The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
びわ湖環境ビジネス・メッセでのセミナー受講:低炭素化制度への疑問
先々週の、恒例の びわ湖環境ビジネス・メッセでの話題を続けたい。
第3日目10月23日はセミナー受講のみの予定。午前の “カーボン・フット・プリント制度説明会”と 長浜バイオ大学での“カーボン・オフ・セット普及セミナーin関西”であった。
実は、私はカーボン・フット・プリントの意義が理解できていない。疑問ばかりが気になるのだ。炭素に関するライフ・サイクル・アセスメントが重要なのだが、基本的には次の2点の問題があると思っている。
①カーボンに関連するライフ・サイクル・アセスメントが重要なのだが、検証された間違いないデータで計算できるのか。
②その計算に使ったデータや計算結果を誰が妥当と保証するのか。公知とするデータの素になるデータを 各メーカー全てが正直に公表するのだろうか。
こういう疑問から さらに次々と 新たな疑問が派生してくる。
③メーカー間の製品評価競争にカーボン・フット・プリントを現実的に持ち込むことが可能なのか。各メーカーは自分の生産プロセスでのCO2排出量を勝手に 自分に都合の良いデータを使って表示するのではないか。いや表示そのものに偽装はないのか。この誰をも信用できない時代に そのような計算結果を信じることができるのか。
④経産省は業界毎に制度普及を狙っているようだが、それでは 同種の製品間比較にはならず、せいぜいで 分野の異なる製品間の比較で、業界間競争にしかならない。それで意味あるカーボン・フット・プリントになるのか。
例えば 使っている原材料が鉄ならば そのCO2排出量はいくら、アルミならこうだと、データ・ベースがあって、それを計算に使うというようなもの。廃棄物処理も 極めて粗い分類による典型例に基づくデータを適用して計算する仕組になっているようだ。
だが、消費者が知るべきは 同じカテゴリーの製品がメーカー間で どちらが 効率的なエネルギー消費となっているのか、例えば どちらの製品が原料はどう工夫されているのか、生産プロセスはどうなっていて、輸送経路はどうなって自分の手元に来たのか、等ではないのか。そこまで分かることで始めて、製品間の個別の比較と選択が可能になってくる。
例えば、材料に使用した同じ鉄でも 鋳物や厚板品、冷間品や 厚みでCO2排出量は異なる。もっと言うと鉄に含有する成分でも異なるし、同じ冷間品でも仕上げや表面処理のあり方によっても異なる。さらに価格の問題で海外品を使っていれば、省エネ度は日本製とは異なるし、輸入経路にエネルギーを余分に使っていることになる。さらには国内メーカー間でも それは異なるし、同じメーカーであっても生産時期によってCO2排出量は異なる。鉄の生産に使用した電力は 電力供給会社によっても 電力生産に消費されたCO2排出量は異なる。輸送と言えば、九州に最終消費者が居たとして、韓国の浦項から運ぶ鉄と、北海道から運ぶのではどちらが良いのか直ちには判断できない。輸送手段も違えば異なる結果となる。
これが 鉄以外の材料になるともっと変化に富んでいるかも知れない。まさに、そういった変化に富んだ製品間での比較が重要であるにもかかわらず、厳密な比較を回避して意味があるのか。そういう粗いデータ要素では、場合によっては、計算値と実際の値の間に逆転現象が出ないとも限らない。もし、このような現象が出れば 制度の意味は無い。
これらの 疑問から、さらに疑問は増幅する。
⑤一旦 世の中に公表されたデータは 必ず 一人歩きするが、概括的な計算結果による混乱はないのか。誤解が誤解を呼ぶことはないのか。その混乱により生じた損失責任は誰が負い補償するのか。
ところが、これに対し、JIS Q 14040によれば“評価結果は不確実性をともなう。この不確実性は、各々の影響領域の空間的及び時間的特性によって変化する。”としているが、これは 正しく当然のことだろうが、規格としては あまりにも無責任な態度だ。さらに、次の疑問が出てくる。
⑥使用する計算データが 正確であればあるほど 時系列で“変化する”ものだが、そうなるとデータにも 賞味期限が必要ではないか。その基準と改定値の保証はどうするのか。
きわめて個別具体的で 正確な情報が求められるべきというのが、本来のカーボン・フット・プリントだが、今やろうとしていることでは それは不可能に近い。だから、私は、現在 提唱されているカーボン・フット・プリントの意義が理解できない。だが、このセミナーは、それに応えるレベルにはなく、会場では、そのような質問で 時間を空費するのが無駄な雰囲気であった。せいぜいで、こういった疑問をアンケートに書き散らす抵抗で終わったのだった。
