君、知りたまふことなかれ。
私だって初めての育児、どうしていいのかわからぬ不安。
君、知りたまふことなかれ。
我が子を豊かに育てねば、押し潰されそうになる重圧感。
君、知りたまふことなかれ。
我が子の為にと身の丈以上の頑張りと結果のでない焦燥感。
君、知りたまふことなかれ。
子供の安全守る為、片時も目が離せない。気も休まらぬ緊張感。
君、知りたまふことなかれ。
待つことのできぬ子に、自分を殺し生活をする閉塞感。
君、知りたまふことなかれ。
どんなに腰が痛くてもどんなに腕が痛くとも、抱いて歩けの疲労感。
君、知りたまふことなかれ。
思い通りにいかぬ子に日中菩薩でいる為に、夜は修羅が騒ぎ出す。
この思い、受け止めて欲しい。共に感じて欲しい密室育児の孤独感。
君、知りたまふことなかれ。
嘘でもいい。嘘だとわかっていても、
「育児より仕事の方が楽だ」と、「お疲れ様。ありがとう」と、
たった一言に救われる充足感。
「仕事に支障をきたすから」
里から帰ってきた私に主人の一言。
寝室はお一人様をご満喫。
別室にての睡眠確保は育児戦線撤退に等し!
「俺はお前ほど体力がないから」
慢性的な睡眠不足に絶え間ない抱っこ要求。
フラフラの私に主人が一言。
(確かに私は主人より体力があるのだけれど)
ここまでくるともう体力じゃないよ、気力だよ、気力!
一触即発。
「育児しかしていない」
散らかった部屋、できていない晩御飯。
仕事から帰ってきた主人が私に一言。
ようやくの思いで息子を寝かしつけ、まずは何よりと休む事なく晩御飯の準備をしている私に向かって・・・
何やとー!
勃発。
開口一番「疲れた」「しんどい」「お腹がすいた」と、
そんな普通の言葉も密室育児の果てにきくと嫌味に聞こえる。
私の中にもある思いを先に口に出されると、それは私に勝るのかと比べてしまう。
疲労に空腹と、争いの火種が既にある状態でカチン、カチンと打たれれば発火たやすく、
あなたの一言を売り言葉にして買い言葉の火花散る。
怒り一時、焼け跡は自身の可愛げのなさに自己嫌悪。
灰。
夫婦仲良くは育児環境の基盤なのだから・・・
「男は」「男だって」論争慎んで、「目指せ、夫婦友好平和条約締結!」
※注釈
文中「俺はお前ほど」発言があるが、これはあくまで表記上である。
主人は自分のことを「私」と言う男性だが、
実際のまま表記すると「私は私ほど」とわかりづらい表現となるので、
表記上、俺様発言を使用。実際よりハードな仕上がりとなっている。
また、別室にて休養してもらうのは
妻として他に何もできない私だから(謙遜ではなく)
その申し出を受けることのみが私から彼への
唯一の思いやりであり、最後の砦なのである。
そして、主人の一言は一言のみである。
その一言に対して百倍も越える私の反撃。
口のたつ女を妻にするとさぞかし大変であろう。
そんなに言葉を重ねても伝えたい思いが伝えられず彼を傷つけてしまうことに、
はがゆさと悔しさで自己嫌悪なのである。