その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

週末台北弾丸旅行(2018年10月)

2018-12-31 09:49:10 | 旅行 海外
 今年も1年お世話になりました。気が付いてみたら、ブログ開設からこの12月で丸10年が経ちました。イギリスでの単身赴任者が日本の家族あてに近況を知らせるのを主目的で始めた本ブログですが、帰国後もだらだらと続いており、私にとっても一つのライフログとなりつつあります。そんな本ブログにお付き合いいただきありがとうございます。

 さて、年が変わる前に、今年の個人的に大きなイベントの一つであった台湾への週末弾丸旅行のスナップだけアップしておきます。夏休みに家族と旅行に行けなかったので、10月の連休を使って、2泊3日で台北を訪れました。台北は4回目なので、マイペースでぶらぶらしながら、米国留学時代の同級生家族と再会したり、安くておいしい料理を食して過ごしました。

 いくつか、台北のレトロ建築を撮影。


《台湾大学付属医院旧館。竣工1924年:今も病院として使われてます》


《濟南基督長老教会:中山南路に面してます。1916年竣工。日本統治時代に日本基督教団台北幸町教会として建てられたものとのことです》


《中華民国総統府。1919年設置。建国記念日近くだったため建物の前にステージが架設》


《横から見ると・・・》


《国立台湾博物館。1908年建築》


《西門紅楼 1908年竣工 西門町の中心の複合商業施設として使われてます》


《台北市立図書館 北投分館:こちらは2006年竣工なのでレトロではありませんが、「CNNが選ぶ世界で最も美しい図書館」にランクインしたとのこと》


《周囲が工事中で防御シートがかぶせてあったのは残念》

 続いて、台北の夜の風景。


《台北の夜と言えば士林市場。相変わらず凄い人出です》


《台北101の近く》


《若者で賑わってました》

 最後にB級グルメ。夜の写真は友人家族と一緒だったので写真はパスして、自分で選んで食べたものは・・・。


《何を料理しているのか?》


《魚の姿煮が最高!》


《こちらは電気屋街で通りがかった餃子店》


《世朴な茹で餃子が旨いし、安い》

 過去の台北訪問はいずれも8月で倒れそうな暑さだったのですが、10月は暑くなく、寒くなく絶好の観光シーズンでした。


 皆様、良いお年をお迎えください。

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いとう せいこう, みうら じゅん 『見仏記2・3・4』 角川文庫

2018-12-30 07:18:16 | 
   

 『見仏記』が抜群に面白かったので、シリーズ化されている続編も読んでみた。『見仏記2 仏友篇』、『見仏記3 海外篇』、『見仏記4 親孝行篇』と続いているのだが、いとうとみうらの二人が、仏像を求めて四国・佐渡らに足を延ばし(見仏記2)、さらに韓国・中国・タイ・インドまで行脚し(見仏記3)、二人の親までを夫々ご案内する(見仏記4)という企画になっている。

 どれも仏像鑑賞以上に、二人の珍道中記録が面白い。いとうの文体やみうらのイラストの影響もあると思うのだが、若気と大人気が同居し、かつ時代背景的に昭和を引きづった二人のやりとりの明るさ、緩さがなんとも良い。自分よりは世代は上の二人だが、同時代を生きた匂いが漂う。この二人の会話の受けとめの肌感覚は世代にとってかなり違うんではないか。

 このシリーズ、この後も続き角川文庫では7巻まで発刊されている。ただ、連続して読むと、やや飽きてくるので、ちょっととりあえずここらで一服して、4巻以降に備えよう。
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グロービス経営大学院 『ビジネススクールで教えている武器としてのITスキル』 東洋経済新報社、2018

2018-12-29 07:32:21 | 


 ITをどう活用するかが企業の生命線になりつつある今、ビジネスパーソンはスキルをどう磨いていけばいいのか、マーケティングやリーダーシップといった従前のビジネススキルもITによってどう変化していくのかについて解説したビジネス書であり自己啓発書でもある。

 内容は若手社会人向けだが、世のIT化の流れに出遅れてしまった感を持っている中堅・ベテラン社会人にも有用。インターネットやパソコン、ソフトウエアについて使い方の本や技術論はあったものの、ビジネスパーソンとしてどうITに向き合い、マインドや行動をどう変えていくかという切り口でのビジネス書は今まで見たことが無かったので、流石、グロービスだと感心した。

 私としては、是非、今回の内容を更に深めた中級編・上級編を発刊して欲しい。


PROLOGUE ITスキルは最強の戦闘力になる
1 コンピュータ+データの基本スキル(コンピュータを用いた問題解決の方法
簡単なプログラムを書く
データを効率的に扱う ほか)
2 戦略・マーケティングの基本スキル(業務の生産性をあげる
ネットワークの経済性を理解する
プラットフォーム型ビジネスを作る ほか)
3 リーダーシップ・組織の基本スキル(ビジョンを理解し、課題を設定する
新しい変化を作り出す
よきフォロワーとなり、人やデータに学ぶ ほか)
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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第九特別演奏会 2018 (指揮:高関 健)

2018-12-28 23:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 会社の仕事納め(納会)が予想外に早く終わったので、上野に寄り道したら、当日券が多少残っていたので参戦。