経産省は 産業管理協会を使ってその普及に熱心に活動しているが、様々な要素の規定の厳密さに欠けるため、恐らく当面の法制化は困難で、自主的な活動に留まるように見受けた。
どうやら お役人達は このカーボン・フット・プリントに 実質的な意味を持たせることが目的ではなく、デファクト・スタンダードな制度を作ることで、外郭団体を増強し、あるいは新設して天下り先を作ろうとしていると勘ぐりたくなるのだ。
さて、やらされる方の側に立つと 穴だらけの制度による計算に 消耗して それがどうして省エネに結びつくのか、大いに 問題がある。だが、環境学者の中には こういう動きを期待している向きもあるのは確かだ。学者にしては 厳密な思考力に欠けると思うが・・・。
こういうバカバカしいことが生じるのは、“考えるより、行動し先行することの方が先進的であり、重要だ”という奇妙な風潮が今の世の中にあるせいではないか。思考停止して決め付けのみに終始している風潮だ。この思考停止の全ての根源は“予防原則”にありはしないか。“気付いた時は 既に遅い、だから危なそうであれば 事前に対処するべきだ、それも素早く行動することが重要だ”、という“原則”が 無原則に拡張し過ぎてはいないか。日本の官僚は この思考停止現象を巧みに利用しているのではないか。
その後、引き続きTOTO㈱の製品や活動の模範的環境対応の講演もあったが、カーボン・フット・プリントに直接関係するような内容ではなかった。資料提供も ウェッブ・サイトを参照して欲しいとのことであった。
このセミナー開始時刻は予定と違い遅れたが、終わりもいい加減で 12時終了予定が、11時半頃事実上終了。会場の出口で、記入済みアンケート用紙を提出すると 何故か チキン・ラーメンをくれた。このオマケ賞品の金の出どころは?と思いたくなる。
そこで、この日もシャトルバスで長浜へ出かけて昼食を摂ることができた。
午後は長浜バイオ大学での“カーボンオフセット普及セミナー in Kansai”で 予定は 13:30~17:00。
さて、カーボン・オフセットとは何だ、ということだが、環境省によると、“日常生活や経済活動において不可避のCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、それでも排出される温室効果ガスの排出量に見合った削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方。”とある。
もっと分り易く アケスケに言うと“カネ儲けの活動で 排出した温室効果ガスを 免罪してもらうために、他の温室効果ガスの削減活動に寄付(クレジットの購入)すること”となるものと思われる。
こういった活動は 東京が中心と思われがちだが、大阪にもその活動主体があるという紹介であった。つまり、“大阪CDMネットワーク”という団体が主催するセミナーだったのだ。彼らは、“大阪カーボンオフセット・コンシェルジュ”とも称して、“オコノミ(OCONOMI)”と略称しているとのこと。“J-VER制度”という仕組を作って“温室効果ガスの削減活動に寄付”の“斡旋”をしているとのこと。
どうも、私のような不純な人間は、こういう団体が善意で運営されているのか、役人の隠れ天下りの片棒かつぎなのか、判然とせず、胡散臭く思ってしまうのだ。
ただ、“バイオディーゼル(BDF)を用いた排出削減~J-VER制度の活用に向けて”という講演を行なった㈱レインボーインタナショナルの代表者は 真面目に活動しているといった印象ではあった。こういう本当に真面目にやっている人々と 胡散臭い人々が仲良く一緒に同じ方向を向いて活動していることが 複雑な気分にさせるのだ。
ANAが 高知の森林のクレジットを購入している話題が中心であったが 未だ そういう事例程度で 数少ないのではないかという印象であった。
このセミナーも実質4時前で終了。疲れた心身を抱えながら 思っていた予定より早めに帰宅できることに多少の喜びを感じながら JRの遅延がないことを祈りながら家路を目指した。
ところが、今日は事故はなかったなぁと思いつつJR大阪駅に降り立ったが、どうやら上り線では 延着していたようで改札では混乱が生じていた。やっぱり、JRの遅延は日常茶飯事なのだ。
そう言えば、gooのポータル・サイトにJRの運行情報が 掲載されているのは その反映なのだと ようやく気付く次第であった。
