平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

功名が辻 長篠の悲劇

2006年04月24日 | 大河ドラマ・時代劇
 第16回「長篠の悲劇」は今まで未解決であった事柄が一気に解決した話。

1.千代(仲間由紀恵)が身ごもる。
2.小りん(長澤まさみ)の退場。
3.源助(小林正寛)の死。
4.市之丞(津川雅彦)の死。
5.強敵・武田の滅亡。

 ドラマ的には今までの「夫婦のドラマ」を繰り返しただけで、新しい展開はなし。
 また、5つの要素を詰め込んだことで、ひとつひとつのドラマが薄くなってしまった。
 史実の問題もあり、大河ドラマではこういった話も必要なのだろう。

 さて千代と一豊(上川達也)の「夫婦ドラマ」はこう。
 「殿のしくじりは私のしくじり」
 「どんな時にも命を共にするつもりです」
 これが同じモチーフの繰り返し。
 千代がそう思っていることは、視聴者はすでに知っている。
 だから面白くない。

 この夫婦に対して退場する人物が様々なリアクションをする。

 小りんは「千代には負けた。飽きたなあ、長浜も。あたしは行くよ」
 千代に子供が出来て、もう入り込む余地がないと思った様。
 まだ残るという六平太(香川照之)には小りん、皮肉を言う。
 「あんただって自分の気持ち、だましてんだろう」
 その前に六平太は思いを寄せる千代にこう語っていた。
 「おまえは強く生きるのだ。一豊のために、子供のために」

 市之丞は千代たちにメッセージ。
 子供ができた報告を聞き、冥途の土産ができたと言い、こう語る。
 「ふたりで枕を並べて、朝を迎える幸せを大切にしなさい。一豊殿、長生きをせよ」

 まあ、これら小りん、市之丞の言動も今までに聞いているから新しさはない。
 市之丞の津川雅彦はさすが芸達者だと思ったけれど。

 源助の死はわりとあっさり。
 長浜城に戻ってきた六平太が「源助は死んだ」とポツリと告げる。
 そして回想シーン。
 自分の作った馬防柵がどの様に使われるかを見に行く源助。
 そこへ矢が飛んでくる。
 矢が刺さって倒れる源助。
 シーンの時間は30秒ぐらい。
 敵が迫ってきて命が危ないというサスペンスもないし、源助のどうしても見たいという葛藤もない。
 何よりも六平太が死んだと告げているのだから、完全にネタバレだ。
 死んだ時と告げられた直後の一豊らのショックの描写もないから、後に描かれる一豊の無念後悔も伝わって来ない。
 もう少し作りこんでほしかった。

 責任をとって自分は腹を切るという一豊と千代だが、これもネタバレ。
 何しろ彼らはこの作品の主役なのだから、死ぬわけがない。
 一豊も千代も源助が死んだのは自分の責任と言っているのだから、ここで腹を切らなくては(ドラマ上は無理だけど)その後の言動に説得力がない。

 大石静さんのシナリオは毎回見事なのですが、今回は残念だった。
 ああなってこうなってという出来事を淡々と綴っただけ。
 あとはを市之丞の死を入れ込んでドラマの体裁を整えた感じ。
 やはり今回は詰め込み過ぎか?

 課題になっていた問題をすべて解決した今回。
 新しいドラマが発生するのか?
 子供が出来たことだし、母としての千代など新しい夫婦ドラマに期待したい。

★研究ポイント
 ドラマの作り方:詰め込み過ぎのドラマの失敗。

 例えば、死に行く市之丞と生まれ行く子でドラマがひとつ作れそう。
 市之丞がこれまでをもっと回想して。
 市之丞の視点で。

 あるいは源助と長篠の合戦。
 源助の命が危ないサスペンスと自分の柵がどう使われるかをみたいという職人魂。
 源助は「おらより速く柵を組み立てられるのはこの長浜にはおらんのじゃ」という自負を持っている。
 また、秀吉への兄弟愛。
 「おら、戦は好きじゃにゃーが、兄さぁがそんなに頼るなら行かねばならぬ」
 そして、源助を助けようとする秀吉・一豊と彼らの無念。

 あるいは小りんと六平太の愛の形。

 3話分は作れると思う。
 まあ、この後に千代と一豊でいろいろなドラマが目白押しなようで、ここまで細かく描けないとは思いますが。

★キャラクター研究:六平太
 六平太には魅力的なキャラとしてのすべての要素を持っている。
 ・洞察力……梅雨に信長が動かない理由(「鉄砲を戦闘で使うため」)を見抜いている。
 ・戦闘力……忍び、鉄砲に優れている。
 ・無償の愛…千代には「お前はただ強く生きよ」という。
         愛する人が幸せに生きる事以外を望まない無償の愛。
         小りんには「嘘だ」と言われるが。

★名セリフ
 ねねが、旭の側に立って源助を戦場に行かせまいとした千代をたしなめる。
「誰の気持ちをおもんぱかるべきか考えなさい」
 ※妻の見地ではなく政治的見地で物事を見ろとねねはたしなめた。

 一豊が信長が鉄砲を使おうとしていることに気がついて、六平太は言う。
「やっと頭に血がめぐって参りましたな」
 ※家臣(食客)なのにすごい失礼。

 秀吉、源助を亡くした旭に
「お味方の勝利の一番手柄は源助じゃ!」
 ※この時の秀吉の涙は本物。偽りの演技ではない。

★ディティル
 千代の家の庭には面白い顔の雀がやってくる。
 名前は多吾作。
 木からよく落ちる。

★追記 あらすじ(公式HPより)
 無敵と呼ばれる武田軍が長篠城への攻撃を開始。守る徳川軍は援軍を求めるが、信長(舘ひろし)は動かない。長大な馬防ぎの柵を作ろうという信長の秘策を知った秀吉(柄本明)は、旭(松本明子)の夫で長浜一の大工、源助(小林正寛)を呼び出すよう一豊(上川隆也)に命じる。真っ向から反対したのは千代(仲間由紀恵)。なぜなら、戦場には出ない約束で城に入ってもらったからだ。『戦ではない、柵造りじゃ』。命に危険はないと強調する一豊に、話が違うと旭が言うが、おらも男だ、と源助は立ち上がる。五月半ば、岐阜を出た織田軍は徳川勢と合流し、設楽原に陣を敷いた。信長は、鉄砲が使えるようになる梅雨明けを待っていたのだ。馬防柵の奥に並んだ三隊、三千挺の鉄砲隊から絶え間なく放たれる弾丸は、武田騎馬隊を粉砕した。数日後、秀吉軍は長浜城に凱旋。しかし源助の姿はない。馬防柵を作り終えた源助は、柵がどう使われるか見たくて長篠に戻り──。
 約束を違えた一豊は切腹をもって旭に詫びようとし、千代もまた自刃しようと懐刀を取り出す。秀吉は旭の新たな夫として副田(野口五郎)なる人物を選び出す。ほどなくして、美濃の市之丞(津川雅彦)危篤の知らせが──。
コメント (14)
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