その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

気温33℃、高低差350mに惨敗! @火祭りロードレース

2018-08-29 07:30:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)


 東京は予想最高気温36℃。ぶっ倒れリスクを心配する家族の反対を押し切って、富士吉田市で開催された火祭りロードレースに昨年に続き出場しました。今年の8月は旅行先のロンドンでは多少走ったものの、東京ではあまりの暑さにとても走れず、このレースは、11月のフルマラソン出走に向けたキックオフレースの位置づけです。

 自宅を朝6時過ぎに出発しましたが、既に暑い。ただ、台風後のためか空気が澄んでいて、中央高速自動車道の国立府中IC付近からも綺麗に富士山が望めました。途中、相模湖近辺で多少流れが悪くなったものの、現地には7:40には到着。

車を降りたとたん、降り注ぐ眩いばかりの日光に、目が開けられないほどでした。富士山麓だけあって、日陰に入ると爽やかな高原の風が心地よいですが、日向に出ると高度が高く太陽に近いためか、日差しが東京よりずっと強い。このレース3回目の出場ですが、スタート会場から富士山が見えたのは初めてです。空の青、木々の深い緑、澄んだ空気の透明感が、絶妙に組み合わさり、目に入るもの全てが輝いて見えます。









 9時半にスタート。とにかく熱中症にだけはならないようにと、おっかなびっくりで走り始めたせいか、頑張ろうとか粘ろうとかの気持ちが全く湧かず、全く気合が入らない状態。その結果、2.5k過ぎて本格的な5kの上り道に差し掛かると、すぐにGive-upして歩き初めてしまいました。何しに来たんだと?と自問自答の状態ですが、倒れて救急車行きよりはいいか。





 8.5kで折り返し、今度はひたすら下り。途中で足が吊りそうになったけど、騙し騙しで何とか持ちこたえました。



 全身から湧き出る汗が滝のよう。給水所では必ずコップを2つとって、一つは頭から被りました。エイドで貰った冷凍ブルーベリーが本当にうまかった。



 辛かったのは下り坂を降り切って、高速道沿いの14k地点から17k地点のところ。2回目の折り返しコーンを中間地点に往復3k弱ぐらいで、ここだけは平地なのですが、日陰がゼロ。私も後頭部に軽く差し込まれるような痛さを少し感じ、これはやばい。



 その後も2k近くある緩やかな上り。昨年は頑張ってここは上り切れましたが、今年は最初からと戦意まるでなし。最後、スタジアムに戻って、Finishのマークを見たときは地獄の耐久レースもやっと終わりかと、全身の力が抜けるようでした。結局、ゴールタイムは2時間22分台で自己ワースト。まあ、生き残っただけで良しとしましょう。



 2018年8月27日


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大混雑のロンドン観光スポットからのお勧め逃避場所は・・・(2018夏 ロンドン旅行)

2018-08-27 07:00:00 | 旅行 海外
 今回、3年ぶりのロンドン訪問でしたが、どこに行っても観光客で一杯で驚きました。1年で一番混み合う季節なのはわかってるんですが、想像を超える人・人で、人の多さに疲れてしまうぐらい。世界中の観光客がロンドンに集まったかのようです。

 例えば、こちらはウエストミンスター寺院。10時の開館に合わせて出かけても入るのに30分待ち。



 ナショナルギャラリーも凄い人。広いので奥のほうまで行けば落ち着きますが、入り口近くの展示室はこんな感じで、まるで東京の特別展のよう。



 大英博物館は混むの分かっていたので、開館時間の10時に行ったのですが、既にこの状態。



 ロンドン塔も午後遅めなら人も減っているかと思ったら、甘かった。15:00すぎでも、ロンドン塔内にある王室宝飾館に入るのも100メートル近い行列が出来ていて、並ぶのは諦めました。


