職場の近くのスーパーに気持ちのいい店員さんがいる。
彼女が発する言葉はマニュアル通りの台詞のみなのだが、
忙しい中でも、そこにきちんと丁寧に添えられた彼女の気持ちが嬉しい。
そういえば…バレンタインデーの頃、デパートのチョコレート売り場の出来事。
高級チョコレートとして世間にその名を知らしめるブランド店で。
いよいよバレンタイン直前の週末、いつもに増してその店の前には列ができていた。
ショーケースには美しいチョコレートが個別に売られ、自身の好きなものを選んでいく形式。
ひとつ、ひとつ、どれにしようか皆さん真剣。
私の二つ前にお年を召したご婦人がいた。彼女も一生懸命選んでいる。
慣れないのだろうご婦人が店員にくり返し聞く。
どれを選びましたかね~もうこれ、選びましたっけ?あと、いくつですかね~?
店員は答えだけを一言発する、のみ。正面では隠しているつもりなのだろうか、
彼女のすました面倒臭さや、ツンと相手を見下している感じが横顔にあらわれていた。
高級なのは…?
そういえばこんなことも…役柄が伝わる服を探していた時のこと。
私の役は、中華飯店のアルバイト店員、俊枝。
台本を読むと、名前の地味さに反比例、私の実年齢より若く、気の強い女の子。
普段の私なら決して足を踏み入れることのないであろうそのお店に、勇気を出して潜入。
ボディラインくっきりの格好いいデザイン。
いつもより肌の露出が多く…鏡の前で気にしていると、店員さんが、
「自分、似合うやん!これ、絶対買って損せ~へんて、買いやて、買い!…つづく」
少々高いけど…役の為だ、財布を出して購入。
「自分な、服装見たら、流行追うようなタイプちゃうやん?こんなん持っといた方が絶対いいよ」
彼女はその言葉に傷ついた私の表情に気づくことなく、洋服をばかりを見て包装している。
彼女は、上から下までそのブランドで決めていた。
払った値段のわりに、安い買い物をしてしまった気がしてならなかった。
「またお越し下さいませ」
丁寧におじぎをするスーパーの彼女は指先までぴしっと決まっていた。美しい。
人は気づかぬところで、人に見られているものだ。
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