ〈シェヘラザード〉ほか @東京文化会館

2024-07-27 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

1カ月ぶりの生音。アラン・ギルバートと都響コンビ、プログラムには久しぶりの〈シェヘラザード〉とあって、楽しみにしていた演奏会。

前半2曲は全く初めて聴く曲。マグヌス・リンドベルイのEXPOは変化に富み、SFの映画音楽のような趣もあり楽しめた。2曲目のエドゥアルド・トゥビンのコントラバス協奏曲も耳になじみやすい音楽。コントラバスソロの池松さんの豊かな音に身を任せていたら、危うくあっちの世界に行きそうになった。カーテンコールでは、還暦を迎えられた池松氏が団員から赤のちゃんちゃんこをプレゼントされる一幕があり、アンコールはそれを着てハープの吉野直子さんとも入ってジャズ風のアメイジング・グレイス。味わい深く、ハープとの組み合わせも美しく、しみじみい聴いた。

後半の〈シェヘラザード〉は圧巻。いや~、都響ってこんなに上手なんだと感嘆しきり。コンマス矢部さんの深みがあって、愁いを帯びた美しいヴァイオリンはもちろん特筆ものだが、木管をはじめとした各パートのソロの響きもうっとり聞かせる。そして、オケが一体となっての合奏はうねりがあって、ドラマチックでスケール大きい。「隙が無い」とはこういう演奏を言うのではというほど、素晴らしいものだった。

アランと都響の相互の信頼感から、こうした演奏が引き出されているのだろう。ステージを見ていて、アランの指示に応えつつ、それに終始することなくメンバーが夫々の自分の色を出そうとする余裕のようなものも感じたのは気のせいだろうか。このコンビの底時からを見た気がする。

終演後はブラボーの掛け声も含めて大拍手。団員引き上げ後も続く拍手に、アランは矢部さんを伴って登場し応えてくれた。前週のベートヴェンの〈運命〉を聴きに行けなかったのは実に悔やまれるが、今後もこのコンビは必聴だ。

 

第1005回定期演奏会Aシリーズ
 日時:2024年7月24日(水) 19:00開演(18:00開場)

出 演
指揮/アラン・ギルバート
コントラバス/池松 宏(都響首席奏者)

曲 目
マグヌス・リンドベルイ:EXPO(2009) 
エドゥアルド・トゥビン:コントラバス協奏曲 ETW22(1948)     
リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェヘラザード》 op.35(ヴァイオリン独奏/矢部達哉)         

【ソリスト・アンコール】
アメイジング・グレイス(安田 芙充央 編曲)
(コントラバス/池松 宏、ハープ/吉野直子)

 

 

Subscription Concert No.1005 A Series
Date: Wed. 24. July 2024 19:00 (18:00)

Artists
Alan GILBERT, Conductor
Hiroshi IKEMATSU, Contrabass

Program
Magnus Lindberg: EXPO(2009)             
Eduard Tubin: Double Bass Concerto ETW22 (1948)          
Rimsky-Korsakov: Sheherazade, op.35     

【Soloist Encore】(7/24up)
Amazing Grace(arr by Fumio YASUDA)
(Hiroshi IKEMATSU, Contrabass、Naoko YOSHINO,Harp)

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クレイトン・クリステンセンほか著、櫻井 祐子 翻訳『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』(翔泳社、2012)

2024-07-24 07:17:59 | 

代表作『イノベーションのジレンマ』で著名な筆者は、職場のハーバードビジネススクール(HBS)の講義では、「幸せで充実した人生の送り方」について学生と議論するという。本書はその講義の内容を書籍化したもの。

彼自身が出席する卒業後5年ごとに開催されるHBSの同窓会において、卒業して10年も経つと、満たされない生活、家庭の崩壊、仕事上の葛藤、そして犯罪行為に苦しんでいた同級生が少なからずいるという。そんな状況から、本書では1)どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろうか、2)どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を、ゆるぎない幸せの拠り所にできるだろうか、3)どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろうか、について経営理論を個人の人生にも援用しつつ説く。

読む人により腹に落ちるところは様々と思うが、個人的に強く刺さったのは、以下の点。3月で終了したTVドラマ「不適切にもほどがある」の主人公役(阿部サダヲ)の名言「あなたのやってほしいことが僕ができること」にも通じるものがある。まあ、今更、こんなことを「その通り!」と納得しているようでは、自分の未熟さが露呈しているに過ぎないのだが。

