1月19日、フレンテみえ多目的ホールで開かれた「第24回三重県スポーツ医科学セミナー兼三重県スポーツ指導者研修会」に参加しました。理由は、所持している日本体育協会のバレーボール上級指導員資格の更新にあたって、受講しておかなければいけないからです。講師は小泉圭介氏と土屋裕睦氏で、「体幹トレーニングとは何か?」と「新しい時代にふさわしいグッドコーチを目指して」が研修の内容でした。
それぞれに非常に興味深い内容でしたが、このような研修を受けていて考えることは、スポーツの可能性を広げるためには、やはり多様な視点からの取り組みを考える必要があるということです。それは、スポーツを生涯にわたる活動としてとらえることと、それぞれの活動者が持つ特性に応じて、多様なスポーツへの関わりや適性もあるということです。そして、それらを基にしながら、社会との関わりも考えることが求められるということです。
例えば、ジュニア世代や中学生の部活指導ということを考えるとき、その時点だけをとらえて指導を行うのではなく、大人になってからもそのスポーツと関わりを持つことを想定しながら、指導に取り組むことがコーチの立場に求められると考えます。過度な指導で「燃えつき」させてしまうのではなく、大人になってからも「楽しもう」ということが大切でしょう。そう考えるとき、中学校における部活指導者の講習の中に、児童に対する技術面の指導だけではなく、生涯スポーツの観点でコーチに取り組む経験を取り入れることも考えられるでしょう。もしこのようなことを行うことができれば、学校と地域の連携や、部活動における教員負担の軽減などの面で効果が出るのではないかと思います。
難しいのは、競技として関わるスポーツの「目的」や「結果」をどう考えるのかということです。市→県→地域→全国という流れで大会が行われ、チームに応じて目標設定をし、その達成に向けて取り組むことは、自律的に行動をすることができるようになるという点から、スポーツにとって意義のあることだと思います。しかし、目標に対して結果を出すことだけが目的化してしまい、指導もふくめ、取り巻く人の状況がそれに向けての価値観だけになるとき、指導者の暴力行為の容認や、メンバー内でのいじめなどのような残念な結果につながるのではないでしょうか。
練習をすることによって、そのスポーツへの理解が深まり競技力が向上するという面もあるでしょう。しかし、生物である人間は遺伝子などによって決まる体格などにどうしても差があることも現実です。またそれらだけでなく、「運」という不確定なものにも大きく作用される部分があることを、指導するときに忘れてはいけないように思います。それらを踏まえたうえで、プレイヤーにとってより良い選択ができるように考えることも指導の重要な観点だと思います。
そしてこれからのスポーツ指導にとって大切なのは、自分から新しい「価値」を生み出すという意識を持つプレイヤーを育てることにあると思います。選手として好成績を国体などで残したり、国際大会に出場したりすることだけが価値ではないはずです。自分の住む地域でコーチとして活動することや、自分の関わったスポーツと地域活性化をつなげることも、プレイヤーにとっての大きな価値だと思います。
例えばバレーボールに関して、どうしても身長がものをいうスポーツになっており、男性で言えば180センチでも低いと言われ、盛んな時期の強豪校では175センチ以下はアタックを打たせてもらえないという話もあったそうです。日本人の17歳時点の平均身長は、男子で約170センチということを考えると、いかに特殊な状況かがわかるのではないでしょうか。だとすれば、175センチ以下の選手のみの全国大会や、もっと言えば世界大会というものを企画して、オンリーワンの大会にしたらどうだろう、と考える世代がでることを、指導の中に入れていくことも意義があるのではないかと思います。
いろいろな新しい価値を創造することに、これからの鈴鹿、三重県、日本でのスポーツ指導の方向性を求めていくことが、足腰のしっかりしたスポーツ文化をつくり、持続可能な社会づくりの一翼をスポーツが担っていくものになるのだと思います。