プッチーニの〈三部作〉は、唯一の観劇経験である2011年のロイヤルオペラの公演(パッパーノ指揮)がとても秀逸だったので、今でも強烈に記憶に残っています。「外套」のミケーレがルチオ ガッロ、ジョルジェッタがエヴァ・マリア ウェストブロック、アンジェリカがエルモネラ・ヤオ、そしてジャンニ・スキッキもルチオ ガッロという実力派歌手陣の個性がぶつかり合う舞台でした。今回の二期会はどんな公演になるのか、期待を大きくして出かけましたが、見応え十分のパフォーマンスでした。
演出、歌手陣、オケがバランス良く組み合わさった、総合点の高い舞台という印象です。中でも、特筆すべきはミキエレットの演出でしょう。ロイヤルオペラで見た際も「なんでこの関連のない3つの話が三部作として一つのオペラとして公演されるのか」全く不思議でしたが、今回の演出では3つの話が一つの流れの中にまとめられていました。「外套」から「修道女」への移行では、「外套」が終った拍手の中、幕が下りることなく舞台そのままで設定が修道院に変わり、ジョルジェッタを演じていた北原さんがアンジェリカに変わっています。また、「ジャンニ・スキッキ」のラストでは、スキッキが1幕で使われた外套を羽織り、親戚筋の連中が1幕で使われたコンテナに閉じ込められて終わるというのもので、その仕掛けにびっくり。
ベルトラン・ド・ビリー指揮、東フィルの演奏も素晴らしかったです。「外套」のどろどろしさ、「修道女」の美しい旋律、「ジャンニ」の軽妙な明るさが、それぞれ丁寧に表現されていました。東フィルの奏者さんたちが、終演後、ド・ビリーに向かって熱烈な拍手をしているのを見て、楽員たちの信頼とリスペクトも感じられました。
歌手陣も安定したパフォーマンスでした。特に良かったと思ったのは、2役を演じた北原さんと上江さん。北原さんは、官能的なジョルジェッタと一途に我が子を想うアンジェリカという対照的な二人の女性を同じ人が演じているとは思えないほど演じ分けてました。ジョルジェッタのエロチックさにそそられた男性観衆者も多数と予想します(と人のせいにする)。上江さんは、ジャンニ・スキッキが特に良かったですね。この役柄が際立ってないと劇そのものの活気がなくなると思いますが、上江さんは明るく楽しく、ユーモラスに舞台を盛り上げてくれました。
好きな作品を期待以上に楽しめて、余韻を噛みしめながらの嬉しい家路となりました。
〈三部作〉外套/修道女アンジェリカ/ジャンニ・スキッキ
オペラ各1幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:『外套』ジュゼッペ・アダーミ/『修道女アンジェリカ』および
『ジャンニ・スキッキ』ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
会場:新国立劇場 オペラパレス
公演日:2018年9月8日(土) 14:00
スタッフ
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出:ダミアーノ・ミキエレット
演出補:エレオノーラ・グラヴァニョーラ
装置:パオロ・ファンティン
衣裳:カルラ・テーティ
照明:アレッサンドロ・カルレッティ
合唱指揮:冨平恭平
演出助手:菊池裕美子
舞台監督:村田健輔
公演監督:牧川修一
公演監督補:大野徹也
キャスト
『外套』
9月6日(木)/8日(土)
ミケーレ:上江隼人
ジョルジェッタ:北原瑠美
ルイージ:樋口達哉
フルーゴラ:塩崎めぐみ
タルパ:清水那由太
ティンカ:児玉和弘
恋人たち:新垣有希子、新海康仁
流しの唄うたい:高田正人
『修道女アンジェリカ』
9月6日(木)/8日(土)
アンジェリカ:北原瑠美
公爵夫人:中島郁子
修道院長:塩崎めぐみ
修道女長:西館 望
修練女長:谷口睦美
ジェノヴィエッファ:新垣有希子
看護係修道女:池端 歩
修練女 オスミーナ:全 詠玉
労働修道女I ドルチーナ:栄 千賀
托鉢係修道女I:小松崎 綾
托鉢係修道女II:梶田真未
労働修道女II:成田伊美
『ジャンニ・スキッキ』
9月6日(木)/8日(土)
ジャンニ・スキッキ:上江隼人
ラウレッタ:新垣有希子
ツィータ:中島郁子
リヌッチョ:新海康仁
ゲラルド:児玉和弘
ネッラ:小松崎 綾
ベット:大川 博
シモーネ:清水那由太
マルコ:小林大祐
チェスカ:塩崎めぐみ
スピネロッチョ:倉本晋児
公証人アマンティオ:香月 健
ピネッリーノ:湯澤直幹
グッチョ:寺西一真
合唱:二期会合唱団
新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
