その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

バレエ「パコダの王子」 @新国立バレエ

2014-06-26 21:32:36 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 デヴィッド・ビントレー監督の退任前、最後の公演です。愛好家の方の強いお勧めもあり、スケジュール的に難しかったところをやりくりして新国立劇場へ足を運びました。お姫様が継母によってサラマンダー(トカゲみたいなもの)に姿を変えられた兄との兄妹愛を描く西洋の生まれのバレエですが、本公演はヴィントレー監督が新国立バレエの為に振付けた日本育ちのバレエです。

 お姫様を踊る小野絢子さんの優雅で安定感抜群の踊りが一番印象的でした。観ていて心温まります。力強く運動的な王子役の福岡雄大さんとのコンビネーションも良かった。また、継母の皇后エピーヌ役の湯川麻美子さんの踊りも貫禄で、迫力あって怖い。(失礼ながら、)はまり役にお見受けしました。

 ブリテンのオペラは過去に「真夏の夜の夢」と「ピーター・グライムズ」を見て、音楽が難解でとっつきにくい印象がありましたが、さすがにこのおとぎ話のバレエの音楽は聞き易い美しい音楽です。2幕のオーボエのソロも美しかった。「バリ島のガムラン音楽からインスパイアされた音楽」(新国立バレエHP)も混じったりするのも楽しめます。ただ、オケは初日ということもあってか、全体としてはちょっと安全運転すぎて、大胆さが少し足りなかった気がします。

 「日本とイギリス、二つの国の美的世界を、融合させるのではなく、同居させる形で」デザインされた舞台(新国立バレエHPより)も神秘的で、美しかった。妖怪が出てくるのも、妖怪好きの私のツボにはまりました。

 無理して行って、ホントよかったと思わせてくれた公演でした。ビントレー監督が築かれた財産を新国立バレエはしっかり引き継いで欲しいですね。


≪幕間。この日は3階席のサイド≫

芸術監督:デヴィッド・ビントレー
Artistic Director : David Bintley
音楽:ベンジャミン・ブリテン
Music : Benjamin Britten
振付:デヴィッド・ビントレー
Choreographer : David Bintley
装置・衣裳:レイ・スミス
Designs : Rae Smith
照明:沢田祐二
Lighting : Sawada Yuji
指揮:ポール・マーフィー
Conductor : Paul Murphy
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
Orchestra : Tokyo Philharmonic Orchestra


≪キャスト≫
小野 絢子 Ono Ayako さくら姫
福岡 雄大 Fukuoka Yudai 王子
湯川 麻美子 Yukawa Mamiko 皇后エピーヌ
山本 隆之 皇帝
八幡 顕光 北の王
古川 和則東の王
マイレン・トレウバエフ 西の王
貝川 鐵夫 南の王
福田 圭吾 道化



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平田オリザ 演劇展 「忠臣蔵 OL編」 @こまばアゴラ劇場

2014-06-21 09:45:12 | ミュージカル、演劇



 ロンドンで演劇の面白さに多少目覚めたところがあるので、日本でもたまには見に行きたいと思っています。どういう基準でどの公演を選べばよいのかが良く分からないのが、悩みなのですが、今回は、春に著作を読んだ平田オリザ氏の演劇に行ってみました。平田さんは、「現代口語演劇理論」という理論を通じて、西洋演劇の輸入だけでない、日本での新しい演劇様式を追求しており、私が言うまでもなく、日本の演劇界の第一人者のひとりと言えると思います。

 演劇展ということで、氏の作品4作が2週間余りの期間に、平田氏創設の劇団青年団により演じられます。私が観たのは「忠臣蔵 OL編」。主君の刃傷により、お家取り潰しの危機に直面した赤穂藩浅野家の家臣たちが、これからどうするのかを議論する場が描かれます。1時間ちょっとの作品です。

