その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 4日目午後 @知床~網走

2016-08-28 21:00:00 | 旅行 日本
 お昼過ぎに知床を出て、最終宿泊地の網走へ向かいます。知床には未練が残りましたが、また次回の訪問を自分に約束し、いよいよこの旅行もファイナルステージへ。

【天に続く道】
 ウトロから国道334号線を斜里方面に向かって走り、峰浜で左折してなだらかな坂道を上ります。途中、車を止めて振り返ると、オホーツク海を見渡せる絶景が広がります。




《中央やや左のライダーさん、用足し中のようですが、これは気持ちよいにちがいない》

 しばらく行くと、突き当たりますので、そこを右折すると、「天に続く道」が忽然と現れます。全長18キロとも、27キロとも、情報ソースによって距離がちがうのですが、とにかく果てしなくまっすぐ。





 近くには展望台もあって、景色を独り占めできます。





 斜里町のスーパーで買いこんだお弁当で遅めの昼食を済ませ、国道244号線を網走へ。途中から、右手にオホーツク海をみながら、北海道ならではのドライブです。

【濤沸湖】
 海の逆側に、ラムサール条約登録湿地の濤沸湖があります。




《雲が無ければ、奥に雄大な斜里岳も一緒に映るはずなのですが・・・》


《中央の黒い車が今回お供してくれたTOYOTAヴィッツ》


【小清水原生花園】
 濤沸湖と隣接するように小清水原生花園があります。車を止めて、周囲を散策。


《釧網線の原生花園駅。夏季だけ列車が止まるそうです。》


《遊歩道を散策》




《奥には、午前中までいた知床の山々を望みます》


【釧網線 北浜駅】
 網走まで目と鼻の先まで来たところで、日本で最も海に近い駅と言われている釧網線北浜駅に立ち寄りました。もちろん無人駅ですが、観光客が一杯で賑わってました。私自身、観光客なので口幅ったいのですが、大勢の観光客はとっても、駅や周囲の雰囲気と全くミスマッチ。


《冬にこの駅で寂しく電車を待っていたい気分》


《駅舎内には切符やら名刺やら観光客が残した足跡が一杯》


《こちらは宗谷岬の方向》

 網走には17:00頃、到着。網走は釧路よりもずっと小さな町で、釧路と同じくらいの規模と勝手に思い込んでいた私にはかなりサプライズでしたが、「繁華街」に繰り出し、地元の居酒屋で最後の北海道ビールや魚を頂きました。


 2016年8月18日
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2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 4日目午前 @知床

2016-08-27 08:00:00 | 旅行 日本
 4日目にしてやっと青空!嬉しさはひとしおです。ただ、朝の天気予報を見ていたら、晴れの天気は午前中だけで、午後はまた雨予想。


《昨日の台風で大荒れだったのが嘘のように静かなオホーツク海》

【知床峠】
 8:30から知床五湖のガイドツアーを申し込んでいたので、早く朝食を済ませて、知床峠まで朝ドライブ。今旅行初めての青い空を見ながらの知床横断道路を運転。知床の海と山と緑を眺めながら、これまでに溜まりに溜まった鬱憤を一気に晴らしました。


《どんどん峠の尾根道を上っていきます。車を止めてワンショット》


《標高738メートルの知床峠に到着。ここから先は羅臼町》


《羅臼町の太平洋側を望みます。雲の下には国後島があるはず》


《日本百名山にも選ばれている羅臼岳》


《ウトロに向かって帰路。車のCMに出てきそうな景色》



【知床ガイドツアー】
 8:30からは現地のネイチャーガイドによる半日の知床五湖ツアーだったのですが、8時過ぎに電話がかかってきて、知床五湖の道が昨夜の台風の影響でいまだ閉鎖中とのこと。知床五湖を廻らない自然観察ツアーに変更となってしまいました。中止になるよりはいいか。


