その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

2024年秋 博多/福岡(2):天満宮だけでない太宰府

2024-12-30 20:42:24 | 旅行 日本


(西鉄の太宰府駅ホームも天神様風)

2日目は朝から太宰府観光に出かけました。 太宰府天満宮と九州国立博物館は、出張のついでで訪れたことがあったので(15年以上前ですが)、 今回は天満宮以外にも足を延ばしました。

連れが太宰府初めてだったので、まずは天神様にお参り。残念ながら、「御本殿」は令和の大改修中で、とってもモダンな仮殿が建ってました。

 


(仮殿の屋根の上は草木で覆われていました)

天神さんの後は、楽しい参道の梅枝餅の食べ比べ。そして、大宰府政庁跡に向かって歩きます。天満宮から20分ほど歩くと、途中、観世音寺があります。観世音寺は天智天皇の御世に670年頃に創建され、戒壇設置の寺(僧になるための機関)でした。唐から帰国した空海も身を寄せていた歴史あるお寺です。宝蔵には本尊の不空羂索観音像(517センチ)や馬頭観音立像(503センチ)など重要文化財の仏様が十六体も展示してあります。撮影不可で写真をお見せできないのが残念ですが、圧倒される迫力でした。

 


(観世音寺のパンフレットより)


(戒壇院)

観世音寺からは数分で大宰府政庁跡につきます。広い跡地は奈良の平城京跡を思い起こさせ、「西の都」に相応しい様都跡です。大宰府展示館という博物館があって、史跡から出土した史料などを展示し、古代大宰府の歴史や文化、役人の官職などについてパネルやジオラマで紹介されています。簡易なものですが、「遠の朝廷」と称されていたことも理解できます。

 


(政庁跡)


(大宰府展示館のジオラマ)

この訪問時はまだ大河ドラマ「光る君へ」おいては大宰府は、まひろ(紫式部)の夫である藤原宣孝が赴任したことがある地ぐらいの扱いでしたが、この後、道長の甥、藤原隆家の赴任や刀伊の乱で物語の中心舞台ともなり、改めてこの地の重要性について触れることが出来ました。

今回は立ち寄らなかったが九州国立博物館も素晴らしいので、太宰府を訪れる際は、天満宮だけでなく、博物館と大宰府政庁跡周辺を加えて一日のコースにすることも良いと思います。特に、仏像好き、歴史好きには惹かれるところ多いはずです。

2024年9月21日

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024年秋 博多/福岡(1):食い倒れの旅

2024-12-29 14:26:50 | 旅行 日本

今年9月に行った2泊3日の博多・福岡旅行の記録です。

仕事では何度か訪れている福岡ですが、プライベートでの旅行経験なく、今回が初訪問となります。事前に『マップル 福岡』を購入しましたが、一冊のうち8割近くは飲食店のガイド。旅行中に行ったお店、食べたものご紹介となります。

【たら福 大名店】

福岡営業所に勤務経験のある以前の職場の同僚に紹介されたお店。九州料理を広く、気楽に楽しめる居酒屋さん。初日の夜に訪れましたが、海鮮物を中心にした料理はどれも美味しかった。古民家風のお店の外観や内装も、旅行気分を盛り上げてくれました。

【暖暮】
2日目の昼食。博多/福岡に来たらやっぱりラーメンは必食。数多いのでお店選びに困るところですが、あまり選り好みしている時間も無かったので、目についたこちらへ。普段はとんこつラーメンはあまり食べないのですが、思いのほかさっぱりと食べやすいし、丁寧に作られているのが良く分かりました。

九州内、いくつも支店を出しているようで、私が訪れたのは太宰府駅前のお店です。

【やきとり八兵衛】

2日目の夕食。こちらも昔の同僚に紹介された店。オープンキッチンでカウンター席のみ。モダンな店のつくりで、厨房もサービスも比較的若い人が多い。私たちのケアをしてくれたサービスのお兄ちゃんは、ジャニーズのようなイケメン君でした。

焼き鳥のコースでお願いしましたが、相方が内臓ものが苦手なので、他の串に入れ替えてもらいました。どれも美味です。

【かろのうろん】
新橋の職場近くに「博多うどん」のお店があって、そこがとっても美味しいので、一度現地で食べて見たかった。櫛田神社からすぐのところにある有名店です。

薄口ながらもしっかりしただし汁に柔らかい独特の麺が絶妙にマッチしてとっても美味しいです。店内は撮影厳禁なので、うどんの写真は店の前のサンプルから。食べたのは、ごぼう天うどんですが、これは一色の価値ある美味しさでした。

博多/福岡、どこもとっても美味しく、旅の半分以上は満たされた気分でした。

 

(付録)夜の中州の屋台はお腹一杯で入れず、見学のみ

2023年9月20-22日

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新宿末廣亭で演芸納め!

2024-12-28 17:15:50 | 落語

先週の春風亭一春さんの独演会が、今年の落語締めの予定だったけども、急遽予定が空いたので仕事納めの後、末廣亭に立ち寄った。久しぶりの末廣亭は、変わらぬ伝統ある独特の雰囲気が漂う。

中入り後は座席も8割ほど埋まって、年末の千秋楽前日を演者・聴衆一体で盛り上がった。中入り後の落語は全て新作。題材が鉄道もの2本、ゴルフネタ1本、登山1本と、個人的にも好きなジャンルだし、いずれも私には初物。主任の彦いち師匠は過去に何度か聞いているが、他の落語家さんは初めてだったことも加わって、興味深々で聴き入った。

個人的に感心したのは、翁家社中の太神楽。前から2列めの至近距離に陣取ったので、投げもの、立てものの曲芸が目の前で披露され、彼らの凄い技にびっくり仰天だった。

最近、落語会への参加が中心で、寄席は夏以来だったので、リラックスした雰囲気でいろんな芸や演者さんが楽しめる寄席の楽しさを再認識。とっても満喫させてもらった。

これで今年の落語は本当に納め。

2024年12月27日

新宿末廣亭
12月下席 夜

林家 錦平/片棒
小梅/ 手品
柳家小袁治/ ???