《この写真はロンドン塔入口付近》

 そんな中で、お勧めは私の大好きなウォレス・コレクション。ここは午前中に訪れたところ、この邸宅を独り占め状態。ロンドン中心部に居るとは思えないほどの閑静な環境です。展示の絵もレベル高いし、邸宅の雰囲気も良いし、ここほどリラックスして、落ち着けるところは無いんではないでしょうか。時間があれば、中庭のレストランでの食事もお勧めです。


《名画を一人占め》

 今回は自分自身の観光のためというよりも、ガイドとしてのロンドン訪問でしたが、久しぶりのロンドンを満喫しました。個人的には里帰りしたような気分になれるのも嬉しかったです。変化は訪れるたびに感じますが、ベースのところは何も変わらないのがロンドンなのでしょう。
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ロンドン公園ジョギング (2018夏 ロンドン旅行)

2018-08-25 09:38:01 | 旅行 海外


 いつも同じこと言ってますが、やっぱりロンドンの素晴らしさの一つは、公園の朝の清々しさにあります。今回の旅行中も、朝ジョギングは欠かさず行いました。

 8月の朝6:30頃、気温15度弱で肌寒ぐらいの空気の中、太陽が公園の木々や建物を照らし始めるその情景は、世界有数の大都市の真ん中に居ながら、奇跡のような美しさだと思います。

 8月10日の朝です。


《ハイドパーク。太陽の光が木の上から段々下に降りてきます》


《ケンジントンガーデンズのイタリアン・ウォーター・ガーデンズ》


《ケンジントン宮殿に向かってGo》


《朝日があたって輝くケンジントン宮殿と白鳥》


《ハイドパークの池に初めて見る不思議なオブジェが。正直、趣味悪し》

 こちらは8月12日の朝。

《朝日が当たり始めたバッキンガム宮殿》


《ヴィクトリアの肖像が輝いてます。青空とのコントラストも見事》


《セント・ジェームス・パークの池、木々、建物の色が美しい》

 ジョギングでなくとも、お散歩でも十分楽しめると思います。
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バッキンガム宮殿 衛兵の交代式 どこで見るのがベスト?(2018夏 ロンドン旅行)

2018-08-23 07:30:00 | 旅行 海外
 ロンドン観光の代表的アイコンである衛兵の交代式。実は駐在時代も観たことなくて、今回初めてです。ガイドブックによると、始まる11時の1時間前から見物人が並び始めるとのことだったので、さらに先んじて1時間半前にバッキンガム宮殿に到着。もうすでに多くの人が到着していましたが、うろうろしている間に更にどんどん観光客が増えていきます。


《続々、観光客が到着》


《お巡りさんが人ごみを整理》

 幸か不幸か、1時間以上も立って待ち続けるには同行者の体力が持たないので、宮殿正面前のヴィクトリア女王記念碑の前の階段に座って待つことにしました。それが当たりでした。交代式の後半ハイライトともいえる、衛兵が正面門から出ていくところが目の前に見られる絶好のポジションでした。階段で平場よりも高くなっているので、見通しも良いです。


《騎馬隊が入場》


《交代に来た衛兵さんたちが入場しますが、この通りの見物客で、階段の上からでもなかなか見れません》


《宮殿の前庭で交代セレモニー》

 実際の衛兵さんたちは、失礼ながら、まさにおもちゃの兵隊さんそのものですね。ディズニーランドのパレード的なファンタジーの世界にも見えます。ただの見方としては、世界に核弾頭が15000程度あると言われたり、サイバー戦争が全盛時のこの現代に、まだこういう儀式を延々と毎日のように続けているのは、イギリスという国の伝統重視の価値観が表れていると思います。更に、広い意味での皇室コンテンツでこれだけのお客さんを集めちゃうイギリスのしたたかさを示していると思います。


《後半、正門が開くと真正面に捉えることができます》








《器楽隊の行進》

 見ての感想は人それぞれとは思いますが、見学ポジションはバッキンガム宮殿を正面のヴィクトリア女王記念碑の階段から見学されることをお勧めします。何度も見ようとは思わないでしょうが、一見の価値はありますね。

