端的にいうと、被害を受けないようにという発想や、被害から逃げるという発想だけではなく、被害を受けた時に私たちはどうするのかという〝事前復興〟の発想から考えることに取り組むべきだと考えています。その時、別のリスクである人口減少と、それによるスポンジ化の影響を勘案することが必要だと思います。
想定される最大規模の南海トラフ地震では、津波だけでなく液状化や河川堤防などへのダメージも想定されます。もし、津波の被害を受けるとすれば、相当に甚大な被害は想定のうちにはいるでしょうし、液状化についても想定に入れるべきです。
ただ、プレートの動きが影響していることを考えると、発生後に相当規模の地震が頻発することは予想されますし、それは内陸部も含めいろいろなことが想定されます。被災リスクとしては、主なもので、津波、液状化、揺れによる被害、火災といった点から、被害規模などを想定することができると思います。一度大きなエネルギーが解放されると、同じ場所で同じことが起きる可能性は低いと考えられるかもしれません。
と書きながらも、地学的なリスクは絶対に安心であったり、完全に予測できるものではないと考えています。
気候変動によっては、線状降水帯などによる極端な降雨による洪水や内水氾濫、超大型した台風による暴風や高潮、竜巻などの発生が増えるなどが考えられます。その中には、降雨が極端に少なくなり、乾燥や干ばつによる影響、高温の影響もありますが、ここでは降雨や台風の部分に着目します。
超大型の台風による被害が津波に劣らず甚大であることは、日本だけでなくアメリカなどでもみられていることですし、強風による被害も甚大であることは事実と考えるべきです。また、偏西風などの流れが変わることや、海水温が高くなることで、日本では豪雨に見舞われることが多くなっていると思います。
このような気候変動による影響は、今後毎年のように起こる可能性が高いと考えるべきですし、もしかすると、一年のうちに何度も見舞われる可能性もあると考えるべきだと思います。
これらのリスクを別に考えるのではなく、どちらも重ね合わせて考えると、特に海岸線部においては従来の発想からの転換が求められると思いますし、どのようにして社会的な損失を減らしつつ、次の世代に向けて持続的な社会として繋いで行くかを考えると、どこかの時点で、価値観の大きな転換が求められる可能性が高いと考えます。
このような災害リスクにどう向かい合っていくのかについて、宮城県岩沼市の集団移転事業と名取市の震災復興計画の取り組みを視察させて頂いたことから考えると、少しでも早い段階から、住民によるリスクマネジメントの話し合いをすることから始めることが大切だと思います。そのために、被害を受けないようにするという発想からではなく、被害を受けたとしてということを起点にして、避難生活のあり方を考えることから取り掛かり、その後の復興のあり方を考えることにつなげ、そうして今の取り組みを考えることが、遠回りのようで、実はもしもの際にいち早く動くことのできる最短の手法と考えます。
また、復興の発想に関しては、人口減少による街のスポンジ化にどう向かい合うかという視点を組み入れることで、リスクについて考えることになるのですが、実はその中に持続的に街をつなげるチャンスを見出せることができると思いますし、そのために1つの手法ではないかと考えます。
鈴鹿市でも地区別防災計画の策定という課題がありますが、年配の方々ばかりの参画に頼って計画策定に取り組むのではなく、若い世代の参画を進めながら、防災だけでなく長い時間の視点からの減災という視点から、身近なリスク低減を考えるべきと考えています。