かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

世界に冠たる研究機関を、奈良県は何だと思っているんでしょう?

2008-06-04 22:15:10 | Weblog
 久々に見た気がする青空は、まだ夏というには色の浅い涼しげな感じの空でした。お日様も苛烈というには程遠いですし、季節が替わるには、今しばらく時間がかかりそうです。

 さて、今日の夕刊を観てましたら、3面記事部分に、奈良県橿原考古学研究所の所長が空席のまま2ヶ月経過している、という記事が出ていました。一昔前なら単なるローカルニュースとしてしかるべきところに小さく記載されるような記事ですけど、昨今の考古学ブームのせいでしょうか、このような記事が全国紙面に掲載されるというのは、ちょっと驚きました。
 まあそれはともかく、橿原考古学研究所は全国の自治体で唯一の考古学専門研究機関で、創立70周年を迎えます。過去には、高松塚古墳の壁画を発見したり、黒塚古墳から三角縁神獣鏡を多数発掘したりといった嚇々たる成果を挙げ、現在も44人の所員が、奈良県中に埋まる考古遺跡の発掘や調査、保存に活動しています。うちから車で5分ほどの神武天皇陵の近くにあるのですが、研究所のそばに立派な付属博物館があって、知的好奇心を刺激される数々の研究成果が展示されています。
 そんな研究所の所長は県職員ではなく、外部招聘された専門家の重鎮で、この3月末に退任した89歳になる4代目所長さんの後任人事が決まっておらず、というか、決める気がないようで、人選のリストすら作っていないのだそうです。我が国はおろか、世界にも通用する第一級の研究拠点に対して、県はこの4月に機構改革という名の合理化を進めてもいます。
 新聞にも書いてありましたけど、奈良県というのは、自分たちの「売り」がなんであるか、行政も議員も県民も、全く理解していないようです。私はここが、自分たちが世界唯一のかけがえのない宝の山の上に立っている、ということをぜんぜん理解していない、度し難い人たちが集まっている自治体だと思うことがあります。
 奈良県には公設試という、試験研究機関がいくつかあります。農業総合センター、森林技術センター、畜産技術センター、工業技術センター、薬事研究センター、保健環境研究センターなどなど。これらは、以前は農業試験場、林業試験場、工業試験場、薬事指導所、衛生研究所、という立派な名前があったのに、ひところの訳のわからない「機構改革」で看板が架け替えられ、センターばやりになってしまいました。それに対して橿考研は文字通り「研究所」としてがんばっているのですが、それはさておき、これら公設試が果たして奈良県に必要かというと、そうでもないと思うのです。たとえば農業は果樹なら和歌山県、米は三重か滋賀、野菜なら兵庫県が近畿を代表する産地で、そちらにも立派な試験場が存在します。あえて奈良でやる必要はないのです。工業だって大阪に任せればよいし、林業も銘木「吉野杉」がありますけど、京都にだって「北山杉」があり、何も絶対奈良でないとダメ、ということはないと思います。それに対して、考古学関係は、言うまでもなくこの県でしかできないことが山ほどあるのです。他の公設試を全部閉めてしまったって、考古学研究所だけは奈良県がしっかりやらないとダメだとさえ、いえると私には思えます。
 平城遷都1300年祭なんてことを企画するのなら、余計歴史、そして考古学への注力が必要なはずです。奈良県の行政には、今一度自分たちにとって本当に必要なもの、必要な人、必要な仕事は何なのか、見つめなおして欲しいと思います。


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