今回のお目当ては、「中国の不思議な役人」と「ボレロ」。いずれも、演奏会では何度か聴いているが、舞台は観たことなく、舞台(舞踏)音楽であるこの2作品を音楽と踊りで一緒に観てみたかった。
ただ、これは確認していなかった自分が全くもって悪いのだが、会場に着いて、この2作品はテープ音楽と言うことを知り茫然。ショックをリカバーする間もなく、「役人」が始まってしまった。バレエそのものは、作品が持つ怪奇さが上手く表現されたものだと思ったが、あのバルトークの複雑な音楽を音楽ホールでテープ(録音)で聴く違和感は個人的に払拭しがたく、残念ながら踊りに没入できず仕舞い。
逆に、次の演目「イン・ザ・ダーク」は、ショパンのピアノ生演奏と踊りがしっかり融和しており、心落ち着くパフォーマンス。三組の男女ペアが順番に踊り、最後には三組揃って踊ったが、特に一組目の沖香菜子さんの踊りが何とも優雅で美しく、幸せな気分に浸らせてくれた。期待値以上の感動は嬉しい誤算。
最後の「ボレロ」は、テープショックからも立ち直り、集中。オレリー・デュポンさんがセンターに設けられた円柱型舞台の上で、多くの男性ダンサーに囲まれて踊る様子は、古代の宗教的儀式を思い起こさせる神秘感が漂う。邪馬台国の卑弥呼ってこんな感じではなかったのか。音楽と踊りが絶妙に組み合されて、エネルギーがホール一杯に充満した。
生音がピアノに限られていたのは残念だったけど、三作品三様の踊りが楽しめ、出鼻こそ挫かれたが最後は大満足の公演だった。
東京バレエ団<ウィンター・ガラ>
「中国の不思議な役人」 振付:モーリス・ベジャール 音楽:ベラ・バルトーク
首領:森川茉央、娘:入戸野伊織、中国の役人:木村和夫、ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス、若い男:二瓶加奈子
「イン・ザ・ナイト」(東京バレエ団初演)
振付:ジェローム・ロビンズ 音楽:フレデリック・ショパン
沖香菜子-秋元康臣
川島麻実子-ブラウリオ・アルバレス
上野水香-柄本弾
「ボレロ」 振付:モーリス・ベジャール 音楽:モーリス・ラヴェル
オレリー・デュポン