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“一つの中国”の神話性を問う―日本に独自外交は可能か?

先週末、バカバカしい騒ぎは結局何も出ずに終わった。長門市での日露首脳会談は正に“空騒ぎ” であった。安倍氏の地元にムダ金が落ちただけだった。税金をムダ金に使って政権を私物化して結果を出せず、国民を愚弄している。プーチン大統領は会談より温泉に浸かるためだけに遅刻して来たのだ。
そもそも北方4島での共同開発は具体的にどうするのだろうか。4島での日本人の活動はロシアの法規制に従うのか。その点が明確にならない限り、日本人の4島での活動の安全すら保障できない。そんな共同開発があり得るのだろうか。安倍氏の“新しいアプローチ”とは具体的に何を指すのか。従来のアプローチと何が異なるのか、一切明らかにせず、“交渉”は進められた。安倍氏はいつも言葉をないがしろにする。言葉を大切にしない政治家は偽物であり全く信用できない。実のないパフォーマンスで、国会解散とは笑止千万だが、いつものやり方ではある。日本国民はいつまで、こんなバカなことに騙されてばかりいるのか。
さすがの自民党の二階幹事長すら、次のように言ったという。“国民はみな(北方領土問題が)今度解決するんだと思ったと思う。何の進歩もなくこのまま終わると言うんだったら、いったいあれは何だったんだと。相手国の姿を正しく見る時に、このような結果はあり得べしだ。そうそう甘いもんじゃないと思い知ったことは(日本政府の)参考になるんじゃないか。引き続き攻勢をかけることが大事だ。経済問題も大事かも知れないが、人間は経済だけで生きているわけではないんだから、もう少し(領土問題に)真摯に向き合ってもらいたい。交渉当事者は頑張ったと思うが、やっぱり、国民の皆さんの大半はがっかりしているということは、我々も含め、心に刻んでおく必要がある。”
さすがに機を見るに敏な政治家の正直で厳しいコメントだ。その内心は怒り心頭ではなかったか。
政権におもねるTVコメンテーターは一様に、“イヤー、こういう交渉は長い時間が必要なのです。これからです。”というが、既に長い時間が経ち、これまで何度も絶好のタイミングを逸している。いつも米国の顔色を窺っているからだ。米国の植民地政府では独自外交は不可能だ。17日夕方のTV報道では、既に日露首脳会談に触れることはない、余燼すらない体たらくだった。
米国の植民地政府では、オスプレイの運用も自分たちの思うようにはできないのは明らかだ。事故を起こしても、その原因が明らかにならないまま、運用再開が決まっている。否、沖縄や日本で実際の試運転しているのと同様ではないか。治外法権の軍隊が日本国内で横暴を振るっている。

さてここで、独自外交を考えるならば、あの次期米国大統領のトランプ氏が注目するべき発言をしたようだ。それについて一斉になされた報道は次の通り。“12月11日、トランプ次期大統領は、米フォックス・ニュースのインタビューで「台湾は中国(中華人民共和国)の一部分である」という『一つの中国』論に関して、以下のように発言したとBBCが伝えた。「私は『一つの中国』という政策があることは知っている。しかし貿易など、その他多くの取引に関して合意に達しない限り、なぜわれわれは『一つの中国』政策に縛られなければならないのか?」「『一つの中国』を順守するかどうかは、南シナ海問題や貿易政策などの対立する分野で、中国側が我々と取引をするかどうかにかかっている」などだ。”
つまり、北京政府の“一つの中国”論を認めて、外交その他の手を縛られたくない、ということだ。現実に台湾には別の政権が存在し、その存在現実を認めないのは不合理であるということに違いない。

また、次のような報道もある。“トランプ氏は2日、台湾の蔡英文総統と電話会談。台湾が断交した1979年以来初めて米大統領として台湾総統と接触したことを公表し、中国が抗議していた。これについてトランプ氏は「一つの中国」政策について「完全に理解している」と強調し、「会話は短時間で、祝辞を受けた。電話を取らないのは失礼だ」と述べた。その上で、電話会談の報告を受けたのが「1、2時間ほど前」だったと認め、側近の勧めで応じたことを明らかにした。”

