その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

尾張の一宮 @真清田神社

2019-10-29 07:30:00 | 旅行 日本

私事で愛知県一宮市に出かける用事があり、当地で一泊した。恒例の旅先の朝ジョギングで、地名の由来となっている尾張の一宮である真清田神社(ますみだじんじゃ、眞清田神社)まで走った。JR一宮駅(または名鉄一宮駅)から2k程度の距離である。

 

社殿は第2次世界大戦の米軍による空襲で焼失し、戦後、再建されたものだが、一宮というだけあって立派なものである。本殿・祭文殿(さいもんでん)などは神社建築としての造形を評価され、国の登録有形文化財に登録されているとのことだ(Wikiより)。朝7時というのに、地元の人達が熱心に祈る姿が見られる。雲一つない青空から朝日が照らす朝の神社は実に神々しい。

 

境内をぶらついた後は、更に3K弱走って禅林寺なる寺に向かった。ホテルの部屋に置いてあったエリアガイドによると、国の重要文化財指定を受けている木造薬師如来坐像があるらしい。何とかお目見えできないかしらと思い走る。

 一宮市の風景はまっ平らで、むか~し住んでいた埼玉に似ている。戦国時代は織田の領地だったところだろう。朝の7時過ぎから重要文化財の見仏は難しいだろうなあとは思ったが、案の定、特別の収納庫に収まっている薬師如来様とのご対面は叶わなかった。


〈平らでまっすぐな道路が続く>


〈まだ薬師如来様はお休み中〉

知らない土地でもiphone1つあれば、地図アプリのM経路案内で道に迷うこともない。便利な世の中になったものだ。

〈大江川という小川〉

2019年10月4日

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〈調布能楽odyssey破 守破離〉 @調布市文化会館たづくり1階

2019-10-27 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 先日、調布の文化会館に狂言・能の公演に出かけた際に見学したのだが、同館の1階で能に関するとってもユニークな展覧会が開催されているので紹介したい。

 能の「「守破離」の思想をもって、能楽師 山中迓晶さんと覆面アーティストamさんが、伝統芸能の「過去・発展・進化」の段階を追って紹介」(調布市文化・コミュニティ振興団体のHPより)する企画。能の面・扇子・衣装等の関連道具が江戸時代などの歴史的なものから、それらを現代風に再構成し現代美術として仕立てた作品など、まさに伝統の継承が感じられる展示となっている。

 能については知識も嗜みもないので印象にすぎないが、一つ一つの展示がとっても興味深かった。例えば、扇子の美しさなどあまり気にしたことも無かったけど、揃って並べてあるのを鑑賞するとその煌びやかな色合いに惚れ惚れする。また、江戸時代の折り紙(目録?、保証書?、鑑定書?)付きのお面などを見ながら「折り紙つき」の語源はここなのかという雑学も体験できた。お面も桃山時代のものから現代の作品を並べての展示があり、比較しながら守・破・離を考えるのも楽しい。

 

 その起源は奈良時代の伎楽・散楽にさかのぼるという能の世界。気が付かないだけで、日本人のDNA奥深くに残っていることが伺われる。

 展示エリアは限られているので30分程度の時間があれば足りる。11/4までなので、近隣のかたは足を運んでみては如何だろうか。

 

調布能楽odyssey破 守破離
2019年9月14日(土)〜11月4日(月・振) 10:00~18:00
調布市文化会館たづくり1階展示室
入場無料

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映画 〈イエスタデイ〉 監督:ダニー・ボイル

2019-10-25 07:30:00 | 映画

 リチャード・カーティスの脚本、ネタがビートルズということでは見ないわけにはいかない。

 物語はリチャード・カーティスらしい、現実的には(きっと)あり得ない物語。売れないミュージシャンがビートルズが存在しなかった世界にスリップし、ビートルズの曲を歌ってセンセーションを巻き起こす。そんな騒動の中で、成功、誠実さ、愛が描かれるラブ・コメディアだ。

 『アバウト・タイム』同様、時間のずれを活用したあり得ない話なのだが、なぜかそこで白けることが無い不思議な魅力に満ちている。登場人物に感動移入が容易だし、流れる音楽は全部知っていて、好きなビートルズの楽曲ばかり。ビートルズが存在しなかった世界なって考えてもみなかったけど、この作品を通じて、そんな世界がどんなに味気ないかに気づかされる。

 主演のヒメーシュ・パテルは初見だが、朴訥とした誠実な青年を好演していた。ヒロインのリリー・ジェームスもカーティスのラブコメディにマッチした献身的で控えめな女性役が嵌っていた。エド・シーランが本人役で出ているのも面白い。