《全員長靴履いて、双眼鏡を借りて出発》

 10名の参加者が、ガイドの案内に従って知床の原生林の森を歩きます。熊の爪痕、鹿の糞、蝦夷蝉の幼虫の抜け殻、キノコ、倒れた蝦夷松などなど、森の中のいろんなサインを解説し導いてくれるガイドさんの話はとっても勉強になります。森を抜けると、知床の崖にオホーツクの海が。知床のてっぺんの知床岬までが遠く見渡せます。知床に居る実感が湧いてきます。ヒグマにいつ出くわしてもおかしくない知床で、近くで遭遇するのはやだけど、遠くで生ヒグマを見れないかと、期待半分怖さ半分でしたが、残念ながらヒグマとの遭遇はありませんでした。


《エゾシカの親子を発見!(知床では珍しくないようですが・・・)》


《原生林の森を抜け、海に面した原っぱに》




《写真ではわかりにくいですが、通称「男の涙」という温泉滝が崖沿いに流れています》


《視線の先には、知床半島の先端、知床岬(船でないといけないところです)》




《再び森に。ヒグマの爪痕》


《ヒグマが掘ったであろう穴》


《昨夜の台風で折れたと思われる木。木の匂いがぷんぷん》


 正午過ぎまでの3時間半の自然ツアー。知床に来た実感を味わえました。知床五湖訪問は今回はお預けになりましたが、次回の楽しみにとっておきます。

 8月18日 午前 @知床
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2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 3日目 @清里町~知床

2016-08-25 00:00:30 | 旅行 日本
3日目も朝から雨・・・。

旅行者には、北海道斜里郡清里町と言っても知床・網走と屈斜路湖・釧路を結ぶ通過点ぐらいの認識で、あまり知られていないのではないかと思います。それが実は、斜里岳の麓の町として、落ち着いて、広々とした北海道らしい滞在ができるという話を職場の同僚から耳にし、今回宿泊の地に選びました。こぼれそうな星空を眺めたり、山麓の爽やかな空気の中で、ジョギングやサイクリングしたり・・・、そんな滞在をイメージしてたんです。が、残念ながら、それらは皆、次回にお預けとなりました・・・(涙)。

宿泊施設も数軒しかない町ですが、今回泊まった「ホテル清さと」は、施設、サービス、食事、温泉と四拍子揃った素晴らしいオーベルジュでお勧めです。お値段もそれなりですが、地元の食材を活用したフランス料理のコースメニューは格別。収容客数も全13室限られているので、静かでゆったりした時間を味わえます。残念な天気ではありましたが、その分、チェックアウトぎりぎりまでホテルで贅沢な滞在を楽しみました。是非、また訪れたいところです。

チェックアウト後は、清里町にあるじゃがいも焼酎の蒸留所へ。じゃがいも焼酎なんて初耳ですが、いかにも北海道らしい。生憎、仕込みの時期は外していたので、設備とビデオによる蒸留模様の見学になりましたが、隣接して試飲ができる施設があり、匂いを嗅いでお土産を買っておきました。


《清里町じゃがいも焼酎蒸留所》


《蒸留所前の焼酎用じゃがいも畑。秋の収穫とのことです》

【知床】
11時頃、清里を出発して、いよいよ世界遺産、知床へ向かいます。清里から知床ウトロまでは50キロ程度。天気予報では台風7号が北上していて、夕方には北海道に上陸との予報でしたので、ぐずぐずしていると道路が閉鎖されて立往生する恐れもあり、焼酎工場見学後はまっすぐ知床へ向かいました。

嵐の前の静けさとも言うのか、正午近くには一旦、雨もやみ曇り空に。オホーツク海が見え、海沿いを走るようになると、やっと念願の知床に来たということで気分が高揚します。知床の入り口では、オシンコンの滝を見学。迫力満点です。


《凄い水量》


《滝の迫力をカメラに収めるのは至難の業》

正午過ぎには、知床のベースキャンプの町ウトロに到着。連日の雨と近づく台風のおかげで、知床五湖に至る道は既に通行止。当然、近辺を巡るガイドツアーも海の観光船もお休み。行き場を無くした観光客が道の駅や隣接の「世界遺産センター」を大勢がぶらついてました。まあ、私もその一人ですが。こういう日はじたばたしてもしょうがないので、昼食を取った後に、2時には宿にチェックイン。「よりによって夏の北海道で、3日で2つ目の台風かよ」とあきらめ感一杯で、読書と燦燦と太陽が輝く甲子園球場の高校野球やオリンピック放送のTV観戦で過ごしました。