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初めてキュー・ガーデンズ(キュー王立植物園)を訪れる(2018夏 ロンドン旅行)

2018-08-21 07:30:00 | 旅行 海外


 世界遺産にも登録されているキュー-・ガーデンズですが、ロンドン在住時には訪れたこと無く、今回が初めての訪問となりました。幸い、天気にも恵まれ、素晴らしい半日を過ごすことができました。

 地下鉄ディストリクトラインでロンドン中心部から30分弱、キュー・ガーデンズ駅で下車して、徒歩5分ほどで正門(ヴィクトリアゲート)に到着します。

 とにかく広いので、訪問箇所を絞るか、巡回トロッコ車を使うと効率的に廻れるでしょう。ただ、キューガーデンズはスポットを巡るだけでなく、ゆったり散歩したり、ベンチで休んだりするだけで、その良さは十分に味わえると思います。


《この巡回トロッコに乗ると効率的です》

 名所の2つの大温室をまず訪れました。世界中の植物が栽培されており、さしずめ生きた大英博物館植物編と言ったところでしょうか。


《有名なパームハウス》


《入った途端、眼鏡もカメラも曇っちゃいます》


《パームハウスの裏はバラ園になってます》


《こちらはパームハウスより大きいテンペラート・ハウスの中》

 続いて、日本の石庭があるエリア、中国式の仏塔があるところをぶらぶら。


《日本式の石庭。正面には京都西本願寺勅使門の縮小版が立っています》


《パゴダ塔(仏塔)。階段で上まで上がると、ロンドンを一望できるらしいです(私は昇ってません)》

 ちょっと、残念だったのは、ここがヒースロー空港への航路上にあたっているため、ひっきりなしで飛行機が通過し、航空機の音が降りかかってきます。せっかくの落ち着いた植物園なのですが、この騒音は興ざめでした。



 結局、2時間半あまりの散策で、園内の1/4程度しかカバーできませんでしたが、都会ロンドンとは全く異なったリラックスした空気を楽しめました。

 帰路は遊覧船でテムズ川を下ってロンドン中心部まで戻ろうかと計画していたのですが、時刻表を読み間違えたらしく、11:00の船の次は15:00ということで、時間が合わずなくなく諦めました。


《キューガーデンズの北側を流れるテムズ川。ロンドン~ハンプトンコートを行き来する遊覧船が日に数便運航されています》

 ただ、瓢箪から駒が一つ。キューガーデンズ駅に戻って、駅隣接のパブに入ったところ、ここがとっても素敵なパブ。キューガンデンズの温室を模したと思われる部屋が付いた明るい雰囲気で、リラックスした時間を過ごすことができました。ここ、お勧めです。


《入口にパティオが》


《パティオの奥にガラス作りのダイニングルーム》


《ボリューム満点のバーガー》
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BBCプロムス パッパーノ/サンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団/マーラー交響曲第1番ほか @ロイヤル・アルバート・ホール

2018-08-18 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 今旅行で2つ目にして最後のプロムスは、パッパーノ大将が音楽監督を務めるローマのサンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団の公演となりました。サンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団は、ローマ旅行した際に聞いて以来2回目。楽団名をそのまま訳すと「サンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団」ですが、ネットでみると「サンタ・チェチーリア・アカデミー国立管弦楽団」と「国立」と付けるのが一般的のようで、違いは良くわかりせんが、同じ楽団をさしているようです。「管弦楽を専門に演奏するイタリア最古のシンフォニー・オーケストラ」とのこと。

 プログラムは非常に興味深く、ハイドンの創世記<混沌>に始まって、バーンスタインの交響曲第1番『エレミア』)(ヘブライの預言者)と続き、そしてマーラーの交響曲第1番で締まります。プログラムによると、バースタインの生誕100年を記念してバースタインの曲を挟んで、彼が得意としたハイドンとマーラーの曲を置いたとのことでした。

