平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

逆境ナイン

2006年04月08日 | 邦画
 「少林サッカー」以来、コミック手法による映像演出が行われる様になった。
 「逆境ナイン」もそう。

 校長(藤岡弘)が「廃部だ」と言って、不屈闘志(玉山鉄二)が吹っ飛ぶ。
 新監督・榊原剛(田中直樹)がボールを投げてスローモーションでボールを受け止め、吹っ飛ぶ。
 追試で試合予選に出られなくなり、「逆境だ!」と叫ぶ不屈に「違います!これは自業自得です」と月田明子(堀北真希)が言うと、「自業自得」と書かれたモノリスが宇宙から振ってくる。

 しかし、これはVFXで描かれるギャグ。
 作家や役者は自分の芸で観客を笑わせなくてはならない。
 そこで今回はアナログのギャグ研究。(以下、ネタバレ)

★パロディギャグ
 毎年予選1回戦敗退の野球部が甲子園を目指す。
 不屈の説得に野球部員がその気になって歴史の教科書掲載の「革命」の絵に彼らが。
 
★妄想ギャク
 甲子園で優勝して女の子にきゃあきゃあ言われることを妄想する。

★テロップギャグ
 厳しい練習とプレッシャーで野球部員は次々と脱落。
 これをテロップで紹介。
 「サード坂本、チワワに足を噛まれて負傷!試合に出られず」
 「ライト山下、ラジオを制作中、ハンダゴテで火傷!試合に出られず!」
 このテロップで落とす手法は作品にテンポが出る。
 これにツッコミも入れられる。作品中ではこう入れていた。
 「なんでチワワに噛まれて欠場なんだ!」
 「なんで今どきハンダゴテでラジオなんだ!」

 また、テロップギャグで落とした後に通常のギャグをやると引き立つ。
 野球部の机の上に手紙。
 「なにかしら?」とマネージャー、読み始めると「キャプテンへ。俺はもうキャプテンについていけません」
 ついに残った野球部が不屈とキャッチャーだけになって、頑張ろうと同じ部屋で寝ていると、夜中トイレに行く寝ぼけたキャッチャーが不屈の腕を踏んで、不屈骨折。
 「逆境ナイン」のギャグコンセプト自体がそうだが、主人公をいじめ抜くことがすべてギャグになる。

★リアクションギャグ
 腕が骨折したにもかかわらず、日の出高校との練習試合に臨む不屈にナインが感動して野球部に戻ってくる。試合当日は雨。日の出高校は「大事な大会を控えて雨で風邪を引くのが嫌だ」と言って試合を放棄。
 不屈らは「不戦勝」で勝利する。
 かろうじて廃部を免れるが、ここでリアクションが面白い。
 不屈らは天狗になり、女の子をはべらせてグラウンドでビーチ気分。

 こんなリアクションギャグもある。
 野球部の人数が足りず、試合のために手配することに。
 通常なら他の運動部員が動員される所だが、マネージャーの月田が手配したのは「クラスのヒマな人」。

★へ理屈ギャグ
 監督として赴任してきた榊原は野球を知らない。
 「野球を知らない監督はちょっと……」と不屈が難色を示すと、榊原が「こんな状況にふさわしい先人の知恵を教えよう。『知らぬが仏』!」
 すると不屈は「なるほど野球を知らないからこそ、新しい戦略で戦うことができるのか!」と納得する。

★ネーミングギャグ
 不屈たちの対戦相手は、「中々学園」「手抜学園」。
 中々学園は少し強い。

★2段ギャグ
 地区予選当日は補習の日。
 もし試験で赤点を取れば補習を受けねばならず、地区予選には出られない。
 不屈は自分が勉強していないことに気づく。(ギャグ1)
 必死で勉強する不屈。
 試験の結果が発表されて不屈は90位の好成績。
 得意満面で赤点リストの名前を見ると、野球部員の名が。(ギャグ2)

 不屈たちは「中々学園」の選手たちが腹痛を起こしたことで勝利するが、原因は不屈たちが手配した腐った弁当を食べたこと。
 これだけだと面白くないが、その前にこんな前ギャグがあるから笑うことができる。
 不屈たちは球場でベンチを間違える。
 中々学園のベンチに入って置いてあった弁当を食べる。
 これで怒られて弁当を手配するのだが、この弁当が腐っていたのだ。
 ベンチを間違え(ギャグ1)、腐った弁当を手配する(ギャグ2)。

 ギャグの2段重ねで何とか笑える。

★違ったトーンのギャグ
 甲子園に邁進する姿をギャグにしてきたこの作品だが、中盤は不屈の恋愛が描かれる。
 不屈がマネージャーの月田さんを好きになるのだ。
 月田とつき合うことで不屈はナインに愛想をつかされ、新たな試練が彼を襲う。
 違ったトーンを入れることで、試練に別のアクセントがつき退屈させない。

★勘違いギャグ・天然ギャグ
 月田さんが自分のことを好きだと思っていたのは、不屈の勘違いだった。
 遊園地で不屈は月田に告白した。
  不屈「好きなんだ」
  月田「野球の試合を捨ててまで……」
  不屈「そう」
 ふたりはその後、遊園地で遊ぶのだが、こんな勘違いがあった。
 月田はこう思っていた。 
  不屈「(遊園地が)好きなんだ」
  月田「野球の試合を捨ててまで……(遊園地が好きだなんて)」
 不屈は月田に言われる。
 「私たちいつからつきあってたんですか?」

 月田にはこんな天然ギャグも。
 赤点が予想される不屈に月田は言う。
  月田「私のノートを使って下さい。私のテストの予想当たるんですよ」
 しかし、不屈はよろけながら言う。
  不屈「月田君、残念だが気持ちだけをもらっておくよ」
  月田「どうしてですか?」
  不屈「なぜなら君は2年生で、俺は3年生だからだ」

★ありえねえギャグ
 日の出学園との試合は112対0。
 不屈はこれをひとりで逆転しようとする。
 これだけでも「ありえねえ」が、ひとりで戦うルールが「透明ランナー制」。
 草野球で人数が足りない時に使用されるルールだ。
 これを審判がホームプレートの土を払った後に大真面目で宣言するから笑える。
 (しかも「透明ランナー制」のテロップ付)
  

コメント (1)
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