 OL編では、設定が現代の会社の休憩室に置かれ、家老を含む6名のOL武士たちが、喧々諤々の討論を展開します。切腹、籠城、討ち入りなど、関が原から100年たって失いつつある「武士道」の価値観の中で、何をどうするのか?誰もが知っている日本史のできごとを背景に、テンポ良い軽妙な口語の会話と、現代と江戸時代が混じったシチュエーションの不自然さが、リズミカルかつコミカルで楽しめます。舞台セットはどこの会社にでもあるような休憩室のテーブルと電子レンジ、そして部屋を囲むのが戦陣幕ぐらいで、とってもシンプル。効果音や音楽もないので、会話に集中できるのも良いですね。役者さんたちもみなさん熱演でした。


≪開演前≫

 ただ、この忠臣蔵は、OL編と武士編があるのですが、両者を見比べないとOL編の真の意味合いは分かったことにはならないのかもしれません。

 100名も入らないのではと思われ、役者さんの息遣いまで聞えてくるこじんまりとした劇場での観劇体験。惹きつけられるものがあります。また、他の作品も見てみたいと思います。

 2014年6月14日

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N響 6月定期演奏会 Cプロ/ アシュケナージ指揮

2014-06-17 00:12:54 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 私にとってはN響の今シーズン〆のコンサートです。この日はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とシュトラウスのアルプス交響曲。自由席も含め、あのNHKホールが完売のコンサートとなりました。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は生で聴くのは初めて。ウズベキスタン出身ピアニストのアブドゥライモフさんも初めて。写真で見ると随分落ち着いた人に見えましたが、ステージに出てきた人は随分若い男の子でした。ピアノはとっても緻密で、正確。奇をてらった演奏でなく、正統派という感じで、好感が持てます。途中、メロディの美しさと、W杯オランダ-スペイン戦の観戦で午前4:00に起きたのが合わさって、あやうく寝落ちしそうになったけど、一生懸命聴きました。この人のピアノはまた聴きたいです。

 休憩後のシュトラウス「アルプス交響曲」は生で聴くのは随分久しぶり(きっと前回は10年以上前)。大編成のオーケストラから音の塊が3階席までバンバンと飛んできて、自分もアルプス登山しているような感覚で気持ちよかった。NHKホールが小さく感じるぐらいです。特に、金管陣が頑張ってました。リスクを恐れず、一歩前に出る音が聞こえて気分爽快。楽員の皆さんの集中力もずいぶん高く感じられました。完売のNHKホールは大きな拍手で一杯でした。やっぱり満員のホールは熱気があって良いです。

 アシュケナージさんもとっても嬉しそうにガッツポーズをとってました。指揮ぶりにはいろいろご批判もあるようですが、お茶目で楽しい御爺さんで良いじゃないですか!私には、シーズンの結びをしっかりと〆てくれた演奏会でした。


《今日もホール前はイベント》

第1785回 定期公演 Cプログラム
2014年6月14日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
R.シュトラウス/アルプス交響曲 作品64

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
ピアノ:ベフゾド・アブドゥライモフ



No.1785 Subscription (Program C)
Saturday, June 14, 2014 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Rakhmaninov / Piano Concerto No.3 d minor op.30 R.Strauss / Eine Alpensinfonie op.64

Vladimir Ashkenazy, conductor
Behzod Abduraimov, piano

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西湖ロードレースに出走!

2014-06-15 18:22:49 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 何故、この日にロードレースを入れたのか?ワールドカップの日程はまだ決まってなかったのか~。最後の最後まで、家でサッカーTV観戦にするか、車走らせて西湖まで行くか、迷いに迷ったあげく、意を決して、走ることにしました。

 それにしても、週中の梅雨空がウソのような快晴。大会会場の野鳥の森公園に到着すると、爽やかな高原の風が頬にあたり、こんな6月があるのかと嬉しくなります。


≪大会会場からみる富士山。眩しいくらいです≫


≪綺麗な花も咲いていました≫

 スタートは湖畔近くから。雲ひとつない晴天で、太陽の光を受けて、ランナーの皆さんのウエアが輝いてます。4月のかすみがうらマラソン以来のレースですので、2ケ月ぶりです。