 個人的には、初めて聴いたバーンスタインの交響曲第1番『エレミア』が特に印象的でした。創世記との連続性を意識してなのか、創世記<混沌>からそのままアタッカで『エメリア』が始まりました。第1楽章Prophecy(預言)は静謐で宗教的な精神を感じる音楽。そして、第2楽章Profanation(冒涜)はジャズ風のリズムも取り入れた異教徒の祭礼が表現されます。そして、第3楽章Lamentation(哀歌)では、エリザベス・デション (Elizabeth DeShong)が清廉なメゾ・ソプラノの歌声で、ヘブライ語の哀歌を歌い上げました。ナチスのホロコーストが行われている時代に作曲されたこの曲、ユダヤ人としてのバースタインの誇りやプロテストを感じさせるものでした。

 後半のマーラー交響曲第1番は前半とはうって変わって、ストレートで開放的な演奏でした。この曲、最近ではパーヴォさんとN響で聞いていますが、パーヴォさんのようなひねりは無く、明るく素直な<巨人>。パッパーノ大将のリズム・歌が、そのまま音楽に乗ってくる感じです。コンマスのバイオリンがやたら良く聞えてきました。

 前夜を大きく上回る終演後の拍手に応えて、アンコールは2曲もやってくれました。1曲目は聞いたことがあるが曲名はわからず、2曲目はウイリアムテル序曲。ホント、ノリノリで楽しい。

 3年ぶりのプロムスでしたが、全く変わらない音楽を心底楽しむ雰囲気を十二分に堪能しました。思いっきりデカ音での携帯電話の呼び出し音が鳴ったり、ホールに響き渡るような咳の音が遠慮なく頻発したりで、もう日本のコンサートホールでは目をひん剥いたファンの非難を浴びそうな聴衆マナーも、全体の楽しい雰囲気に紛れてしまいます。平土間の立ち席前方に陣取る熱烈ファンやビールやワインやジン・トニックを片手に音楽を聴くアリーナやボックス席の聴衆も、この場で音楽を共有する喜びが滲み出てる。やっぱりBBCプロムス最高ですね。

 2か月にわたるプログラムを見渡すと、純クラシックのコンサートから、クラシック以外のジャンルの音楽も混ぜ合わせたプログラムが増えた印象があります。世の変化とともに、プロムスも変わっていくのでしょう。






Prom 37: Orchestra of the Academy of Santa Cecilia & Sir Antonio Pappano

19:30 Fri 10 Aug 2018 Royal Albert Hall

Programme
Joseph Haydn: The Creation – Chaos(6 mins) Leonard Bernstein: Symphony No. 1 'Jeremiah'(25 mins) Gustav Mahler: Symphony No 1 in D major(56 mins)

Performers
Elizabeth DeShong: mezzo-soprano
Orchestra of the Academy of Santa Cecilia, Rome Sir Antonio Pappano: conductor

Bernstein’s emotive First Symphony is the work that put the young composer on the map. Antonio Pappano and the Orchestra of Santa Cecilia here pair it with another symphonic debut – Mahler’s arresting, visionary First Symphony.
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BBCプロムス サロネン/フィルハーモニア管/ワーグナー〈ワレキューレ 第一幕〉ほか @ロイヤル・アルバート・ホール

2018-08-16 07:28:58 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 3年ぶりにBBCプロムスに参戦。ロイヤルアルバートホールは一部、補修工事のテントが被せてあり、ケンジントンガーデンズ側から見るとちょっと不細工だったが、中の熱気は全く変わってなかった。今回は滅多に来れないイベントなので、奮発してアリーナ席を確保。

 サロネンとフィルハーモニアはちょくちょく来日しているけど、お財布上厳しいのでいつもパス。なので、このコンビを聴くのは6年ぶりである。第2ヴァイオリンの次席に昇格していた(?)フィオーナ嬢とも6年ぶりの「再会」を果たし、大満足。あと、サプライズとしては、ヴィオラの首席にYukiko Oguraさんという日本人奏者が就いておられた。

