都市部と地方の医師偏在を政治力で強引に行おうとする厚生労働省と、
「自由開業」が補償されてきた歴史を重視する日本医師会の綱引きは、
昔から行われてきてきました。
日本の厚労省はイギリス型のかかりつけ医制度を目指してきましたが、
紹介する記事ではドイツと比較しています。
いろいろな問題に悩みながらも、日本よりは進んだ制度になっている様子。
海外の医療制度と比較検討することにより、
よりよい精度になることを期待したいですね。
▢ 開業規制を導入したドイツで起きたこと医師偏在対策、ドイツの取り組み(前編)
吉田 恵子(独日通訳・青森県立保健大学大学院非常勤講師)
(2025/01/17:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);
日本では2024年末に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」(以下、総合的な対策パッケージ)が策定され、今後は、国を挙げて医師の地域偏在や診療科偏在の是正に乗り出すことになった。一方、先んじてドイツではかねてより都市部などで外来診療所の開業規制を行っており、日本のパッケージで示されたメニューと比べると、縛りはずっと厳しい。こうした規制はどれほどの効果を上げているのか。また見えてきた限界は。ドイツ在住の医療ジャーナリスト、吉田恵子氏がリポートする。
ドイツでは、医師・患者の高齢化や、医師の都会・病院・専門医志向、パート勤務の増加により、過疎地を中心に外来医※1、特に地域医療の要である家庭医の不足が深刻だ。地域・診療科偏在に対し、ドイツでは医師配置計画や経済的インセンティブを用いた対策が行われてきた。
※1:ドイツの外来医療は伝統的に、開業家庭医と、それ以外の開業専門医により提供されてきた。近年増加している外来医療機関の勤務医も、後述の「需要計画」においては開業医同様にカウントされる。本稿では特に言及しない限りは、外来医とは開業医と外来医療機関の勤務医を意味する。
過疎地での医師不足が深刻化する日本でも、2024年末に総合的な対策パッケージが策定され、今後は、外来医師過多区域での「規制的手法」や、重点医師偏在対策支援区域での「経済的インセンティブ等」による複合的な対策に乗り出した(関連記事)。本稿では前編として、日本の規制的手法に当たるドイツでの医師配置計画、いわゆる開業規制について紹介する。加えて、不足が深刻化する家庭医のイメージ・地位の格上げによる確保策も見ていく。後編では、家庭医不足地区における経済的、またそれ以外のインセンティブ、さらには働き方の変化についてまとめる。
ちなみに、ドイツでは入院医療と外来医療が明確に区別され、前者は病院、後者は診療所が担当する。診療所が病床を持つことはなく、病院も原則外来を持たない※2。病院勤務医には配置計画はなく、各病院は不足すると外国から医師をリクルートするなどして補っている。家庭医診療所は病院よりアクセスの悪い場所にも配置されており、こうした所では医師の確保はことさら難しい。また、外来医療においてはこれまで1人医師の診療所が中心であった。開業資金を払い、へき地の小さな診療所を承継しようとする医師は外国はもちろん国内にもほとんどおらず、家庭医の地域偏在につながっている。本稿で扱う規制は、外来医療機関を対象とし、特にへき地での医療供給の最後のとりでとなる家庭医診療所にフォーカスを当てる。
※2:現在ドイツでは病院改革が行われている。病院も外来を提供することが可能になる見込みだ。
▶ 需要に応じて地域別に各診療科の医師数を設定
ドイツには需要計画という外来医配置計画に基づき、全国に17ある公的医療保険適用外来医の団体「保険医協会(Kassenärztliche Vereinigung )」が開業の許可・規制を行っている。需要計画は1990年代前半から都市部などでの外来医数の抑制対策として用いられてきた。具体的には、計画地区内の診療科別医師供給度※3が110%を超えると過多とし、原則その診療科の新規開業を認めない。ただし、既存診療所の承継はできたので、偏在のさらなる悪化は防げたが、問題の解消にはならなかった。
※3:診療科別の医師1人に対する理想的な住民数と、医師1人に対する実際の住民数との比率(ただし年齢構造などで調整)を供給度と呼び、実際の医師数が目標医師数と同じであれば100%となる。110%は医師が過剰にいることを示す(公的医療保険中央連合会)。
医師過多地区での診療所承継にもルールがある。承継は、既存開業医の開業権の返却、および地域の保険医協会と保険者からなる委員会において「承継が必要である」と判断されることで可能になる。後継者は同じ分野の専門医資格者から公募され、最終的には委員会が法定基準に基づき選ぶ。医師としての活動年数や、医師不足地で連続5年以上保険医(外来医)として働いた経験などが考慮される。家族であることも考慮されるが、継げる保証はないという。選ばれ開業権を得た者は前任者から診療所を買う。