 メジャーなオケは第九しかやらない中、シティ・フィルは良心的な二本立て。

 前半のモーツァルトのオーボエ協奏曲の独奏イ・ユジンさんは、2017年第34回日本管打楽器コンクール オーボエ部門で第1位を獲得したとのこと。若手の今後が期待される奏者です。残念ながら、納会のアルコールが廻って、集中して聞けませんでした。ごめんなさい。

 後半の第九は高関さんの指揮は奇をてらうことのない折り目正しい正統的なアプローチでした。数年ぶりに聴くシティフィルは、気合満点で熱の入った演奏でした。独唱・合唱陣も不足なく、1年をしっかり締めくくって頂きました。


第九特別演奏会 2018
2018/12/28 (金) 19:00開演 [18:15開場]

会場:東京文化会館 大ホール

出演
指揮:高関 健
オーボエ:イ・ユジン
ソプラノ:半田 美和子
メゾ・ソプラノ:池田 香織
テノール:宮里 直樹
バリトン:大西 宇宙
合唱:東京シティ・フィル・コーア
(合唱指導:藤丸 崇浩)

Ken Takaseki,conductor
Yoojin Lee,oboe
Miwako Handa,soprano
Kaori Ikeda,mezzo soprano
Naoki Miyasato,tenor
Takaoki Onishi,baritone
TCPO Chor,chorus
(Takahiro Fujimaru,chorusmaster)

モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
ベートーヴェン:交響曲第9番 二短調 作品125「合唱付き」
W.A.Mozart:Oboe Concerto in C major, K.314
L.v.Beethoven:Symphony No.9 in D minor, Op.125 "Choral"
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第9ボイコット運動挫折・・・マレク・ヤノフスキ指揮/N響/ベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」

2018-12-27 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


歳末ぼったくり演奏会に抗議の意を表し、個人的に年末の第9ボイコット運動を続けて6年。今年、ついにボイコット連続記録が途絶えました。ヤノフスキさんが振る第9にあがなえず。

東京春音楽祭で緊張感あふれる素晴らしいワーグナーのリングシリーズを毎年聴かせてくれたヤノフスキさん。第九を振るとどうなるのか、興味津々で、1週間後には紅白歌合戦が行われるホールへ飛び込みました。

早めに到着してプログラムに目を通している驚きの指揮者インタビュー記事を発見。ヤノフスキさんによると、第9では第4楽章は大事ではなく、第3楽章が最も大事だとのこと。昔から、第三楽章が大好きな私にはこのコメントに否が応でも期待が膨らみます。

ほぼ満員のNHKホールは活気があっていいです。聴衆もいつもの定期演奏会と違って、ドレスアップしていたり、カップル・小さい子供連れ家族の方も多数いらっしゃいました。正直、通常のN響の定演はとっても地味なので、こういう雰囲気に定期演奏会もならないのかなあと、ちょっぴり残念です。

相変わらず、愛想のない表情で登場したヤノフスキさんでしたが、第一楽章が始まると、その引き締まった音楽にググっと引き込まれました。私が聴いた中で、最も新幹線のぞみクラスだったのは、ガーディナーとLSOの第9でしたが、それに比べれば在来線の特急ぐらいです。でも、昔のいわゆる巨匠のストロングスタイルと比べると、テンポは早い方でしょう。でも丁度心地よいぐらいのスピード感。倍管で揃えたN響はしょっぱなからアクセル全開という感じでした。

第二楽章も軽快かつ重厚に音楽は進みます。時折、第9ってこうだっけ?と思わせるようなハッとするようなパーツがあります。くどくはないが、しっかり聴かせるヤノフスキさんの指揮はまさに職人です。

そして、注目の第3楽章は至福の時間でした。人間が作った音楽とはとても思えない、天上の音楽が目の前で展開されています。クラリネットとファゴットの演奏があまりに美しく、自ら昇天してしまいそう。私の葬式には、絶対第3番英雄の第二楽章ではなく、第九の第三楽章をかけてほしいです。先日上野で観た、フェルメールの絵における女性のガウンの首周りのフワフワや絨毯のようなきめ細かさを感じます。

そして、「重要でない」はずの第4楽章は、それでもやっぱり重要でした。トーキョーオペラシンガーズの合唱は力強く芯があります。パット見、男性45名、女性55名の総勢100名の合唱団でしたが、100名もいなくても良かった感じ。オケよりも合唱が強すぎた感はありましたが、それでも透き通った合唱は第九ならではの感動を与えてくれました。独唱陣も全く文句なしです。

「定例」の年末第九なのでしょうが、私にはオーケストラのどのメンバーからも、シーズン終わりの消化試合みたいな雰囲気は全く感じませんでした。むしろ、「皆さん、定演より気合入っていませんか?」と思ったぐらい。これも、ヤノフスキ翁が厳しく仕上げているところもあるのでしょうね。

終演後は大満足の大拍手。私も拍手しながら、横綱の第九だと思いました。ロンドンでも様々な楽団から複数回第九を聞いて来ましたが、欧州勢に決して引けを取らない演奏だった。まさに一年の締めくくりに相応しい。

これで来年以降、毎年第9に行き始めるかどうかは別ですが、今回の第9には降参しました。(チケットは、同じエリアで定演の1.5倍以上高いけど)今日の演奏会はぼったくりとは思わない。私の負けでした。でも、この演奏会が1年の締めくくりで本当に良かったと思わせてくれる演奏会でした。






ベートーヴェン「第9」演奏会
2018年12月24日(月・休) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」