(中入り)

古今亭 駒治/楽しい山手線
風藤松原/漫才
三遊亭 円歌/お父さんのハンディ
柳家 小ゑん/鉄の男・中
翁家社中/太神楽
林家 彦いち/遥かなるたぬきうどん

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長谷川眞理子『進化とは何だろうか』(岩波ジュニア新書、1999)

2024-12-27 12:07:38 | 

昨年、人類の起源・進化についての本を数冊読み、近年のDNA解析による人類史研究の急速な進歩に衝撃を受けた。進化・遺伝と言ったテーマは、中学・高校の「生物」の知識の残骸がある程度なので、進化についての基礎を抑えておきたいと思い、本書を手にした。1999年発刊なので25年前の本だが、適応、自然淘汰、雄と雌(性)などの「進化」の仕組みを、とっても分かりやすく解説している。TVの自然番組などで時折目にしてきたことが整理・説明され、改めて生命の神秘や奇跡のような仕組みを驚きとともに理解できる一冊だ。とってもお勧め。

印象に残ったのは、筆者が一般的によくある誤解として紹介している進化についての理解(第三章)。

例えば、自然淘汰は、適応を生み出すように「目的をもって」働いているわけではなく、環境とは無関係に生じる遺伝子の変異が前提で、変異の中であるものが、他のものよりも環境に適しているときに自然淘汰が行われる。(pp..59-61)

また、進化とは、生物が時間とともに「変化」していくことであって、その変化は必ずしも「進歩」であるとは限らない。進化とは、さまざまに異なる環境に適した、様々に異なる生き物を生み出す枝分かれの過程であるという。(pp..61-63)

こうした誤解は、人間が常に目的をもって行動し、昨日よりは今日の方が良くなるように進歩しようとする人間中心主義に由来する。生き物を観察するときには、人間の価値観を離れて虚心坦懐に観る必要があるのだ。(p.64)

その生き物の世界を目的をもって人為的に操作している現代の科学は、人間や人以外の生物をどこに導くのだろうか。

本書で唯一残念なのは、参考文献や本書の次の図書リストの記載がないこと。岩波ジュニア新書というならなおさら、更に学びたい人へのガイドが欲しい。

(目次)

 はじめに

第1章 生物の多様性と適応
  種の多様性
  生活史・サイズその他における多様性
  うまくできたデザインや行動

第2章 生命の長い鎖──つながっていく存在としての生物──
  進化ということ
  生き物の定義
  遺伝子のもと──DNA
  DNAの複製
  タンパク質の合成
  親から子へ
  ゲノムと遺伝子
  個体変異と進化
  化石が語るもの
  地球上のすべての生命のもと

第3章 自然淘汰と適応
  適応が生じる仕組み
  個体変異
  個体群の増加
  資源をめぐる競争
  適応度
  自然淘汰の働き
  フィンチの嘴
  嘴の厚さの変異と遺伝
  誰が生き残ったか?
  アノールトカゲの足
  自然淘汰に目的はない
  進化は進歩ではない
  適応は万能ではない

第4章 変異の性質と淘汰の種類
  変異の源泉
  点突然変異
  大規模な突然変異
  遺伝子の重複
  突然変異率
  有害か有利か
  組み替え
  淘汰の種類──安定化淘汰・方向性淘汰・分断淘汰
  中立な変異
  分子進化の中立説
  中立な変化の速度
  ヘモグロビンのβ鎖
  形態の変化と適応

第5章 新しい種の誕生
  種とは何か?
  新しい種の出現
  種内変異とクライン
  輪状種
  異所的種分化
  同所的種分化
  種分化の速度
  南極海に住むコオリウオの仲間の進化
  種の多様性

第6章 進化的軍拡競争と共進化
  アリとチョウの幼虫
  食う・食われる・食われないの軍拡競争
  花と動物
  果実と動物
  カッコウの托卵

第7章 最適化の理論
  最適採食戦略
  餌場の防衛
  最適一腹卵数

第8章 頻度依存による自然淘汰
  闘争とゲーム理論
  タカ‐ハトゲーム
  進化的に安定な戦略
  タカ‐ハト‐ブルジョワゲーム
  タンガニーカ湖の魚の曲がった口
  雄と雌の数──性比
  フィッシャーの性比の理論
  近親交配する昆虫の性比

第9章 雄と雌はなぜ違う?
  有性生殖と無性生殖
  雄と雌
  性の起源の謎
  有性生殖の二倍のコスト
  赤の女王仮説
  性淘汰の理論──性差はなぜあるのか?
  ダーウィンの性淘汰の考え
  繁殖の速度と性比
  配偶者獲得をめぐる同性間の競争
  配偶者の選り好み

第10章 進化の考えがたどった道
  博物学の伝統と新世界の発見
  リンネによる分類
  ペイリーのデザイン論
  進化の考え
  ダーウィン登場
  総合説の時代
  現代の発展

 おわりに

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮島未奈 『婚活マエストロ』(文藝春秋、2024)

