第3272話 令和版 蜘蛛の糸(前編)

2022年03月19日 10時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

ある日のことでございます。

お釈迦さまは極楽の蓮池のふちを、

ひとりでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。

池の中に咲いている蓮の花は、

みんな玉のようにまっ白で、

そのまん中にある金色のずいからは、

なんともいえないよいにおいが、

たえまなくあたりへあふれております。

極楽はちょうど朝なのでございましょう。


そこへ泰広王がお越しになり、

「昨今の罪人にはほとほと手を焼いております。」と嘆きます。

何が泰広王を苦しめ、悲しませているのか、

お釈迦さまはおたずねになりました。

「インターネットと申しますものの普及によって

生前、本名ではない名をいくつも持ち、

名ごとの悪行をひとつにまとめあげるのに

大変な労力を要しております。

仮の名を持った彼らは標的となる者を

電子の言葉なるものによって攻撃し続け、

相手を自死にまで追い込むのですが、

本人にはまったく罪の意識なく、

むしろ彼らからするとその行いは正義であり、

殺めてなどいないと訴えます。

地獄行きの判決に納得できない彼らは

不服を申し立て、再審を求め続けるのでございます。」


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第3271話 春休み開幕(... | トップ | 第3273話 令和版 蜘蛛... »

コメントを投稿

創る(フィクション・ノンフィクション)」カテゴリの最新記事