IL TRITTICO
Collection of three one-act operas IL TABARRO,
SUOR ANGELICA,and GIANNI SCHICCHI
In Italian language with Japanese supertitles
Libretto by Giuseppe Adami (IL TABARRO), Giovacchino Forzano
(SUOR ANGELICA and GIANNI SCHICCHI)
Music by GIACOMO PUCCINI
SAT. 8. 14:00 September 2018
at New National Theatre, Tokyo - Opera House (Japan)
STAFF
Conductor:Bertrand de BILLY
Stage Director:Damiano MICHIELETTO
Associate Stage Director:Eleonora GRAVAGNOLA
Set Designer:Paolo FANTIN
Costume Desiner:Carla TETI
Lighting Designer:Alessandro CARLETTI
Chorus Master:TOMIHIRA, Kyôhei
Assistant Stage Director:KIKUCHI, Yumiko
Sage Manager:MURATA, Kensuke
Production Director:MAKIKAWA, Shûichi
Associate Production Director:ÔNO, Tetsuya
CAST
IL TABARRO
Michele:KAMIE, Hayato
Giorgetta:KITAHARA, Rumi
Luigi:HIGUCHI, Tatsuya
La Frugola:SHIOZAKI, Megumi
Il Talpa:SHIMIZU, Nayuta
Il Tinca:KODAMA, Kazuhiro
Due amanti:ARAGAKI, Yukiko SHINKAI, Yasuhito
Un venditore di canzonette:TAKADA, Masato
SUOR ANGELICA
Suor Angelica:KITAHARA, Rumi
La zia principessa:NAKAJIMA, Ikuko
La badessa:SHIOZAKI, Megumi
La suora zelatrice:NISHIDATE, Nozomi
La maestra delle novizie:TANIGUCHI, Mutsumi
Suor Genovieffa:ARAGAKI, Yukiko
La suora infermiera:IKEHATA, Ayumi
Novizia / Suor Osmina:CHON, Yong Ok
La prima conversa/ Suor Dolcina:SAKAE, Chika
La prima cercatrice:KOMATSUZAKI, Aya
La seconda cercatrice:KAJITA, Mami
La seconda conversa:NARITA, Yoshimi
GIANNI SCHICCHI
Gianni Schicchi:KAMIE, Hayato
Lauretta:ARAGAKI, Yukiko
Zita:NAKAJIMA, Ikuko
Rinuccio:SHINKAI, Yasuhito
Gherardo:KODAMA, Kazuhiro
Nella:KOMATSUZAKI, Aya
Betto:ÔKAWA, Hiroshi
Simone:SHIMIZU, Nayuta
Marco:KOBAYASHI, Daisuke
La Ciesca:SHIOZAKI, Megumi
Maestro Spinelloccio:KURAMOTO, Shinji
Ser Amantio:KATSUKI, Takeshi
Pinellino:YUZAWA, Naoki
Guccio:TERANISHI, Kazuma
Chorus:Nikikai Chorus Group, New National Theatre Chorus, and Fujiwara Opera Chorus Group
Orchestra:Tokyo Philharmonic Orchestra