2012年には全国あまねく住居の近くで医療が受けられるようにと、需要計画改革を行い、配置ルールが主に以下のように改められた(連邦保険医協会Bedarfsplanung)。
※3:診療科別の医師1人に対する理想的な住民数と、医師1人に対する実際の住民数との比率(ただし年齢構造などで調整)を供給度と呼び、実際の医師数が目標医師数と同じであれば100%となる。110%は医師が過剰にいることを示す(公的医療保険中央連合会)。
医師過多地区での診療所承継にもルールがある。承継は、既存開業医の開業権の返却、および地域の保険医協会と保険者からなる委員会において「承継が必要である」と判断されることで可能になる。後継者は同じ分野の専門医資格者から公募され、最終的には委員会が法定基準に基づき選ぶ。医師としての活動年数や、医師不足地で連続5年以上保険医(外来医)として働いた経験などが考慮される。家族であることも考慮されるが、継げる保証はないという。選ばれ開業権を得た者は前任者から診療所を買う。
2012年には全国あまねく住居の近くで医療が受けられるようにと、需要計画改革を行い、配置ルールが主に以下のように改められた(連邦保険医協会Bedarfsplanung)。
▶ ドイツにおける需要計画(外来医配置計画)の概要
・全診療科を医療ニーズに応じ4レベルに分類。ニーズに応じて計画地区を細分化し、地区ごとの目標医師数を定めた。
・最も医療ニーズが高いと位置付けられるのが家庭医。それまでは郡・市単位で計画配置されていたが、結果として広い郡の中心部に医師が集中してしまった。そこで郡を2、3に分け(市の場合は分割されず1地区とされたままが多い)、計画地区を全国372から883へ増やした(図1)。
・次にニーズが高い一般的専門医(小児科、婦人科、眼科、外科など)は全国を郡・市レベルで372地区に、その次の特別専門医(放射線科医、専門内科医など)は96地区、最も特殊な専門医(核医学医、病理医など)は州レベルの17地区に分けて計画地区とした。
・家庭医1人当たりの住民数の目安を、全国一律1671人とした。これは他のどの診療科よりも少なく、結果的に家庭医の目標配置数は他専門医より大幅に多い。例えば、一般的専門医の外科1人当たりの住民数は2万6230〜4万7479人、特別専門医の放射線科医は4万9095人、特殊な専門医の核医学医は11万8468人とした。これらの値に基づき計画地区ごとの目標医師数を定める。目標医師数と実際の医師数を基に、計画地区内の「診療科別医師供給度」を算出する。なお、医師1人当たりの住民数や区割りは、その後も、地域の実情に応じて都度修正されている。
・最も医療ニーズが高いと位置付けられるのが家庭医。それまでは郡・市単位で計画配置されていたが、結果として広い郡の中心部に医師が集中してしまった。そこで郡を2、3に分け(市の場合は分割されず1地区とされたままが多い)、計画地区を全国372から883へ増やした(図1)。
・次にニーズが高い一般的専門医(小児科、婦人科、眼科、外科など)は全国を郡・市レベルで372地区に、その次の特別専門医(放射線科医、専門内科医など)は96地区、最も特殊な専門医(核医学医、病理医など)は州レベルの17地区に分けて計画地区とした。
・家庭医1人当たりの住民数の目安を、全国一律1671人とした。これは他のどの診療科よりも少なく、結果的に家庭医の目標配置数は他専門医より大幅に多い。例えば、一般的専門医の外科1人当たりの住民数は2万6230〜4万7479人、特別専門医の放射線科医は4万9095人、特殊な専門医の核医学医は11万8468人とした。これらの値に基づき計画地区ごとの目標医師数を定める。目標医師数と実際の医師数を基に、計画地区内の「診療科別医師供給度」を算出する。なお、医師1人当たりの住民数や区割りは、その後も、地域の実情に応じて都度修正されている。
・・・
2015年には、開業規制を強化し、供給度140%を超えた地区では原則、承継も不可とした。ただ、医師数は基本的に退職者に応じて減るしかないため、即効性はない。例えば家庭医の供給度が140%以上だったのは、2014年に8地区あった(Klose/ Rehbein)が、2023年もまだ4地区残っていた。婦人科では計画地区の2割が140%を上回っていた(連邦保険医協会の統計に基づき著者計算)。
保険医協会によると、需要計画には人気地区で開業できない医師を定員に余裕のある地区に分散する効果はあるという。また、診療科間の数の均衡を専門医教育中に調整する効果もあるようだ。例えばある医師から、「当初は消化器内科を専門にしていたが、専門教育中に需要が高い家庭医に転向した」という話を聞いたことがある。
