まだ頭の中で、「ジュピター」の第4楽章と「悲愴」が頭の中で、入れ替わり立ち代りにクルクル巡ってます。
2年前にロンドンより帰国して以来、N響には定期的に通ってきました。往年のジャイアンツのようにN響にはやっかみ半分の悪評も多いようですが、なんだかんだ言って、高い演奏レベルと安定度と言う意味で在京オケの中ではトップクラスだと思ってます。ただそんな中でも、鳥肌が立ち、胸がバクバクして呼吸困難に陥るような演奏会にはなかなか出会えません。でも、この日は、間違いなくこの2年間で最高の、胸が押し潰されるような演奏会でした。
前半の「ジュピター」から前週とは何か違う感じがしていました。端正で見通しの良いモーッアルトは先週の40番と同じなのですが、全体に漂う香りが明らかに違う気がします。無機質で冷たい感じのする灰色のNHKホールが、明るく華やかで優しい空気に包まれます。特に、第4楽章のリフレインの中で高まる盛り上がりは、少人数編成とは思えない力強さと美しさが両立した至福の時間でした。
そして、後半の「悲愴」は言葉にできない感動でした。「静と動」、「沈黙と雄弁」、「強と弱」、「明と暗」といった様々なコントラストが、演奏の中で現れては消え、そして発展していきます。この日も全て暗譜のブロムシュテットさんは、何かが乗り移ったかのように神がかり的でした。3階席からも背中からオーラを感じるんです。そして、その一挙一動にN響のメンバーが憑かれたように、何かを目指して疾走する。聴衆もステージで起こっていることを何一つ聞き漏らすまい、見逃すまいと、気持ちを一点に集中させます。時折、我に返らせるかのようなティンパーニーの炸裂。先週の5番は節度を保った中での情熱的演奏と感じたのとは違い、今回の6番は、構造は決して崩れず、端正なのだけど、情念のようなものが前面に出て、まるでオペラを観ているかのように、音楽から絵巻が表れていました。
最後は消え行くフィナーレ。あの沈黙の空間をどう表現して良いのかわかりません。そして、ゆっくりと暖かい拍手が始まり、カーテンコールが繰り返されるのに従って拍手が益々大きくなります。なんと、幸福な時間だったでしょうか。私のN響史に確実に残る演奏会でした。
ブロムシュテットさん、今年もありがとうございました。また、来年も元気によろしくお願いしますね。来年はブルックナーですかね~。
第1789回 定期公演 Aプログラム
2014年9月27日(土) 開場 5:00pm 開演 6:00pm
NHKホール
モーツァルト/交響曲 第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
No.1789 Subscription (Program A)
Saturaday, September 27, 2014 6:00p.m.
NHK Hall
Mozart / Symphony No.41 C major K.551 “Jupiter”
Tchaikovsky / Symphony No.6 b minor op.74 “Path�・tique”
Herbert Blomstedt, conductor