2024-12-26 09:34:16 | 

在宅フリーランスの独身Webライター(40歳、男性)が、婚活企画運営会社のWeb制作の仕事を依頼されて、婚活にかかわっていくお話し。

「成瀬」シリーズと同様、ほのぼのとしたエピソード集だ。「成瀬」の舞台は滋賀県膳所だったが、今回は静岡県浜松市。膳所ほど地域性は前面に出てこないが、作者の市井の人々への暖かいまなざしが感じられる。

通勤電車の行き帰りで1話づつ読んで、肩の力を抜かせてもらった。

 

【目次】

第1話 婚活初心者
第2話 婚活傍観者
第3話 婚活旅行者
第4話 婚活探求者
第5話 婚活運営者
第6話 婚活主催者

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生成AI入門に最適: 今井翔太『生成AIで世界はこう変わる』(SB新書、2024)

2024-12-25 07:30:58 | 

生成AIについて、技術、人間の仕事への影響、創作物への影響、人類との未来などの切り口で解説した書籍。筆者は東大のAIで超有名な松尾研究室の研究者である。専門家の著書にありそうなマニアックな内容は皆無で、むしろその道のプロならではの明快で分かりやすい解説で、すらすら読めて頭にも入る。生成AIの入門には最適の図書と感じた。

以下、印象に残った記述を書き抜き、サマっておく。

・「いかに賢いアルゴリズムを開発するか」に力が注がれた従前のAI研究は、「良い性能を出すにはトランスフォーマーのニューラルネットワークを、大量データセットで長時間学習すればよい」というスケーリング則により「いかに(データセットや学習のための)お金をかけられるか」という問題に変わってしまった。(pp.69⁻71)

→明示はしていないが、これはもうAI開発のメインストリームではお金の無い日本は勝てない、アメリカや中国のおこぼれをもらうしかないということだ。

・機械学習やディープラーニングは、人間が作業をプログラミングするのではなく、データから自ら学習することにより、非定型型の作業の一部を可能とした。言葉にできない作業過程も自律的に学んでくれる。・・・人間の創造的な作業とされていたものの大半は、「過去の経験のなかから、価値ある新しい組み合わせを見つけること」であり、生成AIは膨大なデータ学習からこれらをみつけられるようになった。・・・生成AI登場後の「AIの影響を受けにくい職業」とは、肉体労働を中心とした職種。(頭を使うことはAIができるが、服を畳む、食べ物を箸でつまむ、ものを探して持ってくるといった作業はAIにとって大変)(pp.105-113)

→「AIは肉体労働が苦手」は前に読んだ西田宗千佳『生成AIの核心』にも指摘があったが、笑うに笑えないファクトだ。

・生成AIの出現は「AIの認知革命」と表現しても良い。・・・意外と近い未来には、われわれが想像もできないような機械の知能と、それによって変革させられた社会が実現するのではないかというのが私の考えです。・・・「指数関数的な成長」が始まる起点、人類の時代をそれ以前とそれ以降に分けるようなイベントが起きているのが、まさに今ではないでしょうか。(中略)人間にとって「賢い蟻」と頭の悪い蟻の差が大したことないことが示すように、知能とは相対的なもの。人間を超えた機械にとっては、凡人とアインシュタインの差も大したことない。機械の知能が何を生み出すかは人間には想像できない。人間の思考の限界を超えて、人にとって価値のあるものを生み出してくれる未来を期待したいが、人間の想像のはるか外にある脅威を持ち込んでくる未来を恐れる。

→第一線のAI研究者である筆者の生成AI観が示される。凡人の私には脅威でしかないわ。(pp.217ー221)

巻末の松尾教授との特別対談も興味深った。松尾先生は、個人が身につけるべきスキルや心構えとして、「極端な行動をとること」「自分自身のメタ認知を上げる」「人のできないことを淡々とやり続けたり、勝負所を見極めて一気に仕掛ける」「AIに対してうまく指示ができるスキル」などを挙げている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハビエル・ガラルダ 『愛を見つめて 高め合い、乗り越える』(集英社インターナショナル新書、2023)

2024-12-24 07:28:24 | 

参加している読書コミュニティの課題図書として読んだ。読書会のいいところは、本書のように自分では普段手に取ることのない書籍を読む機会ができることである。

筆者は長く日本に滞在するカトリック系の司祭であり、神学者。その筋ではとっても有名な方のようだ。

本書を読んで、「利他」について考えようというのが読書会のお題だったのだが、俗にまみれた私には難度が高く、読んでは見たものの、考えがまとまらないままとなってしまった。せめて、雑駁ながら印象に残った記述をいくつか自分のために書き残しておきたい。

○人間愛の特徴:無償

・「報いなど期待せずに、お互いに無償で分けた情こそが、人間愛です。・・・見返りを目的として行いは、愛ではなく、利害関係に過ぎません。しかし、誰しも感謝や関心といった細やかな見返りは、心の底で望んでしまうでしょう。それでも、何らかのご褒美や報酬を目的とせず、条件にもしないことが大切です。」(p.56)

・「『バラを捧げる手には、薔薇の香りが残る』と言うことわざがあります。お礼に別の花を受け取ることや、金銭を受け取ることがなくても、自分の手に残ったバラの香りは、ささやかでも深い喜びをもたらします。この香りは自己満足ではなく、愛に伴う、精神的な作用です。良い心が感じさせる「調和」と言う香りなのです。」(p.57)

→「利他」を考える上で、「無償/有償」、「見返りの有無」は切り口の1つと考えたのだが、「利他」と本書で説かれる宗教的「人間愛」の関係はどう考えればいいのか。私たちは、無償の利他的な行為でも、非経済的な報酬は受けていると思う。ここでは、愛についてはそれすら期待するべきではないと言うことのように読める。

