全体としてパンチに欠け、印象の薄いパフォーマンスに感じたのは残念だった。正直、前半、中盤はあやうく退屈しかける程だった。ただラスト30分は迫力満点で締めてくれたので、後味良く終わったのは救い。
良かったのは、ゼンダ役Anja Kampe(アニャ・カンペ)。この「いつか、さまよえるオランダ人が現れて恋に落ちる」と夢見る若き女性ゼンダというキャラは全く理解不能だが、カンペはそのちょっと行っちゃてる感のあるゼンダをよく演じ、高音も美しく、良かった。
反面、男性陣はもう一つ魅力に欠けた。決して悪いというわけではない。タイトルロールのEgils Silinsは渋いバスで良い味を出していたのだが、地味で面白みがない。Daland:のStephen Millingも前半は良いかと思ったが、それが最後まで持続しなかった。むしろ、水夫役のJohn Tessier(ジョン・テシェール)の溌剌さとテノールの美しさの方に魅かれた。
オーケストラの音は良く出ていたのだが、全体的に緊迫感が足りなく感じたのはなぜだろうか?テートの指揮テンポが遅めに感じたからかもしれない。どうもワーグナーのオペラを見るときに生じる投入感が自分の中に起こらなかった。
しかし、そのテートはカーテンコールで杖をついて舞台に上がっていた。そして、体の半身が思うように動かない様子で、拍手に応えて舞台前方に動くのも大儀そうだった。それを見て、こんな状態でも、2時間半近く休みなくこの大作を振っていたのを知り、心底、感動した。ありがたいことである。
演出は2年前と同じ印象で、可とも不可とも言えず、特に印象なし。舞台全体が照明を落として、暗いので、出演者の表情が見にくいのには困ったぐらいか。
(舞台全景)
(さまよえるオランダ人 Egils Silins)
(中央がテート、向かってその右がカンペ)
Der fliegende Holländer
Saturday, Ocotber 29 8:00 PM
Credits
Director: Tim Albery
Set designs: Michael Levine
Costume design: Constance Hoffman
Lighting design: David Finn
Movement: Philippe Giraudeau
Performers
Conductor: Jeffrey Tate
The Dutchman: Egils Silins
Senta: Anja Kampe
Daland: Stephen Milling
Steersman: John Tessier
Mary: Clare Shearer
Erik: Endrik Wottrich
Chorus
Royal Opera Chorus
Orchestra
Orchestra of the Royal Opera House