「指輪」の最終回を締めるに相応しい大熱演の舞台だった。休憩入れて6時間近くかかるが、長さを感じさせない。
実力派歌手陣の安定したパフォーマンスはもちろんなのだが、私としては読響の演奏が一番印象的だった。飯守さんの音楽は実に開放的で奔放だ。この作品は、半年前にヤノフスキとN響も素晴らしい演奏を聴かせてくれたばかり。コントロール鋭く、引き締まった筋肉質のヤノフスキ/N響の音と比べると、精緻さという意味では及ばないが、より自由で伸び伸びしている。読響もリスクを取ってガンガン鳴らすし、気持ちが入っているのがよくわかる。第3幕の「シークフリートの葬送曲」は、涙なしには見てられない、聴いてられない。
毎年、ヤノフスキ/N響の演奏会方式の秀演に接し、演技・演出なんかなくても良いじゃないかと思っていたのも覆された。第2幕の集まった郎党たちの合唱やブリュンヒルデの嘆き、第3幕のジークフリートの死などは演奏会方式では想像できなかった迫力がある。無時代的な演出も今回はしっくりはまっていた。
歌手陣もさすが一流どころ。第1幕だけの出演だったが、ヴァルトラウテ役のヴァルトラウト・マイヤーの歌声は劇場の雰囲気を変える輝きを持っていた。ブリュンヒルデ役のペトラ・ラングは声量がもう少しほしい場面もあったが、演技が光っていた。逆に、ジークフリートのステファン・グールドは終始安定した歌唱。悪役ハーゲン役のアルベルト・ペーゼンドルファーも安定した演技と歌唱でこういう人がヒール役をやると舞台が締まる。
今シーズンが芸術監督最終年となる飯守氏にとっても会心の出来ではなかっただろうか。
ワーグナー 「神々の黄昏」 @新国立オペラ
2017年10月14日14:00
スタッフ&キャスト
指揮:飯守泰次郎
演出: ゲッツ・フリードリヒ
美術・衣裳: ゴットフリート・ピルツ
照明: キンモ・ルスケラ
演出補: アンナ・ケロ
舞台監督: 村田健輔
ジークフリート: ステファン・グールド
ブリュンヒルデ: ペトラ・ラング
アルベリヒ: 島村武男
グンター: アントン・ケレミチェフ
ハーゲン: アルベルト・ペーゼンドルファー
グートルーネ: 安藤赴美子
ヴァルトラウテ: ヴァルトラウト・マイヤー
ヴォークリンデ: 増田のり子
ヴェルグンデ: 加納悦子
フロスヒルデ: 田村由貴絵
第一のノルン: 竹本節子
第二のノルン : 池田香織
第三のノルン: 橋爪ゆか
合唱指揮: 三澤洋史
合唱: 新国立劇場合唱団/二期会合唱団
管弦楽: 読売日本交響楽団
協力 : 日本ワーグナー協会
芸術監督: 飯守泰次郎
フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)の協力により上演
STAFF&CAST
Production:Finnish National Opera Photographer:©Karan Stuke
Conductor:IIMORI Taijiro
Production: Götz FRIEDRICH
Set and Costume Design: Gottfried PILZ
Lighting Design: Kimmo RUSKELA
Revival Director: Anna KELO
Stage Manager: MURATA Kensuke
Siegfried: Stephen GOULD
Brünnhilde: Petra LANG
Alberich: SHIMAMURA Takeo
Gunther: Anton KEREMIDTCHIEV
Hagen: Albert PESENDORFER
Gutrune: ANDO Fumiko
Waltraute: Waltraud MEIER
Woglinde: MASUDA Noriko
Wellgunde: KANOH Etsuko
Flosshilde: TAMURA Yukie
Erste Norn: TAKEMOTO Setsuko
Zweite Norn : IKEDA Kaori
Dritte Norn: HASHIZUME Yuka
Chorus Master: MISAWA Hirofumi
Chorus: New National Theatre Chorus / Nikikai Chorus Group
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
Cooperation: Richard-Wagner-Gesellschaft Japan
Artistic Director: IIMORI Taijiro