○向上心

・「向上心はより優れた状態を目指そうとする心です。自分の得意な分野で出世を果たしたいと言う情熱は、高慢にも映りますが、素晴らしい憧れです。向上することよりも、目立たないでいることを選ぶ気持ちは、謙虚さから生じるのではなく、怠慢や臆病から生まれているかもしれません。」(p.144)

・「成長と自己実現は、向上心の目的ではなく、向上への努力の結果です。向上そのものの目的は、誰かの助けとなることです。人が助かるために、自分を改善することが手段となります。」(p.146)

・「おごらずに、人が助かるために人に仕えると言う姿勢が、向上のためのカギです。」

・「人を大切にするあまり、自分と言う水差しにワインを注ぐことを語る人は、すぐに空になって何もできなくなってしまいます。
かといって自分を大切にする。あまり、水差しのワインを誰にも分け与えなければ、そのワインは参加するばかりです。
ワインでいっぱいに満たした水差しを、テーブルに置いておけば良いのです。飲みたい人は飲む、そうしたらワインを注ぎ、足せば良い。こうすれば、水差しのワインは常に新鮮です。
このような姿勢が、自己愛と人間愛等両立させます。自分のために生きるのか、人のために生きるのかと言うジレンマは自然に解消します。」(p.148)

→向上心は成長や自己実現のためではなく、誰かの助けになるためという考えや、そのイメージとしてのグラスのワインの例えは、これまでの私の発想にないもので新鮮だった。

○信じすぎずに信じる

「人を信じすぎれば人にだまされることもあります。でも人を信じなければ、人は離れて行きます。(中略)心も目も開く。これはその人の行動をしっかり見ながら、信じようとすることです。」(p.126)

→以前読んだ山岸俊雄『安心社会から信頼社会』で指摘があった信頼社会における「ヘッドライト型知性」にも通じるものかと理解。日本人は身内(うち)でない人に心と目を開くことが苦手。そとの人に対して、「信じすぎずに信じる」ことを身につけたい。

「利他」のお題についてはもう1冊課題図書があるので、読了次第、また投稿予定。

 

【内容】
「第一部 愛の対象」
第1章 自己愛について
第2章 人を大切にする
第3章 友情
第4章 男女の愛
「第二部 愛し合う」
第5章 コミュニケーション
第6章 求め合う
第7章 赦し合う
第8章 信頼が生まれるとき
第9章 忍耐とは何か
第10章 分かち合い
「第三部 高め合う」
第11章 向上心
第12章 生きる夢
第13章 謙虚な自信
第14章 心が望む価値観

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書、1996年

2024-12-23 07:30:02 | 

30年近く前の刊行でいささか古いが、16世紀以降、砂糖がいかに世界商品化されていったかが分かりやすく記述されている名著。大航海時代、植民地のプランテーションと奴隷制度の仕組み、三

角貿易の構造、産業革命などに触れられ、世界経済史の絶好のケーススタディといえる。

現代社会では、本書で取り上げられた砂糖やチョコレートのみならず、あらゆる製品、食品、サービスが世界商品化され、まさにグローバルバリューチェーンの中で生産され、消費されている。世界商品化は光と影の部分が常にセットであり、現代においても、影の一面として児童労働や強制労働などの問題もあり、砂糖のプランテーションの例と相似形ともいえる。現代との連続性を意識させられる。

グローバライゼーションは、これからも不可逆的に進行していくだろうから、影の部分をどう克服していくのかというのが課題になる。

教科書的なことを言ってもしょうがないかもしれないが、ステークホルダーとして企業の責任は大きく、様々なSDGsにおける行動目標を地道に実直に進めて行くことが大切だろう。

余談だが、過去記事になるが、2011年2月に、好きなビートルズの聖地巡礼目的でイギリス・リバプールを訪れた。その際に、偶然「International Slavery Museum | National Museums Liverpool (liverpoolmuseums.org.uk)」(国際奴隷博物館)という博物館があることを知り、立ち寄ったのだが、そこでは本書で言うリバプールを起点とした奴隷の三角貿易について、かなり詳しく展示されていた。

アフリカの黒人文化の紹介、奴隷貿易の実態、リヴァプールとの関わり、プランテーションでの奴隷の生活、黒人開放の歩み、そして現代での黒人の活躍ぶりが、模型やコンピュータグラフィックも活用して、物語、歴史的遺品、フィルム、パネルなどによって語られている。なかなか行く機会は少ない都市だとは思うが、もし訪ねる機会があったら、奴隷博物館訪問もお勧めしたい。ロンドンからも2時間ちょっとで行ける。

 

(付録)以下、印象に残った部分を引用。

・1)さとうきびの栽培には、膨大な人数の、命令の行き届きやすい労働力が必要と言う事と2)それが地味、つまり、土地の植物を育てる能力を急速に失わせる作物であったと言うことが、・・・さとうきび栽培は、早くから奴隷のような強制労働を使い、プランテーションの形を取る大規模な経営が取られ、新しい土地と労働力を求めて、次々と移動していったのです。(p.28)

・イギリスのリバプールを出発した奴隷、貿易船は、奴隷と交換するために、アフリカの黒人王国が求める鉄砲やガラス玉、綿織物などを持っていきました。それらを西アフリカで奴隷と交換したわけです。ついで、獲得した奴隷を悲劇の中間航路に沿って輸送し、南北アメリカやカリブ海域で売り、砂糖(稀に綿花)を獲得して、リバプールに帰るのでした。奴隷貿易を中心とする三角貿易によって、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカの3大陸は、初めて本格的に結びつけられたのです。(pp55-56)

