The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―20. 設計起因のクレームをなくすことによって、顧客満足度を向上させる”
設計部門を除いて品質ISOを認証取得したメーカーの問題です。
【組織の問題点】
パソコン設計・製造のA社は、設計部門を除いてISO9002の認証取得しました。この認証取得によって、それまで多かった製造起因のクレームは 目的通り減少させたのですが、最近は新製品を増やしたこともあり、設計起因のクレームが 増加している、ということです。
【ISO活用による解決策】
今回も 社内の事業機能の部分認証による弊害です。
著者・岩波氏は、あっさり “設計・開発機能が品質マネジメントシステムに含まれていません。これが、A社において設計起因のクレームが減少しない原因です。したがって、設計部門をISOの範囲に含めて、設計についても品質マネジメントシステムのなかで確実に管理することが必要です。” と 述べています。
これは 実は 1994年版の 品質ISOでは 設計・開発機能を 除いて認証取得可能な ISO9002という規格が あったために生じた問題です。
そこで 著者は、現在の規格ISO9001の規定要求事項を説明しています。
“ISO9001では、「組織やその製品の性質によって、この規格の要求事項のいずれかが適用不可能な場合には、その要求事項の除外を考慮してもよい。」(1.2項)と述べています。したがって、ISO9001の要求事項のうち組織にとって必要のないものは「適用を除外」することができます。しかし一方で、「(除外を行うことが、)顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たす製品を提供するという組織の能力、又は責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、この規格への適合の宣言は受入れられない。」(1.2項)と述べています。自分の組織に設計・開発部門がある場合には、設計・開発を「適用除外」することはできません。”
したがって、現在のISO9001では この事例のような認証は ありえません。
【ポイント】
そして、以下が 著者による総括結果です。
【磯野及泉のコメント】
どうも 前回の事例も含めて じっさいある業務機能の部分認証の問題は、1994年版で認証を 取得していた企業の問題であったと思われます。
この問題に関しては2000年版に移行することによって 少しずつ解消され、恐らく、現時点では ほとんどは解消されているのではないかと思いますが、私自身は 子細に確認できていません。そして、前回指摘した 運送会社の問題は 多分今でも残っていると思います。先日 この運送会社のトラックがISO9001認証マークを付けて走っているのを見かけました。製品に認証マークを付けるのは、認証ルール上問題です。審査会社によっては 社有車に認証マークを付けることは避けて欲しいと言っているところが有ります。運送会社の業務トラックは 製品に近い社有車だと思います。いかがなものでしょう。
このような ある種“悪意”まで感じる 認証取得と、120%の悪用は ISO9001業界の 敵だと思うのです。
さて、本件について もう少し 本質に切り込んでみたいと思います。設計・開発機能をISO9001のマネジメント・システムに組み入れただけで 果たしてこの会社での問題は 本当に解消するのでしょうか。
実は 品質工学では クレームの94%は 設計起因であり、残りの6%が 製造起因であると言っています。もし それが正しければ、この事例で 最近 製造起因のクレームが減少したのは 本当なのだろうか、と思ってしまうのです。
つまり、これまで製造起因と考えていたクレームも実は 設計起因ではなかったのではないか、と言うことです。製造側がISO9001で体制を固めて、論理的に 製造起因のクレームではないと立証し始めて、ようやく設計起因のクレームが目立って来た、というのが真相ではないかと思われるのです。
であれば、製造担当責任者は これまで損な役回りであった、ということになります。クレームが多いことは そもそも問題ですが、そのクレームの原因が 何であったか、それを厳密に分析することは 極めて重要なことです。真の原因を明らかにしない限り、クレームは無くならないからです。この会社では “真の原因” を しっかり把握せず、長い間 本当の対策を実施するまで機会ロスを持ってしまったことになります。IT業界のメーカーとしては致命的でしょう。
製造担当責任者に比べて、“設計・開発担当責任者が ピリピリしていないメーカーは 先行きが危うい。”とは、品質工学界では常識的に言われています。
トップ・マネジメントたる社長は 部下の客観評価に 心すべきです。
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