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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

府中市制施行65周年記念 棟方志功展

2019-07-11 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

府中市美術館で開催されている「棟方志功展」に会期最終日の午後にやっと訪れることができた。棟方志功の板画(棟方は自分の「木版画」を「版画」と呼んでいた)をまとめて見る機会は、15年以上前に青森に〈ねぶた祭り〉を観に行った際に、市内の美術館で観て以来である。戦前の中小の板画から戦後の晩年の大型作品に至るまで多種多様な作品が展示される充実の特別展だった。

棟方の個性的な作品は、見るものを強力に引きつける磁力を持っている。作品に描かれた対象と個人的な共通項は無くとも、日本人の心性に根差した懐かしさを感じる。故郷の土であり、日本の八百万の神に触れている気がする。描かれた女性の姿が縄文期の土偶に似た気がするのも、日本人の原始的な感性が現れているようだ。

後半期の展示では、作品はぐっと大型化する。最大級は、2m×13mという<大世界の柵>。大きい絵は近くで見ても良く分からないが、離れてみるとその全体像が良く分かる。ピカソの〈ゲルニカ〉を見た時のような、圧倒的な迫力に押しつぶされそうになった。

実際に使われた絵筆(ブラシ)、彫刻刀が展示してあったがこちらも興味深かった。特に、展示してある作品の元板が感動的だった。彫が驚くほど深く、太い。あの迫力の板画はここから生まれているのだと深く納得した。

 ショップに立ち寄ったら、既に図版は売切れ。確かにこの展覧会の図版なら皆欲しくなるだろうと、入手できなかった残念さはあったが、これも納得だった。

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〈奈良大和四寺のみほとけ〉展 @東京国立博物館

2019-06-25 00:16:35 | 美術展(2012.8~)

ゴールデンウィークに奈良の室生寺、長谷寺を訪ねたが、それらに阿部文殊院と岡寺を加えて、いずれも7〜8世紀に創建された古刹が保有する仏像の企画展示が東博で開催されている。
東博への入場料だけで見学できる。展示品は多くはないだが、質が高くお勧めだ。

嬉しかったのは、室生寺の金堂で見たばかりの十二面観音像と地蔵菩薩に再会できたこと。お堂で観るのが本来なのだろうが、照明等で鑑賞用に展示してある両仏はひときわ芸術品として美しく映える。十二面観音の薄く残った色合いもお堂の中よりはっきり見える。平和で、豊かなご尊顔も良い。地蔵菩薩は菩薩さまもさることながら、光背の模様・美しさに今更のように気づいた。お堂の中で30分居座ってみていたはずなのに、全然見ていなかったようだ。現場には現場でなければ存在しない「気」が漂い、その中で全身全霊的に仏像を受け止めるが、博物館での展示になったとたんにそうした精神性は失せ一つの芸術品となる。どっちがいい/悪いを言うものではないと思うが、まだ現場の記憶・体感が新しいこのタイミングで、違いを実感できたのは興味深かった。

長谷寺の仏たちも、長谷寺ではご本尊の巨大観音の印象が強すぎたので、どの仏像もあまり記憶がなかったが、非常に繊細な仏像たちだ。
行けなかった岡寺の義淵僧正坐像がまるで本物の人と対しているようで怖いぐらい。

お勧めです。

2019年6月21日訪問

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混んでても、これは行くべき! 「クリムト展 ウィーンと日本 1900」 @東京都美術館

2019-06-21 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 今年の数多い展覧会の中でも最も楽しみにしてきたのがこの「クリムト展」である。クリムトの絵をまとめてみる機会はウィーンにでも行かない限りなかなかない。本展では「日本では過去最多となるクリムトの油彩画25点以上」が展示されている。

 空いているはずの金曜日の夜間開館を狙って行ったが、さすが人気画家である。夜間とは思えないほどの人の多さだった。絵に目の前で一枚一枚立ち止まって鑑賞するというわけにはいかないが、少し離れれば最前列で行列をなして進む鑑賞者のペースに巻き込まれずに自分のペースで観ることできたので、良い方なのかもしれない。