・ 砂糖入り紅茶の朝食は、いわば地球の両側から持ち込まれた、2つの食品によって成立しました。言い換えれば、イギリスが世界商業の(中核)の位置を占めることになったからこそ、このようなことが可能になったのです。都市から始まったイギリス風朝食は、やがて農村にも広がっていきます・・・イギリス国内の農民の作る穀物などより、奴隷の作る砂糖の方が、地球の裏側から運んできたとしても、安上がりになったということです(p170)

・ カリブ海にいろいろな産業が成立しなかったのは、・・・この地域が世界商品となったさとうきびの生産に適していたために、ヨーロッパ人がここにプランテーションを作り、モノカルチャーの世界にしてしまったことが、大きな原因だったのです。カリブ海で砂糖のプランテーションが成立したことと、イギリスで産業革命が進行したこととは、同じ1つの現象だったのです。(p206)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「春風亭一花を真打昇進まで応援する会」@シン・道楽亭

2024-12-22 07:30:25 | 落語

今年最後の落語会です。

一花さんはホール落語やシブラクで何度か実演に接してますが、その歯切れのよい話しっぷりや声の良さ、真面目なお人柄(これは私の勝手な予想)が好きで、いろんなコンテスト系にも参加されているので、いつも応援している女性落語家です。

今回は初めての独演会への参加で、しかも会場が道楽亭というとってもディープな体験となりました。

20名ちょっとのキャパですから演者さんが目の前なのですが、しかも今回は最前列。ホント、手を伸ばせば届く距離です。この近さは聞く方も緊張感あります。

演目は「馬大家」「のめる」「文七元結」の3本。今回感心したのは文七元結。有名な人情話で、この秋NHKでやってた「一之輔の落語入門」でも紹介されてましたが、私は実演で聞くのは初めて。

一花さん迫真の話しっぷりで物語の世界にたっぷり引き込まれました。一花さんにはこういう人情話がとっても良く似合います。演じ分けで各登場人物の人物像も明確に表現されて、それぞれに感情移入してしまう。40分ちょっと、たっぷり時間かけて話し、私も満喫しました。

まくらでは学校落語での天草珍道中はなしなど。

今回で、一花さんへの個人的応援指数はますますアップ。次回は来年3月21日とのこと。是非伺いたいです。

12/20(金) 道楽亭

春風亭一花 を真打昇進まで応援する会

「馬大家」「のめる」「文七元結」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閉幕間近!:白衛軍 The White Guard(作:ミハイル・ブルガーコフ、翻訳:小田島創志、演出:上村聡史)@新国立劇場 中劇場

2024-12-20 17:42:34 | ミュージカル、演劇

1

918‐19年のウクライナのキーフ。ロシア帝政を支持しドイツの支援を受ける「白衛軍」、キーウでのソヴィエト政権樹立を目指す「ボリシェヴィキ」、ウクライナ人民共和国勢力「ペトリューラ軍」が三すくみの状態で戦う。白衛軍の高級将校であるアレクセイとその兄弟たちのトゥルビン家の人々を軸に物語は進む。戦争、民族、人間、家族愛と重厚なテーマが散りばめられた人間劇だ。

展開の巧みさや登場人物たちの緊張感あふれるやりとり、そして笑いも差し込まれる物語は、3時間近い上演時間の長さを全く感じず、描かれる世界に没入できる。政治・戦争に翻弄される人間の哀しさ、逞しさの両方を感じる。

役者は誰も熱量高く、本作品への意気込みが感じられた。トゥルビン家の末っ子ニコライ役を演じた村井良大の溌溂とした演技も印象的。

大がかりな舞台装置も中劇場ならでは。奥行きを目一杯使い立体感が演出される。

今現在、ロシアと戦争状態にあるウクライナであり、その前史となる時代でもあるので、現代との連続性は否が応でも意識する。この土地や国の複雑な成り立ち、構成を学ぶ機会にもなる。見応え一杯で、今、観る価値がある作品だろう。

唯一残念だったのは客入り。中劇場でそれなりのキャパがあるのだが、観客だけなら小劇場でも十分ではないかと思う程の客の入りは寂しかった。私が行ったのは2日目だったが、その後のお客さんの入りは気になるところである。22日が最終日、少しでも興味がある人は是非、足を運んでみて欲しい。

 

白衛軍 The White Guard
日本初演
文化庁劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業

公演期間:2024年12月3日[火]~22日[日]

予定上演時間:約3時間10分(第1幕 105分 休憩 20分 第2幕 65分)

スタッフ
【作】ミハイル・ブルガーコフ
【英語台本】アンドリュー・アプトン
【翻訳】小田島創志
【演出】上村聡史
【美術】乘峯雅寛
【照明】佐藤 啓
【音楽】国広和毅
【音響】加藤 温
【衣裳】半田悦子
【ヘアメイク】川端富生
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝/加瀬幸恵

 

キャスト
ニコライ(士官候補生):村井良大
エレーナ:前田亜季
レオニード(副官):上山竜治
アレクセイ(大佐):大場泰正
フョードル(従僕)・マクシム(学監):大鷹明良
ラリオン:池岡亮介
ヴィクトル(大尉):石橋徹郎
アレクサンドル(大尉):内田健介
ラリオン:前田一世
タリベルク(大佐)・ボルボトゥン(大隊長):小林大介
将校3:今國雅彦
靴屋:山森大輔
将校1西原やすあき
ゲトマン:釆澤靖起
ガラニバ:駒井健介
武田知久
草彅智文
笹原翔太
松尾 諒

