goo

“ISOを活かす―26. プロセスを改善することによって、生産性と品質を向上させる”



今回は 自動車部品メーカーのプロセス改善が テーマです。

【組織の問題点】
前年にISO9001の認証を取得した自動車部品メーカーのA社では、生産部長が中心になって数年前から 毎月の生産量を増加させるために生産性向上活動を推進中です。この運動は、不良が多少増えても その分生産量を増加させる、というもの。
品質保証部長は 不良低減活動を推進したいと考えているが、生産性向上活動との調整で悩んでいるとのこと。ISO9001をどのように活用するべきだろうか、という課題です。

【ISO活用による解決策】
著者・岩波氏によると、“3年にISO9001認証取得した同業のB社”での“生産性向上活動として「機械のチョコ停時間の短縮」”活動を行っていたが、それが不良低減活動にも 繋がっていたという事例を 紹介しています。
“機械が停止する(チョコ停)ということは、機械に異常が現れている証拠です。その結果、停止したり、材料が詰まったりする(つまりチョコ停)のです。機械がチョコ停する直前に製造した製品は、品質上の問題を含んでいる可能性があります。したがってチョコ停時間を短縮するということは、製品の品質向上につながるのです。”
“チョコ停時間の監視は、ISO9001でいう「プロセスの監視・測定」(8.2.3項)に相当します。”

【ポイント】
というような論旨で、著者の総括は 次の通りとなります。



【磯野及泉のコメント】
このA社の品質保証部長は “不良低減活動を推進したいと考えていますが、生産性向上活動との関係で”悩んでいる様子です。
メーカーにおいて、会社経営における優先度priorityは何か、が 問われる課題です。品質保証部長が 生産部長の生産性向上活動にストップをかけられない、ということは どうやら “生産最優先”が企業文化の会社のようです。
今時の 自動車部品メーカーの会社にしては珍しいように思います。最近は キャッシュ・フロー経営が主流であり、そのために在庫を持たない生産システムが 主流です。このことのためには、生産効率優先では 顧客要求に応じられなくなるのではないでしょうか。つまり、“不良が多少増えても その分生産量を増加させる”という考え方では 生産に何の役にも立たない不良在庫は 発生するし、不良品でなくても 顧客が欲しがっていない製品のムダな在庫が増える結果にしかならないのでは ないでしょうか。現今の自動車メーカーは このような考え方の会社経営者には 疑問を抱くものでしょう。
要するに 在庫を持たない経営、すなわち顧客が欲しがる時に 欲しいモノを 欲しい量だけ供給しようとすると“生産最優先”では やれず、“品質”こそ優位に考えなければ どんな生産システムも 有効に機能しないものと思われます。
先日、京都のある電子部品工場を見学しましたが、そこではあらゆる形態の先端的セル生産システムを運営されていました。ですが不良品が発生しているようでは、どんなに工夫した生産システムでも正常に機能しなくなると言っておられました。

“安全第一”,“生産最優先”,“品質絶対”

よく工場内で見かけるスローガンですが、どれを本当に優先度最高にするべきでしょうか。
私見ですが、安全こそ 本当に“第一”とするべきでしょう。不安全工場のため生産停止が相次ぐようでは 計画生産などおぼつきません。(今や“安全”の中には“環境”も含まれるでしょう。)その次が “品質” それから“生産”と 考えるべきでしょう。このような議論は 約20年前に決着していたと思っていましたが、・・・・。

少々 気になることですが、A社は 自動車部品メーカーとのことであれば、ISO/TS16949の認証は取得していなくてよいのでしょうか。そうでなくても、ISO/TS16949に 沿った品質マネジメントシステムの構築が 顧客要求事項として あるのが普通だと思うのですが どうなのでしょうか。
自動車部品メーカーとは言え、顧客の顧客の・・・顧客に自動車メーカーが有って、それも商流によっては 複数の自動車メーカーが最終顧客であって・・・・というような 汎用部品メーカーなのでしょうか。
いずれにせよ、自動車部品メーカーとしてのA社での 企業文化が このレベルというのは 少々問題のような気がします。著者・岩波氏は ISO/TS16949の審査員資格も お持ちのようなのですが、この本では ISO/TS16949との関係について 言及されていません。それが、私には モノ足りない印象です。
ISO/TS16949では 当然 “生産”より “品質”優先、Customer Oriented思想で みなぎっていると言えます。



コメント ( 0 ) | Trackback ( )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本人の変化 最近見聞きし... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。