The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―25. ISOシステムの確実な運用によって、品質トラブルを低減させる”
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今回は “第3章 品質を向上させる方法”の第二弾 “品質トラブルの低減” です。
【組織の問題点】
最近ISO9001認証取得した建設業A社では、年間50件の品質トラブルがあります。ISO9001認証取得目的はこの品質トラブル低減ですが、社長は本当に、この目的を達成できるか心配しているとの事例です。
【ISO活用による解決策】
著者・岩波氏によると、品質トラブルの主な要因は次の通りです。
①設計終了後あるいは建築工事開始後に、顧客からの設計変更の要求が多かった。
②口頭注文が多く、間違った注文をしたり、注文をしたものと違う資材が搬入されたりしていた。
③指示が不明確なこともあり、外注先の協力会社が 指示通りに施工していないことがある。
以下 著者による各項の対策案が 逐次 示されています。
①では、ISO9001の要求事項 “製品に関する要求事項のレビュー(7.2.2項)” と “顧客とのコミュニケーション(7.2.3項)” に留意し、“設計段階の顧客との打合せ内容を「打合せメモ」として記録し、顧客のサインをもらうようにします。これによって顧客(のわがまま)も慎重になります。”
②は、ISO9001の要求事項 “購買情報(7.4.2項)” に基づき、“口頭注文はやめ、「注文書」と「仕様書」を発行*”することを原則とし、“購買製品の検証(7.4.3項)” により、“それまで行っていなかった受入検査を実施”するようにすれば良い。
*磯野及泉注釈:7.4.2項では 注文の文書化は要求されてはおらず、“購買製品に関する情報を明確にする”ことが要求事項だが、文書化することで“情報を明確化”は可能であろう。これが やり過ぎか どうかは、状況による。
③は、ISO9001の要求事項 “アウトソースの管理(4.1項)” と “購買(7.4項)” 及び “是正処置(8.5.2項)” に 従って、“協力会社へは「施工計画書」など施工に必要な文書や図面を配付するとともに、A社の現場代理人が毎日の進捗状況をチェックして「施工日誌」に記録し、問題が発見された場合には、協力会社に再発防止を要求”すれば良い、としています。
【ポイント】
この事例での 著者の総括は 以下の通りで、ISO9001の要求事項を適切に 順守することが大切であるとしています。
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【磯野及泉のコメント】
この建設会社A社では 品質トラブルが 適切に把握されているようで、その低減を社長ご自身が心配されている由、社長の強い指導力が 読み取れます。また、そのトラブル要因も ほぼ分析できており、すでにISO9001マネジメント・システム運営の基礎はできている様子で、この会社でのISO9001は 確実に定着すると考えられます。
トラブル解消は 原因が 分かれば対策はとれるものです。あとは ヤル気の問題でしょう。
本当は、ここに至るまでの 組織の下地作りが大変な作業だと言えます。品質トラブルを解消するための仕組が 会社の慣習や文化となることが 重要です。
品質トラブルについても 何をトラブルであると定義し どのような形で経営層のどこまで報告し、それをどのように記録・分析・総括するのか、そのことを従業員全てが認識し、実行する仕組を作る必要があります。(8.2.3,8.2.4,8.3,8.4,8.5.2,8.5.3項) この仕組み作りが、結構手間のかかる大変な作業なのです。関係する従業員全員の理解が得られなければなりません。
ISO9001マネジメント・システム構築前に、このあたりのことをまず ルール化し、できれば文書化しておいて 従業員を訓練しておくことが 大切で、ISO9001に慣れるまでの重要な基本であるように思います。
このような気風を醸成するためには、5Sの徹底運動をベースに 従業員を訓練しておくことが 有効であると考えます。これが、6Sへ発展すれば ISO9001の根幹部分が 当たり前のように実施できるものと考えます。
5S:整理,整頓,清潔,清掃,躾 / 6S:5S+仕組(→5Sのためのルール作り)
品質トラブルは 特に製造メーカー企業の経営にとっては根幹にかかわることが多いので、これに 経営者が どのように関わって行くのかが問題になります。そこで マネジメント・レビュー(5.6項)との関連も重要です。
私は、マネジメント・レビューとは別に 月例の幹部会議等で その内容,対策,その効果について審議し、その場で経営者が指導力を発揮することの方が タイミング的に適切で効果的だと考えます。
逆に、毎月のマネジメント・レビューは やり過ぎで 年に1回、または半年に1回の間隔で実施するのが 適切であると思います。1年または半年の期間で あれば長期トレンドが 把握できるからです。都度の課題対策には 毎月の幹部会議等で対応し、マネジメント・レビューでは長期トレンドを認識し、戦略的思考をめぐらすことが 適切だと考えます。
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