★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

京都青春セレナーデ2

2009年11月03日 10時31分08秒 | 小説「京都青春セレナーデ」
 河原町三条から乗った市電を降りると、桜が満開の大学の正門前は大勢の学生や父兄たちでごった返していた。女子学生たちは、競うような盛装で、その多くが母親同伴なのですぐにそれとわかったが、男子学生たちはスーツやジャケットの者もいれば、ジーンズや学生服の者もいて、どれが新入生だかわからなかった。

 正門の入口では、赤いヘルメットに白いマスク、サングラスにアーミーシャツという、まるで忍者部隊月光みたいな一団が新入生たちにビラを配っていた。
 これが、親父が絶対に近づいたらいかんと言うとった学生運動の連中か…。
 手渡されたガリ版刷りのビラには、反米、反戦とか打倒資本主義といった季節はずれの文句が、人に読んでもらうことを拒否したような、独特の角張った字体でびっしりと書かれていた。リーダーらしき学生が拡声器を片手にアジテーションを始めたのをきっかけに、修二はその場を離れて構内へ入った。

 大学のキャンパスは高校の文化祭なみの賑やかさで、いたる所にカラフルな立看板やテントが乱立し、盛んにクラブ勧誘が行なわれていた。
 体育会系の学生は学生服やユニフォームスタイルで、同好会やサークル系の学生は普段着スタイルと明確に分かれていて、立看板のキャッチコピーも、前者は『君の一球入魂を野球部は待っている』とか『燃えよ若人、伝統の相撲部』といった硬派もので、後者のそれは『恋をするならテニスDEデート』とか『フォークソングで愛を語ろう』、『男女共学、スキー同好会』といった軟派路線が多かった。

 体育会系のテントの前では、身体のデカい新入生は例外なく声をかけられ、脈ありと思われると2、3人の部員に脇を固められてテントの下へ強制連行されていた。女子学生の多いサークル系のテントの前には入会希望の長蛇の列ができていた。
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