第3日目10月23日はセミナー受講のみの予定。午前の “カーボン・フット・プリント制度説明会”と 長浜バイオ大学での“カーボン・オフ・セット普及セミナーin関西”であった。
実は、私はカーボン・フット・プリントの意義が理解できていない。疑問ばかりが気になるのだ。炭素に関するライフ・サイクル・アセスメントが重要なのだが、基本的には次の2点の問題があると思っている。
①カーボンに関連するライフ・サイクル・アセスメントが重要なのだが、検証された間違いないデータで計算できるのか。
②その計算に使ったデータや計算結果を誰が妥当と保証するのか。公知とするデータの素になるデータを 各メーカー全てが正直に公表するのだろうか。
こういう疑問から さらに次々と 新たな疑問が派生してくる。
③メーカー間の製品評価競争にカーボン・フット・プリントを現実的に持ち込むことが可能なのか。各メーカーは自分の生産プロセスでのCO2排出量を勝手に 自分に都合の良いデータを使って表示するのではないか。いや表示そのものに偽装はないのか。この誰をも信用できない時代に そのような計算結果を信じることができるのか。
④経産省は業界毎に制度普及を狙っているようだが、それでは 同種の製品間比較にはならず、せいぜいで 分野の異なる製品間の比較で、業界間競争にしかならない。それで意味あるカーボン・フット・プリントになるのか。
例えば 使っている原材料が鉄ならば そのCO2排出量はいくら、アルミならこうだと、データ・ベースがあって、それを計算に使うというようなもの。廃棄物処理も 極めて粗い分類による典型例に基づくデータを適用して計算する仕組になっているようだ。
だが、消費者が知るべきは 同じカテゴリーの製品がメーカー間で どちらが 効率的なエネルギー消費となっているのか、例えば どちらの製品が原料はどう工夫されているのか、生産プロセスはどうなっていて、輸送経路はどうなって自分の手元に来たのか、等ではないのか。そこまで分かることで始めて、製品間の個別の比較と選択が可能になってくる。
例えば、材料に使用した同じ鉄でも 鋳物や厚板品、冷間品や 厚みでCO2排出量は異なる。もっと言うと鉄に含有する成分でも異なるし、同じ冷間品でも仕上げや表面処理のあり方によっても異なる。さらに価格の問題で海外品を使っていれば、省エネ度は日本製とは異なるし、輸入経路にエネルギーを余分に使っていることになる。さらには国内メーカー間でも それは異なるし、同じメーカーであっても生産時期によってCO2排出量は異なる。鉄の生産に使用した電力は 電力供給会社によっても 電力生産に消費されたCO2排出量は異なる。輸送と言えば、九州に最終消費者が居たとして、韓国の浦項から運ぶ鉄と、北海道から運ぶのではどちらが良いのか直ちには判断できない。輸送手段も違えば異なる結果となる。
これが 鉄以外の材料になるともっと変化に富んでいるかも知れない。まさに、そういった変化に富んだ製品間での比較が重要であるにもかかわらず、厳密な比較を回避して意味があるのか。そういう粗いデータ要素では、場合によっては、計算値と実際の値の間に逆転現象が出ないとも限らない。もし、このような現象が出れば 制度の意味は無い。
これらの 疑問から、さらに疑問は増幅する。
⑤一旦 世の中に公表されたデータは 必ず 一人歩きするが、概括的な計算結果による混乱はないのか。誤解が誤解を呼ぶことはないのか。その混乱により生じた損失責任は誰が負い補償するのか。
ところが、これに対し、JIS Q 14040によれば“評価結果は不確実性をともなう。この不確実性は、各々の影響領域の空間的及び時間的特性によって変化する。”としているが、これは 正しく当然のことだろうが、規格としては あまりにも無責任な態度だ。さらに、次の疑問が出てくる。
⑥使用する計算データが 正確であればあるほど 時系列で“変化する”ものだが、そうなるとデータにも 賞味期限が必要ではないか。その基準と改定値の保証はどうするのか。
きわめて個別具体的で 正確な情報が求められるべきというのが、本来のカーボン・フット・プリントだが、今やろうとしていることでは それは不可能に近い。だから、私は、現在 提唱されているカーボン・フット・プリントの意義が理解できない。だが、このセミナーは、それに応えるレベルにはなく、会場では、そのような質問で 時間を空費するのが無駄な雰囲気であった。せいぜいで、こういった疑問をアンケートに書き散らす抵抗で終わったのだった。
