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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

シュガー&スパイス

2007年01月24日 | 邦画
「女の子に扱い方は××××××」
 ××××の部分を聞いていたら、彼女はずっと自分のそばにいたかもしれない。
 そんな男の子の物語。

 志郎(柳楽優弥)は本当の恋愛をしたことのない男の子。
 誰かに強い感情をぶつけたことのない男の子。
 他人に対してクールというか臆病なのだ。
 裏切られて手酷い傷を負うのがイヤなのだ。(劇中では彼女に裏切られて「彼女の顔を見るのも嫌だ」「彼女を奪った友だちを殺してやる」「自殺してやる」と叫ぶ志郎の友人が登場する)
 誰かに振りまわされるのを嫌う志郎。
 心の葛藤を嫌う志郎。
 一方、そうやって心を閉ざして他人と関わらずにいるから、志郎は自分の気持ちも考えていることも把握できない。
 人は他人とぶつかって初めて自分を確認できる。

 そんな志郎が乃里子(沢尻エリカ)に出会った。
 一目で好きになる。
 でも彼女は裏切られた男のことが忘れられない様子。
 また他人に心を閉ざす臆病な性格ゆえ、志郎はなかなか彼女に一歩を踏み出せない。距離を縮められない。
 乃里子にキスしようとして「いや」と言われてひるんでしまう。
 一方、乃里子。 
 傷ついている乃里子は志郎の優しさに安らぎを見出す。

 ふたりはバイトの帰り道などに会話を重ねて……。
 志郎は初めて本当の恋愛を知る。
 他人に対して強い感情を抱く。
 雨の中、志郎が「君が好きだ」と叫ぶシーンは感動的だ。
 それは志郎が心を開いた瞬間。
 ひとつ大人になった瞬間。

 しかし、志郎にはさらに学ぶべき事が待っている。
 乃里子の別れた男が再び現れる。復縁を迫る。
「来るのが遅いよ」と乃里子は叫ぶが、気持ちは揺れる。
 志郎はそんな乃里子を黙って見つめている。
 志郎は思う。
「何かが壊れそうになった時、僕は優しく見ていることしかできない」
「クリスマス。僕は彼女が来てくれるのを信じて待っている」

 クリスマス。
 果たして乃里子は志郎の前に現れなかった。
 彼女が乗ったのは、元カレの車。
 苦しい。
 悔しい。
 悲しい。
 やはり恋なんてしなければよかったと思う志郎。
 そして思う。
 「優しく見ている」だけではダメだったのだ。
 「彼女を信じている」だけではダメだったのだと。

 志郎の祖母(夏木マリ)は言う。
「女の子の扱い方は、シュガー&スパイス」
 志郎はシュガーであってもスパイスではなかった。
 スパイスとはタフに強引に彼女を奪い取ること。
 しかし、それに気づいたのもあとの祭り。
 乃里子は既に去ってしまった。

 苦い青春映画である。
 でも青年はその苦さを噛みしめて、何かを学んでいく。
 大人になっていく。
 それは苦しい体験であったが、心を閉ざした以前の志郎の生活よりはずっといいこと。
 
 映画の宣伝では『多くの女性の共感を集めた作品』と表現された様だが、内容は男の子の物語。
 沢尻エリカの歯並びってあまりよくないんだなと気づいたのもこの作品だった。

コメント
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