指揮:マレク・ヤノフスキ

ソプラノ:藤谷佳奈枝
メゾ・ソプラノ:加納悦子
テノール:ロバート・ディーン・スミス
バリトン:アルベルト・ドーメン

合唱:東京オペラシンガーズ

Beethoven 9th Symphony Concert
Monday, December 24, 2018 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Beethoven / Symphony No.9 d minor op.125 “Choral”

Marek Janowski, conductor

Kanae Fujitani, soprano
Etsuko Kanoh, mezzo soprano
Robert Dean Smith, tenor
Albert Dohmen, baritone


Tokyo Opera Singers, chorus
コメント (2)
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蒼井優さん圧倒的・・・作:デイヴィッド・ヘア、演出:小川絵梨子「スカイライト」 @新国立劇場小劇場

2018-12-25 07:30:00 | ミュージカル、演劇



 本年最後の観劇。今年の新国立劇場の演劇では、前半に「赤道の下のマクベス」と「1998」という2つの力作を堪能した。9月から新芸術監督に小川絵梨子さんを迎え新シーズンが始まっているが、その小川さんの芸術監督就任後の初演出作品ということで、期待感一杯で新国小劇場へ足を運んだ。

 総出演者3名、舞台は2名の会話劇のみで構成される、以前に不倫関係にあった二人の男女を巡る話である。休憩含めて2時間40分たっぷり堪能した。

 まずは台本の完成度の高さが印象的だった。不倫男女の過去と現在の時間軸と社会階級(クラス)に起因する価値観軸の2軸が交差する中で、緊張感あふれる会話が展開される。状況こそ全く違うが、身につまされる二人の男女の会話の成り行きは、冷や汗さえ感じた。普段あからさまな形では表面には出ないが、歴然と存在するイギリス/ロンドンのソーシャルクラスの価値観差、地域差も織り込まれて、話に深みを与えている。

 また、俳優陣の熱演あってのこの舞台である。特にでずっぱりの蒼井優さんには目が釘付けだった。生で拝見したのは初めてであるし、CMやドラマで時折目にはするものの、女優として蒼井さんを注目して見たのは映画「フラガール」ぐらいで、その外見からほんわりとした癒し系キャラを勝手にイメージしていたのだが、本舞台における彼女は、切れの良い台詞回しと気持ちの入った演技が嵌っていて、女優としての高い存在感に感銘を受けた。ちょっと、これから追っかけさせてもらうかも。男優陣も浅野雅博さんは成り上がったミドルクラスの起業家を上手く演じていた。

 会場は中央に舞台を置き、ワインヤード式に観客が舞台を囲むような構成。お蔭で2階のバルコニー席からも良く見えたし、会場の一体感も感じる舞台になっていた。

 演劇界には全くのド素人なので深くは知らないが、国立劇場と名の付く劇場が小川さんのような若手演出家を芸術監督に登用するなんて相当ハードル高い意思決定だったのだと想像する。その決断が正しさを示す上々の初演出舞台だったのではないか。今後是非小川さんの演出作品には足を運んでみたい。


《舞台模型》

スタッフ
作:デイヴィッド・ヘア
翻訳:浦辺千鶴
演出:小川絵梨子
美術:二村周作
照明:松本大介
音響:福澤裕之
衣裳:髙木阿友子
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:福本伸生
キャスト
蒼井 優 葉山奨之 浅野雅博

Staff
Written David HARE
Translated URABE Chizuru
Directed OGAWA Eriko

Cast
AOI Yu
HAYAMA Shono
ASANO Masahiro

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いとう せいこう, みうら じゅん 『見仏記』 (角川文庫、1997)

2018-12-23 07:30:00 | 


 先日読んだ中公新書の『仏像と日本人』に、いとうせいこうとみうらじゅんの『見仏記』が、現代において新しい仏像鑑賞の方法を示したものとして高く評価されていたので、どんなものだろうと思い手に取ってみた。マスメディア経由で両氏の名前こそ知っているものの、その著作や作品には触れた機会が無く、私としては初顔合わせ。本書は、子供時代から仏像鑑賞に親しんできたみうらじゅんさんと、仏像鑑賞入門者のいとうせいこうさんが一緒に、全国の仏像巡りをするイラスト付き旅行記である。

 仏像鑑賞以前に、2人の会話のストロークが可笑しい。学生の時に交わしたような軽い、言葉遊び的なやりとりにも見えるが、お互いを察する大人らしい相手への思いやりも感じられる。異なった個性・能力が織りなすインプロビゼーションだ。

 仏像鑑賞についても、まずは自らの感覚で捉える両氏の鑑賞スタンスが、肩ひじ張らず、非常に好感が持てる。私が訪れたことのあるお寺、見たことある仏像も、多く含まれているのだが、確かにそういう印象だったなあ~とか、なるほどこう表現するのか・・・と感心しきりだった。同じような感覚・感想を持っても、伊藤氏の文章は表現がさすがプロである。平易ななかに、仏像の魅力を伝える技には感嘆させられる。また、みうら氏のイラストも漫画チックに仏像見学の面白さ、楽しさが表現されている。