「愛する人に幸せになってほしいと思うのは、自然な気持ちだ。難しいのは、自分がその中で担うべき役割を理解することだ。自分の1番大切な人たちが何を大切に思っているのかを理解するには、彼らとの関係を、片付けるべき用事の観点から捉えるのが1番だ。そうすれば、心からの共感を養うことができる。『伴侶が私に1番求めているのは、どんな用事を片付けることだろう?』と自問することで、適切な視点を持って、物事を考えられるようになる。関係をこの観点から捉えれば、ただ漠然と自分のなすべきことを憶測するより、ずっと明確な答えが得られるはずだ。
 ただし伴侶があなたに片付けてほしいと思っている用事を理解するだけではダメだ。その用事を実際に片付ける必要がある。時間と労力を費やし、自分の優先事項や望みを喜んで我慢し、相手を幸せにするために必要なことに集中するのだ。」(pp..106⁻107)

筆者の著作『ジョブ理論』を個人の人間関係に応用した教訓だろう。マーケティング理論と人間間の愛情を同列で扱うのも、短絡的すぎる気がしないまでもないが、この通りだと思う。

これ以外にも、私自身が参考になったいくつのアドバイスを抜粋しておく。

「友人や家族との関係への投資は、成果の兆しが上がる、見え始める、遥か以前から行わなくてはいけない・・・時間と労力の投資を、必要性に気づくまで後回しにしていたら、おそらくもう手遅れだろう。大切な人との関係に実りをもたらすには、それが必要になるずっと前から投資するしか方法は無いのだ。(家族や大切な人は注目を浴びるために声高に主張することはない。気が付かなくてはいけない)」(106ページ)

「人生において重要な道徳的判断を迫られるときは、警告標識は現れない。私たちは大きなリスクが伴うようには思えない、小さな決定を日々迫られる。だが、こうした決定が、やがて驚くほど大きな問題に発展することがあるのだ。」(202ページ)

「生の目的をはっきりすることが欠かせない。目的がなければ、自分にとって大切な物事をどうやって優先できるのだろう。・・・じっくり時間をかけて、人生の目的について考えれば、後で振り返った時、それが人生で発見した。1番大切なことだと必ず思うはずだ。・・・あなたが人生を評価する物差しは何だろうか。」(231ページ)

変なテクニック論やお説教とは異なる真正面からの真摯なアドバイスから、何らかの人生のヒントを得ることが出来ると思う。

 

(目次)

序講 01
第1講 羽があるからと言って

第1部 幸せなキャリアを歩む

第2講 わたしたちを動かすもの
第3講 計算と幸運のバランス
第4講 口で言っているだけでは戦略にならない

第2部 幸せな関係を築く

第5講 時を刻み続ける時計
第6講 そのミルクシェイクは何のために雇ったのか?
第7講 子どもたちをテセウスの船に乗せる
第8講 経験の学校
第9講 家庭内の見えざる手

第3部 罪人にならない

第10講 この一度だけ
終講
謝辞
訳者あとがき

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立川吉笑 真打トライアル 2024 『古典モード』 @博品館劇場

2024-07-22 07:30:18 | 落語

真打への内定は受けたものの、実際の昇進時期が決まっておらず「真打トライアル公演」が続く立川吉笑さんの独演会に足を運びました。会場は、会社の近くの博品館劇場です。新作らくごで知られる吉笑さんですが、今回はタイトル通り古典の3本立て。

ただ、この日は自虐的なまくらが最高でした。笑った、笑った。エピソードの真偽をいちいち詮索するのは野暮だし、具体的ネタのご披露はマナー違反として差し控えますが、いや~真打になるって大変なんですね。

古典の3本はもちろん聴き応えたっぷり。吉笑さんの落語は勢いと登場人物たちの活き活き度が魅力です。それぞれ作風が異なり、登場人物たちのキャラ設定も大いに違いますが、吉笑さんがそれぞれを演じ分ける表現がお見事。この方の落語は、リラックスしながらも、自然にぐーっと高座に意識が集中していくんですね。当然ながら、眠くなることは一切ありません。結局、終演は予定時刻を15分以上オーバーして、終演は21時20分頃。十二分に楽しませて頂きました。

2つ目の吉笑さんの落語を聞くのはこれが最後になりそうです。次は昇進記念公演に顔を出したいと思います。

 

(以下、写真は撮影Okの時間帯撮影のものです)

