徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

小児科学会から「新生児のインフルエンザ」に新対応案

2017年10月06日 11時47分18秒 | 小児科診療
 従来、タミフルは1歳未満には使用できませんでしたが、2017年3月に生後2週以降の乳児に公知申請という形式で保険適用となりました。
 それを踏まえ、日本小児科学会と日本新生児成育医学会が新生児のインフルエンザ診療対応案を公表した、という記事を紹介します。
 医師向けなので、ちょっとわかりにくですね。
 ポイントは、

・インフルエンザと診断されれば、生後2週間からタミフルを使用可能、ただし早期産児や低出生体重児(罹患時2500g未満)の児は対象外。
・タミフル予防投与は適応外。
・妊婦へのインフルエンザワクチンを推奨

でしょうか。

■ 新生児のインフルエンザに新対応案 〜日本小児科学会・日本新生児成育医学会
2017年10月05日:メディカル・トリビューン
 日本小児科学会は日本新生児成育医学会と共同で、10月2日に新生児に対する新しいインフルエンザ対応案を公表した。新型インフルエンザが世界的に流行した2009年と2010年にも対応案を公表したが、日本では母子感染による重症化例はなく、その後も大きな問題は見られなかった。しかし、前回の提言から一定期間が過ぎたこと、オセルタミビルの新生児に対する適応が承認されたことを受け、今回改訂されることになった。
◇ 新生児に対する予防的投与は原則行わない
今回のインフルエンザにおける新生児への対応案の要点は次の3点。

1.正期産児(妊娠37~41週で出生)またはそれに準じる早産児の出生直後の母子同室は妨げず、飛沫・接触感染に十分注意を払う。
2.今年(2017年)3月、公知申請によって新生児、乳児に対するオセルタミビルの治療的投与が承認された。しかし、低出生体重児または生後2週未満の新生児への投与経験が得られていないため、投与する場合は副作用に十分注意する。
3.新生児へのオセルタミビルの予防的投与の有効性は明らかでないため、原則として行わない方針を継続する。

 
◇ インフルエンザの症状がない新生児―母子同室は妨げない
 今回の具体的な対応策として、「インフルエンザの症状がない新生児(正期産児とそれに準じる対応が可能な早産児)」と「インフルエンザを疑う症状がある新生児(同)」に分けて示している。
 前者のうち、母親が妊娠~分娩8日以前までにインフルエンザを発症し、治癒後に出生した場合は通常の新生児管理を行う。一方、母親が分娩前7日~分娩までに発症した場合については他の母子と隔離するが、飛沫・接触感染予防を講じていれば母子同室を妨げないとした。また新生児に対するオセルタミビルの予防投与は推奨されない。
 母親が分娩後~退院までにインフルエンザを発症した場合は、カンガルーケアや直接授乳などを介して、児と濃厚接触がある。しかしその場合でも母子同室の継続は妨げず、個室に移動して飛沫・接触感染を予防し、児は保育器に収容したり、母児間で十分な距離を取るなどの予防措置を行う。この場合も児にオセルタミビルの予防投与は行わない。
 母親の発症状況や児への感染曝露の程度から、児への厳格な管理が必要と判断された場合は、管理が可能な施設に移送する。

◇ インフルエンザを疑う症状がある新生児―直ちに検査診断を
 一方、インフルエンザを疑う症状がある新生児では直ちに検査診断を行うが、新生児では同様の症状を呈する他の疾患の可能性もあるため、鑑別に努めるとした。 インフルエンザ陽性と判定された児については、オセルタミビルによる治療(3mg/kgを1日2回、5日間内服)を考慮する。ただし今年、新たに承認された同薬の対象は、生後2週以降の新生児・乳児である。そのため、使用経験がない生後2週間未満または体重2,500g未満の新生児に投与する際は、下痢や嘔吐などの消化器症状をはじめとする副作用に十分注意する。

◇ 原則、直接母乳を与えてもよい
 母親がインフルエンザを発症しても、重症な場合を除き、マスク・清潔ガウンの着用、手洗いの厳守により原則、直接母乳を与えてもよいとしている。また、母親が抗インフルエンザ薬で治療中であっても授乳は可能だが、搾母乳または直接母乳とするかは、母親の状態を見て判断する。

◇ 妊婦へのワクチン接種を推奨
 妊娠中期以降にインフルエンザを発症した母親では早産となることがある。切迫早産の徴候がある妊婦でインフルエンザを発症した場合については、周産期管理を行う施設への搬送を考慮する。
 なお両学会は、妊娠中のインフルエンザ発症による早産や新生児への感染を防ぐため、妊婦に対しインフルエンザワクチンの接種を勧めている。
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