《ウトロ港》


《お昼を頂いた漁協婦人部食堂。ローカル色たっぷり》

台風は予報通り6時過ぎに襟裳岬近辺に上陸。知床方面にも大雨洪水波浪警報が出て、「土砂崩れにご注意ください」とのニュースが流れ、7時以降は雨と風が本格化。海と崖の間に建った宿で、かなり緊張感ある夜を過ごしました。ふう~。


《宿のロビーから見たオホーツク海。この後、大荒れ》

2016年8月17日
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2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 2日目 @釧路~清里町

2016-08-21 14:01:37 | 旅行 日本
 ※私が訪問した時期以上に、北海道の降雨とその被害が大きくなっているようです。これ以上、被害が拡大しないことを祈るばかりです。

 2日目も朝から雨。台風6号は根室の東沖に去って温帯低気圧になったらしいですが、雨雲は置いてきぼりとなって、天気予報は1日雨。天気が良ければ、朝から摩周湖、屈斜路湖と言った道東観光の王道コースを行く予定でしたが、まあ行っても雨と靄で何も見えないだろうし、大雨の中、山道ドライブも気が進まないので、朝は釧路でゆっくりすることにしました。

【和商市場】
 雨の中、ホテル近くの釧路名所、和商市場へ。お店お店で好きな海鮮の具をばら買いしてどんぶりご飯の上に載せて食べる勝手丼が名物です。私は、前夜に夜食で食べたラーメンがもたれて、見学に専念。1皿・一枚100~400円で、どんぶり一杯に載せるとそれなりの金額になってしまいそうですが、自分で創っていくのが楽しそうです。


《みなさん何を載せるか思案中》

 市場内は、勝手丼の食堂のほか、鮮魚や乾物、果物や、お土産屋など60店舗ほどが入っています。ブラ歩きにはもってこいの場所。

 10時近くにホテルを出て、郊外の焼き物屋さん「鮭番屋」でブランチ。昨夜、サンマがおいしかったので、ここでもサンマ。ラーメンも消化し終わった様なので、いくら丼を追加。おいしかった。


《目の前の炭火で焼くので暑い。おじさんが順番に見回って、焼き具合を調整してくれます》

 腹ごしらえも済んだので、釧路を出発。2日目の最終目的地は斜里郡清里町。ルートはいくつか取れますが、牧場コースとして道も比較的真っ直ぐな国道272号線(通称、ミルクロード)を選択し、中標津方面に向かいました。ただ、ひどい雨で北海道らしさも味わえず、ひたすら車を走らせることに。中標津では、北海道ツーリングライダーの聖地とも言われる開陽台にも立ち寄りましたが、想定通りの風景。晴れた日には野付半島や国後島まで見渡せ、地平線が丸く見えるという標高271mの丘も、天候には勝てません。涙・・・。


《こんな感じの雨》


《開陽台の展望台からの眺め》


《晴れたらこんな感じらしい・・・》

 昼下がりから少し雲が切れ始めました。道道150号線で摩周湖の裏を通って、清里峠を抜けます。峠越えといっても、道は真っ直ぐなのがうれしい。清里峠を少し下ったところで、摩周湖の伏流水でできているという神の子池に立ち寄りました。

【神の子池】
 澄んだ水とコバルト色に輝く池の底は、見ていると引き込まれそう。水深5mあるとのことですが、底まで見渡せ、とてもそんなに深いようには見えません。魚の泳ぐ姿もはっきりとわかります。池に浸る倒木も計って置いたのではと思わせるほど、神秘的に倒れてます。

 宮崎駿のアニメ『もののけ姫』にでも出てきそうな、千年、二千年も前からあったような風景に魅せられます。朝からの雨ドライブでイラついた気持ちも、これですっかり落ち着きました。