2024年7月18日 19:00~

立川吉笑 真打トライアル 2024『古典モード』

十徳
三人旅·おしくら
仲入り
妲己のお百

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空海『三教指帰』 (角川ソフィア文庫 358 ビギナーズ日本の思想、2007)

2024-07-20 08:12:59 | 

5月に空海展を訪れた際に、事前に読んでみた。若き空海による代表作の一つと言われている。儒教、道教、仏教の三教の中で、仏教がいかに優れているかを、仮名乞児(若き日の空海)が論じる。

私の未熟な読解力のため、特段の感銘を受けるところはなかったというのが、正直な感想である。訳は非常に読みやすいし、平明に書いてある。儒者、道教宗、仏者それぞれの主張も「理解」するも、なぜ仏教が他を上回っているのか、仏教の教えとは何なのか、は分からなかった。

若き空海の仏教にかける強い思い、文章の修辞など感嘆したところももちろんある。思考や世界観の広がりの違いがポイントのようだが、夫々異なった思想・教えの中で良いとこ取りで良いのでは。優劣の問題ではないのでは、と感じたりするのだが、そういう緩い姿勢では駄目なようだ。

古典中の古典であるため、歴史的に大きな影響を残してきた書物なのだが、私には合わなかった。

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7月渋谷らくごで初めて浪曲を楽しむ @ユーロスペース 

2024-07-17 07:18:24 | 落語

2ヵ月ぶりの渋谷らくご。今回は2つの収穫があった。

一つは、初めて浪曲をしっかり聴けたこと。過去に寄席で聴いたことはあったものの、落語の間のリラックスタイムみたいに捉えていて、(失礼ながら)正対して聴いたとは言えなかった。今回、会場のユーロスペースのこじんまりとして、音響良き空間、しかも前列4列目と言うこともあって、初めてガチに聴いた。

浪曲師玉川太福さん、中川みね子さん三味線による演目は天保水滸伝から「笹川の花会」。浪曲の世界では代表的な作品のようだが、私自身は予備知識は殆ど無し(登場人物の国定忠治だけ知っていた)。それでも、緊張感溢れるストーリー展開、唸らせる顛末、痺れる太福さんの低音など、想定外の感動だった。三味線と合わせて、これは簡易版ミュージカルなのね、と理解。今の時代、愛好者は減っているのだろうけど、過去から人々に好まれてきただけのことはあるのだなと納得した。

二つ目の収穫は、夏落語の効用。今回の落語は夏にかかわる噺が3つ。勢いある三遊亭兼太郎さん、確実に笑わせてくれる春風亭昇昇師匠、端正で正統派の隅田川馬石師匠と、いずれの方も私にはお初で、三者三様の芸を楽しんだ。エアコン効いたユーロスペース内と言う身体的涼しさに加えて、花火と言った夏の風物詩や夏の蔵に保管されているみかんや鯉のあらい、冷酒と言ったネタを想像しながら話を聞いていると、心理的にも涼しくなる。外は蒸し暑さで不快指数100%。暑いときには落語で避暑という新しい楽しみを見つけてしまった。

 

2024年4月14日 14:00ー16:00

三遊亭兼太郎 たがや
玉川太福、中川みね子 天保水滸伝から「笹川の花会」
春風亭昇昇  千両ミカン
隅田川馬石師匠  青菜

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桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演『フローズン・ビーチ』 @せんがわ劇場

2024-07-15 08:21:57 | ミュージカル、演劇

ご縁あって桐朋学園芸術短期大学の認定専攻科(2年間の短期大学を卒業した後のプログラム)の演劇専攻の56期学生さんによる自主上演実習の公演を観劇。

「フローズン・ビーチ」がどんな話しかも全く知らないままに席に着いたが、南国のビーチリゾートで起こるコメディタッチのサスペンスと言えるような物語。笑いもあるのだが、殺人(未遂)、人間関係の愛憎・嫉妬、心理的かけひきが含まれていて、難しいというか、とっつきにくい物語であった。2時間半の作品を1時間10分のカットバージョンでの上演ということもあってか、登場人物の心理的立場も少々分かりにくいところもあった。

一方で、4名の学生役者さんのエネルギー一杯の熱演には、大いに引き込まれた。山田さんの双子姉妹の演じ分けや、千津役の上田さんの3場夫々での変化ぶりも楽しめた。未知の作品だった故に、何に注目していけばいいのかはわからずじまいだったけど、小劇場のライブ感あふれる若手によるお芝居は見ていて元気貰える。この4名の皆さん、これからどういう演劇人生、役者人生を送っていくのだろうか。頑張ってほしい。

