ATG映画って、低コスト映画だと思っていたのでいきなりシネマスコープサイズの画面だったのがびっくりしました。
しかも極彩色カラー。
しかし結婚式に金田一がいなかったり、離れの殺人現場で活躍するのは久保銀造だったり、あれっという出だしでした。
それでも原作に沿った展開となりました。
最初から犯人もトリックもわかって見ているので、物語をどう展開させるかに注目していました。
一柳賢蔵役の田村高広さんがよかったです。
なぜ、賢蔵が結婚を取りやめることができず、死ぬことになったのかがよく理解できました。
そして、事件当夜、賢蔵は雨戸を開けて季節外れの雪が降っているのを知ります。
雪が降るとせっかく付けておいた犯人の足跡が消えてしまいます。
その瞬間、彼は悟るのです。
この雪は天がこれからの犯行はうまくいかない、やめておけと彼に伝える最後のメッセージだったのです。
それでも彼は雨戸を閉め、開かないようストッパーをかけます。
一度決めてしまったことはやめられない人間の哀しさ、愚かさがにじみ出ていました。
また、賢蔵と三郎の兄弟関係がうまく描かれていました。
二人が嬉々としてトリックを仕込む様子が兄弟の異常な関係を現していました。
鈴子と賢蔵はそっくりだったという金田一のセリフも腑に落ちました。
ということで、いい映画でした。
それをきのう初めて見たなんて、もっと早く見ておけば、続く金田一映画の評価も変わっただろうと思われるのでした。
とにかくこの映画があって、続いて「犬神家の一族」に始まる金田一映画ブームになったんだとわかりました。
中尾さんの金田一耕助はそれ以前の片岡千恵蔵、高倉健に比べれば、当時最も金田一らしい演技だったんだと思います。
その後の石坂浩二、古谷一行がなかったとしたら、違和感を感じることはなかったでしょう。