かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

食糧自給率はおかしい?

2005-03-21 22:00:29 | Weblog
農林水産省が、「もし食料輸入が完全にストップしたら?」という設定で、食卓の献立例を公開しました。現在、我が国の食糧自給率はカロリーベースで約40%。米、野菜はともかく、大豆や肉などの大量輸入が、今の食卓を支えているのです。
それが無くなるとどうなるか。
おかずは芋中心で、みそ汁は2日に一杯、肉は9日に一食になるそうです。夕食の献立は、ご飯一杯、焼き芋1本、焼き魚一切れだとか。極端な例をだして食料自給率向上を訴えたと言うことなのでしょうが、仮定の要素が漫画的で、到底こんな「豪華」な食事はあり得ないのではないか? とかっこうは考えます。
第一に、食料だけ輸入ストップなどということ自体がまず考えにくい設定です。現代の農業はかつての食糧難の時代より、はるかに石油に依存しています。どういう事情で食料輸入が激減するか不明ですが、その時石油は今と変わりなく輸入できるのか? できなければ、食卓からは米も芋も消えて無くなるでしょう。農薬や化学肥料の生産にも、石油が大きな役割を持っていますから、それらも無しでは、辛うじて維持できる農業生産が更に大幅に減収することを避けられません。
更に今は地方の生産地と中央の消費地が明確に分かれています。その間をつなぐ流通経路も大打撃を受け、都会では餓死者が続出するような事態になると思われます。
家畜の飼料はどうでしょうか? これも今は、大量に輸入された遺伝子組み替え入り大豆やトウモロコシでまかなわれています。ほぼ同じ流通経路で運ばれてくるこれら飼料が、食料輸入途絶時に無事届くとは到底思えません。従って、食料輸入が途絶えれば、肉も完全に姿を消すでしょう。
単になわばり意識が強く、他省庁の事に口出ししないだけなのか、それとも全く考えたこともないのかが判らないのですが、農水省に限らず、日本のお役所は、自分のテリトリー以外の事を加味して考えることが苦手なようです。でも、石油の輸入は農水省の管轄ではないから考える必要はない、と言うことはけしてないと思います。そもそも輸入途絶などと言う異常事態を想定するなら、そんな異常事態が発生したとき、農業という産業がこの国で成り立つのかどうかを総合的に捉えなければ意味がないでしょう。もしその原因が戦争なら、当然他の物資の輸入にも影響するでしょうし、異常気象で世界の食料生産に影響が出たとするなら、日本の気候だけ順調に農業できる気候でした、というのはあまりに虫が良すぎます。取りあえず農業農水省が食料の安全供給を目標としているのなら、食料輸入だけ途絶えるというような夢の想定を検討するよりも、どういう事態が起きてそうなるのか、その時日本の農業はどうなるのかを、現実的な視点に立って色々検討しておくべきでしょう。それをまとめて省庁横断的に、国を挙げたプロジェクトとして政策提言して欲しいです。
が、日本の官僚にそこまで期待するのは無理なのかも知れません。それは政治の領分ですから、政治家が色々なデータを集めて総合的に判断し、それぞれ関係する専門家に検討させるのが本来のあるべき姿でしょう。そもそも食糧自給が何故必要なのかを議論しない我が国の有り様を、根本的に改めねばならないと私は思います。
コメント
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