会場は出演者のお友達や同じ専攻の学生さんと思しき若い人が7割ほど。

 

2024年7月12日

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

『フローズン・ビーチ』 

作・ケラリーノ・サンドロヴィッチ/演出・ペーター・ゲスナー

キャスト:上田実祐那(千津)、今野まい(咲恵)、磯馴萌々子(市子)、山田みづは(萌、愛)

 

 

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石山 恒貴『定年前と定年後の働き方~サードエイジを生きる思考』 (光文社新書、2023)

2024-07-12 07:30:51 | 

 

個人・所属組織の両面において、ドンピシャテーマなので、迷わず手に取った。

アカデミックな研究やケーススタディ、筆者の考察・提言のバランスが取れていて、様々な指摘が腹落ちした。筆者自身も40歳代後半に大きなキャリアチェンジ(会社員→研究者)を経験していて、シニア読者に寄り添う真摯な姿勢が垣間見れて、好印象な一冊である。

いくつか、私が参考になった知見。

・40歳代後半を底に人の幸福感は上がっていくU字カーブを描く(エイジング・パラドックス)

・STT (Socioemotional selectivity theory:社会情動的選択性理論→シニアが自分にとって意義ある目的と親密な人の交流を重視するという理論)とSOC理論(selection optimization with compensation theory:選択最適化補償理論→選択によって目的を特定し、その目的を最適化するための工夫を行い、その際に自分ができないことについては補償していく)の2つが、エイジングパラドックスを説明している

・幸福度が上がるかどうかは、仕事の意味付けの見直し(ジョブ・クラフティング)ができるかどうかが大切。

・筆者のアドバイス:フリーランスを含めたモザイク型就労、越境学習(有給ワーク/家庭ワーク/ギフトワーク/学習ワークの中でアウエイの場にチャレンジ)

・組織は無意識のエイジズムに注意し、対象層へのメッセージを大切する(シニア向けキャリア研修は「たそがれ」研修ではない)

・Pedal(Proactive(やってみる), explore(意味づける), diversity(年下とうまくやる),associate(居場所をつくる), learn (学びを活かす))のフレームワークで自走力を高める

 

本書にあるように、シニアの働き方は一般論は通用せず、個人の価値観や信念次第だ。なので、本書も自分の意思決定や行動にどう活かすかが肝である。さあ、自分はどうするのか?

 

◎目次

はじめに
【第1章】シニアへの見方を変える ── エイジズムの罠
【第2章】幸福感のU字型カーブとエイジング・パラドックス
【第3章】エイジング・パラドックスの理論をヒントに働き方思考法を考える
【第4章】主体的な職務開発のための考え方── ジョブ・クラフティング
【第5章】組織側のシニアへの取り組み
【第6章】シニア労働者の働き方の選択肢
【第7章】シニアへの越境学習のススメ
【第8章】サードエイジを幸福に生きる
おわりに

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宮島未奈『成瀬は天下を取りに行く』(新潮社、2023)

2024-07-09 07:35:14 | 

とっても評判になっている本ということで 読んでみた。図書館で予約しようとしたら、なんと 700人の 待ち行列ができていたので諦めて購入。

なるほど、これは面白い。主人公の女子中学(高校)生 成瀬あかりの、(いささか発達障害的な面を持ち合わせている)型破りな発想と行動力が何とも個性的かつポジティブで微笑ましい。笑いとともに元気が貰える小説である。大津市膳所を舞台に、地元のネタが登場し描かれるのもリアリティが高く好印象である。

高い評判は「ここまで?」という意外感はあるが、手軽に読めて、元気になれる小説が読者に求められているということなのだろう。爽快感残った。

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横田栄司さん快演✕怪演の「オセロー」 (演出:鵜山仁)@紀伊國屋サザンシアター

2024-07-07 07:37:35 | ミュージカル、演劇

台本良し、役者良し、演出良しの3拍子揃ったレベル高い「オセロー」であった。

中でも、題名役の横田栄司の快演・怪演が強烈な印象を残した。横田さん、数年前のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の和田義盛役で存在感を放っていたが、暫く体調崩してお休みをされていたらしい。