 カーティスの世界(「ブリジッド・ジョーンズ」「ラブ・アクチュアリー」「アバウト・タイム」等)が好きな人には、間違いなくお勧め。

 

監督ダニー・ボイル
製作ティム・ビーバン エリック・フェルナー マシュー・ジェームズ・ウィルキンソン バーナード・ベリュー リチャード・カーティス ダニー・ボイル
製作総指揮ニック・エンジェルリー・ブレイジャー ライザ・チェイシン
原案ジャック・バース リチャード・カーティス
脚本リチャード・カーティス

キャスト
ヒメーシュ・パテル:ジャック・マリク
リリー・ジェームス:エリー・アップルトン
ケイト・マッキノン:デブラ・ハマー
ジョエル・フライ:ロッキー
エド・シーラン:エド・シーラン
ジェームズ・コーデン:ジェームズ・コーデン

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〈調布能楽odyssey 破 狂言×ミライ×能〉 @調布市文化会館たづくり 2階 くすのきホール

2019-10-13 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

調布市の文化会館たづくりで行われた能・狂言の入門的なイベント「調布能楽odyssey 破 狂言×ミライ×能」にでかけた。歌舞伎は何度か観劇経験あるが、能・狂言は高校生の時の演劇鑑賞教室以来(当たり前だが、当時は全く興味なし)なので、実質初めて。

600年前から引き継がれてきた芸能ということで歴史と伝統の重みを感じる。唄、音楽、踊り、物語の総合芸術という点では西洋のオペラと似ているが、オペラよりも古い。2008年にユネスコの無形文化遺産に登録されているが、まさに日本の文化遺産である。もちろん様式の変化とかはあったのだろうけど、600年前のものと同じ舞台を見ているというと不思議な気がした。

能の部では、前半に幼稚園児・小学生・中学生・高校生・社会人と夫々の世代により仕舞(能の略式の演じ方の1つ。型どころを,舞い手1人が紋服,袴の姿で,4人程度の地謡だけで舞うこと(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説より))が披露された。芸の成長過程を見ているようで非常に興味深く、更にそれが世代、時代を超えて引き継がれていくことを想起させる興味深いプログラムだった。

能は能面を被って演じられるのかという思い込みがあったが、今回の「経正」は能面なしの演目だった。物語や、オペラと違っていわゆる舞台装置による演出はないが、踊りと音楽による場の盛り上げは、舞台装置など要らない程、迫力に満ちたもので、期待以上に楽しめた。

とっても奥深さを感じるので、あまり深入りするとますます自分の時間を縛ることになりそうなので要注意だが、こうした入門企画はとっても有難い。

 

2019年10月6日(日)
狂言の部 開場13:30 開演14:00 
能の部  開場15:15 開演15:30 
調布市文化会館たづくり 2階 くすのきホール
番組
14時 狂言の部 解説  狂言「居杭」 フリートーク 狂言「禰宜山伏」
15時30分 能の部 解説 仕舞 能「経政」
16時40分 終演予定
 
出演者
狂言の部 解説 善竹十郎(重要無形文化財総合指定保持者)
狂言「居杭」 居杭 島田康之(子方)  算置 善竹大二郎  亭主 善竹富太郎  後見 野島伸仁 
フリートーク 善竹十郎・山中迓晶
狂言「禰宜山伏」  禰宜 善竹大二郎  茶屋 野島伸仁  山伏 善竹富太郎 大黒 島田知之(子方)  後見 善竹十郎 
能の部 解説 山中迓晶(重要無形文化財総合指定保持者)
仕舞  神賀蓮華(深大寺こども薪能)、山中つきの、伊藤沙恵(深大寺こども薪能)、三橋野恵(深大寺こども薪能)、梅若紀佳、山中迓晶  地謡 深大寺こども薪能のみんな
能「経政」 シテ 平経政の亡霊:山中つばめ  ワキ 僧都行慶 舘田善博 地謡 山崎正道(重要無形文化財総合指定保持者)、角当直隆(重要無形文化財総合指定保持者)、梅若紀香、山中景晶、梅若雄一郎、鷹尾雄紀 笛 寺井宏明(重要無形文化財総合指定保持者) 小鼓 曽和伊喜夫 大鼓 柿原孝則 後見 山中迓晶、山中つきの
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えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく』(イーストプレス、2018)

2019-10-08 07:30:00 | 

何故この本を図書館で予約したのか、記憶が定かでなくなるぐらい待ってようやく廻って来た。きっと、どっかの新聞で紹介されていたのを見て予約をかけたのだと思う。とっても読み易くて、1時間ちょっともあれば読み通せてしまう本なのだが、私にはいろんな意味で気づきの多い本だった。