≪富士山を右手に観ながらのスタートです≫

 スタートして2キロ地点を過ぎたころから、湖畔に出ます。その美しさに息を飲みました。青空、陽を受けてエメラルドグリーンに輝く湖面、湖を囲む木々の緑。人や車の多い河口湖や山中湖ではなかなか味わえない静寂もあります。森からは蝉の鳴き声が聞こえてきたりして、もう完全な夏です。


≪もっと綺麗なんですが・・・≫

 走りのほうは、久しぶりのレースでどうもペースが掴めず苦しい状態でしたが、この好天と風景の中で走れる嬉しさに勝るものはありません。


≪西湖の東端から≫


≪何故か、殆どない雲が富士山にかかってました≫

 10時を過ぎるとサッカー日本代表の様子が気になります。途中、大会本部の人がコースを廻りながら、「日本先制しました!」と教えてくれたり、和やかムードでのレースです。


≪湖畔をランナー達が縦走する様も壮観です≫

 20キロの部は西湖を2周して、ゴールに向かいます。この最後の1キロは上りが続き、疲れた足には堪えます。途中でくじけそうになりましたが、何とか走り抜けました。手持ちのタイムは1時間54分51秒。タイムとしては平凡ですが、まあこんなものでしょう。

 距離表示やウオーターステーションもしっかりしていて、30回大会を迎えるだけの慣れた大会運営も好印象でした。是非、来年も出てみたいです。

Lap
5k   28:07
10k   54:53(26:46)
15k 1:22:15(27:21)

 2014年6月15日

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バルテュス展 Balthus: A Retrospective @東京都美術館

2014-06-12 23:18:35 | 美術展(2012.8~)


 バルテュスの絵は断片的に目にしたことがある程度だったので、特に自分の中でビットが立っていたわけでは無かったのですが、今回初めて、この画家の生涯を通じた様々な絵に触れることができました。シュルレアリスムとも取れなくもないし、マティスやピカソにも通じるところがあるような、でもどこにも属さない。モデル(主に少女)の姿勢、漫画っぽいともいえるデフォルメされた顔の表情など、個性豊かな絵が印象的です。

 ポスターにもなっている《夢見るテレーズ》は、少女と大人の女性の狭間の女性の不安定さがが緊張感あふれる空間の中に描かれていて、刺激的です。同様に、《美しい日々》もソファで胸を半分のぞかせながら手鏡を見る少女と暖炉に薪をくべる男とのコントラストが強烈。こうした着眼点が、凡人とは違うところなのでしょう。風景画や静物画もありますが、私は人物画が一番好きですね。


《夢見るテレーズ》1938年 油彩、カンヴァス 150x130.2cm メトロポリタン美術館


《美しい日々》1944-1946年 油彩、カンヴァス 148x200cm ハーシュホーン博物館と彫刻の庭


 展覧会では、画家のスイスのアトリエが再現され、また画家が着用した衣類や愛読した本などの身の回りの品々も展示してあり興味深いものでした。私もあんな美しいスイスの村で太陽と緑を浴びながら、生活出来たらなあ~と無いものねだりの欲望が起きるのでした。

 会期は今月22日までですので、未見の方は是非行かれることをお勧めいたします。

 2014年4月19日(土) ~ 6月22日(日)
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N響 6月定期演奏会 Aプロ/ 指揮 ウラディーミル・アシュケナージ

2014-06-10 22:12:01 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
アシュケナージさんの指揮を見るのは何年振りだろう。ロンドンでもフィルハーモニア管でたまに出演されていましたが、なかなかご縁が無く、随分久しぶりに足を運ぶことができました。

 今日の楽しみの一つプロコフェフィのヴァイオリン協奏曲第2番。コパチンスカヤさんを初体験です。モルドヴァ生まれとのことで、日本人好み(私だけか?)の東欧風のチャーミングな方ですが、弾きっぷりはとっても豪快でした。ただ、残念ながら、私とは波長が上手くかみ合いませんでした。大きな動きの割には音が届いてこず(貧民席にいる方が悪いのか?)、音も美しいというよりは鋭利ではあるがガサガサした感じ。逆に、オケの方は、丸みを帯びた音色で、プロコらしい緊張感が感じられず、ヴァイオリンと相補うというよりはちぐはぐな感じ。ただ、第2楽章だけは別物で、室内楽のような美しい音色には、耳をすまして聴き入りました。このギャップは何だろう~。