需要計画を中心とした医師偏在対策によって、国民の89%が自家用車で5分以内で家庭医を受診できる状態を実現している(連邦政府)。だが、保険医協会によれば、この分散効果も過疎地には及びにくい。医師にとっては、病院勤務や都市部周辺での開業といった選択肢が残されているからだ。過疎地へは、これらの選択肢に劣らないインセンティブを用意して医師を誘致するしかないという。こうした話は後編で紹介する。
日本における規制的手法(総合的な対策パッケージでは「地域の医療機関の支え合いの仕組み」と表現)では、外来医師過多区域において「新規開業を希望する医療機関に『地域で必要な医療機能』を提供するよう要請を行い、応じなかった場合に勧告および公表を行う」こととなっている。開業を禁じているわけではなく、承継には制限がないため、ドイツと比べると緩い規制である。中長期的に見ても、このままでは都市部の医師はほとんど減らないのではないだろうか。総合的な対策パッケージでは施行後5年をめどに効果検証し、十分な効果が得られなければ、さらなる対策を講じる方針が示されており、ドイツのようなより厳しい開業規制、承継規制、診療科偏在対策が議論される可能性はある。
過疎地への医師分散については、ドイツ同様、規制的手法だけでは効果を示さないだろう。日本でも大学病院(医局)からの派遣などで不足地を補う従来の手法に加えて、不足地への医師誘導には強力なインセンティブが必要になりそうである。
ただ、日本も医師偏在対策を行うために、各区域における医師数の過不足の実態把握に本腰を入れ始めたということは注目すべきである。日本とドイツとでは医療の機能分化の形が異なるため、全く同じ形式にはならなそうだが、不足・過多を早期に発見し策を打つために、ドイツのように診療科ごとや、狭い地区単位で医師の所在地が詳細に把握され、「目標医師数」と比較されるような未来も近いと見られる。
保険医協会によると、需要計画には人気地区で開業できない医師を定員に余裕のある地区に分散する効果はあるという。また、診療科間の数の均衡を専門医教育中に調整する効果もあるようだ。例えばある医師から、「当初は消化器内科を専門にしていたが、専門教育中に需要が高い家庭医に転向した」という話を聞いたことがある。
需要計画を中心とした医師偏在対策によって、国民の89%が自家用車で5分以内で家庭医を受診できる状態を実現している(連邦政府)。だが、保険医協会によれば、この分散効果も過疎地には及びにくい。医師にとっては、病院勤務や都市部周辺での開業といった選択肢が残されているからだ。過疎地へは、これらの選択肢に劣らないインセンティブを用意して医師を誘致するしかないという。こうした話は後編で紹介する。
日本における規制的手法(総合的な対策パッケージでは「地域の医療機関の支え合いの仕組み」と表現)では、外来医師過多区域において「新規開業を希望する医療機関に『地域で必要な医療機能』を提供するよう要請を行い、応じなかった場合に勧告および公表を行う」こととなっている。開業を禁じているわけではなく、承継には制限がないため、ドイツと比べると緩い規制である。中長期的に見ても、このままでは都市部の医師はほとんど減らないのではないだろうか。総合的な対策パッケージでは施行後5年をめどに効果検証し、十分な効果が得られなければ、さらなる対策を講じる方針が示されており、ドイツのようなより厳しい開業規制、承継規制、診療科偏在対策が議論される可能性はある。
過疎地への医師分散については、ドイツ同様、規制的手法だけでは効果を示さないだろう。日本でも大学病院(医局)からの派遣などで不足地を補う従来の手法に加えて、不足地への医師誘導には強力なインセンティブが必要になりそうである。
ただ、日本も医師偏在対策を行うために、各区域における医師数の過不足の実態把握に本腰を入れ始めたということは注目すべきである。日本とドイツとでは医療の機能分化の形が異なるため、全く同じ形式にはならなそうだが、不足・過多を早期に発見し策を打つために、ドイツのように診療科ごとや、狭い地区単位で医師の所在地が詳細に把握され、「目標医師数」と比較されるような未来も近いと見られる。
▶ 診療科偏在解消─家庭医の格上げとその効果
地域偏在の解消のため、特に過疎地へ医師を分散させるためには、ドイツにおいても強力なインセンティブが欠かせないというのは、先ほど触れた通りだ(詳細は後編で述べる)。
では、診療科偏在ではどうか。日本の総合的な対策パッケージでは、病院の外科医不足について触れられているが、それほど踏み込んだ記載はない。一方、ドイツでは家庭医の絶対数が不足していたため、イメージ・地位の格上げによる確保策を講じてきた。