 これを読めば、仏像見物に出かけたくなることは請け合いの一冊。

目次
奈良 興福寺・東大寺
奈良 法隆寺・中宮寺・法輪寺・法起寺・松尾寺
京都 六波羅蜜寺・三十三間堂・東寺
東北 慈恩寺・立石寺
東北 立花毘沙門堂・万蔵寺・成島毘沙門堂
東北 毛越寺・中尊寺・黒石寺
阿弥陀如来の基礎知識
奈良 新薬師寺・五劫院・東大寺戒壇院・浄瑠璃寺
奈良 宝生寺・当麻寺・聖林寺
奈良 薬師寺・唐招提寺・西大寺 ほか
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指揮:アラン・ギルバート/都響/スペイン・プログラム 

2018-12-21 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


月初めに聴いたアラン・ギルバートと都響の演奏会がとっても良かったので、Aプログラムにも突撃。幸運にも前回味を占めた前方のかぶりつき席(前列2列目)がゲットできました。プログラムは、スペインを舞台にした3作品ですが作曲者にスペイン人はいないという面白いプログラム。

 冒頭のドン・キホーテは過去に2回ほど生で聴いたことがありますが、今一つ馴染みにくい印象がありました。今回は、チェロのソロを弾くターニャ・テツラフさんが目の前というラッキーシートだったためターニャさんをガン見、ガン聴。チェロの深く美しい音色に引き込まれました。近いだけに、ターニャさんが注意深く指揮者、共演のヴァイオラ、背後のコンミスさんと息を併せようとしているかも良く分かる。
 指揮者を挟んで対象に立つヴィオラの鈴木さんのヴィオラの音色も負けずに際立っていました。加えて、かぶりつき席では弦の綺麗なアンサンブルが良く聴こえます。この音楽って、こんなに美しく、変化に富んだものだったということを初めて認識。今日をきっかけにこの曲の良さが分かり、好きになった次第です。

 後半の冒頭は「カルメン」からアランセレクション。こちらは表現豊かで、煌びやかなカルメンでした。生き生きとし、生命感にあふれる演奏。あまり比較はしたくないですが、11月に観劇した新国の「カルメン」がこのぐらいの演奏だったらなあ~と思わせるほど。2列目席からは全く見えないソロパーツの管楽器も大活躍。

 ラストのリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」は楽しさと活力溢れる演奏。躍動感、色彩感豊かで、体が自然と動いてしまうような音楽です。アランはオケの盛り上げが上手いですね。規律をしっかりとるところと、楽員に伸び伸びと自主的に行かせるところのバランスが良いです。

 3曲通じてスペインの雰囲気をたっぷり味わいながら、楽しくウキウキの2時間を堪能した演奏会でした。多分に偶然に左右されて足を向けた2つの12月の都響定期でしたが、私には年末の素晴らしいクリスマスプレゼントでした。これ以上、定期会員になることは時間的にもお財布的にも許されないのが残念ですが、来年以降どうするかの悩みが一つ増えてしまいました。


第870回 定期演奏会Aシリーズ
場所:東京文化会館

出演者
指揮/アラン・ギルバート
チェロ/ターニャ・テツラフ *
ヴィオラ/鈴木 学 *

曲目
R.シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》op.35 *
ビゼー:『カルメン』組曲より(アラン・ギルバート・セレクション)
前奏曲(闘牛士)/第1幕への序奏/アラゴネーズ/ハバネラ/闘牛士の歌/間奏曲/密輸入者の行進/ジプシーの踊り
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34

Subscription Concert No.870 A Series
Date: Wed. 19. December 2018, 19:00
Venue: Tokyo Bunka Kaikan

Artists
Alan GILBERT, Conductor
Tanja TETZLAFF, Violoncello *
SUZUKI Manabu, Viola *

Program
R.Strauss: Don Quixote, op.35 *
Bizet: Selections from Carmen Suite
Rimsky-Korsakov: Capriccio espagnol op.34


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Amazon Goに行ってきた! @サンフランシスコ

2018-12-19 07:30:00 | 日記 (2012.8~)
 先月、今年3回目のシリコンバレー出張の際、開店間もないサンフランシスコのAmazon Goを訪れました。Amazon Goとは、Amazonが出店したリアルな(コンビニ風)スーパーです。レジ無しで支払い(決済)を済ませることができるということで、未来型店舗としてIT、ネット系の業界で注目のお店です。アマゾン本社のあるシアトルやシカゴに既に開店済みですが、この10月にサンフランシスコにもオープンしました。IT業界に身を置く者として、シリコンバレーに来たからには、見てみようということで、現地の駐在員の方にお願いして、連れて行っていただきました。


《お店の前》

 一日の打ち合わせ終了後に出かけたので、到着したのは夜8時過ぎ。入店には、米国のアマゾンプライム会員で、専用アプリをスマフォにダウンロードしておく必要があります。日本ではプライム会員ですが、流石にアメリカのプライム会員でない私は、同行の駐在員さんのスマフォをお借りして入口ゲートから入場。スマフォは使いまわしができるので、ゲートを通過したら、次の人にスマフォをパスすれば複数人で入れます。

 9時閉店ということもあってか、店内は随分空いてました。むしろ店員さんのが多いのではと思うほど。レジのない無人店舗というイメージがあったのですが、店内には店員さんが結構いて逆にびっくり。棚の整理や商品の搬入などにいそしんでました。

 品ぞろえは普通のスーパーとほぼ同じ。ナショナルブランドやローカルブランドのお菓子、調味料、日用品などなどが置いてあります。サンドイッチやカットフルーツなどの食料品もありました。手にとっては見ては棚に戻したり、お土産用に10個ばかり取ってはやっぱり半分でいいやということで5つ棚に戻したり、買い物行動は意識してみると我ながら結構複雑です。