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アラン(訳:石川湧)『幸福論』(角川ソフィア文庫、1951)

2024-12-18 07:27:04 | 

プライベートで参加している読書会の課題図書として読みました。ヒルティの『幸福論』(1891年)、アランの『幸福論』(1925年)、ラッセルの『幸福論』(1930年)は三大幸福論と呼ばれているそうで、その中の一冊となります。本書を読んで、「幸福観」について考えようというお題です。書き様は平易ですが、なかなか私の頭の中には浸み込まず、難儀しました。

人生の警句に満ちた書なのですが、特に幸福関連の記述からいくつか引用すると。

・「人間は、意欲し創造することによってのみ幸福である」(44ディオゲネス、p127)

・「幸福はいつでもわれわれを避けるという。・・・自分で作る幸福は、決して人を欺かない。それは学ぶことであり、そして人は常に学ぶものである。知れば知るほど、学ぶことができるようになる。」(47アリストテレス、p137)

・「幸福になることを欲し、それに身を入れることが必要である。」(90幸福は高邁なもの、p254)

・「幸福になることは常にむずかしい。それは多くの人々に対する闘争である。・・・幸福になろうと望まないならば、幸福になることは不可能だ。自分の幸福を望み、それを作らなければならないのである。」(92幸福たるべき義務、p261)

一貫して本書で語られるのは、幸福は待っていて訪れるものではなくて、自ら求め、作るものだという、「意志」への拘りです(「闘争」とまで言っています)。1920年代に世に出た書であるので、時代背景や社会情勢の影響もあるとは想像しますが、私自身、「幸福」を静態的な状態を表す言葉として捉えていたので、行動指針のような「幸福観」は新鮮でした。

幸福観は個人の価値観、人生観によっても異なるため、「どのように生きていくのが幸せなのか」に正解はないと考えます。「個人として、未来に向けて、今につながっている過去の資産を活用しつつ、現在を精一杯生きること」が幸せなのでは?という極めて一般的な「幸福観」が今現在の自分解という結論に落ち着きました。

 

(附記)

幸福については、以前読んだユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』の記述があったのを思いだし、該当部分(下巻第19章)を読み返してみました。以下、自分のためのサマリーです。

『サピエンス全史(下)』第19章「文明は人間を幸福にしたのか」pp..214⁻240から

・過去の研究成果:幸福は客観的な条件(富・健康・コミュニティ)よりも、客観的な条件と主観的な期待との相関関係に拠ってきまる

・生化学側面重視:私たちの精神的・感情的世界は、進化の過程で形成された生化学的な仕組みに支配されている。人間を幸せにするのは、体内に生じる快感である(神経やニューロン、シナプス、ゼトロリン、ドーパミン、オキシトシンのような生化学物質からなる複雑なシステムによって決定)

・認知的・倫理的側面重視:幸せかどうかは、ある人の人生全体が有意義で価値あるものとみなせるかどうかにかかっている。(しかし、人生に認める価値あるかどうかは、主観的なものであり妄想に過ぎない。それであれば、人生の意義についての妄想を、時代の支配的な集団妄想に一致させることが幸福につながる)

・仏教の教え:苦しみの根源は、束の間の感情(快も不快も)を果てしなく、空しく求め続けることにある。幸せへのカギは真の自分を知り、感情は自分自身とは別物で、特定の感情を追い求めても不幸になるだけを理解すること。最大の問題は、自分の真の姿を見抜けるか。

雑感:「幸せ」の定義により、その捉え方・測り方が異なるということ。仏教の教えから筆者が導く、感情を切り離し、真の自分を知ることにより得る幸せの世界は、凡人にはあまりにもハードルが高いように思われます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新国立オペラ、モーツァルト〈魔笛〉(指揮:トマーシュ・ネトピル、演出:ウィリアム・ケントリッジ)

2024-12-17 07:17:33 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今年最後のオペラ観劇は「魔笛」。欧州ではクリスマスシーズンに良く上演される印象のあるモーツァルトの傑作オペラですが、私は実演に接するのは2016年以来で8年ぶり。初日ということと、相当数の若い人がご招待されていたようで、ホワイエは活気ある雰囲気に包まれていました。

図抜けたというわけではなかったですが、歌手陣、オケ、演出と三拍子揃った傷の無い安定した上演で、モーツァルトの世界をしっかりと楽しむことが出来ました。

歌手陣では、タミーノのパヴォル・ブレスリック、ザラストロのマテウス・フランサの2人の外国人歌手陣が安定した実力を発揮。特に、ブレスリックのテノールは滑らかで、演技もこなれた感じで、はまり役という印象です。

日本人歌手陣も負けておらず、九嶋香奈枝の美しいソプラノと容姿はパミーナにぴったりだったし、先月「ウイリアム・テル」に出演したばかりの安井陽子の夜の女王も堂に入ったものでした。パパゲーノの駒田敏章は、歌は良いのですがちょっと演技がおとなしめ。衣装もスコットランドのカントリー風でしたので、演出の意図なのかもしれません。パパゲーノが弾けない「魔笛」は舞台全体の活力が弱かった気はしました。侍女や童子の重唱は美しく、うっとりとさせられます。