 館内に入って比較的直ぐに「へレーネ・クリムトの肖像」の少女に目を奪われる。白のバックに白のドレスをまとった横顔の少女は可愛らしく、描かれた金髪がフェルメールの描いた絨毯のようにソフトで本物の髪の毛のように浮き上がって、生きているかのようだ。絵の前を通る女性鑑賞者の多くが「可愛い~」とつぶやいて通っていく。私は思もわず、立ち止まりその少女に暫し見惚れてしまった。

 今回の目玉の一つ「ユディト」。これは以前ウィーンに行ったときに見たので10年ぶりのぐらいの再会だ。この作品、ポスターとかで世に出回るときは、部分のみが切り取られていることが多く、絵の右下端にホロフェルネスの首が半分ぶら下がっているのが分からない。久しぶりに見るユディットはやはり官能性と怪奇性がミックスされた異次元の絵だった。


グスタフ・クリムト《ユディトⅠ》1901年 ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館

 今回の収穫は、「女の三世代」とレプリカではあるが「ベートーヴェン・フリーズ」が観れたこと。「女の三世代」は、奈良で先日観たばかりの版画家ヨルク・シュマイサーが、同じ版を使って女性の一生を何枚もの版画で追ったのと同じテーマ。人生のはかなさを感じさせる。

 また、「ベートーヴェン・フリーズ」は目測、縦10メートルちょっと、横5メートルぐらいのコの字型の白い壁に、ベートーヴェンの第九交響曲をテーマに描かれた壁画。室内には第九の第四楽章の「歓喜の歌」部分が静かに流れ、芸術による人類の救済が音楽と絵で表現されていた。絵のユニークさもさることながら、厳粛な気持ちにさせる空間が好みだった。(これもウィーンで観てるはずなのだけど、全然記憶にない)

《ベートーヴェン・フリーズ》のベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の展示模様 (インターネットから拝借)

 やっぱりクリムトの絵はいい。確かな画力(まあ私が言う話ではないが)に加えて、斬新なデザイン、奇抜な表現、大胆な色遣いが強烈に人を引き付ける。これほど強い磁力を感じる画家はそうはいないだろう。

 日中帯は既に相当混み合っているようだが、この機会は逃すことのないよう、強くお勧めしたい。

2019年6月7日訪問

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「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅」 @奈良県立美術館

2019-06-06 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 こういう偶然があるから旅は楽しい。奈良市内を歩いていると、目についたのが県立美術館の特別展のポスター。東大寺を描いているのだが、デザインや色合いに魅かれる。よし、実物を見にいこうということで、事前の予定にはなかった県立美術館を訪問した。
 
名前も初めて聞いたヨルク・シュマイサー(1942-2012なる人は、ドイツに生まれ、日本に学び、オーストラリアを拠点に制作を行った版画家である。日本との縁も深く、京都に留学していたという。

  今回のテーマは彼自身のテーマであった「変化」に設定し、作品が展示されている。同じ版を使って女性の若き頃のポートレートから老婆となるまでの変化を追った作品群など、興味深い。

 また彼が旅したニューヨーク、アンコールワット、奈良、中国、中東といった国・地域・都市の版画も興味深かった。ユニークなデザイン、繊細な描写、優しい色遣いなど、どれも版画ならではの魅力にあふれている。版画を通じて、これらの町を自分も旅している気持ちになる。

 時間の制約から駆け足鑑賞になってしまったのが何とも惜しまれたが、逆を言うと何とも充実した新しい出会いの1時間弱だった。                                                                             

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『ラファエル前派の軌跡展』 @三菱一号館美術館

2019-06-02 09:49:49 | 美術展(2012.8~)

 金曜日の夕刻、週末突入の景気づけに好きな三菱一号館美術館に足を運んだ。ラファエル前派の理解者でありサポーターであったイギリスの美術評論家ジョン・ラスキンの生誕200年を記念して、ラファエロ前派およびその前後の関連する画家の作品を集めた特別展をやっている。

 ラファエル前派は好きなので、それなりに作品を見てきているつもりだけど初見(であろう)作品ばかりだった。有名な作品は多くはないが、周縁も含めラファエル前派関連の作品を広くカバーしているので、グループの成り立ちから解散後の発展も追うことができ19世紀後半のイギリス絵画の流れを理解するのにとっても良い。