 レジが無いので、買い物かごがあるわけではなく、棚から取って勝手に自分のバックに入れます。そして、一通り欲しいものを自分のカバンに入れたら、入ったゲートをそのまま逆方向に退場。これって、やったことないけど、いわゆる「万引き???」の感覚。まさにお店の壁に掲げるスローガン”Just Walk Out"通りです。



 そして、5分後には、スマフォの持ち主である駐在員さんのアマゾンアカウントにしっかり課金がされていました。取って戻したチョコレートの数もしっかりあってました。

 これどうやって実現しているのか?IT事業者としては気になるところですが、流石にここは企業秘密でアマゾンも公開していません。ただ、秘密は天井につるされたセンサーやカメラにありそうです。業界メディア情報によると、顔認証はプライバシー上の問題もあり、やっていないらしいです。それにしても、キツネにつままれたような感覚とはこのことでしょう。まさに未来の買い物体験でした。



 先日、日経新聞には、小売業の生産性という観点で米国らに比べて遅れている日本でも、生産性向上を狙ってセブンイレブンが無人レジ店舗を実験的に始める予定との記事がありました。しかし個人的にはこの記事には大いに違和感がありました。少なくともAmazonGOの狙いは生産性向上には見えなかったからです。この無人レジ店舗は、消費者行動のデータ収集が目的で、ここで集まったデータが、店舗やオンラインでの次の買い物行動やマーケティングに使われるのだと思います。レジ打ちさんの省力化で、あれほどのセンサー等への店舗投資をやるとは思えません。生産性向上の視点でこのビジネスを捉えるのは、本質を見誤っているでしょう。

 出張のおまけであったAmazon Go訪問ではありましたが、壮絶な刺激を受けたひと時となりました。

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やっぱり行ったほうが良い・・・フェルメール展 @上野の森美術館

2018-12-17 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 諸説はあるようですが、現存作35点といわれるフェルメール作品を9点がいっぺんに観られる(会期中に入れ替えがあるようなので同日で見られるのは8点)という「日本美術展史上、最大の「フェルメール展」」というふれこみのフェルメール展に行ってきました。日時指定入場制というシステムと、入場料2500円!(音声ガイド込み)というのも、日本では例がないよう。

 フェルメールの作品以外にも、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンらのオランダ絵画の有名画家らの作品も揃え、全盛期とも言える17世紀のオランダ絵画から、人物画、静物画、風俗画らが多数展示されています。

 朝一の9:30入場のチケットを事前購入し、9:15には美術館に到着しましたが、既に100m弱ぐらいの行列ができていました。それでも、9:30に入場でき、入場するや否や、会場の一番奥にあるフェルメールルームへ直行。

 フェルメール作品を8品揃えたフェルメールルームは圧巻でした。多くは、日本やヨーロッパの美術館で見たことのあるものでしたが、物理的に世界で一枚しか存在しない絵画たちと再会できる喜びはこの上ないです。「牛乳を注ぐ女」、「真珠の首飾りの女」などの丁寧で繊細なタッチで、瞬間を切り取りながらも永続性を感じる絵画は、ため息をつかざるを得ません。「手紙を書く女」、「手紙を書く婦人と召使い」などは初見でした(学生時代にワシントン・ナショナル・ギャラリーもメトロポリタン美術館も行ったけど記憶なし)。「手紙を書く女」のモデルの喜びの表情や黄色のガウンのフワフワ感が何とも上品です。惜しむらくは、柵があって1メートル以上離れた場所からの鑑賞だったので、細かいタッチまでの鑑賞はなかなか難しかった。よく拡大鏡を覗いて鑑賞されている方が居ますが、私も買ってみようかしら。

 フェルメールルームが混み混みになる前にじっくりフェルメールを見た後は、振出し(入口)に戻ってフェルメール以外の作品を順番に鑑賞しました。もともとさほど広くない美術館なので、時間指定制の意味があるのか?と思うほどの混雑ぶりでしたが、私の好きなオランダ風俗画を中心に楽しみました。

 値段は張るものの、フェルメール8点は確かに貴重な機会です。お勧めします。

第1章 オランダ人との出会い:肖像画
第2章 遠い昔の物語:神話画と宗教画
第3章 戸外の画家たち:風景画
第4章 命なきものの美:静物画
第5章 日々の生活:風俗画
第6章 光と影:フェルメール
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東野 圭吾 『真夏の方程式』 (文春文庫、2013)

2018-12-15 08:31:03 | 



 家人の本棚から拝借。先日読んだ『手紙』が良かったので、東野圭吾のミステリー小説をもう一冊読んでみた。湯川教授が登場するガリレオシリーズの一つ。福山雅治が主人公を演じる映画にもなっている。

 単なる謎解きでなく、自然保護と資源開発の対立軸を据えた状況設定や湯川教授と少年との心温まる交流が上手く織り込まれ、質の高いミステリーとなっている。謎解きの方も、私には終盤を迎えるまで、見当つかず、ページがどんどん進んだ。

 痛勤電車が全然苦にならなくなる一冊。
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慣れないかぶりつき席で大興奮! アラン・ギルバート/都響/ストラヴィンスキー「春の祭典」他 @サントリーホール