《私の写真ではうまく捉えきれないのが残念》


《魚も気持ちよさそう》

 清里町に入り、平野部に。車を走らせていると、草原の地に鹿の親子を発見。車を止めたのですが、ドアを閉める音で気づかれました。こちらの姿をちら見しては、少しづつ遠ざかっていき、最後は走って逃げて行かれました。少しの時間でしたが、親子の鹿が走る様は何とも美しいです。


《逃げる鹿の親子》

 そして、この日のハイライトとなったのは偶然に立ち寄った斜里川のさくらの滝。ガイドブック添付の地図に、8月頃までは産卵のために川に戻ったサクラマス(海を渡ったヤマメが大きく成長してサクラマスになるそうです)の滝上りが見られるという記載があり、立ち寄ってみました。

【さくらの滝】
 ここ数日の雨の影響か、すごい数量の水が、ごうごうと流れていきます。すると直ぐに、サクラマスが川に上って跳躍しているのが分かります。NHKのテレビなどでサケの川上りは見たことあるものの、実際に目にするのは初めて。魚たちの自然に立ち向かう姿に純粋に感動します。



 が、しばらく見ていると、流れの勢いのせいか、上りきるサクラマスは一匹たりともいないことに気づきます。次から次へと跳躍するのですが、どれも残酷に強い水流に戻されるばかり。高さ2メートルほどの滝ですが、多くの魚は半分を少し行ったぐらいで戻されます。「今日は水量が大いのだろうからは、無理せず、滝つぼの脇で休んでいた方が良いのでは?体力の無駄使いはやめ、明日以降チャレンジした方が良いよ」と心の中で叫ぶのですが、そんな呟きは通じるわけがありません。



 だんだん、とても見ていられなくなってきました。自然の摂理とは言え、私の目には、力絶えるまで跳び続けるサクラマスはあまりにも残酷すぎる自然でした。久しぶりに、無条件に胸押しつぶされる経験でした。



 清里町の宿には15:30頃、到着。ホテルの人に伺うと、通常でも100匹に1匹ほどしか、滝登りには成功しないとのこと。上れなかった魚は力尽きて死んでしまうそうです。厳しいんだなあ。

 2016年8月16日
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2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 1日目 @釧路

2016-08-20 12:51:13 | 旅行 日本
 海外は何かと物騒なので、今年の夏は国内で楽しむことにしました。行先は迷った挙句、私にとっては未踏の地、道東地方に。前週の天気予報はお日さまマークが連なっていた北海道でしたが、この週の予報は近づいている台風の影響で傘マークと曇りばかり。荷物チェックインのご案内では「釧路便は、天候の状況で、千歳に着陸か、羽田に引き返す可能性があることを、ご承知の上でご搭乗ください」とのこと。


《機内から眺め。北海道が見えてきました。まだ青空の中ですが》


《釧路に近づくに従って曇り空に》

【釧路湿原 釧路市湿原展望台】
 釧路に着いたら、いつ雨が降り出してもおかしくない曇り空。「雨の降りださないうちに・・・」、とはやる気持ちが先立ちます。車を借りて、さっそく釧路湿原へ。まず、訪れたのは湿原の西側に位置する釧路市湿原展望台。晴れた日なら屋上の展望台から湿原が一望できるらしい。ただ、ボランティアガイドのおじさんが、「今日は霧で上ってもよく見えないよ。遊歩道を歩いてサテライト展望台まで行ったら。」と勧めてくれたので、1キロほど離れたサテライト展望台へ。

 展望台へは整備された木道に沿って、林の中を行きますが、蒸し暑さのためか、蚊が凄い。ちょっと立ち止まると足元に蚊の大群の襲来を受けるので、競歩状態で目的地へ。10分も歩くと、ぱっと視界が開けました。素晴らしい眺望です。ここまで湿原が広がる風景を目にするのは初めて。


《林の中を通って展望台へ向かいます》


《サテライト展望台からの眺め》

 天気が良ければ湿原内のウォ―キングとかを考えていたのですが、雨が降り出したため断念。車で湿原の外周を廻ることに。どんよりした天気とはいえ、久しぶりの北海道の広々とした風景の中でのドライブは気持ちがいいです。途中、雨が強くなったり、舗装されてない道もあり、けっこうワイルド。


