かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

結局わが国では、最前線で奮闘する専門家の足を引っ張ることしかできないのでしょうか。

2009-04-20 21:42:43 | Weblog
 一昨年の今日の日記を見てみますと、久々に金縛りに遭ったと書いてあります。次に遭うのはいつだろう? と心待ちにするような書き方をしておりますが、以来丸2年を経ていまだ再見できておりません。最近は比較的寝つきがよく、夢もほどほどに見たり見なかったりしているせいか、金縛りのような普通じゃない状態は、なかなか訪れてくれないみたいです。

 さて、日本が発信したiPS細胞の研究が、アメリカにお株を奪われつつあるのだそうです。
 iPS細胞というのは人工多能性幹細胞、すなわち、ウィルスなどを使って人工的に作られた、いろんな臓器に分化しうる元になる細胞のことで、自分自身の細胞から作ってやれば、臓器移植最大のハードルである免疫による拒絶反応をクリアできるという、臓器移植の未来にブレイクスルーをもたらす画期的な細胞です。この作り方を京都大学の山中教授が世界で最初にこさえたわけですが、いまや、iPS細胞関連の論文の数は、日本の1に対し、アメリカ7、ドイツ1、と完全に欧米に水をあけられています。山中教授によると、その状況は日本の「1勝10敗」と大きく負け越して大苦戦しているのだとか。現状でさえ、研究者の数や研究費で10倍以上の差をつけられており、さらに、これまでブッシュ大統領はその宗教的信条からES細胞を初めとするこの手の生命工学に冷たい態度を取っていたのですが、オバマ大統領になってその方針が大きく転換され、日本とは桁違いの研究費がこの分野に注ぎ込まれつつあり、その差はこれから開くことはあっても縮むことは到底期待できそうにありません。
 その上、日本の研究者は、研究だけに専念できる環境にはありません。国の予算の研究費を獲得するために膨大な書類作りを要求され、研究中の必要経費についても膨大な会計処理を要求され、研究成果の報告書作りにまたとてつもない量の書類を作らされ、と、正味研究につぎ込める時間と労力を勘定に入れたら、欧米との差は更に大きく開いてしまうことでしょう。
 お金の使い道に関しても非常に厳しい縛りがあって大変使いにくい形になっています。官僚の言い分は「国民の血税だから」の一点張りですが、何のことは無い、自分が財務省から監査を受けたときに説明できないのを恐れているだけなのです。
 もちろん過去とんでもないお金の使い方をした馬鹿な研究者もいましたが、そんなわずかな愚か者を押さえ込むために、たとえばこの山中教授のような、世界最先端の研究を行うわが国を代表する研究者までその行動を掣肘される、というのは、どこか間違っているとしか思えません。
 最近になって、ようやくそのあたりの弊害が認識されるようになってきて、若干お金の使い方などに弾力的な運用が認められつつあるようではありますが、まだまだ不備や不足が目白押しです。本当に国を挙げて科学技術を育てたいと思うなら、単に予算をつけるばかりでなく、為政者も官僚も、根本的に科学とは何ぞや、というところを理解し、わが国の貴重な財産である研究者達の力を最大限に発揮させるためにはどうしたらいいかを、真剣に考えなくちゃいけません。


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