1月29日に熊本市で表記の二件を行政視察しました。
本論に入る前に、熊本市は合併後、市内を東、西、南、北、中央の5つの区にわけて運営している。東区は空港が存在し人口の多い地域で、中央区は中心市街地、西区は海岸地域で農業や漁業が盛ん、北区は3町合併で農村中心の地域、南区は2町で新幹線と農業の地域となっている。
また、平成22年度に自治基本条例が、平成23年度に市民参画と協働の推進条例が施行され、住民自治に取り組んでいる。
熊本市ではこれら5区について、平成24年度に各区の振興ビジョンを策定、平成25年度に各区でまちづくり懇話会を開催している。まちづくり懇話会には、連絡協議会から委員が出され、区長に提言を行っている。来年度化、区の予算として各区1千万円を配分し、区ごとの取り組みを進める予定という。
●校区自治協議会について
校区は小学校区であり、そこには自治会、まちづくり委員会、社会福祉協議会、青少年育成協議会、防犯協会、体育協会などの地域団体が活動しており、それらをつなげ連携して、校区のコミュニティづくりを推進するための機関として設置された。現時点で91校区に設置、残り1地区が今年設立されると、すべての校区に設置されることになる。協議会には学校長や出張所などに設置しているまちづくり交流室職員も出席している。
現在、各協議会には年間20万円の補助金が支出され、それぞれの協議会でさらに独自に自治会から資金の供出を受けて運営しているという。主な活動事業は次の表に。
熊本市内には841の自治会があり、うち女性自治会長は64人、加入率は約87%ととなっている。連合会はあるが、自治会長間の連絡程度ということである。
※鈴鹿市について
熊本市の取り組みは基本的には鈴鹿市のそれと類似している。違いとしては、小学校区と行政側も区割りし、さらに5つの区と連携させるところか。熊本市の取り組みを参考として考えると、現在の市内の住民のまちづくり活動単位を整理することはもちろんであるが、行政側もきちんとフレームを整理して考えなければいけないということである。この点については私自身、以前に一般質問でも提言等を行ったのだが、行政側はそれについて議論した形跡を感じることができなかった。
鈴鹿市でが関わるフレームとしては、単位自治会、23地区の連合自治会、小学校、中学校、包括支援センター、社会福祉協議会など多様に考えられるが、行政側がそれぞれの縦割りで「地 域」をとらえて運用しており、非効率な面も見えていると考える。子育てと高齢者福祉、持続的にその地域で住んでいくということを考えたとき、この不連続性は決して住民にとってプラスとは言えない。
また、熊本市の取り組みで参考となる点は5つの区の運用である。鈴鹿市においても、過去から白子、神戸、牧田という3地域が話題に上がるが、例えば南部地域、西部地域、東部地域を加えた形で、行政の区割りを再編することも視野に入れてもよいのではないかと考える。
鈴鹿市が今から取り組むべきことは、行政側が一方的に区割りを決めて提示するのではなく、また逆に、すべてを住民側に任せるのではなく、住民に関わるさまざまな「地域」のフレームを提示し、それをレイヤーとして重ね合わせながら、住民の側からも「地域」を整理して協議会を立ち上げることに取り組むべきである。その際、まちづくり協議会のフレームに参加できる方は、どうしても高齢者の方に偏りがちになるので、すべての年代が参加しやすいような仕組みを鈴鹿市が支援するようにすべきと考える。
最後に、私の意見であるが、子どもも高齢者も徒歩で移動できる範囲であり、なおかつそこに反永続的に居住している人が多く、子どもたちの発達段階でも重要な時期である小学校区を、鈴鹿市は住民自治の基本「地域」に設定すべきと考える。
例えば、コミュニティスクールという考え方についても、中学校区に無理に設置するという考えではなく、中学校区は自立した小学校区のコミュニティスクールがゆるやかに連携するようにするように考えることがある。高齢者福祉を考えても、歩くことのできる範囲で支援体制を構築することは、介護予防の観点からも重要ではないかと考える。
●2千人委員会について
この取り組みは市長公約で行われており、5地区から住民数や性別、年齢層を勘案しながら無作為抽出で選ばれた委員で構成されている。
委員には市の施策についてのアンケートが、詳細な資料とともに送付され、委員はそれを元にアンケートを記入し、郵送で返送する形を取っている。回収率は約7~8割で、担当課から提出を促す連絡を入れたりするともいう。この他に、全体勉強会なども開かれているが、参加者が少なく課題ということである。集まったアンケート結果について、集計は委員会担当課で行うが、アンケート結果の分析はアンケート内容担当課で分析するということである。
来年度は新委員による委員会を予定しており、無作為抽出の1万人の市民から、各条件を勘案し2000人を選定するという。
※鈴鹿について
市長の取り組みということで、そのまま導入することは難しいのではないかと考える。
しかし、鈴鹿市において参考となる点は、行政側がこの熊本市のアンケートの意識で、各施策に取り組むことである。単にパブリックコメントを諮るよりも、このようにモニターを無作為抽出し、詳細の資料とともにアンケートをとることは、施策の理解を広めるためにも有用ではないかと考える。また、コンサルを使うことが状態化している感があるが、やはり、職員の持つ能力を活用しながら、主体的に施策に取り組む環境を作ることが重要ではないだろうか。
逆に、執行部側がこのように動くとなれば、議会側がどのように住民とつながるかが問われてくる。良い意味での機関競争につながるようにすべきと考える。
鈴鹿市議会では、議会報告会という形だけでなく、会津若松市議会のように意見交換会を開催し、そこから政策形成を行うことを考えるべきではないだろうか。