12月定例会では、「鈴鹿市総合計画2023」が議案として上がっています。
構成の中で特徴なのは、基本構想だけでなく「めざすべき都市の状態に対する成果指標(個別指標)」が、議案の中に入っていることです。成果指標が議決案件に入っていることも含め、総合計画が議決案件になっていることは鈴鹿市議会にとっても、鈴鹿市にとっても非常に大きな意味を持ってきます。というのは、この成果指標が妥当がどうかをしっかりチェックしなければ、鈴鹿市は今後8年間、この総合計画に基づいて市政運営を行っていくことになるからです。
今回はその中で、観光に関する指標を考えたいと思います。
この写真の左側の数字が“22”のところに、めざすべき都市の状態が「地元のモノ・コトが情報発信され、人が訪れ、交流が進んでいること」とあり、その成果指標として「観光レクリエーション入込客数 現状値464万人(2014) 目標値550万人」が設定されています。
この「入込客数」という指標についてですが、実は、第5次総合計画の行政経営計画見直しが行われる際にも、観光関連産業従事者数としてはどうかということを、当時のすずか倶楽部で執行部との意見交換で伝えたことがあります。そして今回、全国都市問題会議でも講師の話において、観光政策においては入込客数ではなく宿泊客数で考えるべきだという話がありました。パブコメや議会においても全員協議会などでその点を指摘する声が上がっています。
“入込客数”について、何万人も集まる大きなイベントが開催されれば、その数字は達成することはできるでしょう。しかし、まちにとって重要なのは、そのようなことを通じて、どれだけまちにプラスがでるかという観点のはずです。
F1を例にして考えると、前年に対して1万人観客が増えたとして、その人たちが鈴鹿に宿泊するのではなく、三重県内で宿泊するのでもなく、名古屋などに宿泊するとすれば、宿泊料だけでなく食事なども含めた関係の経済効果が鈴鹿に落ちるのではなく、他のまちの経済効果となるということでしょう。また、F1の開催日数などを考えれば、いくらその日程に観光客が訪れてくれるとしても、その日がすぎれば鈴鹿に訪れてくれる人が少なくなるのであれば、名目上の観光客入込数がいくら増えても、通年で営業されている観光関連産業での雇用は増えないでしょう。
やはり、宿泊者数であったり、観光関連産業(事業者)数であったり、観光関連産業従事者数という形の指標にすべきだと、私は考えます。
指標の表現による物事の見え方の違いを考えます。
“観光レクリエーション入込客数”の増加でイメージされる政策を考えると、「大規模イベントの開催」、「市民主催のイベント推進」、「F1などへの観光客の誘致」・・・といった政策になりがちではないでしょうか。しかし、このままでは単発イベントの開催ということでも良いことになり、また点から点に移動する形の観光客でも達成されることになり、そのような人たちによる経済効果が見えにくくなるでしょう。それは鈴鹿市を支えていくために、観光産業の持続可能性の課題などを見えにくくすることにならないでしょうか。
対して、たとえば“観光関連産業従事者数”を指標として置けば、観光でまちが活性化しているなら当然働く人も増えるわけで、通年で観光客増につながる政策の効果がはっきりします。同時に、通年での観光産業育成のための政策という方向性が明確になるでしょう。また、雇用が増えることは、市民生活にも直接のプラスが見えやすくなるといえます。
また、別の考えとして「宿泊可能客数(ベッド数)」のような形も考えられるのではないでしょうか、そうすれば、宿泊可能数が増えることはそのような事業者が増えることにつながりますし、逆に減るとすれば観光産業政策に課題があるということがより明確になるのではないでしょうか。
とすれば、めざすべき都市の姿に対する成果指標として、“観光レクリエーション入込客数”を指標として計画の本体に記載することは、やはり妥当ではないということになるでしょう。このことを、先日に行った熊野本宮周辺の地域と宿泊施設との関係を考えながらあらためて実感しました。
鈴鹿について考えると、多世代が通年で訪れる観光地として考えたとき、鈴鹿には有名な温泉地があるわけではなく、そのような視点から観光政策を立案することは難しいと考えられるでしょう。
逆に、その考えにとらわれてしまっては、市内の観光の種をどう活かすかということに壁をつくってしまうことになるのではないでしょうか。通年で鈴鹿に訪れていただくことや、滞在時間を1時間でも伸ばしてもらえないかと考えたり、海外からの観光客の方を受け入れることやそのための情報発信を考えたりするとき、伊勢型紙や鈴鹿墨、モータースポーツ関連、海岸線、椿大神社などをどうつなげるのか、また、どのようにそれらを活かすのか、維持していくのかなどを考えることが大切だと思います。
観光レクリエーション入込客数ではなく、宿泊者数や観光関連産業従事者数などを観光政策の指数として鈴鹿市は用いるべきだと、私は考えます。