近年、陸上の女子アスリートはセパレートのウエアが当たり前になりました。
昔はおへそを出すなんて“大和なでしこ”には考えられなかったのに、
時代の流れですね。
私の記憶では、長距離/マラソンランナーの福士加代子さんは初めてだったような…彼女のWikipediaの中に、
「通常は一般的なランニングパンツを着用してレースに臨むが、
ヘルシンキ世界陸上女子5000m決勝でビキニタイプのレーシングショーツを着用した。
これについて福士は当時「海外の選手の衣装を意識した」と語っている。
その後も世界陸上大阪大会では、全出場レースにおいてビキニのレーシングショーツを着用して出場した。 」
という文章を見つけました。
セパレートウエアではお腹が見えるので、
腹筋が割れている女子アスリートを多く見かけます。
「カッコいい!」
と一般の方は思うかもしれませんが、
医療者の私は、
「大丈夫?生理止まってない?」
と心配になってしまいます。
というのは、成績を上げるために体を絞って軽くする傾向がスポーツ界にあり、
すると体脂肪率が下がりすぎて無月経・骨粗しょう症になるリスクが問題視されるようになっているからです。
はて、体脂肪率が何%になると腹筋が割れるんだろう?
一方、体脂肪率が何%になると月経異常が出るんだろう?
…素朴な疑問が生まれ、調べてみました。
まず、“腹筋が割れる”は2つのレベルに分けるようです。
1.アブクラックス:スッと縦線が入った腹筋:体脂肪率20%以下
2.シックスパック:バキバキに割れた腹筋:体脂肪率15%以下
スレンダーレベルであればおなかにうっすらと縦線が入り、
さらに気合を入れてダイエット&腹筋トレーニングにより、
縦横バキバキに割れた腹筋が手に入るとのこと。
ちなみに、一般女性の体脂肪率は20~30%(※)とされており、
健康さと美しさを兼ね備えるのは22~23%程度で、
20%以下は「やせ」と判定されます。
※)一般男性では10~20%。
<参考>
▢ 腹筋が割れる体脂肪率は何パーセント?専門家が教える、
最短でアブクラックス・シックスパックを作る方法
▢ 生理と体脂肪率には深い関係が!生理不順の理由や理想の体脂肪率も
下の図は、体脂肪率と月経異常率の関係をグラフ化したものです。
体脂肪率20%を下回るとやや月経異常率が上がり、
15%以下では明らかに増え、
10%以下ではなんと100%発生。
(NHK「月経や骨に影響!? 思春期のダイエットに潜む落とし穴」より)
こちらの記事では、
「脂肪細胞は女性の性成熟に重要な働きを持っており、
女性は脂肪が一定の量に到達することで、
分泌されたレプチンが視床下部に作用して初潮を促すのだという。
体脂肪率が17%で初潮となり、22%で妊娠可能となるという。
よく女性が無着なダイエットをしたら月経が止まるというが、
それはこういうメカニズムがあるようである。
となると若い女性にダイエットをさせている現代社会は、
当然のようにまともに妊娠する能力が無い女性を大量に出すことになる。 」
とあります。
こちらの記事には、
「体脂肪率が18%を切っている女性のうち、
排卵が止まってしまう人の割合は半数以上」
とあります。
すると…
腹筋が割れるのは体脂肪率20%以下は妊娠可能な22%を下回っており、
「腹筋がバキバキに割れている女子アスリートは減量しすぎで、
妊娠できなくなるほど体を追い詰めている」
という悲しい事実が浮かんできます。
女子アスリートは「健康の象徴」というイメージがありますが、
現実は「不健康の象徴」という面も無きにしも非ず、なのですね。
<参考>
▢ ヒューマニエンス「"脂肪"人類を導くパートナー」
(2021-08-19:NHK)
体脂肪が少ないと月経に影響を与え、
当然、妊娠にも影響を与えます。
こちらの記事には、
「妊娠時のBMIが18.5以下で、体脂肪率が17%以下の女性の場合、
妊娠しても胎児に必要なだけの栄養素をしっかり与えることが出来ません。
母子ともに負担がかかるので、
切迫早産になる可能性や臓器が未熟な低出生体重児が生まれやすい傾向があります。
さらに、体脂肪率が15%を下回ると妊娠できる確率が大きく低下してしまい、
10%以下になると自然に授かることは難しいといわれています。
今のところは妊娠を予定していない女性もいると思いますが、
体脂肪率を基準値内にキープすることは、
あらゆる女性にとって大切なことなんです。」
とありました。
つまり、さらに言うと、
「腹筋がバキバキに割れている女子アスリートは妊娠できない、
もし妊娠しても胎児が健康に育たない不健康な状態」
ということです。
思った通り「腹筋がバキバキに割れている=危険な健康状態」なのですね。
皆さんにもそんな視点を持っていただきたいと思います。