 しかしながら、比較的空席が多かったこの日ですが、終演後、会場からは割れんばかりの大拍手だったので、主張が明確な奏者の演奏に私が慣れていなかったのだと思います。アンコールは、ホルヘ・サンチェス・チョンの作曲によるクリン。弾きながら奏者が喋る、というか発声する短い小品でした。

 この日のもう一つの楽しみは、チャイコフスキーのくるみ割り人形第2幕。絶対、この音楽はN響と合うだろうと思っていましたが、その通り。管楽器のふくよかな響きとN響の美しい弦のアンサンブルがミックスして至福の時間でした。この音楽は理屈抜きで人を幸せにしますね。アシュケナージさんもノリノリでした。久しぶりに、愛想をふりまく元気なアシュケナージさんを見て、こちらも嬉しくなってしまいます。

 まあ、こんな幸せなコンサート体験だったのですが、ひじょうに不愉快なこともあったので、一応記しておきます。自由席のE席で、座る人の当てもない席に私物を置いて、あたかも人が来るような形で、席をブロックしていました。過去にも同様の行為を目にした経験がありますが、この日もE席の中でも良いところ(D席エリアの隣席)を、自分勝手な中年オヤジが、自分の隣席を空席にするために、私物(本とメガネケース)を置いてブロックしてました。N響の会場係はこういう不届きものを是非、しっかり注意してほしいです。自由席なんだから、一人でも多くの人が少しでも良いところで聴けるように配慮するって、当たり前のことですよね。見た目は紳士然とした男でしたが、サイテーの男です。ホント、不愉快不愉快極まりないです。今度、同じことやってたら、絶対注意してやる。


≪4階の通路からみた梅雨空。下界には冬は代々木公園が見えるのですが、すっかり葉に覆われています≫



第1784回 定期公演 Aプログラム
2014年6月8日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

グラズノフ/交響詩「ステンカ・ラージン」作品13
プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71から第2幕 「トレパーク」「あし笛の踊り」「花のワルツ」ほか

指揮:ウラディーミル・アシュケナージ
ヴァイオリン:パトリツィア・コパチンスカヤ

No.1784 Subscription (Program A)
Sunday, June 8, 2014 3:00p.m
NHK Hall

Glazunov / “Stenka Razin”, sym. poem op.13
Prokofiev / Violin Concerto No.2 g minor op.63
Tchaikovsky / “The Nutcracker”, ballet op.71 - Act II

Vladimir Ashkenazy, conductor
Patricia Kopatchinskaja, violin
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「法隆寺-祈りとかたち」展 @東京藝術大学美術館

2014-06-08 08:22:09 | 美術展(2012.8~)


 梅雨の雨の中、法隆寺所蔵の美術品や法隆寺を主題に制作された近代の絵画・彫刻を展示した法隆寺展に行ってきました。

 目玉出品の法隆寺金堂の毘沙門天、吉祥天(いずれも国宝、平安時代)を初めとして、「阿弥陀三尊像」(重要文化財、奈良時代、法隆寺蔵、伝法堂東の間)の出品取りやめの代わり(?)に特別出品された「阿弥陀如来坐像」(重要文化財、平安時代 12世紀、法隆寺蔵、三経院)、「広目天立像」「多聞天立像」(重要文化財、平安時代12世紀、法隆寺蔵、三経院)、「持国天立像」「増長天立像」(平安時代11~12世紀、法隆寺蔵)など、見ごたえたっぷりの展示品です。

 昨年、この美術館で開催された「興福寺仏頭展」でも感じたことですが、日本美術は木造彫刻が素晴らしいですね。神仏ら創作対象が持つ「神々しさ」、創作者の魂が乗り移ったような「気」、木ならではの「質」感が絶妙に組み合わされて、オーラを発しています。