《こんな感じの道も数キロほど》

【釧路湿原 細岡展望台】
 最初に訪れた展望台とは湿原挟んで反対の東側に位置する細岡展望台へ。こちらは釧路川が蛇行しながら流れるのが見え、景色もより変化があります。リッチモンド・ヒルからテムズ川を眺めるのと雰囲気は似てますが、広大さで圧倒的に釧路湿原の勝ち!(あたりまえか)


《こちらも絶景。青空だったら、もっと緑も映えるのでしょうね》

 この釧路川をカヌーで下ったりするのも、湿原の楽しみ方の一つであるようですが、時折ワイパーを最速モードにしなくてはならないような雨状況では、そんなアトラクションも困難。早めにホテルにチェックインしました。

【釧路市街ぶらぶら】
 ホテルで一休みした後は、夕食目指して、釧路市内を徘徊。8月も中旬を過ぎると観光客も減るのか、残念ながら街中は決して活気のあるという印象は受けませんでした。衰退する日本の地方を目の当たりにしている印象です。(もっと、私が訪れているのはいわゆる市の中心部なので、衰退化ではなくドーナツ化現象かもしれません)

 観光ポイントであり、ランドマークでもある釧路フィッシャーマンズワーフMOOにも残念感が漂います。1989年(平成元年)7月に民活法適用の第一号として開業した複合商業施設ですが、お土産物屋やレストラン等が入った入居テナントも虫食い状態で、空きスペースに市の事務所が入るという状況。誰が悪いのかというのは差し置いても、ただお金を使って箱モノを建てても地方創生には全くならないという典型事例です。


《夕食時前という時間が悪かったのか、随分寂しい釧路フィッシャーマンズワーフMOO内》


《観光名所の幣舞橋(ぬさまいばし)と釧路川沿いの遊歩道。風情のあるたたずまいですが、人通りの少ない中、地元の演歌がスピーカーから流れるのは、寂しさを一層引き立てます》

 そうした寂しい釧路市街ですが、夕食に入った有名な炉端焼店「炉ばた」の食事は絶品でした。薄暗い店舗内には、炉端番のお婆さんを取り囲むように、お客が陣取ります。シーズン初めのサンマの刺身・焼き物、東京では食べられない大きさのホッケのおいしさはもちろんのこと、シシャモや野菜・シイタケ焼も絶品。値段が一切表示されておらず、すべて時価ということで、少々懐は心配になりますが、新橋価格の3割増しぐらいの感覚で、観光飯としては許容範囲。味・雰囲気の両方が楽しめます。(旅行ガイドでは目安予算一人2500円とありましたが、これは無理があります。満足いくぐらい食べたら、倍ぐらいします)


《あのお婆さんも仕掛けの一つのような気が・・・》


《これは旨い!》

 でも、ここに再生のヒントがあるのでしょうね。お金を使ってハードを建てても、その中身が伴わなければ、いつしか客は来なくなるし、メンテ代だけがかかる。一方で、ソフトで希少性、雰囲気が出せれば、多少高くとも、お金払ってまた来たくなる。ソフトにどれだけの知恵が出せるかが、勝負なのでしょう。

 湿原、北海道でも有数の水揚げ漁港、ラーメン等、魅力的な資源はあるはずです。東京人の私が言うのははなはだ不遜なのでしょうが、そうした資源をどうプレゼンテーションしていくのが良いのか、雨のおかげでエネルギーを持て余した私はいろいろ考えてしまいました。

 2016年8月15日
 
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素晴らしい企画・・・「ポンピドゥー・センター傑作展 ―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで」 @東京都美術館

2016-08-13 21:06:47 | 美術展(2012.8~)


 私にとっての夏休みの初日。上野の東京都美術館で開催中のポンピドゥー・センター傑作展に出かけた。1906年から1977年までの現代美術を一年ごとに一作家一作品で展示するというユニークな切り口だ。