トマーシュ・ネトピル指揮の東フィルの演奏は好演。前奏曲からテンポよく、音も四階席迄良く届きます。全幕通して推進力ある演奏を楽しみました。

新国にとっては再演なのですが、私はウィリアム・ケントリッジの演出の〈魔笛〉は初めて。映像を多用した作りで、舞台装置も幻想的な雰囲気をしっかり作っていて、個人的に好きな舞台です。舞台前方に張った透過性のスクリーンに映った星座表を模した映像やスクリーン上で描かれる画はメルヘンチックで魔笛にぴったり。ただ、舞台奥のスクリーンに映った映像は4階席からだと判別できず残念でした。

いわゆる普通に良い公演で、モーツァルトのすぐれた作品を不満なく楽しめるだけで十分です。モーツァルトの音楽、世界を満喫した一夜でした。

2024年12月10日

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
魔笛
Die Zauberflöte / Wolfgang Amadeus Mozart
全2幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉 
文化庁劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業
公演期間:
2024年12月10日[火]~12月15日[日]
予定上演時間:
約3時間(第1幕70分 休憩25分 第2幕85分)

スタッフ

【指 揮】トマーシュ・ネトピル
【演 出】ウィリアム・ケントリッジ
【美 術】ウィリアム・ケントリッジ、ザビーネ・トイニッセン
【衣 裳】グレタ・ゴアリス
【照 明】ジェニファー・ティプトン
【プロジェクション】キャサリン・メイバーグ
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト

【ザラストロ】マテウス・フランサ
【タミーノ】パヴォル・ブレスリック
【弁者・僧侶Ⅰ・武士II】清水宏樹
【僧侶Ⅱ・武士I】秋谷直之
【夜の女王】安井陽子
【パミーナ】九嶋香奈枝
【侍女I】今野沙知恵
【侍女II】宮澤彩子
【侍女III】石井 藍
【童子I】前川依子
【童子II】野田千恵子
【童子III】花房英里子
【パパゲーナ】種谷典子
【パパゲーノ】駒田敏章
【モノスタトス】升島唯博
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
2024/2025 SEASON

Music by Wolfgang Amadeus Mozart
Opera in 2 Acts
Sung in German with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE

Supported by the Agency for Cultural Affairs, Government of Japan in the fiscal 2024

10 Dec - 15 Dec, 2024 ( 4 Performances )

 

CREATIVE TEAM & CAST
CREATIVE TEAM

Conductor: Tomáš NETOPIL
Production: William KENTRIDGE
Set Design: William KENTRIDGE, Sabine THEUNISSEN
Costume Design: Greta GOIRIS
Lighting Design: Jennifer TIPTON
Projection Design: Catherine MEYBURGH

CAST

Sarastro: Matheus FRANÇA
Tamino: Pavol BRESLIK
Sprecher / Erster Priester / Zweiter Geharnischter: SHIMIZU Hiroki
Zweiter Priester / Erster Geharnischter: AKITANI Naoyuki
Königin der Nacht: YASUI Yoko
Pamina: KUSHIMA Kanae
Erste Dame: KONNO Sachie
Zweite Dame: MIYAZAWA Ayako
Dritte Dame: ISHI Ai
Erster Knabe: MAEKAWA Yoriko
Zweiter Knabe: NODA Chieko
Dritter Knabe: HANAFUSA Eriko
Papagena: TANETANI Noriko
Papageno: KOMADA Toshiaki
Monostatos: MASUJIMA Tadahiro

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ締めに相応しい上演! ジョナサン・ノット/東響 R.シュトラウス<ばらの騎士> @サントリーホール

2024-12-16 07:21:05 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私には、今年最後の演奏会。ノット/東響による「サロメ」、「エレクトラ」に続くR.シュトラウスとホフマンスタールの三作の結びとなる公演です。過去2つの演奏会も出色でしたが、この演奏会は締めに相応しい過去2回の公演もしのぐほどの素晴らしい演奏会でした。

「サロメ」「エレクトラ」では題名役の歌手が抜きんでた素晴らしさが印象的でしたが、今回は実力と個性を兼ね備えた外国人歌手陣を中心とした歌手達がワールドクラスで、歌の醍醐味を味わえる滅多に聴けないレベルの上演となりました。

とりわけ感銘を受けたのは、元帥夫人役のミア・パーションとオックス男爵役のアルベルト・ペーゼンドルファー。パーションはロンドンで何度が接していますが、その美しいソプラノは変わらずでしたし、今回の大人の女性を演じる演技が何とも気品高く、愁いに満ちていて、ステージで輝いていました。ほぼでずっぱりのオックス男爵は、ペーゼンドルファーの力強い低音と俗物貴族ぶりの演技が存在感抜群で舞台を盛り上げました。

題名役のカトリオーナ・モリソンも若く、真っ直ぐな若者を好演。ゾフィー役のエルザ・ブノワは清明な美しい歌声が強いインパクトを残します。最終幕の最後のパーションを含めた三重唱とモリソンとブノワによる二重唱は至高の美しさでした。ゾフィーの父ファーニナル役のマルクス・アイヒェも活き活きとした演技と良く通るバリトンぶりを発揮。日本人歌手陣も、アンニーナ役の中島郁子らが、しっかりと脇を固めていました。

慣れない前方の席であったためか、もしくは歌手陣に集中しすぎたためか、オーケストラの演奏は細部にまで気が廻らず。前半は硬さを感じたり、オケと歌手陣のバランスがどうかと感じるところもあったのですが、尻上がりに一体感も増し、美しくもありながら、衰退にむかう世情を反映した「ばらの騎士」の世界観を満喫しました。

演奏会方式ですが、サー・トーマス・アレンの演出監修で、ソファーやワインなど簡易なセットもあり、歌手陣の演技も含め場を演出。簡易オペラとして必要十分です。

終演後はノットさん、歌手陣、オケに熱狂的な拍手が寄せられ、何度も呼び戻し。私も含め、観衆のみなさん、公演に集中していたエネルギーを思いっきりリリースしているようでした。

