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私的思考と決断―ウマい話に乗るか?

今、世の中は大きく急速に変化しようとしている。誰もが そう認識しているにもかかわらず、潜在意識は変化していないので、気付くと従来思考の罠にはまっていることがある。世の中の成立している前提条件が大きく変化しているにもかかわらず、従来条件を前提として思考を組み立ててしまうという誤りを気付かない内に犯してしまうこともある。
そういう混乱の中で、様々な情報の本当のところは どうなのか、何が真であり、何がごまかしの議論なのか、あるいは利益誘導のためのウソの情報なのか、真偽を見分けるのに非常に苦労する。ウマい話も それがどういう根拠に基づいているのか、見方を変えると、立場を替えると、その話がどうなるのか、熟考が必要なことが多い。

あたかも あなたのためになる話ですヨ!と言われても、ならば何故 その人が自分でやらずにどうして私にやらせようと決断を促すのか考えてみると、そのウマい話の真の構造が見えてくるものだ。要するに立場を替えて思考すると、一見ウマい話の背後に見えないリスクが隠されていて、そのリスクを私に押し付ける構造になっていることを改めて気付くのだ。話を十分に聞いて、長い時間かけて熟考し、その話に乗らないと決心した時、相手は 私があたかも乗りそうだったのに大いに落胆し、半ば怒りさえあらわにしながら、何故止めるのか迫って来る。その時、リスクを相手が取る構造にすれば乗るとそれとなく話をスリ替えて提示すると相手は しぶしぶ私の中止決断を飲んだのだ。それを見て やっぱりそうなのだと、私はその話のリスク構造を確認したものだ。だが、そこに到るのには非常に疲れた。思考するにも体力と、時間が必要だったのだ。

そうした 隠されたリスクに気付くのには、相当な“お勉強”が必要となる。一般的社会状況、今 激変する社会構造を知悉した上で、ウマい話の構造、特にリスクはどこにあり、現状はウマく行っていても、予想される日本社会の変化した結果の構造を前提とする時、それがウマく行くのか 大いに疑問となることがある。そこにリスクが存在する。しかも、リスクはある確率を必ず含んでいるので、場合によってはウマく可能性がある。それが 罠である。多くの人はこれに 引っかかるようだ。

例えば、私はサラリーマンにサイド・ビジネスで起業することを促すメルマガの配信を長い間受けてきているが、最近そのメルマガに不動産経営を促す記事があった。サラリーマンのまま大家となり副業を展開することは容易だと言うのだ、ナルホド!そして、そのビジネスを促すインストラクターのような立場の人の著書も紹介されていた。そこで、そんなにウマい話があるものかと、その本を探してみることにした。アマゾンで検索してみると、星の数がかなり多い書評が載っていた。類書より信用でき良く理解できた、と言うのだ。そこまで事前に見て、次に書店に出向いて実際に手にとって見たが、アマゾンの書評ほどのことはない、と分かった。
何が問題だと思ったか。要するに 不動産は仕入れが重要だ、と言うのだが、確かにそうだが、それは不動産に限ったことではない。しかも、その仕入れる不動産の評価をどのようにしてするべきなのかという肝心な点は書いてなかったように思う。不動産、つまり建物の評価は素人には難しいものだ。特に手抜き工事などあれば容易に見抜けるものではない。姉羽事件もあったではないか。しかも建物そのものの評価以上にロケーションの評価も必要なはずだ。そういう土地評価の眼力は建物評価力以上に必要で、その地の風土、カルチャー、特に住民の移動性にも精通していなければならないのだが、その点には触れていなかったように思う。その結果の 売り出し価格が割安なのかどうか見抜けなければならない。イヤ、極端に安すぎる場合は逆に警戒しなければならない物件となる。そして、一般的には高額となるので、借入をしなければならない。その時に金融機関から どのように評価してもらうのか一般的なことは 書かれていたが 具体的な細部にまでは言及していない。しかも一般のサラリーマンが手出しするのだから、長期借入となる。20年返済で採算が取れるかどうか見極めなければならない。
こういった点が、最近 お勉強している株式取引とは大きく異なる。つまり、不動産では非常に見えない部分が多く、素人にはリスクの多いビジネスなのだ。こうした点の注意喚起が その本には全く書かれていなかったのだ。そういった点を考慮すれば、株式取引は勝負が早く、比較的低額で開始できるし、最近特に市場の透明性は高くなっている。だが、それでも株は難しい。市場は一寸先は闇なのだ。ところが不動産には 20年におよぶ遠目の眼力が必要となる。何故ならば、先に述べたように一般的には借入金が必要なことが多く、その返済を考えると20年程度の時間が必要となることが多い。借入金が不要であっても投資効果を考えると かなり長期の将来を見越した採算性を確保しなければならない。相当な経験と知識、勘が必要なのだ。
その上、業界特有の知識も必要なはずで、このような話はこの本では全く触れていなかった。例えば、借入して賃貸不動産業をした場合、4室の内1室からの家賃収入が当面の収入であると概算できること。或いは、返済が終了した物件であれば 建築後かなり時間が経っていて古くなっているのでリニューアルが必要で入居率が低下するが、もし30%の入居率を確保できているのなら、建替えや大規模リニューアルは考えない方が良い、等々の具体的内容を伴うものだ。もし、そういった条件下でのインカムに不満なら手出しは無理と諦めるべきものらしい。

しかも、その不動産業参入を勧める本の隣に全く逆のことを言っている本があった。曰く、アパート経営への新規参入は止めよ!と言ったような標題だったと思う。何故、アパート経営はダメなのか、その本の論旨はこうだ。日本は既に人口減少社会になって来ており、今後その影響はますます大きくなる。特に 不動産では空き家が目立ちはじめて来ている。大都市でも優良でない物件から 空き家になり始めているのは、その結果である。大家さん向けセミナーで、いかに空き家、空室率を下げるかというのをテーマにしているのが多いのもその証拠である、というのだ。これは納得できる議論であり、人口構成の変化は、社会の将来を見定める大きな、そして確実な要因であるとドラッカーも言っていたようだ。その本は、こうまで言っている。遊休地を持っているのなら、子供に残すのではなく直ちに現金化して、それで遊んだ方が よい、と。近い将来、日本社会において不動産にかかわる物件の優劣評価は厳しさを増すようで、物件間の格差は急速に広がる気配だ。
不動産賃貸業は、一昔前、あこがれの職業であり、左団扇で稼げる金満家の象徴でもあった。そういう潜在イメージが強烈に残っている場合には、どうしてもウマい話に見えてくるものだ。だが実は、人口減少社会では、容易ならざる業種に変化してきているようなのだ。世の中は 大きく変化しているのだ。
あのメルマガは そういうビジネスを一般のサラリーマンに呼びかけていたのだ。これは大いに問題のいように思うのだが、どうだろうか。

最近、日本経済を救うために増税が必要だという議論が、政府筋から出されている。この増税論議、官僚を頂点とする利権シガラミの世界からの議論で、それを打ち壊す規制緩和による景気浮揚が先だとする主張もある。一体 どっちが本当なのだろうか。
人類の将来も明るくは見えない。日本も人口減少社会となり、輝かしい未来があるとは思えない。その中で ウマい話があれば、乗りたいという潜在意識が蔓延してはいないだろうか。そういう心のスキが問題なのだが・・・・。
だが、スキを見せずに生きること、これは 疲れる。しかし、考えることも多すぎるような気もする。そう思うと、さらに疲れる。何もかも忘れて、気儘に休息することも必要かも知れない。

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