“ISOを活かす―18. 「品質」よりも重要な要求事項によって、顧客満足度を向上させる”

今回は、“「品質」より重要な項目”の把握が 重要です、という話題となっています。

【組織の問題点】
玩具の製造販売会社A社では、認証取得後は 特に品質最優先でやってきました。ところが、その後売上が減少してきた、ということで ISO9001マネジメントシステムのどこに問題があったのか、という課題です。
原因を調査したところ、子供からは “「①楽しいおもちゃ」という答が返ってきました。また子供の親からは、「②安い、③安全」という回答があったとのことでした。

【磯野及泉のコメント】
調査結果の3項目が、“顧客要求事項”となる訳で、いわゆる“品質(Q)”以外に重要な項目があると 著者・岩波氏は言いたかったようです。
一般的には、それがコスト(C)、納期(D)、サービス(S)、技術(E)なので、常に「QCDSE評価」を意識するべきだという著者の主張です。
そして、「顧客満足度QCDSE評価表」なるものを 章末で提示されているので確認してみると、顧客に 自社の商品やサービスを“QCDSE”毎に、評価してもらうというアンケート用紙のようなものでした。

＊ここで “コスト(C)”は “費用”の意味合いがあり 私としては違和感があり、価格Priceとするべきだと思います。

一般的には 著者・岩波氏ような 狭義の“品質”イメージが 普通でしょうが、“価格(P)、納期(D)、サービス(S)、技術(E)” も “品質” であるとする主張があり、私はこの立場をとります。

ISO9000(品質マネジメントシステム―基本及び用語)において “品質” の定義は “品質(3.1.1 ) :本来備わっている特性の集まりが 要求事項を満たす程度。”となっています。ここで、“要求事項(3.1.2)”は“明示されている、通常暗黙のうちに了解されている、又は義務として要求されているニーズ若しくは期待” ということです。
何だか よくわからない表現ですが、端的に言って、品質とは “欲しいと思っている人の期待を満足させるような特性(価格(P)、納期(D)、サービス(S)、技術(E) など)の全体”と いったところではないでしょうか。
また そのように読み解かないとISO9001の規定要求事項を誤解してしまうのではないかと思っています。

ところで、事例のような場合 商品開発の問題ならば、玩具メーカーA社は このようなアンケート用紙で 解決できるのでしょうか。顧客のアンケートの集約で、子供が 期待する「楽しいおもちゃ」が 作れるのでしょうか。
同じように 自動車メーカーが このようなアンケートでワクワクする車が 作れるのでしょうか。実は、このようなテーマはISO9001で扱うには、その枠を 少々 越えています。
「楽しい」とか「ワクワクする」というイメージには 背景に 「楽しい」とか「ワクワクする」というストーリーやイメージが 一般的には必要でしょう。そういうストーリーなどを イメージアップさせるための仕掛けが 何か 必要なのでしょう。そういう仕掛け作りには 長期的・戦略的・計画的活動が不可欠で、その一部にはISO9001の手法は使えるかも知れません。

玩具メーカーA社の 急激な 売上減少には もっと他に原因があるように思います。
このような問題の原因把握には個別具体的に 調査・検討する必要があるでしょう。今の場合 設定状況に情報不足があり、具体的に原因に迫る方法論が 見えて来ませんが、少なくともアンケートでは 解決しないように思います。
的確な原因究明と対策ができずにもたもたしていると 大きな禍根を残すことになりかねません。