もう10年以上前、当時の仕事の関係で、ある飲食店の居抜きをするという広告を依頼されて、打ち合わせのためにそのお店に行った時のことです。
そのお店はおかみさんが一人で切り盛りしていて、ソースかつ丼がちょっとした名物でした。しかし、おかみさんの郷土に住んでいるお父さんが認知症になり、そのお父さんの介護ができるのはおかみさんで、お父さんの介護をするための身辺整理で店をたたむため、居抜きをするということでした。
単に仕事の話だけでなく、そのおかみさんといきさつ等を聞いていると、おかみさんも本当は店をたたみたくない、しかしお父さんの介護ができるのは自分だけということの狭間で、相当に悩まれたことがわかりました。
お店には数多くの弁当の容器がありました。もちろん、使い捨てのものではなく、一つ一つがしっかりとした作りのものでした。100近くはあったかもしれません。
それを見ながら、おかみさんが話されたのは、店を開いてから少しずつ弁当の箱が増えていったこと、本当に自分にとってお店が大切な存在だったということでした。その話をしながら、介護という選択をしなければいけないと思う自分との間で非常に悩んでいることを話され、涙されていました。
おかみさんにとっての人生の積み重ねがお店にあったのだと思います。
あれからかなり月日が経ち、介護などにもいろいろな制度ができ、もしかすると、今だったらおかみさんは居抜きという選択をせずに済むかもしれません。
亡くなった祖父の話になりますが、祖父は生前、自宅前の椅子に腰かけて、行きゆく知り合いの人たちと会話をしたりしながら過ごしていました。それは、定食屋を営んでいたこともあり、カブで配達をしていたこととも関係があるのかもしれません。
しかしあるときから、事情もあり施設にはいることになりました。当初は、耳が遠いながらも普通に会話ができていた祖父が次第に言葉が少なくなり、そんなとき、施設の中で描いた絵を見たところ、自分がずっと暮らしていたお店を描いていました。
その時思ったのは、人はできるだけ、自分の暮らしてきたところ、自分の心と関係のあるところで暮らし続けられるのがいいのだということです。
しかし、いろいろな課題や事情があり、そうすることはなかなか難しいことだとも思っています。
このような状況に対して、どのような仕組みがいいのか、それにはサービスを体系化することも大切かもしれませんが、やはり、私たちがどこで生きどのように暮らしていくのか、コミュニティのあり方はどうあるべきなのか、私たちは地域コミュニティの中で暮らすということを改めて考えるべきではないのか、次の世代のためにもしっかり考えなければいけない。できれば、ある程度の方向を見いだすか、答えを出すべきだと思っています。
しかし、今のところ、まだそこまで至っていない自分がいます。
そのお店はおかみさんが一人で切り盛りしていて、ソースかつ丼がちょっとした名物でした。しかし、おかみさんの郷土に住んでいるお父さんが認知症になり、そのお父さんの介護ができるのはおかみさんで、お父さんの介護をするための身辺整理で店をたたむため、居抜きをするということでした。
単に仕事の話だけでなく、そのおかみさんといきさつ等を聞いていると、おかみさんも本当は店をたたみたくない、しかしお父さんの介護ができるのは自分だけということの狭間で、相当に悩まれたことがわかりました。
お店には数多くの弁当の容器がありました。もちろん、使い捨てのものではなく、一つ一つがしっかりとした作りのものでした。100近くはあったかもしれません。
それを見ながら、おかみさんが話されたのは、店を開いてから少しずつ弁当の箱が増えていったこと、本当に自分にとってお店が大切な存在だったということでした。その話をしながら、介護という選択をしなければいけないと思う自分との間で非常に悩んでいることを話され、涙されていました。
おかみさんにとっての人生の積み重ねがお店にあったのだと思います。
あれからかなり月日が経ち、介護などにもいろいろな制度ができ、もしかすると、今だったらおかみさんは居抜きという選択をせずに済むかもしれません。
亡くなった祖父の話になりますが、祖父は生前、自宅前の椅子に腰かけて、行きゆく知り合いの人たちと会話をしたりしながら過ごしていました。それは、定食屋を営んでいたこともあり、カブで配達をしていたこととも関係があるのかもしれません。
しかしあるときから、事情もあり施設にはいることになりました。当初は、耳が遠いながらも普通に会話ができていた祖父が次第に言葉が少なくなり、そんなとき、施設の中で描いた絵を見たところ、自分がずっと暮らしていたお店を描いていました。
その時思ったのは、人はできるだけ、自分の暮らしてきたところ、自分の心と関係のあるところで暮らし続けられるのがいいのだということです。
しかし、いろいろな課題や事情があり、そうすることはなかなか難しいことだとも思っています。
このような状況に対して、どのような仕組みがいいのか、それにはサービスを体系化することも大切かもしれませんが、やはり、私たちがどこで生きどのように暮らしていくのか、コミュニティのあり方はどうあるべきなのか、私たちは地域コミュニティの中で暮らすということを改めて考えるべきではないのか、次の世代のためにもしっかり考えなければいけない。できれば、ある程度の方向を見いだすか、答えを出すべきだと思っています。
しかし、今のところ、まだそこまで至っていない自分がいます。