これに対し、中国側は神経質に反応したとの次のような内容も伝えられた。
“中国では外交部のスポークスマンが12日の記者会見で「『一つの中国』原則は米中関係の政治的基礎だ」と深い懸念を示しただけでなく、中国政府系列の新聞やネット、あるいは中央テレビ局CCTVも12日の昼のニュースの中で特集を組むなど、(中国の核心的利益に関わる問題として)猛烈な抗議を表明した。
・・・・〈中略〉・・・・
中国共産党系新聞の環球時報は、中国の厳粛なる領土主権の問題を「商売の取引に使うな」と批判。ネットユーザーのコメントには「商売人はやはり商売人」「言うことをコロコロ変えるから、次は何を言うかは分からない」といったものが目立つ。尖閣問題の時のような反日に燃え上がる激情的なものとはニュアンスが異なる。CCTVは、トランプ次期大統領の言動は、1979年以来築き上げてきた米中関係を破壊するものであるとした上で、彼の周りには反中右翼が多いので、その影響を受けており、実際に大統領に就任したあとも同様の政策を採るか否かは不明だとしている。もし続行するなら、戦争といった深刻な事態にもなりかねないと、評論家が警告した。”
台湾政府の存在という現実を直視すると、その不都合に対し“戦争も辞さない”というのは驚くほど勝手な論理だ。そんな勝手な論理は、戦後70年以上も経って既成事実化している中では通用しない。

しかし、それが勝手な論理であるからこそ、それを自覚するからこそ、北京政府は恫喝を込めて騒ぐのだろう。騒ぐことに北京政府の弱点があることを強く認識するべきだろう。何故ならば、そこに北京政府の覇権主義、拡張主義を今や露骨に体現しているからだ。それは如何に時代遅れの発想であり、国際正義にそぐわないことか明白なのだ。そこでこの際、独自外交を日本政府が標榜し、北京政府と対峙したいのであれば、その弱点を上手く使うことは必須ではないかと、トランプ氏によって覚醒させられた訳だ。
70年前であれば国共内戦状態であり、その後その状態が継続しているとの認識は非常に合理的であった。しかも、北京政権も、台北の政権も“一つの中国”を相互に言い募っていて、その状態が長く継続していた。つまり北京政府は台湾解放を言い、台湾政権も蒋介石の大陸反攻を標榜していたのだ。しかし、その後1972年に日中国交回復した時期には、国共内戦状態が膠着化してしまっていたが、“中国”の大部分を占める北京政府との平和条約が締結していないことは、不合理を感じる状態だった。そこで、相互に“一つの中国”を言い募って譲らない一方を一旦捨てて、北京側と国交回復を進めたのだ。しかしその後、台湾側には政治情勢の変化があり、最近では“台湾アイデンティティ”という心情が芽生え、台湾側の“一つの中国”を強弁する傾向が廃れて来ている。そればかりか、大陸と台湾の間の三通.(通航、通商、通信)が驚異的に活発化してきている。その代表格がシャープを買収した鴻海精密工業だ。台湾で創業した鴻海精密工業の主力工場は中国本土にある。最早、現実は“一つの中国”を強弁する事態ではないのだ。現在は、その現実を直視する必要があるのだ。
従い、トランプ氏の発言は改めてこうした現実を想起させ、覚醒させるものだったのだ。中国流表現に従えば、今や“一つの中国”論は神話化しているのが、現実なのだ。

しかし、あえて日本政府は“二つの中国”を宣明せず、従来の立場を継承するフリをするが、従来以上に台湾政権を尊重する対応を取り、北京側を少しずつ揺さぶる外交を進めるべきではないだろうか。そして、表立っての対立はトランプ政権に任せる。そういう、したたかな外交戦略に独自性が現われるのではないかと思うようになったのだ。もし安倍氏が現状を奇貨として活用できないのならば、本当に思考力ゼロとしか言いようがない。

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