  個人的に好きなアーサー・ヒューズやジョージ・フレデリック・ワッツの作品も数点あったのが嬉しかった。


アーサー・ヒューズ《リュートのひび》1861-62年 ターリーハウス美術館

 ただ、写真撮影可能なラファエル前派のコーナーは少し考えさせられた。絵の前に陣取って写真を全体から細部に至るまで撮りまくって占拠している輩がいて、なかなか見たい絵が見れない。いらいら。スマフォのシャッター音がひっきりなしに聞こえて来るのも、静かな美術館空間が美術館訪問の楽しみの一つである私には興を削がれる。メリットとデメリット比較したら、デメリットの方が大きいんではないかな。


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《祝福されし乙女》1875-81年 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー


ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃、ラッセル=コーツ美術館

 そうした点を除いては、金曜夜の美術館は人も少なくゆっくりと落ち着いて1枚1枚の絵が見えるのが嬉しい。一人で来ている人が多いのも、そんな思いの人たちでしょう。6月9日までです。

(構成)
1 ターナーとラスキン
2 ラファエル前派同盟
3 ラファエル前派周縁
4 バーン=ジョーンズ
5 ウイリアム・モリスと装飾美術

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特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 @東京国立博物館

2019-05-02 12:01:40 | 美術展(2012.8~)

 

ひと月ほど前になってしまったが、東寺展に行ってきた。これは超お勧め。何といっても、あの講堂にある21体の立体曼陀羅のうち16体が勢ぞろいしているのである。この会期中に東寺に行った人はさぞかしがっかりするに違いない。

彫刻、絵画、書跡、工芸など密教美術のあらゆるものが展示されているが、一番の見せ場は立体曼陀羅コーナーだろう。現場に行っても距離を置いてしか拝めない仏像たちが間近に配することができるのが何とも嬉しい。個人的には『見仏記』の影響で、邪鬼に目が行ってしまう。確かに、良い踏まれっぷりだ。邪鬼ってふんどし巻いているのね。

〈唯一撮影可の展示 国宝 帝釈天騎象像 平安時代・承和6年(839) 東寺蔵〉

展示品の多くが国宝、重要文化財なのも驚きだ。空海の直筆、風信帖もある(個人的には、3大名筆の空海の字がどう美しいのかはよくわからない)。

展示の入れ替えも含め6月2日まで。くどいですが、お勧めです。

《桜が満開でした》

〈構成〉
第1章 空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ) 
第2章 真言密教の至宝
第3章 東寺の信仰と歴史
第4章 曼荼羅の世界

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国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア展 @文化村 ザ・ミュージアム

2019-01-20 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 幸運にもチケットを譲り受けたので、文化村ザ・ミュージアムで開催中のロシア展に行ってきました。国立トレチャコフ美術館から、19世紀後半から20世紀にかけてのロシア絵画が展示してあります。

 お恥ずかしがら、ロシアの画家は全く知らず、どの絵も初見(のはず)になります。ただ、今回はそれが私には吉と出ました。先入観が働きがちな有名画家や既知の絵画を見るのとは異なり、虚心に絵に向き合って対話することができ、期待以上に堪能できた美術展となりました。

 ポスターにも取り上げられているイワン・クラムスコイの「忘れえぬ女」も来日は8度目だそうですが、こちらも私には初見。馬車に乗ったロシアの上流階級の女性が、上質のコートに身を包み、車の上から見下ろすような視線が、気品と気位にあふれています。解説によると、幌を外したところに、この女性の革新性が表れているとのこと。

 私としては、「忘れえぬ女」以上に、同画家による「月明かりの夜」の幻想的な絵が印象的でした。静寂な月夜の中で、池端で思いに耽るように座る一人の少女。神話や物語の一場面のような題材と画風はラファエル前派的で、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスを思い起こさせます。絵の前で、しばし足が釘付けになりました。また、その隣にあったニコライ・カサートキン「柵によりかかる少女」の(恋人を待つ)素朴で可憐な表情にもひかれます。