経産省は 産業管理協会を使ってその普及に熱心に活動しているが、様々な要素の規定の厳密さに欠けるため、恐らく当面の法制化は困難で、自主的な活動に留まるように見受けた。
どうやら お役人達は このカーボン・フット・プリントに 実質的な意味を持たせることが目的ではなく、デファクト・スタンダードな制度を作ることで、外郭団体を増強し、あるいは新設して天下り先を作ろうとしていると勘ぐりたくなるのだ。
さて、やらされる方の側に立つと 穴だらけの制度による計算に 消耗して それがどうして省エネに結びつくのか、大いに 問題がある。だが、環境学者の中には こういう動きを期待している向きもあるのは確かだ。学者にしては 厳密な思考力に欠けると思うが・・・。
こういうバカバカしいことが生じるのは、“考えるより、行動し先行することの方が先進的であり、重要だ”という奇妙な風潮が今の世の中にあるせいではないか。思考停止して決め付けのみに終始している風潮だ。この思考停止の全ての根源は“予防原則”にありはしないか。“気付いた時は 既に遅い、だから危なそうであれば 事前に対処するべきだ、それも素早く行動することが重要だ”、という“原則”が 無原則に拡張し過ぎてはいないか。日本の官僚は この思考停止現象を巧みに利用しているのではないか。
その後、引き続きTOTO㈱の製品や活動の模範的環境対応の講演もあったが、カーボン・フット・プリントに直接関係するような内容ではなかった。資料提供も ウェッブ・サイトを参照して欲しいとのことであった。
このセミナー開始時刻は予定と違い遅れたが、終わりもいい加減で 12時終了予定が、11時半頃事実上終了。会場の出口で、記入済みアンケート用紙を提出すると 何故か チキン・ラーメンをくれた。このオマケ賞品の金の出どころは?と思いたくなる。
そこで、この日もシャトルバスで長浜へ出かけて昼食を摂ることができた。
午後は長浜バイオ大学での“カーボンオフセット普及セミナー in Kansai”で 予定は 13:30~17:00。
さて、カーボン・オフセットとは何だ、ということだが、環境省によると、“日常生活や経済活動において不可避のCO2等の温室効果ガスの排出について、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、それでも排出される温室効果ガスの排出量に見合った削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方。”とある。
もっと分り易く アケスケに言うと“カネ儲けの活動で 排出した温室効果ガスを 免罪してもらうために、他の温室効果ガスの削減活動に寄付(クレジットの購入)すること”となるものと思われる。
こういった活動は 東京が中心と思われがちだが、大阪にもその活動主体があるという紹介であった。つまり、“大阪CDMネットワーク”という団体が主催するセミナーだったのだ。彼らは、“大阪カーボンオフセット・コンシェルジュ”とも称して、“オコノミ(OCONOMI)”と略称しているとのこと。“J-VER制度”という仕組を作って“温室効果ガスの削減活動に寄付”の“斡旋”をしているとのこと。
どうも、私のような不純な人間は、こういう団体が善意で運営されているのか、役人の隠れ天下りの片棒かつぎなのか、判然とせず、胡散臭く思ってしまうのだ。
ただ、“バイオディーゼル(BDF)を用いた排出削減~J-VER制度の活用に向けて”という講演を行なった㈱レインボーインタナショナルの代表者は 真面目に活動しているといった印象ではあった。こういう本当に真面目にやっている人々と 胡散臭い人々が仲良く一緒に同じ方向を向いて活動していることが 複雑な気分にさせるのだ。
ANAが 高知の森林のクレジットを購入している話題が中心であったが 未だ そういう事例程度で 数少ないのではないかという印象であった。
このセミナーも実質4時前で終了。疲れた心身を抱えながら 思っていた予定より早めに帰宅できることに多少の喜びを感じながら JRの遅延がないことを祈りながら家路を目指した。
ところが、今日は事故はなかったなぁと思いつつJR大阪駅に降り立ったが、どうやら上り線では 延着していたようで改札では混乱が生じていた。やっぱり、JRの遅延は日常茶飯事なのだ。
そう言えば、gooのポータル・サイトにJRの運行情報が 掲載されているのは その反映なのだと ようやく気付く次第であった。
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