 プログラムの方は、前半はアントン・ヴェーベルン(ウェーベルン)とマーラー交響曲10番アダージョが、アタッカで演奏された。どちらも、「死」を意識させる暗い音楽。緊張感ほとばしる演奏であったのだけど、丁度、日本の未明の時間帯にあたるためか、強烈な睡魔に襲われ、ダウン。もったいなかった。

 後半はワーグナーの「ワルキューレ」から第1幕。Anja Kampe(アンヤ・カンペ)の透明感のあるソプラノとFranz-Josef Selig(フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ)の迫力満点の低音が圧倒的。この2人に比べると、Robert Dean Smith(ロバート・ディーン・スミス)はやや弱く聞こえたが、それでも表現力豊かな歌唱はさすが(2015年東京春祭の<ワルキューレ>で同じジークムント役で聞いてますね)。サロネンとフィルハーモニアの演奏はスタンダードなものであった。

 終演後に大きな拍手や口笛で感動を表す聴衆、特に足踏みでカーテンコールを促す平土間席の面々たちによって醸し出される雰囲気はプロムスならでは。庶民的でフランクなこの音楽祭の雰囲気、やっぱ、ええわ~。




Prom 36: Mahler, Wagner and Webern

19:30 Thu 9 Aug 2018 Royal Albert Hall

Programme
Anton Webern: Five Pieces for Orchestra, Op. 10(6 mins)
Gustav Mahler: Symphony No 10 – Adagio(24 mins)
Richard Wagner: Die Walküre – Act 1(66 mins)

Performers
Anja Kampe: Sieglinde
Robert Dean Smith: Siegmund
Franz-Josef Selig: Hunding

Philharmonia Orchestra
Esa‐Pekka Salonen: conductor

Esa-Pekka Salonen and the Philharmonia Orchestra take a journey from the aphoristic brilliance of Webern through the bittersweet beauty of Mahler’s unfinished Tenth Symphony, to Wagner’s expansive music-drama Die Walküre.

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伊藤 穰一, アンドレー・ウール 『教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン』 (NHK出版新書 2018)

2018-08-04 07:34:55 | 



現代世界のテクノロジー界のグルの一人と言って過言ではない、MITメディアラボの所長を務める伊藤穣一氏による、「テクノロジーが変えつつある世界をきちっとした視点をもって見る」ことを意図した一冊。新書版で平易な語り口で記述されている。

 伊藤氏の著作ということで期待して手に取ったのだが、最初の読後感は、正直なところ、やや期待外れというものであった。新しい論点が提示されたり、内容的には目から鱗が落ちるような記述があったわけではなく物足りなく感じたためである。

 だが、よくよく考えてみると、私が本書に何らかの「回答」を期待する読み方をしていたためだと思う。本書は、あくまでも考えるためのきっかけ、切り口を与えてるための本だと考えたい。

 例えば、AIにより労働はどう変わるのか?「自分の生き方の価値を高めるためにどう働けばいいのか」という新しいセンシビリティ、ミーニンフオブライフが重要になるが、それにあなたはどう考えるのか。

 AI、VR、ARなど科学技術を使って人間の身体や認知能力を進化させ、人間を全れのない状態にまで向上させようという「トランスヒューマニズム」の思想が広がってきている。筆者は必ずしもその考えに組しないが、人間と人間を区分けする一線は何なのか?といった「そもそも論」が重要になってくる。・・・と言った内容である。

 後半は日本・日本人への批判でもあり、裏返しのエールでもある。日本のプロセス重視、空気による支配と言った社会のシステムは変えるべき時に来ている。そして、2020年の東京オリンピックという機会を活かして、現代の課題を解決に向けた「ムーブメント」を起こしてほしいという期待だ。

 答えを考えるのも、行動を起こすのも、我々、読者しかないということだ。

目次

はじめに
第1章「AI」は「労働」をどう変えるのか?
第2章「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?
第3章「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?
第4章「人間」はどう変わるか?
第5章「教育」はどう変わるか?
第6章「日本人」はどう変わるべきか?
第7章「日本」はムーブメントを起こせるのか?
あとがき
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