第1808話 町の小さな雑貨屋さん

2018年03月16日 08時00分00秒 | Weblog

町の小さな雑貨屋さんがある。

今どきのおしゃれな雑貨店、ではなく、

日用品等の雑貨を 雑多に置いてある雑貨屋さん。

店の前にもごちゃごちゃと商品が置いてあって

雨の日は、商品が濡れてしまうのではないかと

いつも冷や冷や 前を通っていた。

 

この雑貨屋さん。

実は、ずっと通勤途中の風景だったのだが、

店内はどうなっているんだろうと立ち寄ってみたことがある。

小さな個人商店に、私(お客)ひとり。

買わないといけない雰囲気に怖気づいたが、

見渡してみると、店主の気持ち感じる安さ!

お得、お得と結構買ってしまう(笑)

会計時、店主との雑談終わりに

「ポイントカード、作りますか?

有効期限もないですし、

ポイントを貯めると、お得な割引がありますよ」のお勧め。

普段、ポイントカードを作らないタイプなのだが・・・

店主の気のいい笑顔に誘われ、なぜか作ってしまう。

次回くる時な財布の中にしまい、ずっと持ち歩いていた。

 

いつも 通勤途中の風景だった 雑貨屋さん。

不意にシャッターが降りている日が続いていることに気づく。

朝が早いからかな・・・

いや、以前は朝から店の前に商品がごちゃごちゃ並んでいた・・・

店をたたんだのかしら?

朝と夜、通勤コースを変えている私。

帰りに様子を伺うこともなく、

朝だから閉まっているのだ、

朝から雑貨を求めるお客さんの入りも少ないだろうし・・・

きっと営業開始時間を遅くしたんだ。

そう思い込んでいたある日、遅出の日中、前を通ると「開いてる!」

シャッターがあがっていることに驚き、久しぶりに立ち寄ってみる。

 

すっきりした店の前を通って扉を開けると、

おばあちゃんが「いらっしゃい」と奥から。

驚いたのが、店内に所狭しと並んでいた商品がスカスカ・・・

閉店間際の雰囲気。

商品を会計中、思い切って問う。

「あの・・・店じまいされるんですか?」

「いや、そういうわけやないんやけど・・・」

「これ、ポイントカード」

「あぁ、これ、もぅやってませんねん。(カードを回収して)

その代わり、今日の分からちょっと値引きさせてもらいますね」

割引に対するお礼と、店主から勧められて作った思い出を語ると、

「このポイントカードやってたお兄ちゃん、亡くなってしもうて・・・」

 

1度しか話をしていない 赤の他人である。

はっきりと店主の顔が思い出せないにもかかわらず、

素敵な笑顔で話しかけてくれた感じは確かなもので

中年といえども、まだ若かったではないか・・・

お元気そうだったではないか・・・

力なく語るおばあちゃんの深い悲しみを前に、

そのお兄ちゃんのお母さんであることが・・・

子に先立たれた母親を励ます言葉など見つからず、

月並みな言葉をかけて店を出た。

 

1度しか話をしていない 赤の他人だが、

素敵な笑顔で話しかけてくれた感じだけがぼや~っと。

最初に立ち寄った時も おばあちゃんは店の中にいた。

店主である息子といつもここで過ごしていたのであろう。

ご冥福を心から祈りながら

息子の店を細々と守る母親の姿に 乱れる心。


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