 展示の中には、明治時代の廃仏毀釈の中で、法隆寺などの日本美術の文化財保護に取り組んだ岡倉天心らを初めとする東京藝術大学と法隆寺のかかわりなども展示されており、私が知らない日本美術の保存努力を知ることができ興味深いものでした。

 恥ずかしながら、私はまだ法隆寺に行ったことがありません。現地現物を見てこなきゃだなあ~。
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METライブビューイング/ ロッシーニ 《ラ・チェネレントラ》

2014-06-05 00:04:31 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

〈ライブビューイングHPより〉

 私の大好きなオペラの一つであるチェネレントラ。それに、大好きなメゾ・ソプラノのジョイス・ディドナートと生では聴いたことないけど凄いことは知っているフアン・ディエゴ・フローレスの共演とあれば、行かないわけにはいきません。

 METの実力をまざまざと見せつけられたパフォーマンスでした。美人ではないがチャーミングさ一杯のディドナートと超迫力かつ美声テノールのフローレンスは別格としても、このスーパースターの二人だけでなく、どの歌い手さんも迫力ある歌唱と個性ある演技。独唱も重唱もうっとりで、層の厚さはさすがMET。最近は新国立も腕上げてるぞ~と感じていたのですが、これをみてしまうと、残念ながらイングランドのプレミアリーグと日本のJ2ぐらいの差は感じざるおえません。ただ、あくまでもスクリーン映像ですから、音声がどこまで編集してあるのかはわかりません。こんな公演を映像とはいえ、現地と1カ月もない時差で見ることができる有り難さを感じる一方で、生で観れない、聴けないもどかしさを感じてしまいます。

 指揮はこの間N響で聴いたばかりのファイビオ・ルイージさん。意外ですが、彼がチェネレントラを指揮するのは、今回が初めてとのことでした。初めてとは思えないほど、躍動感が溢れ、生き生きとした音楽を創ってました。

 今回で2013-14シーズンのMETライブビューイングは終了。来年のプログラムの予告編を休憩時間にやってましたが、「マクベス」「ホフマン物語」といった私の大好き作品もあれば、「青髭公の城」のような是非見てみたい作品もあり、これまた楽しみです。

ロッシーニ《ラ・チェネレントラ》
指揮:ファビオ・ルイージ/ Fabio Luisi
演出:チェーザレ・リエーヴィ/ Cesare Lievi
出演:ジョイス・ディドナート(アンジェリーナ/チェネレントラ)/ Joyce DiDonato
   フアン・ディエゴ・フローレス(ドン・ラミーロ王子)/ Juan Diego Flórez
   ルカ・ピザローニ(アリドーロ)/ Luca Pisaroni
   アレッサンドロ・コルベッリ(ドン・マニフィコ)/ Alessandro Corbelli
   ピエトロ・スパニョーリ(ダンディーニ)/ Pietro Spagnoli
上映時間(予定):3時間24分(休憩1回)
MET上演日::2014年5月10日
言語:イタリア語
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宮本 輝 『満月の道: 流転の海 第七部』 新潮社

2014-06-01 15:02:38 | 


 宮本輝氏のライフワークとも言える『流転の海』シリーズの第七部が発刊されたので早速読んだ。

 第一部が刊行されてから30年が経つという本シリーズだが、著者のあとがきによると第九部で終わりになるということで、いよいよ後半である。第六部「慈雨の音」が比較的淡々と物語が進んだのに対し、本部はクライマックスに至るまでの波乱を予感させる変化が起こる。昭和36年という高度成長まっただ中の時代の空気、大阪の街の匂いを嗅ぎながら、登場人物達の汗、癖、運命を感じ、次は何が起こるのか、胸を躍らせながらページをめくる楽しさを味わえるのは、本書ならではある。

 既に第八部の執筆にかかっているそうだが、早く読みたくもあり、終わりに近づくのが寂しくもある大作だ。
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