ドイツは開業医と外来医療機関の勤務医が外来医療を、その中で家庭医がプライマリ・ケアを担う。現役医師42万8500人のうち15万3700人が公的保険適用外来医であり、そのうち5万5300人が家庭医である(連邦保険医協会2023)。
家庭医とは、総合医療の専門医だ。総合医療の範囲内であれば最初の窓口として自ら患者を診療し、範囲外の診療が必要と判断すれば適切な外来専門医への受診、または入院・リハビリテーションを指示する。英国のような登録制ではないが、国民の9割以上は自らかかりつけ家庭医を決めている(Frankfurter Institut der Allgemeinmedizin)。
ドイツでは現在、専門医の資格保有者しか公的医療保険適用医として開業できないが、以前は専門医教育を終えていない医師も開業し、家庭医役を果たしていた※4。しかし、医療の専門化が進むとともに、低い地位・報酬に甘んじざるを得ず、家庭医の成り手は減っていった※5。その上、若い医師は、開業資金がかかり時間的拘束も多い開業医を避ける傾向がある。こうして過疎地を中心とした家庭医不足は10年以上前から予測され、需要計画による適正配置や各種インセンティブのほか、家庭医の地位やイメージ向上、労働条件などの改善が行われてきた。
※4:ドイツでは国民の約9割が公的医療保険、1割が民間医療保険に加入している。本稿は公的医療保険制度のみを対象として書かれている。
※5:家庭医数は1999年は5万9000人だったが、その後5万4000人まで減少した。現在は5万5000人程度である(AOK)。頭数はそれほど減っていないが、高齢化とパート勤務医師の増加により、不足度は増している。
その一方で近年、慢性疾患や健康管理ができる総合医療の専門医が国内外で重要視されるようになった。こうして2003年、総合医療専門医資格が家庭医の開業要件となり、家庭医が専門医に格上げされた(独家庭医協会 2020)。
アカデミック化も進み、総合医療講座を新設する医学部が増えた。病院だけでなく家庭医診療所での実習も必修科目になり、医学生が家庭医療を体験する機会がつくられた。
処遇も改善されつつあり、他の専門医の平均に比べ低かった公的保険からの報酬合計額は、今では平均を若干上回っている(連邦保険医協会 Praxisnachrichten)※6。
※6:公的保険適用の診療行為および診療報酬体系は診療科ごとに異なり、外来医診療報酬合計額の平均値は診療科間で差がある。開業医の報酬は通常、公的医療保険からの診療報酬を主体に、民間医療保険や自由診療などからの報酬が加わる。
教育体制の充実や処遇改善など格上げ努力の結果、まだ十分ではないが総合医療専門医の認定数は再び増え出し、減っていた家庭医数は横ばい・微増傾向にある(連邦医師会)。
日本では過疎地で1次・2次救急、かかりつけ医を担えるような総合診療医の不足が深刻化している。専門医の育成も徐々に進んでいるようだが、ドイツの例のように地位やイメージ向上、処遇改善などを思い切って行わないと、不足を埋め合わせることはできないのではないか。また、外科医についても、日本が示す施策のように機能集約をした上で、診療報酬改定などによって病院に収益をもたらせる存在にしていくといった検討が必要だろう。
では、診療科偏在ではどうか。日本の総合的な対策パッケージでは、病院の外科医不足について触れられているが、それほど踏み込んだ記載はない。一方、ドイツでは家庭医の絶対数が不足していたため、イメージ・地位の格上げによる確保策を講じてきた。
ドイツは開業医と外来医療機関の勤務医が外来医療を、その中で家庭医がプライマリ・ケアを担う。現役医師42万8500人のうち15万3700人が公的保険適用外来医であり、そのうち5万5300人が家庭医である(連邦保険医協会2023)。
家庭医とは、総合医療の専門医だ。総合医療の範囲内であれば最初の窓口として自ら患者を診療し、範囲外の診療が必要と判断すれば適切な外来専門医への受診、または入院・リハビリテーションを指示する。英国のような登録制ではないが、国民の9割以上は自らかかりつけ家庭医を決めている(Frankfurter Institut der Allgemeinmedizin)。
ドイツでは現在、専門医の資格保有者しか公的医療保険適用医として開業できないが、以前は専門医教育を終えていない医師も開業し、家庭医役を果たしていた※4。しかし、医療の専門化が進むとともに、低い地位・報酬に甘んじざるを得ず、家庭医の成り手は減っていった※5。その上、若い医師は、開業資金がかかり時間的拘束も多い開業医を避ける傾向がある。こうして過疎地を中心とした家庭医不足は10年以上前から予測され、需要計画による適正配置や各種インセンティブのほか、家庭医の地位やイメージ向上、労働条件などの改善が行われてきた。
※4:ドイツでは国民の約9割が公的医療保険、1割が民間医療保険に加入している。本稿は公的医療保険制度のみを対象として書かれている。