イワン・クラムスコイ 《月明かりの夜》1880年 油彩・キャンヴァス © The State Tretyakov Gallery

 前半はロシアの四季を描いた風景画でした。素朴でむき出しの自然はロシアならではのもの。バーチャルロシア旅行をした気分に浸れます。風景画以外にも、都会や郊外での暮らしぶりが描かれた絵もありロシアを体感。


イワン・シーシキン 《正午、モスクワ郊外》1869年 油彩・キャンヴァス © The State Tretyakov Gallery

 休日でもあり会場内はそれなりに混みあってましたが、鑑賞の支障になるほどではなく、コンパクトな会場は量に圧倒されることなく、マイペースで余裕をもって見られます。1月27日までなので、興味がある方は是非お出かけください。

《構成》
第1章 ロマンティックな風景
1‐1 春
1‐2 夏
1‐3 秋
1‐4 冬
第2章 ロシアの人々
2‐1 ロシアの魂
2‐2 女性たち
第3章 子供の世界
第4章 都市と生活
 4‐1都市の風景
 4‐2日常と祝祭
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ムンク展―共鳴する魂の叫び(Munch: A Retrospective) @東京都美術館

2019-01-16 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 ムンク展に行ってきた。会期終了も迫ってきたので、隙間時間を縫って平日午後に行ったのだが、入場待ちこそなかったものの会場内はすごい人出だった。

 正直、落ち着いて一枚一枚をゆっくり鑑賞というわけにはとてもいかない状況だった。でも、自画像、家族の絵などを見ることで、今まで「叫び」の印象が強すぎたムンクに、かなり近づけた気分になれたのは収穫だ。ムンクの絵をこんなにまとめて観たのは初めてだし、まとめてみることで感じたのは、今までは何にも知らなかったんだなということ。チューリッヒ美術館やハンブルクの美術館でいくつか観た記憶はあるのだが、数を見ることの威力は凄いと思った。

 全体的に暗めで内向的な作風は、見るものを明るい気分にさせてくれるものではない。ゴッホやナビ派を思い起こさせる大胆で、力強いタッチが印象的な絵が多い。生で初めて見た「叫び」は、有名なだけあって、色使い、構図、描写法、それぞれの独特の画風が強烈だ。絵の奥に描かれた二人の紳士は、少年時代に読んだ探偵小説を思い起こさせるような不気味さを持ち、いつか夢で見たことのあるような心象風景が描かれている。
 
 会期は20日まで。混雑覚悟でも、見に行く価値はある回顧展であると思う。


《構成》
第1章 ムンクとは誰か?
第2章 家族─ 死と喪失
第3章 夏の夜 ─ 孤独と憂鬱
第4章 魂の叫び ─ 不安と絶望
第5章 接吻、吸血鬼、マドンナ
第6章 男と女 ─ 愛、嫉妬、別れ
第7章 肖像画
第8章 躍動する風景
第9章 画家の晩年

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こりゃあ巨匠と呼ばれるわけだ~: ルーベンス展 @国立西洋美術館

2019-01-05 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


ルーベンスというと、ずいぶん前に訪れたルーブル美術館の「ルーベンスの間」(ルーベンスの大作を一堂に集めた展示室)が思い出され、大げさで仰々しい作風に苦手意識があったのですが、ルーベンスを集めた企画展などはそうあるわけではないので、頑張って国立西洋美術館に行ってきました。

ルーベンスや影響を受けた画家の作品など70数点を集めた特別展は、期待以上に質の高いものでした。ルーベンスの作風が変わるわけはないので、私の趣向が変わったのでしょうか、以前感じたような苦手意識は全く感じることは全くなく楽しめました。

宗教画や神話をテーマに扱った大作の迫力が特に素晴らしいですね。人物がそのまま飛び出してきそうな臨場感、描かれた場面だけでなくその前後も含めて物語が脳内に展開されるようなドラマティックさ、ギリシャ・ローマの彫刻を思わせる男女の肉体美など、巨匠感丸出しの大作がいくつも展示してあります。

私的には、「セネカの死 」、「マリアの法悦」、「マルスとレア・シルウィア」、「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」(上記、パネルの絵)などに目が奪われました。作品によっては、エロチックこの上ない作品もありますね。先日観たフェルメールより年齢は70歳ちょっと年上になりますが、題材と言い、画風といい、同じバロック美術として括られるのは随分と違和感があります。

作品はルシュタイスタイン公国をはじめ、欧米の美術館から幅広く収集されています。週末の日中でしたが、込み具合も許容範囲で、じっくり鑑賞することができました。自信をもってお勧めできる美術展です。

《構成》
I ルーベンスの世界|Rubens’s Personal World
II 過去の伝統|The Traditions of the Past
III 英雄としての聖人たち ― 宗教画とバロック|Saints as Heroes: Sacred Painting and the Baroque
IV 神話の力 1 ― ヘラクレスと男性ヌード|The Power of Myth 1: Hercules and the Male Nude
V 神話の力 2 ― ヴィーナスと女性ヌード|The Power of Myth 2: Venus and the Female Nude
VI 絵筆の熱狂|A Furious Brush
VII 寓意と寓意的説話|Allegory and Allegorical Narration
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やっぱり行ったほうが良い・・・フェルメール展 @上野の森美術館

2018-12-17 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 諸説はあるようですが、現存作35点といわれるフェルメール作品を9点がいっぺんに観られる(会期中に入れ替えがあるようなので同日で見られるのは8点)という「日本美術展史上、最大の「フェルメール展」」というふれこみのフェルメール展に行ってきました。日時指定入場制というシステムと、入場料2500円!(音声ガイド込み)というのも、日本では例がないよう。

 フェルメールの作品以外にも、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンらのオランダ絵画の有名画家らの作品も揃え、全盛期とも言える17世紀のオランダ絵画から、人物画、静物画、風俗画らが多数展示されています。

 朝一の9:30入場のチケットを事前購入し、9:15には美術館に到着しましたが、既に100m弱ぐらいの行列ができていました。それでも、9:30に入場でき、入場するや否や、会場の一番奥にあるフェルメールルームへ直行。

 フェルメール作品を8品揃えたフェルメールルームは圧巻でした。多くは、日本やヨーロッパの美術館で見たことのあるものでしたが、物理的に世界で一枚しか存在しない絵画たちと再会できる喜びはこの上ないです。「牛乳を注ぐ女」、「真珠の首飾りの女」などの丁寧で繊細なタッチで、瞬間を切り取りながらも永続性を感じる絵画は、ため息をつかざるを得ません。「手紙を書く女」、「手紙を書く婦人と召使い」などは初見でした(学生時代にワシントン・ナショナル・ギャラリーもメトロポリタン美術館も行ったけど記憶なし)。「手紙を書く女」のモデルの喜びの表情や黄色のガウンのフワフワ感が何とも上品です。惜しむらくは、柵があって1メートル以上離れた場所からの鑑賞だったので、細かいタッチまでの鑑賞はなかなか難しかった。よく拡大鏡を覗いて鑑賞されている方が居ますが、私も買ってみようかしら。

 フェルメールルームが混み混みになる前にじっくりフェルメールを見た後は、振出し(入口)に戻ってフェルメール以外の作品を順番に鑑賞しました。もともとさほど広くない美術館なので、時間指定制の意味があるのか?と思うほどの混雑ぶりでしたが、私の好きなオランダ風俗画を中心に楽しみました。

 値段は張るものの、フェルメール8点は確かに貴重な機会です。お勧めします。

第1章 オランダ人との出会い:肖像画
第2章 遠い昔の物語:神話画と宗教画
第3章 戸外の画家たち:風景画
第4章 命なきものの美:静物画
第5章 日々の生活:風俗画
第6章 光と影:フェルメール
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特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」 @東京国立博物館

2018-11-21 07:30:27 | 美術展(2012.8~)


 大報恩寺(千本釈迦堂)という京都の寺は全く知らなかった。近隣にある北野天満宮は訪れたことがあるが、この寺には全く気付かなかった。だが、ここの本堂は京都で最も古い鎌倉時代の木造建築として国宝指定を受け、慶派の仏像を多数持つ歴史的名刹なのである。開創は1220年(承久2年)。京都は広く、深いことを改めて実感。