本書で筆者は、「従来の「起業」というイメージとは全く別の、「多額の開業資金」も、「特殊な技能」も、「綿密な事業計画」もいらない「しょぼい起業」という新しい考え方と、その方法」(p3)を示してくれる。ターゲットとする読者は、朝定時に起きて、満員電車に乗って通勤して、お客や上司に怒られたりするのが嫌な人/嫌になった人や体を壊してしまった人たちのようだが、逆に私のような「いわゆるサラリーマン」こそ読んでみるのが良いと思う。

昭和時代の高度成長期やバブル期のような「がんばるサラリーマン」の世界でも、ビジネススクールで学んだMBAホルダーが話すような経営戦略の世界とも無縁の、ゆるい起業、働き方、考え方が緩く書かれている。

自らの経験をもとにした「しょぼい起業」のノウハウは興味深い。いつもやっている作業をお金に換える「生活の資本化」、既に今持っているものを使ってお金を稼ぐ「資産の資本化」、「計画ありきよりも、人脈や環境からできることを事業化」、「広告宣伝費は自分の愛想と足で賄う」などなど、既定の枠組みの囚われる自分の思考スコープの狭さに気づかされる。

そして、私のようなおじさん世代が気づくべきは、その底流に流れる昨今の若い世代の考え方だろう。「好きなことでバリバリ稼ぐか、楽なことをボチボチやるかのどちらかしかないのです。いずれにせよ、気持ちが良い(=ノンストレスな)環境でないと人は働かない時代になったのです」「人に働いてもらうときは、それが雇用であれ、協力者であれ、その人がやりたいことをやってもらうのがいちばんです。居心地の良い空間でやりたいことをやらせてくれるなら人はいっぱい来ます」(p95)。こうしたコメントに対する賛否はひとそれぞれだろう。ただ、若い社員と話していて思うのは、こうした気質が理解できないと、おじさんに残された道は同世代同士、居酒屋で愚痴を言いあうぐらいしかない。

正直、この本読んで、しょぼい起業で生きていける人(特に若者)がどれだけいるのかははなはだ疑問(緩く書いてあるがこれを本当に実践できる人がどれだけいるのか?)だし、自分の子供にこの本やこの本の生き方を進めるかと言えば、絶対そうはならない。だが私にとっての本書の価値は、若手社員と呼ばれた時代は先輩世代の「古さ」に毒づいていた私も、完全に毒づかれる世代になっていることに今更のように気づかされたことにつきる。


【目次】

はじめに
第1章 もう、嫌な仕事をするのはやめよう
第2章 「しょぼい起業」をはじめてみよう
第3章 「しょぼい店舗」を開いてみよう
第4章 「協力者」を集めよう
第5章 しょぼい店舗を流行らせよう
第6章 「しょぼい起業」実例集
pha×えらいてんちょう対談 「お金」に執着しない生き方
借金玉×えらいてんちょう対談 草むしりから始めるしょぼい起業
おわりに


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〈合戦図―もののふたちの勇姿を描く―〉 @徳川美術館

2019-10-05 09:53:07 | 旅行 日本

もう1月以上前ですが、お盆の後半に私用で名古屋に行く機会があり、その帰路に徳川美術館に立ち寄りました。御三家筆頭の尾張徳川家縁の品々を集めた美術館です。前々から気にはなっていたところではありましたが、訪れるのは初めてです。

名古屋地方特有の蒸し風呂のような暑さの中、JR大曾根駅から歩いて10分ちょっと(JRで行く人は南出口を使いましょう。私は名鉄とJRの共同出口から出てしまい。5分以上余計に歩く羽目になり、大汗かきました)。立派な御門を入ると美術館はあります。

館内には徳川家の甲冑や刀剣、能の衣装・面、茶の湯道具などが展示してあります。夫々、当時を偲ばせる貴重な品々なのですが、今回の目玉は企画展「日本の合戦」です。

絵巻物などで日本の平安期から戦国期、そして大坂夏の陣に至るまでの合戦絵が展示してあります。<平治物語絵巻 六波羅行幸巻>、<後三年の役>、<一の谷・屋島・壇の浦合戦図屏風><長篠合戦図屏風>など日本史の代表的な合戦図です。全体を大掴みに見て陣形に目に向けるのも興味深いですし、細部まで入念に書き込まれた屏風は目を凝らして観ると更に面白いです。大坂夏の陣の真田丸もしっかり描かれてました。


<大坂冬の陣図屏風 デジタル想定復元>


<真田丸の詳細>


<長篠長久手合戦図屏風>

時間もなかったし、暑さでとても外をぶらつく雰囲気ではなかったですが、別料金で隣接した庭園も鑑賞できます。時間と気候が許せば、是非、次回はこちらの方も訪ねてみたいと思います。

2019年8月16日

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