※5:家庭医数は1999年は5万9000人だったが、その後5万4000人まで減少した。現在は5万5000人程度である(AOK)。頭数はそれほど減っていないが、高齢化とパート勤務医師の増加により、不足度は増している。
その一方で近年、慢性疾患や健康管理ができる総合医療の専門医が国内外で重要視されるようになった。こうして2003年、総合医療専門医資格が家庭医の開業要件となり、家庭医が専門医に格上げされた(独家庭医協会 2020)。
アカデミック化も進み、総合医療講座を新設する医学部が増えた。病院だけでなく家庭医診療所での実習も必修科目になり、医学生が家庭医療を体験する機会がつくられた。
処遇も改善されつつあり、他の専門医の平均に比べ低かった公的保険からの報酬合計額は、今では平均を若干上回っている(連邦保険医協会 Praxisnachrichten)※6。
※6:公的保険適用の診療行為および診療報酬体系は診療科ごとに異なり、外来医診療報酬合計額の平均値は診療科間で差がある。開業医の報酬は通常、公的医療保険からの診療報酬を主体に、民間医療保険や自由診療などからの報酬が加わる。
教育体制の充実や処遇改善など格上げ努力の結果、まだ十分ではないが総合医療専門医の認定数は再び増え出し、減っていた家庭医数は横ばい・微増傾向にある(連邦医師会)。
日本では過疎地で1次・2次救急、かかりつけ医を担えるような総合診療医の不足が深刻化している。専門医の育成も徐々に進んでいるようだが、ドイツの例のように地位やイメージ向上、処遇改善などを思い切って行わないと、不足を埋め合わせることはできないのではないか。また、外科医についても、日本が示す施策のように機能集約をした上で、診療報酬改定などによって病院に収益をもたらせる存在にしていくといった検討が必要だろう。
【引用・参考文献】
・吉田恵子 ドイツ過疎地での家庭医確保策. 社会保険旬報 2024;2943:16-22.
・厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」
・Bundesärztekammer 連邦医師会. 医師統計(2023)
・KBV 連邦保険医協会. Bedarfsplanung(需要計画)
・Klose J , Rehbein I. Ärzteatlas: Daten zur Versorgungsdichte von Vertragsärzten. Berlin: Wissenschaftliches Institut der AOK.(2016)
・Bundesregierung 連邦政府. Deutschlandatlas. Erreichbarkeit von Hausärzten: 99 Prozent brauchen mit dem Pkw längstens 10 Minuten.
・Goethe-Universität Frankfurt Frankfurter Institut der Allgemeinmedizin.
・Deutscher Hausärzteverband独家庭医協会 (2020)60 Jahre Deutscher Hausärzteverband e.V.
・KBV 連邦保険医協会. Praxisnachrichten.
・吉田恵子 ドイツ過疎地での家庭医確保策. 社会保険旬報 2024;2943:16-22.
・厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」
・Bundesärztekammer 連邦医師会. 医師統計(2023)
・KBV 連邦保険医協会. Bedarfsplanung(需要計画)
・Klose J , Rehbein I. Ärzteatlas: Daten zur Versorgungsdichte von Vertragsärzten. Berlin: Wissenschaftliches Institut der AOK.(2016)
・Bundesregierung 連邦政府. Deutschlandatlas. Erreichbarkeit von Hausärzten: 99 Prozent brauchen mit dem Pkw längstens 10 Minuten.
・Goethe-Universität Frankfurt Frankfurter Institut der Allgemeinmedizin.
・Deutscher Hausärzteverband独家庭医協会 (2020)60 Jahre Deutscher Hausärzteverband e.V.
・KBV 連邦保険医協会. Praxisnachrichten.