「タイタンの妖女(The Sirens of Titan)」カート・ヴォネガット・ジュニア著 浅倉久志訳 早川書房 2009
「巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作」裏表紙より…。
この本はシニカルかつユーモラスに読めばよかったのかー、まじめに読んでしまった。
この本を読めば人生の真理のヒントがつかめるんだと期待していました。
そして読んだ後にもっと早く読んでおけばーってつぶやくのかと思っていました。
高校生の頃にこの本を読んでいたら感想も変わったのかわかりませんが、おっさんになってから読んだら、期待が外れてしまいました。
前半はものすごくおもしろくて、これからどうなるのーってページをめくりました。
おもしろかったのが主人公マラカイ・コンスタントの父親ノエル・コンスタントのエピソードです。
彼は聖書の文面のアルファベットから株のティッカーシンボルを取り出し、株を買い大富豪になります。
日本の株は四ケタの数字で会社を表すんです(今は一部アルファベットも使用)が、アメリカの株はアルファベットの組み合わせで表すため、こんなエピソードが使えます。
日本だったら円周率で株を選ぶとかになりそうです。
この小説のポイントはマラカイ・コンスタントに与えられたウィンストン・ナイルズ・ラムファードの予言が後半にどう実現していくかを説得力のある方法で描くところにあるんだと思います。
ラムファードはコンスタントに「君は火星と水星に行き、一度地球に戻り、タイタンに行く」と予言します。
しかもコンスタントはラムファードの妻と火星で結婚するというのです。
コンスタントは全力で予言に逆らおうとします。
ラムファードの妻ビアトリスも同じようにラムファードに反抗します。
しかし、株の大暴落とともに二人の運命は…。
でも、いきなり舞台が火星になってコンスタントは名前も記憶も失ってアンクと呼ばれるようになってました。
えー主人公が記憶を失うって、なんて安易な展開なんだろう。
それならどんな予言もかなってしまうの当たり前じゃないのー。
この辺りから物語への期待もコンスタントに対するシンパシーも薄れてしまいました。
そしてYouTubeで散々聞いていた衝撃のラストにたどり着くために読んでいきました。
それは宇宙からのメッセージについてなんですが、それも思っていたよりあっさりで、もっと感動したかったのに、別にそのメッセージはこの小説のメインテーマでもなく、ただの笑い話のオチにしか感じませんでした。
太田さんのあとがきも難解すぎて理解不能でした。
最後の最後にもっとスッキリさせてくれると思ったのにー。
そしてタイタンでコンスタント待っているはずの三人のセイレーンはただの○○だったのも、タイトル肩すかしでがっかりでした。
とは言え「タイタンの妖女」を読んで充実した二日間だったのは間違いありません。
読了後、すぐにこんな感想文を書かせるくらいの、ある意味おもしろい本でした。