こんぴらさまの淵の河童のはなし
今、妙見さんのお堂のある処に、昔 金平さまを祀っていたがその上り口の鳥居の
前の川岸に、古い大きな木が三本、ひとところに立っている。
そのうち一番大きなのがヨノミ(榎)で、幹が弓のように曲がって、ひろがった枝
が川の上におおいかぶさって、その先が向こう岸へ届きそうになっている。

現在の川べり、鳥居が妙見さん。
このヨノミの木の上手に、川の流れが岸の岩に当たって、ぐっと曲がって深い淵を
つくっている。上水道の井戸が近くに設けられてから、川水も減ってきたが、昔は
いつも青あおとした水をたたえていて、どんな日照りでも、絶対に涸れることがな
かった。
その頃は、この淵の底は、深くてはっきり見えないが、穴があいていて、その穴
に、ゴッタレボウシが棲んでいるというのである。そして、その穴が山の下を有田
の川まで抜け通っていて、ゴッタレボウシは、そこを行き来するのだという。岸に
立ってみると、その深い底から、今にもゴッタレボウシが出て来そうなのである。
子供たちはここでは決して泳がなかった。

現在の淵、季節柄水が少ない

数年前の淵、水面にかぶさるようにヨノミの枝が垂れている
昔、前島という家に、馬を一頭飼っていた。こんぴらさまの淵の前の芝っこに、そ
の馬をつないで、芝草を食わせるのが常であった。
ある日、その馬が綱を引きずって、とんで帰って来た。家の人が見ると、その綱
に変なものがくっついていた。よく見ると、ちぎれた腕が、水かきのついた指で、
しっかりと握っている。前島さんは、不思議な事もあるものだと思って、その腕を
はずして、古ぎれに包んで、しまっておいた。その晩おそく、前島の家の戸をトン
トン叩くものがあった。戸を開けると、一人の若い女が立っていた。 つづく

昔 川の流れがあたったであろう淵の岩
今、妙見さんのお堂のある処に、昔 金平さまを祀っていたがその上り口の鳥居の
前の川岸に、古い大きな木が三本、ひとところに立っている。
そのうち一番大きなのがヨノミ(榎)で、幹が弓のように曲がって、ひろがった枝
が川の上におおいかぶさって、その先が向こう岸へ届きそうになっている。

現在の川べり、鳥居が妙見さん。
このヨノミの木の上手に、川の流れが岸の岩に当たって、ぐっと曲がって深い淵を
つくっている。上水道の井戸が近くに設けられてから、川水も減ってきたが、昔は
いつも青あおとした水をたたえていて、どんな日照りでも、絶対に涸れることがな
かった。
その頃は、この淵の底は、深くてはっきり見えないが、穴があいていて、その穴
に、ゴッタレボウシが棲んでいるというのである。そして、その穴が山の下を有田
の川まで抜け通っていて、ゴッタレボウシは、そこを行き来するのだという。岸に
立ってみると、その深い底から、今にもゴッタレボウシが出て来そうなのである。
子供たちはここでは決して泳がなかった。

現在の淵、季節柄水が少ない

数年前の淵、水面にかぶさるようにヨノミの枝が垂れている
昔、前島という家に、馬を一頭飼っていた。こんぴらさまの淵の前の芝っこに、そ
の馬をつないで、芝草を食わせるのが常であった。
ある日、その馬が綱を引きずって、とんで帰って来た。家の人が見ると、その綱
に変なものがくっついていた。よく見ると、ちぎれた腕が、水かきのついた指で、
しっかりと握っている。前島さんは、不思議な事もあるものだと思って、その腕を
はずして、古ぎれに包んで、しまっておいた。その晩おそく、前島の家の戸をトン
トン叩くものがあった。戸を開けると、一人の若い女が立っていた。 つづく

昔 川の流れがあたったであろう淵の岩