2018-12-12 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 都合で行けなくなった知人から都響定期のチケットを譲っていただき、私としては珍しい平日の演奏会へ。行ってびっくり、なんと1階センターブロックの前から2列目。こんなかぶりつき席は何年ぶりだろうか?定期演奏会の自席という概念が無く、比較的演奏会チケットが安価なロンドンのオーケストラでは、ちょくちょくかぶりつき席は経験できましたが、日本に帰ってからというもの、記憶が無いですね。定期会員のN響は会員最安席の巨大NHKホール3階席のサイド(ここはここでNHKホールとしてはかなり良い音で聴こえます)だし、割高な一回券で1回前方の席は手が届きません。前置きが長くなりましたが、このかぶりつき席のおかげで、近年まれな音楽体験となりました。

 前半はメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」とシューマンの交響曲第一番「春」。弦楽器の合奏が引き立つシューマンの「春」で、前方2列目の席の良さを満喫しました。アラン・ギルバートさんが力強い推進力一杯で展開されるこの音楽の音圧を身体全体で受け止めます。弦楽器の夫々の細かいニュアンスや合奏の厚みをダイレクトに感じ取ることができます。アランは暗譜で、体からエネルギーが満ち溢れているのが手に取るように分かります。う~ん、このライブ感はたまらんと、前半だけで満足度いっぱいでした。

 そして、後半は更に圧巻。「春の祭典」のオドロドロしく、時に畳みかけるようなリズムが私に襲い掛かってきました。私自身が「生贄の祭り」の一部に参加しているかのよう。席からは管楽器、打楽器奏者は全く見えないので、管楽器の活躍は、やや遠くから聞こえて来るか、天から降ってくるような感じで聴こえてしまうのがやや残念ですが、それでも冒頭のファゴットによる狼の遠吠えのような不気味な導入に始まるこの曲の管楽器陣の健闘は手に寄るようにわかりました。アランの「ハルサイ」は、力強い各楽器の熱演にとどまらず、見通しの良さと管弦のバランスの良さが印象的で、土臭さや狂気的なものはやや少なかった気がします。固唾をのんで舞台を見入った30分はあっという間に終わってしまいました。

 プログラムにも恵まれたところはありますが、席のアドバンテージが最大限生きた演奏会で満足感一杯。多少、お金がかさんでもこのライブ感は代えがたいですね。これからは1回券は前方の席を買うことを決意して、ホールを後にしました。


第868回 定期演奏会Bシリーズ
日時:2018年12月10日(月)19:00開演(18:20開場)
場所:サントリーホール

出演者
指揮/アラン・ギルバート

曲目
メンデルスゾーン:序曲《フィンガルの洞窟》op.26
シューマン:交響曲第1番 変ロ長調 op.38《春》
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》


Subscription Concert No.868 B Series
Date: Mon. 10. December 2018, 19:00 (18:20)
Venue: Suntory Hall

Artists
Alan GILBERT, Conductor

Program
Mendelssohn: “Fingal’s Cave”, Overture, op.26
Schumann: Symphony No.1 in B-flat major, op.38 “Spring”
Stravinsky: Le Sacre du Printemps
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N響12月定期Cプロ バッハ・プログラム 指揮:トーマス・ヘンゲルブロック

2018-12-09 09:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


今年最後のN響定期はオール・バッハ・プログラム。指揮のトーマス・ヘンゲルブロックさんは、私には全くの初顔でしたが、ドイツ出身で2011年から2018年夏までNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧北ドイツ放送交響楽団)の首席指揮者を務めるなど、欧州を中心に活躍されている方のようです。

私はこの日は所用により遅刻。2曲目のシェーンベルクが編曲した前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552「聖アン」からの視聴となりました。席に着くや驚いたのは、バッハなので当然小編成なのだろうと思い込んでいたら、舞台いっぱいに広がる大編成。そこから響いてくるのは、確かにバッハなのだけど、聴き慣れたバッハとは異なったスケール感一杯の音楽でした。初めての私には理解の範疇を超えていたので、耳に流れこむ音楽を受け止めていただけの状態でしたが、編曲っていうのはこういうことなのねと、妙に納得しました。

圧巻は休憩後の「マニフィカト」です。「マニフィカト」とはラテン語で「我が心、主を崇め」で始まるこのキリスト教聖歌のひとつを指すとのことです。訳詞がプログラムにありましたが、マリア讃歌です。

総勢30名ほどのバルタザール・ノイマン合唱団の清らかな歌声が心に染みいります。クリスマスに併せて、4曲の挿入歌を挟んだのに加えて、《マニフィカト》演奏終了後には、クリスマス・オラトリオからの合唱も披露され、季節感あふれる会場となりました。N響によるバッハ演奏会というのも、私には初めてでしたが、柔軟なN響はそつなくバッハ的な響きを奏でていました。オーボエやチェロのソロも美しかった。

本来なら教会で、ホールなら東京オペラシティコンサートホールのようなところで聴ければベストなのでしょうが、場違いながらも大きなNHKホールにも、聖なる音楽が響きました。

この12月、デュトアさんがいないのは残念でしたが、おかげでいつもの12月とは違った指揮者・プログラムが楽しめました。丁度、来シーズンの指揮者が発表され、鈴木雅明・優人親子の登壇が目を引きましたが、ここ数年かなり指揮者陣が固定化しているような気もします。いろんな新しい指揮者とのコラボもいいですね。