ノット監督も来年度が最終シーズン。更にボルテージも上がるでしょう。楽しみです。

 

 

 

2024年12月13日(金) 
17:00 開演

特別演奏会 R.シュトラウス 「ばらの騎士」(演奏会形式)
サントリーホール

出演
指揮=ジョナサン・ノット
演出監修=サー・トーマス・アレン
元帥夫人=ミア・パーション(ソプラノ)
オクタヴィアン=カトリオーナ・モリソン(メゾソプラノ)
ゾフィー=エルザ・ブノワ(ソプラノ)
オックス男爵=アルベルト・ペーゼンドルファー(バス)
ファーニナル=マルクス・アイヒェ(バリトン)
マリアンネ/帽子屋=渡邊仁美(ソプラノ)
ヴァルツァッキ=澤武紀行(テノール)
アンニーナ=中島郁子(メゾソプラノ)
警部/公証人=河野鉄平(バス)
元帥夫人家執事/料理屋の主人=髙梨英次郎(テノール)
テノール歌手=村上公太(テノール)
動物売り/ファーニナル家執事=下村将太(テノール)

合唱=二期会合唱団

2024.12.13(fri) 17:00 START

Special Concert “Der Rosenkavalier” in concert style

Suntory Hall

Artists
Jonathan Nott, Conductor(Music Director, Tokyo Symphony Orchestra)
Sir Thomas Allen, Direction
Miah Persson, Marschallin(Soprano)
Catriona Morison, Octavian(Mezzo soprano)
Elsa Benoit, Sophie(Soprano)
Albert Pesendorfer, Baron Ochs(Bass)
Markus Eiche, Faninal(Baritone)
Hitomi Watanabe, Marianne & A milliner(Soprano)
Noriyuki Sawabu, Valzacchi(Tenor)
Ikuko Nakajima, Annina(Mezzo soprano)
Teppei Kono, A police commissioner & A notary(Bass)
Eijiro Takanashi, Marschallin’s major-domo & An innkeeper(Tenor)
Kota Murakami, An italian singer(Tenor)
Shota Shimomura, An animal vendor & Faninal’s major-domo(Tenor)

Nikikai Chorus Group
Tokyo Symphony Orchestra

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024年秋 山中湖の紅葉・富士山

2024-12-13 07:30:23 | 旅行 日本

先月上旬、山中湖を訪れた時の記録です。例年、この時期は紅葉最盛期なのですが、今年は違いました。長~い夏の影響で、一部の紅葉はありましたが、全体的にはまだまだ。この時期行われている「もみじ祭り」も開催期間を1週間延期していました。

以下、秋の山中湖の一日(朝~夕)の様子です。

まずは朝の6時前後。恒例の朝ランの途中です。前日が風雨の天候だったので、朝は塵の無い、澄み切った朝の空気でした。

午前中は湖畔をサイクリング。まだ冷たい空気が気持ちいいです。一部、紅葉しているスポットを中心にスナップ撮影。



夕刻は一応、「もみじ祭り」の会場へ。紅葉はまだまだでしたが、夕暮れ時の山中湖と富士山は息を飲む美しく、幻想的な光景でした。山中湖には毎年来てますが、ここまでブラボーな夕暮れ時は滅多にないなあ。

 

2024年11月3日

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西田宗千佳『生成AIの核心 「新しい知」といかに向き合うか』(NHK出版新書、2023)

2024-12-11 12:02:26 | 

生成AI使っていますか?

この夏から業務で使える生成AIが社内展開されて、仕事でも使えるようになった。使いこなしているとは言い難いし、未だ嘘(ハルシネーション)も多々あるので恐る恐るの活用だが、その能力は恐ろしいほどだ。自ら使いつつ、客観的に捉えて考えたいと思い、手軽に読めそうな新書をいくつか読み始めた。

本書は23年9月発刊なので、1年と3カ月しか経ってないが、その情報の多くが既知のものになっていることがこの分野の凄まじい発展を物語っている。筆者自身も「生成Aiについて書くのは大変だ。・・・最新事情をかいたつもりがすぐに古びてしまう」と「おわりに」で書いてあるが、まさにその通り。

ただ、そうとは言え、その仕組み、影響度、利用上の注意、そして未来について、基本的な理解を得るのに良くまとまった入門書。筆者はテック分野で多くの著述もあり、知見も広い。

個人的に面白かったのは、同じ質問を違う生成AIのアプリ(Chat-GPT/Bing/Bard)に質問を投げた際の回答の違い(p.122)。本書のこの部分は、生成AIを使った「壁打ち」による思考訓練の例として紹介してくれているが、私は少々違って捉えた。アプリの学習のさせ方やロジックの組み方で、検索エンジン同様、回答は異なってくるわけで、そうした裏側を知ったうえで、使う側は回答を客観的に捉えないと、容易にソフト作成側に操られる怖れがあるということだ。

また、生成AIが普及すると、結局、人間の価値、得意とする仕事は「肉体」であり「肉体を使う仕事」という指摘も、目から鱗が落ちた。「柔軟かつ低コストな運動性能」(ロボットは柔軟ではない)が人間の差別化要因という(p.206)。人の仕事の未来はどうなっていくのだろうか。

著作権の問題、政府の規制、学習(タグ付け)のための人手、大量の電力消費などの諸課題も提示されていて、考えるきっかけになる。生成AIを使う方の入門書としてお勧めできる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする