その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語― @上野の森美術館

2020-11-12 07:30:03 | 美術展(2012.8~)

ロンドンにはお勧め美術館がたくさんあるが、その中でもユニークさ、面白さ、質の高さで独自のポジションを確保しているのが、ナショナル・ポートレート・ギャラリーだ。隣接したナショナル・ギャラリーと比べると館内が狭いのは残念だが、イギリスの歴史・伝統・価値観を知るのにこれ以上のところはないと思う。本展は、そのナショナル・ポートレート・ギャラリーから、チューダー朝から現代のウィンザー朝に至るイギリス王室とその「物語」を肖像画で辿る展覧会である。

展示されている100点近くの肖像画そのものも良いのだが、『怖い絵』の中野京子さんをナビゲーターに解説される絵の背景にある「物語」が実に面白く、興味深い。展示の仕方を含めたプロデュースの力を感じる展覧会だ。エリザベス女王、ビクトリア女王等の名前は知っていても、イギリス史には縁遠い人もイギリス史に興味をもつこと間違いない。

後半には、現エリザベス女王2世やダイアナ妃などの現代史としての王室も展示されている。美しいエリザベス女王2世の若き姿から品性、知性と覚悟が滲み出る現在の姿は、長き間、国を支えた女王の年輪が滲み出ていて感動する。

会期スタート間もないころに訪問したせいか、金曜夜の時間帯はとっても余裕を持ってみることができた。来年1月11日までの開催なので、お出かけをお勧めしたい。

2020年10月16日 訪問

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一度は訪れたい 山梨県立美術館

2020-10-05 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

もう2カ月近く前のことなのですが、備忘を兼ねてアップします。

8月下旬に所用で山梨を訪れた際に、ミレーのコレクションで有名な山梨県立美術館に立ち寄りました。学生時代に訪れて以来、うん十年ぶり、2回目の訪問です。


〈美術館入口〉

コロナの感染対策で、入口ではマスク装着確認・検温はもちろんのこと、住所・氏名までの記入を求められました。カンカンに太陽が照り付ける甲府盆地でしたが、流石に、美術館の中はひんやりで汗があっという間に引いていきます。

ミレー館というミレーの作品を中心にあつめた部屋があるのですが、10を超えるミレーの力作が並んでおり見ごたえたっぷりです。久しぶりに見る《種をまく人》は驚くほど躍動感に溢れた力強い絵で、その迫力に打たれます。オルセーで《晩鐘》を見た時も感じたのですが、ミレーは実物と画集の違いが如実に出る画家のひとりだと思います。立ちすくむように見入ってしまいました。


〈展示室は撮影禁止・・・〉

残念ながら、《落ち穂拾い、夏》は海外の美術館に貸出し中ということで鑑賞できませんでしたが、≪夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い≫、≪ダフニスとクロエ≫らの絵も実に雄弁です。部屋には私の他には、中年ご夫婦1組のみで、どう見ても美術館の係の人の方が多い。絵を独り占めしているような、贅沢な感覚もたまりません。

美術館には、ミレーの他にもバルビゾン派の画家や、コロー、ライスダール、ターナーらの風景画や山梨県出身の画家の絵も展示してありました。

時間の関係で1時間とちょっとの滞在でしたが、実り多い時間でした。美術好きの方には、この美術館のためだけに甲府を訪れる十分な価値があると、お勧めします。


〈館内の廊下から〉

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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 @国立西洋美術館

2020-09-12 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 新型コロナウイルスの対応で会期が変更されたロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行ってきました。春には展覧会そのものの中止を覚悟していただけに、本当にうれしい開催です。まずは、関係者の方々に大感謝。

 個人的にナショナルギャラリーは、ロンドン駐在時に通勤ルート上にあったし、入場無料(訪問による寄付受付はあり)かつ金曜日は夜9時まで開館していたこともあって、何度も足を運んだので思い出がいっぱい詰まっています。なので、この東京出張美術展は何よりも楽しみにしていました。

  どの作品も初来日と言う、ルネッサンスから印象派に至るまでの作品60余りが展示されています。時間指定制のためか、コロナで外出を控えている方が多いためか、理由は分かりませんが、金曜用夕刻の時間帯はゆっくり、ゆったりと思い思いに鑑賞できる素晴らしい環境でした。

  入場すると最初にルネサンス絵画のコーナーが。クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》を始め、力作が並びます。ここの10枚程度でも、もう満足と思うぐらい。オランダ絵画のコーナーのレンブラントの自画像も久しぶりの再会です。レンブラントのたくさんの自画像の中でも、この絶頂期の自身を描いた1枚はひときわ自信にあふれていて力強い。また、ターナーの《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》も久しぶりでしたが、日本語の解説を読んで、以前は見過ごしていた細部にも目が届き、こんなものがこんなところに描かれていたのかと感心。ナショナルギャラリーでも私の大好きなイギリス風景画家のコンスタブルの絵も1枚「レイノルズの墓標」があったのも嬉しかった。そして、最後には、ゴッホの「ひまわり」が。ナショナルギャラリーの中に居ると、あまりにも傑作が多すぎて、「ひまわり」でさえあまり目立たたないのですが、今回はじっくり鑑賞でき、その絵具使いや迫力を堪能しました。

 あえて言うと、60数枚でルネッサンス以降の西洋美術史を概観するということで精選はされているのでしょうが、つまみ食い的な印象は残ります。もう少しテーマを絞って、集中的に深く見せる展示もあるのかなと思いましたが、幅広くエッセンスを楽しんでもらうという点では、こうした展示の方が良いのかもしれません。

 足しげく通った身からすると、「まだまだ、ナショナルギャラリーこんなもんじゃないよ」という思いはありますが、こうしてロンドンにある美術品を鑑賞できるだけでも素晴らしい。このコロナ騒ぎ何時になったら安定するのか、また今度ナショナルギャラリーに行けるのは何時なのか、といった思いが錯綜しながら、美術館を後にしました。

〈構成〉
第1章 イタリア・ルネサンス絵画 の収集
第2章 オランダ絵画の黄金時代
第3章 ヴァン・ダイクと イギリス肖像画
第4章 グランド・ツアー
第5章 スペイン絵画の発見
第6章 風景画とピクチャレスク
第7章 イギリスにおける フランス近代美術受容

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4ヵ月半ぶりの美術展 ピーター・ドイグ展 @東京国立近代美術館

2020-08-10 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

3月に府中美術館を訪れて4カ月半ぶりに美術展に足を運びました。長い今年の梅雨が明けて、水草で水面が一杯に覆われた緑のお濠、夏の雲、夏の青空の組み合わせが、本格的な夏の訪れを感じさせてくれます。

東京の美術館は、どこも感染防止に注意しながら開館しているようですが、事前予約のみのところが多く、当日飛び込み可能で、ポスターの絵に魅かれた東京国立近代美術館のピーター・ドイグ展に足をはこびました。

ピーター・ドイグは現代の画家で、スコットランド生まれですが、トリニダード・トバゴとカナダで育ち、今もトリニダード・トバゴを活動の拠点としているとのことです。ホームページでは「画家の中の画家」と評されていることや、「現代アートのフロントランナー」として紹介されています。恥ずかしながら私には名前からして全く初めてです。

会場は人も少なくとってもゆっくりと落ちていて鑑賞できました。時期により作風は大きく違っています。中でも初期の風景画は、広い展示空間に大型の絵が並び、魅惑的で不思議な幻想的世界に連れられている気にさせられ、とても好みでした。

また、第3章のコーナーでは彼が仲間と企画した映画の上映会のポスターが展示されており、これらも個性に富み楽しめます。日本映画では「東京物語」「羅生門」「座と一」などがありました。

美術館での美術鑑賞は、普段とは違う脳が刺激されるのがよくわかります。リラックスして、思い思いに絵を眺める。久しく忘れていたこの感覚が蘇り、幸せ気分一杯で解消を後にしました。

本展は会期が10月11迄延長されています。是非、足を運ばれてはいかがでしょうか。写真撮影も可です。

 

Chapter1森の奥へ 1986年〜2002
Chapter2海辺で 2002年〜
Chapter3スタジオフィルムクラブ 
─コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003年〜

 

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春の江戸絵画まつり  ふつうの系譜  「奇想」があるなら「ふつう」もあります─京の絵画と敦賀コレクション @府中市美術館

2020-04-04 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

都心の美術館がコロナウイルスの影響で軒並み休館の中、開館を継続している府中美術館(4月3日現在、12日まで土・日・月は休館)。新たな企画展の会期早々にでかけた。

今回の企画は、江戸時代の「ふつう」の絵画をやまと絵、狩野派、京都の四条派、岸駒と岸派、原在中と原派など、流派毎に、分かりやすく展示がされている。スタイルの違いはあるものの、繊細で深遠な表現に一つ一つの絵を見入ってしまう。個人的には、優雅さが一杯の板谷広長〈業平東下図〉、美少年が浮き上がってくるような狩野栄信の〈菊慈童〉、美しいというよりは奇想とも言える岸駒〈寒山拾得図〉が印象的だった。

いつも思うのだが、府中美術館の面白さは、その絵の作品解説だ。堅苦しくなく、平易かつ興味が湧くように書いていただいている。絵も良いのだが、この作品解説を読むのが楽しい。

作品の大半は敦賀市立博物館からの出品。博物館の写真パネルがあったが、昭和2(1927)年に竣工した旧大和田銀行本店建物を活用した博物館とのことで、レトロな雰囲気を漂わせている。一度、訪れてみたいと思った。

4月12日までが前期展示で、14日からは後期展示。殆どの作品が前期と後期で入れ替わるように計画されている。

2020年3月15日訪問

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「ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵 ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」 @国立新美術館

2020-03-09 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


コロナウイルス感染騒ぎで国立新美術館も3月15日まで休館中なので、3月16日までの開催期間の本展がどうなるか分からないが、幸運にも休館前に訪れることができたブタペスト展の印象を残しておきたい。

 1869年に修好通商航海条約に調印した日本とハンガリー(当時はオーストリア=ハンガリーニ重帝国)にとって、今年は外交関係を樹立150周年になるということで、その節目として企画された展覧会である。正直、さほど大きな期待は持たずに出かけたのだが、ルネサンスからの西洋絵画の巨匠の作品から20世紀のハンガリー美術までを一堂に揃える見応えたっぷりの企画展だった。

 前半は北方ドイツ、イタリア、スペイン、オランダと、ルネサンスから18世紀までの西洋美術史の王道を行く展示。いきなりルカス・クラーナハ(父)の《不釣り合いなカップル 老人と若い女》と
《不釣り合いなカップル 老女と若い男》が並んで展示されていて狂喜したが、その後もティツィアーノあり、ヴェロネーゼ、バルトロメ・ゴンザレス、ヤン・ステーン、エル・グレコとそうそうたる巨匠たちの作品が惜しみなく展示してあった。前半だけでもかなりお腹いっぱいになる。


ルカス・クラーナハ(父)《不釣り合いなカップル 老人と若い女》

 後半はハンガリー美術を中心に19世紀・20世紀初頭の絵画を展示。失礼ながら、ハンガリーの画家は名前すら知らない方ばかりだが、西ヨーロッパの画風を吸収しつつ、東ヨーロッパとしてそれらを消化し超えていこうとする意欲が伝わってくる。勝手な印象だが、ゴッホ、マネ、ターナー、バーン・ジョーンズなどを思い起こさせる作品があった。

個人的には、勝手に「美女の間」と呼んだ「 レアリスム―風俗画と肖像画」のコーナーが嬉しかった。ポスターにもなっているシニェイ・メルシェ・パール 《紫のドレスの婦人》を初め、ロツ・カーロイ春—リッピヒ・イロナの肖像》、ギュスターヴ・ドレ 《白いショールをまとった若い女性》、ベンツール・ジュラ 《森のなかで本を読む女性》など美女に囲まれる。う~ん、かなり幸せな時間である。


ギュスターヴ・ドレ 《白いショールをまとった若い女性》

この手の美術館名を関した美術展には、いくつかの名作と一緒に大したことない作品も併せて持ち込まれる「セット販売」も珍しくないと思うのだが、本展は掛け値なしに名作揃い。下に作品リストから抜粋した構成を見て頂ければ分かるのだが、テーマ、種類もほぼルネサンス以降の西洋美術史を網羅しているので、とにかく時間とエネルギーがかかる。ちょっと展覧会の行方が気になるが、もし再開されるようなら、エネルギー充填して気合たっぷりで出かけられることをお勧めします。


【構成】
Iルネサンスから18世紀まで
1. ドイツとネーデルラントの絵画
2. イタリア絵画
3. 黄金時代のオランダ絵画
4. スペイン絵画─黄金時代からゴヤまで
5. ネーデルラントとイタリアの静物画
6. 17-18世紀のヨーロッパの都市と風景
7. 17-18世紀のハンガリー王国の絵画芸術
8. 彫刻

II 19世紀・20世紀初頭
1. ビーダーマイアー
2. レアリスム―風俗画と肖像画
3. 戸外制作の絵画
4. 自然主義
5. 世紀末─神話、寓意、象徴主義
6. ポスト印象派
7. 20世紀初頭の美術─表現主義、構成主義、アール・デコ

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特別展「ご臨終~江戸時代の死・病・あの世」 と府中郷土の森博物館

2020-02-23 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

「江戸時代の府中に暮らした人々の残した史料から、当時の死生観を探」るという面白そうな特別展が開かれていると知って、府中郷土の森博物館を訪ねた。多摩川沿いにあるので、長距離ランニングの際に近くを通ったことはあるのだが、博物館の訪問は初めて。(車なら中央高速道の国立・府中IC下車、電車なら京王線の分倍河原駅か府中駅からバスが出ている。)

展示は大規模なものではないが、地元の史料を使った興味深いものだった。江戸時代以前から始まって、「死」「葬式」「病」「死後の世界」などへの人々の考え、向き合い方が紹介される。もちろん時代による変遷はあるものの、むしろ現代との共通項や連続性を感じるところも多い。例えば、江戸時代のある庶民の葬式の一連の流れを示す史料の展示があるが、死後から葬式、初七日、四十九日等の一連の営みは現在と大きくは変わらない。ほかにもコレラに対峙する人々の姿は、コロナウイルスと向き合うわれわれ現代人と被る。


<展示室の様子。中央の甕は遺体を埋葬用に遺体を入れる甕>


<釈迦如来の像>

この郷土博物館、常設展も充実している。市の名前の由来が、律令時代の武蔵の国の国府(「府中」)からきていることもあり、律令時代からの歴史が外観できるように上手く展示がされている。市の博物館としては驚きの量と質である。

さらに、博物館の外は、ちょっとした庭園になっていて、ここも楽しい。昔の古民家や再生された歴史的建造物が配置されている。園内には小川が流れ、梅林がある。ちょうど、梅まつりが開催されていて、白、赤の花々が綺麗に咲いていた。天気が良ければもっと花の色が映えただろうが、ゆったりした時間を過ごすことができた。

「お葬式」展、梅まつりともに3月8日まで。東京都下の散歩先として、とってもおすすめです。

(おわり)

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特別展「大浮世絵展 ―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演―」 @江戸東京博物館

2020-01-05 07:00:00 | 美術展(2012.8~)

 江戸東京博物館で開催中の大浮世絵展を訪れた。喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳という五人の江戸時代を代表する浮世絵師による、誰もがどこかで目にしたことのある代表的浮世絵が惜しげなく展示してある。作品の多くをシカゴ、ミネアポリス、ボストン、メトロポリタンらのアメリカの美術館や大英博物館、ベルギー王立美術歴史博物館等の海外の美術館から出展を受けており、これだけの網羅的な展示はなかなかないのではないか。

 分かりやすいのは、歌麿の美人画、写楽の役者絵、北斎と広重の風景画、国芳の武者絵や戯画と言った、日本史の教科書に出てくる代表的組み合わせに集中して展示されている点だ。なので、個々の絵師の個性や違いが引き立つ。日本史を受験科目にしている高校生には是非見てほしい。間違いなく、一度で頭に刷り込まれるはずなので、試験が終われば忘れる一問一答式暗記に時間を割く手間が省けるし、何よりもホンモノだ。

 私自身、図録や本の印刷物では見たことあっても、実物を見るとその色合いや描写の細かさが良く分かり唸らされた。個人的には、どれも似ているように見えるが微妙に個性が描きわけている歌麿の美人画と、風情と人々の息吹を感じさせる広重の風景画が好みだった。浮世絵に描かれた風景や人は、数百年前もの昔のことで今とは大きく異なるのだが、妙に懐かしさや親しみを感じるのは、日本人としての感性、DNAが反応するのだろう。雨の描き方ひとつとっても、絵によって様々な種類の雨が彫り分けてあり、一つ一つの情景を目の前で見ているようだ。

 人の入りは大混雑というほどではなかったが、浮世絵の場合、サイズと描写の繊細さからどうしても、絵に近寄ってじっくり見るという形になってしまうので、どうしても人の列が出来てしまいやすい。なるべく、空いている時間帯に行くことをお勧めしたい。


喜多川歌麿「当時三美人」(Wikiからの引用なので展示作品と異なる可能性あり)


歌川広重「庄野 白雨」(Google画像検索からの引用なので展示作品と異なる可能性あり)

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「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」 @国立西洋美術館

2019-12-18 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

国立西洋美術館で開催中のハプスブルグ展に足を運んだ。日本・オーストリア友好150周年記念に相応しい充実の企画展であった。15世紀から19世紀に渡るハプスブルグ帝国の王家所蔵の絵画、武具、工芸品などのコレクションが惜しみなく展示されている。展示品の多くはウィーン美術史美術館からのもの。

 絵画で目立つのは王族たちの肖像画。壮麗な王家の肖像画の数々は眩いばかり。本展の目玉とも言えるのが、ポスターにもなっているベラスケスのマルガリータ・テレサの肖像画。青と緑のドレスでそれぞれ1枚ずつ計2枚が展示されているが、幼い王女の困惑したような表情とドレスの豪華さの対照性は不安定な気持ちにさせられる不思議な絵だ。マルガリータ以外にも、マリア・テレジア、マリー・アントワネット、エリザベトらの皇妃、王妃たちの威厳ある美しさは立ちすくむ。

 肖像画以外では、レンブラントの<使徒パウロ>、ハルス<男性の肖像画>などのオランダ絵画、ヴェロネーゼ<ホロフェルネスの首を持つユディット>などヴェネツィア派の絵が個人的には好みだった。

 絵画のほかで目を引いたのは、甲冑などの武具。個人的にはあまり興味がある分野ではないはずなのだが、その豪華さ、精巧さは思わず見とれる。実際、あんな重装備なものを着て戦えるのかは疑わしかったが、芸術品としての美しさは疑いの余地はない。一見の価値がある。

 平日昼間にもかかわらず会場はとっても盛況で、その8割が女性だった。女性の方がこうした煌びやかな世界を好むのかな。


<銀杏をバックにロダンの彫刻>

2019年12月6日

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「コートールド美術館展 魅惑の印象派」 @東京都美術館

2019-12-07 08:56:54 | 美術展(2012.8~)

ロンドン在住時にコートールド美術館には2回しか行けなかったが、好きな美術館の一つであった。中心部にあるにもかかわらず、邸宅の一室のような館内で、ナショナルギャラリーやポートレート美術館のように観光客で一杯ということもない。落ち着いて、好きな絵を好きなだけ鑑賞できる空間だった。

そのコート―ルド美術館が現在改修のためメイン処の印象派の作品が来日するということで、喜び勇んで出かけた。印象派・ポスト印象派の作品に絞ってはある(ロンドンのコレクションにはルネッサンス期以前からの作品も少なくなかったはず)ものの、マネ、セザンヌ、ルノアール、ドガなどのお宝の作品と再会し、歓びの時間を過ごすことができた。

とりわけ、マネの《フォリー=ベルジェールのバー》は相変わらず不思議な作品だ。正面から描かれたモデルとその後ろの鏡に映った像との不自然な構図や、モデルの美しさともの思いに耽るような表情のアンバランス。劇場のバーのざわめきが周囲からは聞こえるが、そのカウンターの内側は音が遮断され、見えない空気の壁があるような独自空間。飽きることのない絵である。

展示の仕方も工夫がされている。絵の「読み解き」をキーに「画家の言葉から読みよく」「時代背景から読み解く」「素材・技法から読み解く」と、様々な鑑賞手法をパネル等も用いながら、見せてくれる。

金曜日の夜間開館を狙って訪れたが、その時間帯としては経験のない混み方だった(とはいっても鑑賞に支障が出るような類の混み方ではない)。会期終了が近づいて居るからかもしれないが、12月15日までなのでまだの人には是非、お勧めしたい。

2019年11月29日訪問

 

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「建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」 @Bunkamura ザ・ミュージアム

2019-11-17 08:00:00 | 美術展(2012.8~)

 スイスとオーストリアに挟まれた欧州の小国リヒテンシュタイン公国が持つコレクションの展覧会。5年ほど前にも同様の企画が新国立博物館で開催されていた記憶がある。持てる資源をフル活用して、外貨を稼いでいるのだろう。

文化村のザ・ミュージアムは決して大きくないが、丁度私の集中力が持つ程度のサイズなので、ゆっくりとマイペースで観ることができるのが好きだ。今回は、絵画と磁器のコレクションが中心に展示されていたが、前半の〈宗教画〉、〈神話画・歴史画〉のコーナーが私的には好みだった。 

印象に残った数点をご紹介すると・・・


ヨーゼフ・ノイゲバウアー 《リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像》

8歳ながらにして強い意思と気品を感じる美少年。この視線は痺れる。吸い込まれるように見入ってしまった。


ジロラモ・フォラボスコ 《ゴリアテの首を持つダヴィデ》

こちらもダヴィデの美少年ぶりに魅かれる。


ルーカス・クラーナハ(父)《聖バルバラ》

無表情・無機質に人物が描かれるクラーナハの絵だが、細部に至るまでのきめ細やかな描写が素晴らしい。図版やデジタル画像ではなかなか分からない。


ペーテル・パウル・ルーベンスと工房《ペルセウスとアンドロメダ》

ペルセウスに救出されるアンドロメダだが、その困惑したようなアンドロメダの色っぽさが半端ない。

第7章「花の静物画」のコーナーは写真撮影も可です。上野の美術館のような大型展示に疲れた時に、落ち着いて、自分なりに西洋美術を楽しみたいときに最適だと思います。

 

第1章 リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活
第2章 宗教画
第3章 神話画・歴史画
第4章 磁器―西洋と東洋の出会い
第5章 ウィーンの磁器工房
第6章 風景画
第7章 花の静物画

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〈調布能楽odyssey破 守破離〉 @調布市文化会館たづくり1階

2019-10-27 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

 先日、調布の文化会館に狂言・能の公演に出かけた際に見学したのだが、同館の1階で能に関するとってもユニークな展覧会が開催されているので紹介したい。

 能の「「守破離」の思想をもって、能楽師 山中迓晶さんと覆面アーティストamさんが、伝統芸能の「過去・発展・進化」の段階を追って紹介」(調布市文化・コミュニティ振興団体のHPより)する企画。能の面・扇子・衣装等の関連道具が江戸時代などの歴史的なものから、それらを現代風に再構成し現代美術として仕立てた作品など、まさに伝統の継承が感じられる展示となっている。

 能については知識も嗜みもないので印象にすぎないが、一つ一つの展示がとっても興味深かった。例えば、扇子の美しさなどあまり気にしたことも無かったけど、揃って並べてあるのを鑑賞するとその煌びやかな色合いに惚れ惚れする。また、江戸時代の折り紙(目録?、保証書?、鑑定書?)付きのお面などを見ながら「折り紙つき」の語源はここなのかという雑学も体験できた。お面も桃山時代のものから現代の作品を並べての展示があり、比較しながら守・破・離を考えるのも楽しい。

 

 その起源は奈良時代の伎楽・散楽にさかのぼるという能の世界。気が付かないだけで、日本人のDNA奥深くに残っていることが伺われる。

 展示エリアは限られているので30分程度の時間があれば足りる。11/4までなので、近隣のかたは足を運んでみては如何だろうか。

 

調布能楽odyssey破 守破離
2019年9月14日(土)〜11月4日(月・振) 10:00~18:00
調布市文化会館たづくり1階展示室
入場無料

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過去と現在を結ぶユニークな企画:特別展〈三国志〉 @東京国立博物館

2019-08-13 10:03:12 | 美術展(2012.8~)


関羽像 明時代・15~16世紀 新郷市博物館蔵

東京国立博物館で開催中の「三国志展」に行ってきた。

「リアル三国志」というサブタイトルが示す通り、物語としての「三国志」を、三国時代のリアルな歴史文物で追いかけるという企画である。展示には横山光輝の漫画「三国志」の切り取りやNHK人形劇の「三国志」の人形展示、(私には良く分からないが)ゲームの三国志?からのキャラクター引用もあったりして、現代日本人にとっての三国志と歴史としての三国時代を結ぶ、とても工夫が感じられる特別展だ。

私にとっての「三国志」は中学生時代に読み込んだ吉川英治の『三国志』。物語を夢中で追いかけると同時に、英雄たちの栄枯盛衰、人間の器、天命といったものについて考えさせられた。私の愛読書の筆頭で、何度も読み返し、大物から小物に至るまで様々な人間の考えや行動が織りなすドラマを通じて、人間観や人としての徳や知恵を自然と学び影響を受けた。最近はなかなか再読することはないが、昔の記憶を追いながら、興味深く一つ一つの展示を追った。

展示物には中国の一級文物指定を受けているものも多く、物語とよりも中国古代史に興味がある人にも十分な期待に応える内容になっている個人的に特に興味を引いたのは、日本で出土する三角縁神獣鏡との類似性がある方格規矩鳥文鏡。日本の古代史における中国との関連は興味深い。

 
後漢~三国時代(魏)・2~3世紀
1955年、遼寧省遼陽市三道壕1号壁画墓出土
遼寧省博物館蔵


また、歴史文物もさることながら、NHK人形劇三国志の人形が展示してあったのも、同番組を毎週欠かさず視聴していた私にはとっても懐かしかった。

   

会場は老若男女が幅広く訪れていて、普段の東博の特別展とは違った雰囲気が漂っていた。写真も撮り放題というのもファン心をくすぐる。

三国志ファンはMust See。


《構成》
プロローグ 伝説のなかの三国志
第一章 曹操・劉備・孫権―英傑たちのルーツ
第二章 漢王朝の光と影
第三章 魏・蜀・呉―三国の鼎立
第四章 三国歴訪
第五章 曹操高陵と三国大墓
エピローグ 三国の終焉―天下は誰の手に


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思ってたのと違ったけど充実の展示! 〈ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道〉 @国立新美術館

2019-07-14 08:00:00 | 美術展(2012.8~)

国立新美術館で開催中の〈ウィーン・モダン〉展に行ってきた。「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」というサブタイトルだったので、てっきりウィーンの世紀末美術の展覧会と思っていたら、私の早とちりで、たしかに「世紀末『への』道」なので世紀末美術だけではない。18世紀後半から20世紀初頭までのウィーンの都市史・芸術史の展示だった。私は行ったことないが、当地のウィーン・ミュージアムが改修中ということで、同館の所蔵品をまとめて持って来てくれているらしい。

とにかく、広範囲の展示品に圧倒される。下に転載した本展覧会の構成を見ていただきたいが、まさにウィーン近代芸術史鷲掴みという感じだ。絵画だけでなく、椅子・食器などの生活用品、服飾なども含んだ総合展示である。一つ一つ丁寧に見ているときっとクリムトに辿り着く前にガス欠になる人も出てくるだろう。

私自身はクリムトら分離派などの世紀末美術をお目当てにしていたので、前半は軽く流そうとしたが、それでも見応え十分で面白いものがたくさんあり、どうしても足が止まる。シューベルトの眼鏡なんかもあり(精巧でかなり凝った感じの眼鏡だった)、興味を引いた。ウィーンが城壁に囲まれた城壁都市で、その城壁跡がリンク通りなんてことも初めて知った。

お目当ての分離派や世紀末美術の展示も楽しめた。個人的には、分離派の様々なPRポスターがお好みで、ポスターを集めたクリアホルダーも購入。数は多くはないが、分離派画家の諸作品もその類似や相違があり面白い。エゴン・シーレはこれまで意識して鑑賞したことが無かったので、その個性的な作品群に強く魅かれた。

今回嬉しかったのは、7月・8月の金・土は国立新美術館は21時まで開館してくれていることだ。丁度、19時ごろに入館したのだけど、通常の20時閉館ではとても見切れない質・量の特別展だっただけに、ホント助かった。夏だけと言わず、通期で21時閉館をお願いしたいなあ。

 

《構成》

 1 啓蒙主義時代のウィーン ̶近代社会への序章
1-1  啓蒙主義時代のウィーン
1-2  フリーメイソンの影響
1-3 皇帝ヨーゼフ2世の改革

2 ビーダーマイアー時代の ウィーン
2-1 ビーダーマイアー時代のウィーン
2-2 シューベルトの時代の都市生活
2-3 ビーダーマイアー時代の絵画
2-4 フェルディナント・ゲオルク・ ヴァルトミュラー̶自然を描く
2-5 ルドルフ・フォン・アルト ̶ウィーンの都市景観画家

3 リンク通りとウィーン ̶新たな芸術パトロンの登場
3-1 リンク通りとウィーン
3-2 「画家のプリンス」ハンス・マカル
3-3 ウィーン万国博覧会(1873年)
3-4 「ワルツの王」ヨハン・シュトラウス

4 1900̶世紀末のウィーン ̶ モダン 代都市ウィーンの誕生
4-1 1900 ̶世紀末のウィーン
4-2 オットー・ヴァーグナー ̶近代建築の先駆者
4-3-1 グスタフ・クリムトの初期作品 ̶寓意画
4-3-2 ウィーン分離派の創設
4-3-3 素描家グスタフ・クリムト
4-3-4 ウィーン分離派の画家たち
4-3-5 ウィーン分離派のグラフィック

4-4 エミーリエ・フレーゲとグスタフ・ クリムト
4-5-1 ウィーン工房の応用芸術
4-5-2 ウィーン工房のグラフィック
4-6-1 エゴン・シーレ   ̶ユーゲントシュティールの先へ
4-6-2 表現主義̶新世代のスタイル
4-6-3 芸術批評と革新

 

 

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府中市制施行65周年記念 棟方志功展

2019-07-11 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

府中市美術館で開催されている「棟方志功展」に会期最終日の午後にやっと訪れることができた。棟方志功の板画(棟方は自分の「木版画」を「版画」と呼んでいた)をまとめて見る機会は、15年以上前に青森に〈ねぶた祭り〉を観に行った際に、市内の美術館で観て以来である。戦前の中小の板画から戦後の晩年の大型作品に至るまで多種多様な作品が展示される充実の特別展だった。

棟方の個性的な作品は、見るものを強力に引きつける磁力を持っている。作品に描かれた対象と個人的な共通項は無くとも、日本人の心性に根差した懐かしさを感じる。故郷の土であり、日本の八百万の神に触れている気がする。描かれた女性の姿が縄文期の土偶に似た気がするのも、日本人の原始的な感性が現れているようだ。

後半期の展示では、作品はぐっと大型化する。最大級は、2m×13mという<大世界の柵>。大きい絵は近くで見ても良く分からないが、離れてみるとその全体像が良く分かる。ピカソの〈ゲルニカ〉を見た時のような、圧倒的な迫力に押しつぶされそうになった。

実際に使われた絵筆(ブラシ)、彫刻刀が展示してあったがこちらも興味深かった。特に、展示してある作品の元板が感動的だった。彫が驚くほど深く、太い。あの迫力の板画はここから生まれているのだと深く納得した。

 ショップに立ち寄ったら、既に図版は売切れ。確かにこの展覧会の図版なら皆欲しくなるだろうと、入手できなかった残念さはあったが、これも納得だった。

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