 現代美術については正直わからないことだらけだが、この切り口のおかげで、今年の展覧会ではマイ・トップ3に入るほど楽しめた。

 一年一作家一作品という方針で、ピカソ、シャガール、マティス、カンディンスキーといった客寄せにはもってこいの芸術家も、(少なくとも私は聞いたことがなかった)ジョゼフ・クレパン、セラフィーヌ・ルイと言ったメジャーとは言えない芸術家も、平等に一点づつの作品展示である。このおかげで、全体の半分以上を占めた未知の芸術家たちの作品に多数触れることができた。しかも、1年1作品なので、時代を下るに従って、時代の雰囲気の変化も感じ取れる。凝った見せ方である。

 もう一つ面白かったのは、作品とセットでその芸術家の言葉が紹介されていること。芸術家の言葉なので、哲学的すぎて一般人には正直、意味を測りかねる言葉もあったけど、言葉と作品をセットで味合うというのはなかなか深みのある行為である。一点、一点をじっくりと噛みしめたくなる。
 
 建築家の田根剛さんによる会場の導線もユニーク。地下一階は斜めに、1階は段々に、2階は円形に廻るようになっていて、何度も通っている東京都美術館だが、まるで別の会場に来たような気になった。

 作品としては、ピカソ、シャガール、マティスなどの巨匠系はもちろん目を引くが、個人的にはクリス・マルケルの28分ほどの白黒映像(大部分は静止画のつなぎ合わせ)「ラ・ジュテ」(1962年)のインパクトが大きかった。近未来のパリで、実験台として時間を行き来することになったとある男の物語だが、テリー・ギリアムの映画「12モンキーズ」にインスピレーションを与えた作品だという。テーマ、映像のつくりなど、大いに楽しんだ。

 正直、造形系の作品は理解不能なものも多い。自転車の車輪を椅子につけたオブジェ、おしゃれだけど今ならどこにでもありそうな椅子、ただのロープ、何かか描いてあるのかもよくわからないただの白いキャンヴァスなどなど・・・。そういった作品を差し置いても、見どころ十分である。

 お盆休み中ということもあってか、会場は余裕で自由に動き回れる空き具合。涼むつもりで良いので、ぜひ、足を運ばれることをお勧めしたい。何かしらの新しい発見があると思う。




《次はどの展覧会に行こうかな?》


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5年前に読んでいれば・・・ 宮下規久朗 『カラヴァッジョ巡礼』 (とんぼの本)

2016-08-11 12:15:19 | 


 今年6月に「カラヴァッジョ展」に出かけ、血気と狂気が迫る絵画の数々に驚愕した。ふんだんに写真や図を交え分かりやすく解説してくれる「トンボの本」シリーズに、カラヴァッジョをテーマにした本書を見つけたので、さっそく図書館で借りてみた。

 カラヴァッジョが荒くれ者で、ローマで殺人を犯し、逃げるようにイタリアを逃げ回っていたことは「カラヴァッジョ展」で知った。本書は、その画家が訪れた地を追いかけ、彼の人生とその土地に残された彼の絵を紹介する。その人生が実に破天荒であったこと、彼の狂気がそのまま絵の中に内包されていることが、伝わってくる。

 ここで紹介されたミラノ、ローマ、ナポリなどの町々は、ロンドン在住中に週末等を使って訪れた町。カラヴァッジョの祭壇画を持つ教会や絵画を所蔵する美術館の横をあっさり通り過ぎていたかをこの本で知ったのは、残念極まりなかった。本書は2010年発刊。発刊当時に、この本を読んでいれば、本書を片手に、より楽しい旅行ができたのに・・・。

 死ぬまでにやることリストに一項目が加わった。

【目次】
聖と俗のはざまで
01 生誕の地ロンバルディア
02 豊穣のローマ
03 南への逃亡
04 シチリア放浪から、死出の旅へ
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西洋文化の源に思いを馳せる 古代ギリシャ展 @国立博物館

2016-08-08 20:00:00 | 美術展(2012.8~)