 本展は、その大報恩寺から本尊「釈迦如来坐像」(行快作・重要文化財)を初め、快慶による「十大弟子立像」(重要文化財)や肥後定慶の「六観音菩薩像」(重要文化財)が揃って展示される。まさに一家総出の引っ越し展示である。余計なことだが、この会期中に大報恩寺を訪れた人は運が悪いとしか言いようがない。

 夫々が表情豊かでリアリティたっぷりの「十大弟子立像」が本尊様「釈迦如来坐像」を囲むように配置してある展示空間は圧巻である。十大弟子は優しく人を包み込むような表情の阿難陀立像(あなんだりゅうぞう)から、松平健似の富楼那立像(ふるなりゅうぞう)や閻魔様のような大迦葉立像(だいかそうりゅうぞう)まで様々で、夫々の個性に魅かれる。

 中心に配置された本尊の「釈迦如来坐像」は鎌倉時代の作とは思えないほど、綺麗だった。金の塗も綺麗に残っており、ふくよかな顔はつやがあってすべすべしている。全く傷みを感じないのは、普段は秘仏として、年に数回しか公開されないからだろうか。台座の蓮の葉にも緑の彩色が残る。

 奥の部屋にある肥後定慶の「六観音菩薩像」も一つ一つの保存状態が良いのが印象的。こちらの菩薩さまも表情が豊か。聖観音菩薩立像、千手観音菩薩立像、馬頭観音菩薩立像、十一面観音菩薩立像、准胝観音菩薩立像、如意輪観音菩薩坐像の夫々が地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天を菩薩像に見立てているらしい。個人的には、如意輪観音菩薩坐像の「考える像」が好き。



 夜間開館での訪問だったので、空いている中、好きなペースで見ることが出来た。会場は平成館の2階の半分を使っており、通常の特別展よりは場所的には半分だが、一定時間にすべてを見なくてはというプレッシャーから解放されるので、じっくり、気持ちに余裕をもって見ることができてよい。結局、1時間ちょっと過ごしたので、出展数の多寡にかかわらず、人の集中できる時間というのは変わらないようだ。


《夜の国立博物館》
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「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」展 @サントリー美術館

2018-11-04 08:00:00 | 美術展(2012.8~)


昨年来、静かなマイ密教ブーム中。京都の醍醐寺(創建は貞観16年(874))は、秀吉の醍醐の花見ぐらいしか知らず、行ったことも無かったが、本展で真言密教の中でもかなり大事な位置づけにある寺であることを知った。

本展は醍醐寺の宝物を通じて、平安時代から近世にいたる醍醐寺の歴史を追う。仏像、仏画、書、書状が偏らずバランス良く展示されている。会期によって、展示が若干入れ替わるので全てを見れたわけではないが、Webサイトによると国宝36件、重要文化財60件が展示されるので、見るもの見るもの、ほとんどが国宝か重文という印象だ。

どれも凄いのだが、3次元で楽しめる仏像の存在感が好き。会場に入るといきなり展覧会ポスターの顔となっている重要文化財《如意輪観音坐像》が飛び込んでくる。思いのほか小さかったが、膝を立てて物思いに耽る様子が、可愛いと思うのと同時に、人の心を落ち着かせてくれるのが不思議だった。煩悩の塊のような六本木ミッドタウンから、瞑想の場にワープするような感覚を持たされる。そのあたりは計算づくの配置なのだろうか?

国宝《薬師如来および両脇侍像》も迫力満点。像自体2メートルほどの高さがあるにも関わらず台座も私の身長ぐらい高いので、見上げる形になるだが、その落ち着いた優しい表情に癒される。両脇侍像はちょっとセクシー度が足りなかったかな。

会期違いで、俵屋宗達の《扇面散図屛風》(重要文化財)を見られなかったのは残念だった。途中で醍醐寺のマップが掲示してあったが、随分と広い敷地に驚いた。是非、一度訪ねてみよう。会期は11月11日までなので、仏像好きの人は急ぐべし。


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これは必見! 没後50年 藤田嗣治展 @東京都美術館

2018-10-11 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


藤田嗣治の作品は、これまで府中美術館での個展や多くの藤田作品を有する箱根ポーラ美術館の企画展などで見てきたが、これまでに覚えがない程の大きなスケールでの回顧展で、世界の美術館から集めた100点以上の作品により藤田の一生を追う企画である。

