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映画 “墨攻” を見て

約1年前だったように思うのですが、酒見賢一氏の小説“墨攻”の読後感想をこのブログに投稿したものでした。このゴールデン・ウィークの間に、その映画“墨攻”を レンタル・ビデオ(DVD)で見ました。当時、この映画の公開でこの小説が脚光を浴びていたのですが、映画の方は 見るタイミングを逃していたのです。
この映画そのものの私の印象は 五つ星。カメラ・ワークも良く 透明で鮮明な映像は、視覚的訴求力のあるものでした。ストーリー展開もテンポが良く、余計なナレーションは 映画の最初と終わりにしかない。映画の作りが 良く計算されていると思いました。

登場する俳優達も 皆 私の好みにピッタリ。主役・革離(劉徳華・Andy Lau)は どこかイチローを思い起こさせるストイックさが出ていて良かったし、ヒロインの女性騎馬隊長・逸悦(范冰冰)も上品でよかった。だが、これは、どうやらメーキャップが日本人好みに仕上がっていたせいかも知れない。このラブ・ロマンスは余計だとのネット上の評価が多いが、これによってエンタテイメント性は 一段と向上していると思う。しかし、いくらなんでも女性騎馬隊長の設定は 少々難があるかも。

中国古代の戦国時代。趙が燕を攻める経路の途中にある小国・梁の城を攻撃するところが舞台になっている。これは原作そのままの架空設定。
確か 宮城谷昌光氏の小説によれば 趙の軍旗は黒だとの説明があったように記憶していたのだが、映画でもまさしく黒の軍団として描かれている。この点は リアルさを印象付けていて好ましい。胡服騎射の兵装改革をやった趙軍には勿論だが 戦場に古代中国特有の戦車(chariot)は見られない。兵士達が中国古代特有の武器の戟を持って林立させている。古代中国の10万単位の軍隊の運動が 視覚化されていて、まさしく宮城谷昌光氏の小説を読む時のイメージ・アップには 大変役立つものだと言える。
梁の城も 中国古代の城らしく 土で塗り固められている。ここへ 趙の軍隊が 踊りかかって来る。まず、矢による応酬。イオウで有毒ガスを発生させ攻城軍を たじろがす。そこへ石塊による攻撃。映画は あまりにテンポが良かったので 見落としたのかも知れないが、例の 攻城兵器・雲梯(うんてい)は 残念ながら登場していなかったように思う。
革離が 騎馬隊長・逸悦と偵察に赴き 趙軍に気付かれ追い詰められる緑豊な断崖のシーンも どことなく宮城谷昌也氏の小説の場面を思い起こさせるものがある。
攻撃に失敗した趙軍が 精兵を伏せて 主力の撤兵を見せかけて、攻撃を仕掛けるが この時 熱気球を使っている。史実ではこのようなこと全くないだろうが、これは面白い。

この映画でも 盤上で攻城シミュレーション・ゲームを 革離と趙の将軍・巷淹中が 両軍が見守る中で行うシーンがあるが これは比較的あっさりと扱われていた。
明らかな史実の少ない墨子集団のエピソードに拘泥せず、エンタテイメント性を重視し、中国古代を彷彿させる見せる映像と軽快なストーリー展開は 映画作品として大いに成功している。
私はこの“墨攻”の劇画作品は読んでいないが、この映画のストーリー展開は 原作とは少し違っていた。特に 終盤はかなり違っていて、攻守ところを何度も変転。それが ハラハラする展開で、返って映画作品としての独自性があって面白いと思った。
この映画は、娯楽作品としては 秀逸であると感じた次第です。

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