第1901回 定期公演 Cプログラム
2018年12月8日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

バッハ/組曲 第4番 ニ長調 BWV1069
バッハ(シェーンベルク編)/前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552「聖アン」
バッハ/マニフィカト ニ長調 BWV243(クリスマス用挿入曲つき)
※本公演の指揮者、ヘンゲルブロック氏の希望により、ヨーロッパのクリスマスでの演奏習慣に従いバッハ《マニフィカト》演奏終了後、
バッハ/クリスマス・オラトリオ BWV248
―第59曲 コラール「われらはここ馬槽のかたえ 汝がみ側に立つ」

指揮:トーマス・ヘンゲルブロック
合唱:バルタザール・ノイマン合唱団


No.1901 Subscription (Program C)
Saturday, December 8, 2018 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Bach / Suite No.4 D major BWV1069
Bach / Schönberg / Prelude and Fugue E-flat major BWV552 “St. Anne”
Bach / Magnificat (with 4 Christmas Interpolations)

Thomas Hengelbrock, conductor
Balthasar Neumann Choir, chorus


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明智憲三郎 『本能寺の変 431年目の真実』 (文芸社文庫, 2013)

2018-12-08 08:38:30 | 


 再来年の大河ドラマの主人公は明智光秀らしい。屈折した自分は、これほど屈折した人はいないだろうと思われる明智光秀がとっても好きなので、「天下の逆臣」であるはずの明智光秀が大河ドラマの主人公になるなどいまだ信じられないが、どんなドラマになるのかとっても楽しみである。明智光秀って、信長の影として存在感を発するけど、大河ドラマの主人公として独り立ちするには、地味すぎるキャラだと思っていたから。

 本書はその明智光秀を歴史上の人物に押し上げた「本能寺の変」についての解明した一冊である。史料をもとに様々な仮説を提起し、これまでの定説にチャレンジする。

 史料をもとに仮説を積み上げていくプロセスは面白く、エキサイティングである。読者にとって難しいのは、筆者が取捨選択した史料のうち、採択した史料はわかるが、捨てられた史料の検証は弱いので、仮説・検証の正当性がわからないところだ。そこは筆者を信じるしかない。

 私のような普通の読者は、学者でも研究者でもないので、純粋に推理のプロセスを楽しめばいいと思う。


【目次】
◆第一部 作り上げられた定説
1 誰の手で定説は作られたか
勝者が流布した偽りの真実
秀吉の宣伝の書『惟任退治記』
改竄の動かぬ証拠
秀吉伝説を作った『太閤記』
光秀伝説を作った『明智軍記』
権威付けた細川家記
定説を固めた高柳光寿神話
2定説とは異なる光秀の経歴
細川藤孝の中間
フロイス証言の信憑性
幕府奉公衆としての出世
義昭を離れ信長のもとへ
3作られた信長との不仲説
史料が記す親密な関係
『甫庵信長記』が作った相克

◆第二部 謀反を決意した真の動機
4土岐氏再興の悲願
土岐氏の栄枯盛衰
太田牛一が書き換えた愛宕百韻
5盟友・長宗我部の危機
利三兄弟と長宗我部の絆
長宗我部氏と土岐氏
四国問題の鍵を握る石谷頼辰
畿内・四国同盟に訪れた危機
6信長が着手した大改革
信長の「唐から入り」

◆第三部 解明された謀反の全貌
7 本能寺の変はこう仕組まれた
六月二日の未解明の謎
光秀の兵が出した答
家康・順慶呼び出しの謎解き
安土城進軍の謎解き
信長の油断の謎解き
8織田信長の企て
天正十年の作戦発動
家康領の軍事視察
なぜ「家康討ち」なのか
信長の最期の言葉
本能寺から脱出した黒人小姓
彌介が伝えた信長の最期
安土城の密室での証人
9明智光秀の企て
光秀の決断「時は今」
吉田兼見の偽証
光秀が奏上した「家康との談合」
談合にいたもう一人の人物
藤孝が発した警告
成就するかに見えた謀反
山崎の敗北、そして滅亡
10徳川家康の企て
作られた伊賀越えの苦難
謀殺された穴山梅雪
天正壬午の乱の策動
動かさなかった西陣
手間取った光秀援軍
注目すべき津嶋への陣替
山岡兄弟の奇妙な行動
イスパニア商人が残した証言
安土城放火の真犯人
11 羽柴秀吉の企て
早過ぎる中国大返し
秀吉が待望した光秀決起
謎の「杉原殿」
破格の論功行賞
細川藤孝の決断
秀吉の巧みな情報操作

◆第四部 叶わなかった二つの祈願
12祈願「時は今あめが下なる五月かな」
明智氏による土岐氏再興
春日局の異例の取り立て
落ち延びた光秀の子供
13祈願「国々は猶のどかなるとき」
豊臣秀吉の唐入り
千利休切腹の真実
関白秀次切腹の真実
【本能寺の変の定説を固めた国策】
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クリストファー・ノーセル (著), 武舎広幸・武舎るみ (翻訳) 『ツールからエージェントへ。弱いAIのデザイン - 人工知能時代のインタフェース設計論』 ビー・エヌ・エヌ新社、2017