「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」と絵のテーマも幅広く、年代によって画風も変化するので飽きることがない。彼独特の「乳白色の下地」の裸婦もいくつも展示されている。キュビズムなど当時のパリの画壇の影響も受けながら、独自のスタイルを作り上げた力量は流石。イラストのように見える絵も一枚一枚が強力な引力を発している。


《タピスリーの裸婦》

20世紀の前半という時代に、ロイド眼鏡で、ピアスをしておかっぱ頭のスタイルは、パリと言えども相当目立っただろうし、逆に日本では受け入れられなかっただろう。パリの自由な雰囲気に触れた彼が日本に戻って、第2次世界大戦中には戦争画を描いていたというのは、その心中いかほどのものであったのだろうか。

非常に力の籠った見ごたえある回顧展だった。残念ながら、東京開催は終わってしまったが、10月19日~12月16日で京都国立近代美術館で開催するので、まだの方には強くお勧めしたい。
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「ターナー 風景の詩(うた)」展 @東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

2018-06-24 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館、やたら長い名前の美術館に初めて足を運びました。新宿の損保ジャパン日本興亜ビルの42階です。梅雨空ですが、東京を一望する眺望がすばらしいです。

 本展は、ターナーの風景画を集めたもので、「プーシキン展」に続いてヴァーチャルツアーを楽しみました。油彩画、水彩画、エッチング等100点あまりが展示されています。

 会場に入ったら、いきなりマームズベリー修道院が。ここは2010年の夏に訪れたことがあるので、当時の旅行を思い起こし懐かしかった。他にも、エディンバラ、ストーンヘンジ、スノードン山など、見覚えある風景を描いた作品がいくつもありました。


《マームズベリー修道院》

 油彩や水彩に加え多くの版画が展示されているのが本展の特徴です。小さなものは10センチ四方程度ですが、その表現の細かやかさは、おおつくりに見えるターナーの油彩画とは大きく異なります。鑑賞者の立ち入り制限ラインが引かれているわけではないので、版画もぎりぎり近づいて鑑賞可能です。一つ一つの繊細な表現を満喫できます。

 週末のためか、それなりに会場は混み合っていましたが、鑑賞を妨げるほどではありません。多くの大作の展示を期待すると違うと思われるかもしれませんが、リラックスしてイギリスや大陸欧州の風景を楽しむには良い企画展です。


《美術館入口の窓から。この風景をターナーが描いたらどうなるのだろうか?》

《構成》
「地誌的風景画」
「海景‐海洋国家に生きて」
「イタリア‐古代への憧れ」
「山岳‐あらたな景観美をさがして」

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プーシキン美術館展──旅するフランス風景画 @東京都美術館

2018-06-21 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 以前、モスクワに出張で出かけた際に、何とか時間作ってプーシキン美術館に潜入できないかを企てたが、ほぼ完全拘束状態であった1泊2日の出張では実現できなかった。そのリベンジと言うことで、東京都美術館へ。

 「収蔵品の数は約10万点でエルミタージュ美術館に次ぐ世界2位」(Wikiより)というぐらいなので、星の数ほどあろう収蔵品の中から、今回は印象派とその前後の時代も含めたフランスの風景画を集めた企画である。展示作品数は65点ということで多くはないが、1点1点の質が高く、見ごたえたっぷりだった。「旅する風景画」とのキャッチコピーがついているが、まさに風景画を通じてバーチャルフランスツアーが体験できる。

 個々の作品も良いが、風景を描くにもこれほどのバリエーションがあることに気づかされたところが楽しかった。神話の世界を幻想的に描いた風景、離れてみるとまるで写真のように見える風景画、セザンヌの色使い、ピカソのキュビズムで描かれた風景などなど、風景の受け止め、理解、表現の仕方の違いが興味深い。

 金曜の夜間開館時間に訪れたが、展示作品数が多くないためか、絵と絵の間隔も余裕があり鑑賞しやすい。落ち着いて絵に浸ることができる環境である。


クロード・ロラン《エウロペの掠奪》1655年


クロード・モネ《草上の昼食》1866年 初来日!


ジャン=フランソワ・ラファエリ《サン=ミシェル大通り》1890年代
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