 古代ギリシャ人と今のギリシャ人って、同じ人種なのだろうか?方や、西洋文明の発祥ともいえるギリシャ文明を築いた古代のギリシャ人と、経済的に破たんしながら開き直っているとしか見えない現代ギリシャ人。最近は、中東・アフリカからの移民問題で陰に隠れているが、昨今のEUトラブルの震源地でもあった。これほどの素晴らしい文明を持っていたギリシャ人と今のギリシャ人が、どこでどう連続していているのか?私にはさっぱりわからない。

 本展は、エーゲ海文明からギリシャ本土のアルカイック時代、クラシック時代、アレクサンドロス大王のマケドニア、ヘレニズム時代、そしてローマ時代まで、まさにギリシャの最盛期に光をあてる。展示品も、彫像、陶器、装身具などなど、まばゆいばかりの歴史的遺産だ。時代区分による表現の違いなどは私には分からないが、どの展示品も個性的で魅力にあふれている。私は彫像が好きなので、アルテミス像やクーロス像、競技者像など見入ってしまった。特にクーロス像やアルテミス像の美しさには惚れ惚れと見とれてしまうばかり。


《JIJI.comから借用》

 会場はそこそこ混んでいたが、導線が柔軟に設定してあって、じっくりと鑑賞することができた。これほどの規模と質のギリシャ展はそうはないと思うので、お勧め。



第1章 古代ギリシャ世界のはじまり(前6800年紀~前1100年頃)
第2章 ミノス文明(前3200年頃~前1100年頃)
第3章 ミュケナイ文明(前1600年頃~前1100年頃)
第4章 幾何学様式~アルカイック時代(前900年頃~前480年)
第5章 クラシック時代(前480年~前323年)
第6章 古代オリンピック
第7章 マケドニア王国
第8章 ヘレニズムとローマ(前323年~)
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3枚だけでも十分! オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展 @新国立美術館

2016-08-02 20:00:00 | 美術展(2012.8~)


 パリのオルセー美術館とオランジュリー美術館所蔵品から100点を超えるルノアールの作品を展示した大ルノアール展。オルセーとオランジェリーは何度か行ったし、きっと絵よりも人を見に行くようなものだと、二の足を踏んでいたのだけど、思い切って行って良かった。充実の個展だ。

 月並みだが、本展覧会の目玉である「ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会」と2枚のダンスの絵「都会のダンス」「田舎のダンス」の3枚を見るだけで、十分に訪れる価値がある。

 「ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会」は初来日だそうだ。私は4年ぶりの再会だが、いつ観てもこの絵は本当に素晴らしい。生きている絵とは、まさにこの絵のことだろう。人々のお喋り、息遣い、笑い、音楽が聞こえ、人々が動いている。一瞬を切り取った絵なのに、動画を観ているようだ。この立体感は生で見ないと分からない。


《ムーラン・ド・ラ・ギャラットの舞踏会》

 「田舎のダンス」は覚えていたが、「都会のダンス」は記憶が薄れていた。2枚の絵が並んで展示してあるが、その対照性に驚かされる。「都会のダンス」は、洗練さ、静けさ、冷たさ、不安を感じる。一方で、「田舎のダンス」は陽気さ、動き、明るさ、楽しさだ。同じサイズの等身大ぐらいのダンスの絵がこれほどの印象の違いをもたらす。1枚で観るよりも、2枚並べて観るのがより楽しい。


《都会のダンス》

《田舎のダンス》

 もちろんこの3枚以外にも、ルノーアルの傑作が何枚もある。傑作ではないかもしれないが、今回、目を引いたのは、作曲家ワーグナーの肖像画。あの気難しそうなワーグナーでさえ、ルノーアルの絵筆にかかると、明るいただのおじさんになってた。


《ワーグナー》

 私用で半日休みを取ったついでに立ち寄った。夏休みということで、平日の午前中だというのに親子連れも多く混んではいたが、びっしり、ぎゅうぎゅうという感じではない。立ち止まって、ゆっくり見ることもできた。人を楽しく、陽気な気分にさせてくれるルノーアルの絵は、やっぱり凄い。

 お勧めです。
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