The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―19. 営業部をISO組織に含めて、顧客満足度を向上させる”
今回は、営業部門というか本社の販売部隊をISOの適用部門にすることで、顧客満足向上を目指す、というテーマです。
【組織の問題点】
菓子製造販売会社A社では、全国に3ヵ所ある工場は いずれも数年前にISO9001認証取得しています。ところが、本社の営業部は 工場組織ではないため、ISO9001の対象範囲に入っていません。
最近は、製造起因のクレームは減少しているが、営業起因のクレームが問題となってきており、その内容は 顧客の要求や期待が工場に 上手く伝わらなかったことがクレームの原因だということです。
このA社では、ISO9001マネジメントシステムをどのようにすれば、このようなクレームを解消できるか、という課題です。
【ISO活用による解決策】
“A社のように製造会社でISO9001認証を取得する場合、本社営業部は工場の組織ではないため、ISOの対象外としている企業がかなりあるようです。”
こういういびつで不自然な認証は 本来 許されるべきではないと 私も思っています。
著者・岩波氏も 続けて“しかし これは適切ではありません。”と 述べています。今回の テーマは ここが本質です。
“対象とする製品について、顧客とのやりとりから、設計・開発、製造、出荷までの一連のプロセスがISOの対象となります。したがって、営業部もISOの範囲に含めることが重要です。”
つまり、本社営業部を ISO9001の認証範囲から 外したのでは 顧客との交渉から受注~出荷、アフターサービスに至る一連のプロセスの半分以上を ISO9001のプロセス対象としていないことになり 認証取得の意味が 全くありません。
著者は、逆に 本社営業部をISO9001の対象範囲に組み入れたB社の事例で、“営業がルールどおりに仕事をしてくれるようになって、営業と工場との間のトラブルがなくなり、非常に仕事がしやすくなった”という声を紹介されています。
【ポイント】
そして、以下が 著者による総括結果です。
【磯野及泉のコメント】
私は この事例のような一連の業務の部分認証自体が 問題であると思います。
2000年版に移行する場合に このような行き過ぎたtailoringは認められ難くなったように伺っていましたが、まだまだ このような組織はあるようです。ある意味 ISO9001業界の信用問題にも発展しかねないことだと思います。
私も この部分認証の弊害を経験したことがあります。
ISO9001認証の全国展開の 著名な運送会社であるにもかかわらず、トラックでの輸送途上で 製品を損傷させるトラブルが相次ぎ、たまりかねて 品質監査に赴いたことがあります。遠距離出張で 先方の 輸送拠点(店所)に 到着し、相手の発言を聞いてビックリ。相手は こう言い放ったのです。
“当社のISO9001認証は 「配達」だけです。ですから 「集荷」や「拠点間輸送」での問題をISO9001の範囲として監査されても困ります。”
ISO9001認証が直接の問題ではなく トラブル解消の手段として、対策をどうしてくれるのか、とワザワザ出張訪問しているのに、“ISO9001監査は困る。”と真剣に のたまうのです。
それに この会社のISO9001認証も 非常に問題だと思います。「配達」だけの部分認証で ホームページには そのような注釈は当時全く認められず、あたかも全輸送プロセスの認証と誤解可能です。また たとえ「配達」と表示されていたとしても 普通の人は「配達」自体 全輸送プロセスと誤解するに違いありません。つまり、部分業務のISO9001認証は この場合、全く無意味なのです。
この認証をした審査機関は 貿易保険ではかなり有名なスイスの会社の系列らしく、さらに認証は日本のJABではなく、英国のUKASでした。なので、不適切な認証に対する苦情は 私の苦手な英語のレターをロンドンに送達せねばならず、仕方なく その件は放置。この運送会社の やり方が全くもって巧妙としか言いようがありません。
そこで、現実的対処として、その運送会社には 品証部の権限として 現場に発注させないことにしたのです。
こういう 部分認証は ISO9001業界では 許容されているようですが、自動車産業セクターのISO/TS16949では このようなことは 許容されておらず 特に 顧客(自動車メーカー)情報の窓口である営業部門は厳しく監査されるようです。このように 品質マネジメントシステムに関して部分プロセス認証は無意味であり、ISO9001業界全体の信用問題に発展するものと受け止めるべきだと思います。
それに、このようにある種のゴマカシをしても 結局 顧客信頼を失って損をするのは 自社であることも肝に銘じるべきでしょう。何事もゴマカさない誠実さこそ まじめな経営の根幹であり 信頼の基盤です。
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