この舞台では、とても休養明けとは思えない、ほとばしるエネルギーにただただ圧倒される(義盛役の時は、小柄な方なのかと思っていたが、全く誤解であった)。救国の英雄として誰もが羨む花嫁と結婚した絶頂期から嫉妬に狂い、破滅していくまでのムーアの武人を演じた。強さ、弱さ、可愛さオセローの人間的特質を演じ分け、オセローが乗り移ったにも見える迫力は見ていて怖くなるほど。

対する、スキャンダルの仕掛け人イヤーゴーを演じた浅野雅博はオセローの「動」に対して、「静」的なキャラで知能犯を安定感たっぷりに演じた(この方、新国立の「スカイライト」で蒼井優さんとの会話劇が今でも印象深い)。ちょっと、スマートすぎて、「毒」要素が抑えれれていた気がしたが、私の気のせいか、それともそういう演じ方なのかな。

初めて拝見するデスデモーナを演じたsaraは可憐な役を素であるように自然に演じていて、とっても好感度高い(初めてなので、何が「素」なのかわからないが)。

主要級3役以外の脇役陣も、エミリアの増岡はじめ、夫々安定感たっぷりで、隙が無い。私は初めてなので何とも言えないが、これが「文学座」の格とでも言うのだろうか。

演出は鵜山仁。昨年の新国立劇場での「尺には尺を」「終わりよければすべてよし」もそうだったが、ここ数年観るシェイクスピア劇の演出はかなりが鵜山さんによるもの。

舞台上の中央に4畳半規模の立体ケージが置かれ、夫婦の寝室など様々な場面で活用される。群青色をベースにした照明も美しく、背景のカーテンに漁火のようなライトが投影され、ベネチアであったり、キプロスの幻想的な雰囲気をうまく作っていた。役者さんは観客エリアも縦横に動き、私の通路横に着席されていたお客さんは、横田さんに凄まれてマジでびっくりしてた。

第5幕は小田島の翻訳を忠実に、場面、セルフカット無しに演じられた。クライマックスではあるのだが、自分の集中力が切れかかってたのか、少々冗長な印象はあった。死んだデスデモーナやエミリアが(生き返るわけではないが)動くのも私には良く理解できなかった。

それにしても、オセローはシェイクスピア悲劇の中でも、ちょっとかなり感情移入が難しい。オテロ―は思い込み激しいお馬鹿さんすぎるし、デスデモーナはあまりにも可哀そうすぎる。それでも、こうやって見に来てしまうのは、この作品の引力なのだろう。

余談だが、この日の観衆は大学生ぐらいの若い人多く、会場の雰囲気もフレッシュだった。関係するかどうかは分からないが、終演後の拍手はとっても大きく、スタンディングオベーションの方も多数いた。

(2024年7月5日)

 

文学座公演  

『 オセロー 』

作:ウィリアム・シェイクスピア

訳:小田島雄志

演出:鵜山 仁

   

日程:2024年6月29日(土)~7月7日(日)

会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

   

Cast

石川 武(ヴェニスの公爵)

高橋ひろし(ブラバンショー/グレーシアーノー)    

若松泰弘(モンターノー)

浅野雅博(イアーゴー)

横田栄司(オセロー)

石橋徹郎(ロダリーゴー)

上川路啓志(キャシオー)

柳橋朋典(ロドヴィーコー)

千田美智子(ビアンカ)

増岡裕子(エミリア)

萩原亮介(役人 ほか)

sara(デスデモーナ)

河野顕斗(紳士 ほか)

 

□スタッフ

美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:丸田裕也 衣裳:前田文子 ヘアメイク:鎌田直樹

アクション:渥美 博 劇中歌監修:高崎真介 舞台監督:加瀬幸恵 演出補:大内一生 制作:梶原 優、鈴木美幸 制作助手:畑田麻衣子

宣伝美術:三木俊一(文京図案室) 宣伝写真:佐藤克秋

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札幌もろもろ スナップ

2024-07-04 07:40:46 | 旅行 日本

今回の札幌出張のスナップ。写真だけだと、何しに行ってるのかと怒られそうですが、もちろん、しっかり仕事はしてきました。

【飛行機】

今回コスト抑制のためLCC利用。羽田ー新千歳が11000円と青や赤の飛行機の半値以下。サービスも運航も全く不満なしでした。この値段で行けるんだったら、プライベートでも北海道ってもっと手近なのかも。