2018-12-06 07:30:00 | 



 今までに読んだことのないタイプの本だった。内容をBookデータベースからそのまま引用すると、「人間のために働く、執事のような“エージェント”をどう設計するか?自動運転、掃除ロボット「ルンバ」、IBMの人工知能「ワトソン」を使ったアプリ・・・。IoTとともに、世の中を便利に面白くしている「弱いAI(特化型AI)」。そのなかでも、人間に代わって作業を進めてくれる「エージェント」型技術のコンセプトを打ち出した、人工知能時代のプロダクト/サービス開発において実用的なアイデアが得られる一冊。」

 自分からはきっと読むことは無かったと思うが、上司の「おすすめ」で読んだ。ピンとこないところも多々あるが、どうやって役に立つエージェントを設計していくかなど考えたことも無かったから、新鮮さを感じるところが多い。この世の中、こういう書籍が出るほど、AI、エージェントの世界が当たり前になってきたということに驚きを禁じ得ない。

 米国西海岸へ出張に行くといつも感じることだが、ITの世界は気が付かないところで急速に変化中で、我々の個人の生活、企業活動に大きな影響を及ぼしている。ここから目を反らし、逃げることはできないと思う。そんなことを実感する一冊だった。


【目次】
日本語版に寄せて
日本語版まえがき:渡邊恵太
まえがき:フィル・ギルバート
はじめに

パートI 新たな視点

第1章 サーモスタットの進化
温度調節のための道具
ドレベルの「サーモスタット」
ネスト・ラーニング・サーモスタット
この章のまとめ―ツールからエージェントへ

第2章 エージェント型技術の到来
物理的な労働の削減
情報処理作業の軽減
エージェントは物理的な作業と情報処理をまとめて行う
「エージェント型技術」の実践的定義
エージェント型技術の範囲
この章のまとめ―エージェントとは永続的に裏方に徹する助っ人だ

第3章 エージェント型技術が世界を変える
「瞬間」から「興味」へ
不得意な作業をエージェントに任せる
エージェントは人間がやりたくないことを引き受けてくれる
エージェントは人には頼みにくいことをやってくれる
エージェントに任せきりにすべきものとそうでないもの
エージェントは「ドリフト」で「発見」を促す
エージェントは最小限の努力での目的達成を助ける
シナリオは生涯に及ぶ
エージェント同士の競争も
エージェントはインフラに影響を与えるほど拡大中
エージェントは場所やものに結びつく
エージェントは人間の弱点を克服するのにも役立つ
エージェントを介して世界をプログラムする
エージェントは人類の未来を大きく左右する(かもしれない)
この章のまとめ―そう、世界が変わるのだ

第4章 エージェント研究の歴史から学ぶべき6つのこと
神話に劣らぬ古さ
コンピュータは主導権を取れる
なかなか思いどおりにならないオートメーション
肝心なのはフィードバック
エージェントは水物
エージェント型と支援型の境界は今後あいまいに
この章のまとめ―エージェントの先達に学ぶ

パートII 実践

第5章 インタラクションの枠組みの修正
see-think-doループの見直し
エージェントのセットアップ
エージェントが行っていることの把握
エージェントにタスクを実行させる、あるいはエージェントの作業を支援する
エージェントの中断
ルールと例外、トリガーと挙動
検討すべき最先端技術
この章のまとめ― 新たなアプローチ
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第6章 セットアップと始動
性能や機能を伝える
制約を伝える
目標や好みの定義と許可の取得
動作テスト
本番開始
この章のまとめ―セットアップは面倒なものになりがち
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第7章 万事順調に作動中
一時停止と再開
監視
ユーザー自身による並行作業
通知
この章のまとめ―「万事順調に作動中」は扱いが比較的楽な部分
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第8章 例外の処理
インタフェースの今後の行方は?
「信頼のジェットコースター」も要注意
リソースの制限
単純明快な操作
トリガーの調整
ビヘイビアの調整
ハンドオフとテイクバック
中断とユーザーの死
この章のまとめ― 例外処理は「関門」となりがち
ミスター・マクレガーによるエージェント型家庭菜園作り

第9章 ハンドオフとテイクバック
つまりAIなど不要?
注意力が持続するのは30分
専門的な知識・技能の劣化
第三者へのハンドオフ
ユーザーへのハンドオフ
テイクバック
この章のまとめ―ハンドオフとテイクバックはエージェント型システムのアキレス腱

第10章 エージェントの評価
エージェントにUIは不要?
評価方法
従来型の部分には従来型のユーザビリティテストを
エージェント部分のヒューリスティックスによる評価
この章のまとめ―ヒューリスティックスを使った評価

パートIII 展望

第11章 プラクティスの進化
コンセプトそのものの売り込みが先決
その上でエージェント型技術に磨きをかける
理想は「徐々に姿を消していくサービス」
この章のまとめ― 最終目標は汎用AI

第12章 ユートピア、ディストピア、ネコ動画
世の中を大きく変えた電球
だがインターネットは?
ジキル博士とエージェント氏
倫理++
超人的な違反
サービスを99%提供するエージェント
ロボットのコンポーネントの寿命
エージェントは何個だと「多すぎる」と感じる?
エージェントに任せると担当者の腕が鈍る?
エージェントは人間の自己認識にどう影響するか?
つまりは汎用AIが求められているということなのか?
この章のまとめ―問題山積の問題

第13章 今後の使命(賛同してもらえれば、だが)

Appendix A エージェント型技術のタッチポイント
Appendix B エージェント型技術の事例一覧
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