朝7時の首都圏上空。

8時過ぎには北の大地上空ㇸ。

【車窓から】

空港から札幌市内までの列車からの風景も、東京のそれと大きく異なり、広い大地におおらかな空気を感じさせ、北海道道を実感します。

 

【お食事】

ご紹介済のラーメン以外のスナップ。

夜のビジネス宴会の刺身盛り合わせ。とにかく見た目、超豪華なのですが、仕事飲みでは話に集中するので、とても味わって食べる余裕なく、味については全く記憶に残らず。

お昼に、営業所のスタッフが出張者に気を遣ってジンギスカンランチに連れて行ってくれました。とっても美味しいんですが、ビール飲めないのは拷問。

【その他】

これまたスタッフが気を遣っておつまみにご賞味くださいと、頂いた北海道おつまみセット(左上のトウキビアイスだけホテル横のコンビニで自己購入)

上のおつまみは帰りの便でSAPPORO CLASSIC と一緒にいただきました。ドンピシャです。

やっぱり北海道、プライベートでゆっくり廻りたい。

 

2024年6月4−5日

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よさこいソーラン祭・前夜祭チラ見 @札幌

2024-07-02 18:00:50 | 旅行 日本

訪問先のオフィスの直ぐ近くの大通り公園で、よさこいソーラン祭の前夜祭をやっていると聞き及び、札幌駅に戻りがてら立ち寄ってみた。

子供が小学生の頃、地元のよさこいチームに入っていて、地元のイベントはもちろん、原宿やお台場のよさこい祭りにも時折参加していたので、とっても懐かしいイベント。しかも札幌のよさこいと言えば、よさこいブームの走りであったはず。できれば本祭を見物したかったが、前夜祭をチラ見できるだけでもラッキー。

数時間前まで冷たい雨が降っていたのだが、開演時には雨は止んだ。学生さん主催で始まったイベントに相応しく、前夜祭の踊りは学生さんたち総出の演舞だ。ステージいっぱいに広がる躍り手の威容と若さがほとばしるエネルギーに見ている私たちも圧倒される。能登半島沖地震被災者へのエールも交え、雨上がりの肌寒い空気を一気に熱く化学反応が起こっているような感覚だった。

30分ほどの短い鑑賞体験だったが、出張おまけとしては最高。

(まだ時間早いので人はまばらだが、ご当地グルメ屋台コーナーあり)

2024年6月5日

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「札幌ラーメン」ではない美味しい札幌駅横のラーメン屋さん:らぁ麺 月輪

2024-07-01 17:45:48 | 旅行 日本

先月、年度初めのパートナー会社との気合合わせや自社営業所のメンバーとの業務課題議論で1泊2日の札幌出張。札幌駅近のビジネスホテルに泊まったのですが、ホテルのロビーに置いてあった自家製の周辺地図に紹介されてたラーメン屋さんに飛び込み。

なんか外見はどう見てもガード下の飲み屋さん。中に入っても、一升瓶が並んでたり、壁に貼ってあるお品書きもおつまみばかりで、「あれ、店間違えたかな?」。まだ時間も18時前後で客は誰もおらず、カウンター内で仕込みをしている女将さんに、「この店、ラーメンやってますよね?」とおそるおそる確認。「やってますよ、ハイ」と言われて、手渡されたメニューには5種類ほどのラーメンがあったので、鶏玉醤油ラーメンなるものを注文。

こんな時間帯に、ラーメン単品注文は迷惑だったかな?と多少罪悪感を感じつつ、店内を見回す余裕もできてきた。席はカウンダ―だけの10席程度のこじんまりしたお店。山小屋風に木目調の内装なので、とっても気分が落ち着く。こんな空間があると知っていれば、ラーメンも良いが、むしろウイスキーや日本酒をちびちびやりたくなる気分。

ラーメンは思いのほか早く5分ぐらいで出てきた。いわゆる東京人が勝手に想像する札幌ラーメン(豚骨と野菜の出汁スープ、やや太めのちぢれ麵)とはかなり様子が違っていて、東京にありそうな鶏ガラをベースにしたちぢれ細麺。透き通るようなスープ。それが、実に美味かつ私好み。とっても丁寧に作られているのが食べていてよく分かる。

スープ含めて完食して、お箸を置いて、心の底から「おいしゅうございました。ごちそうさまでした」。

らぁ麺 月輪 - さっぽろ(札幌市営)/ラーメン | 食べログ (tabelog.com)

2024年6月5日

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