平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

東京タワー 第2回

2007年01月16日 | ホームドラマ
 東京に呑み込まれてしまった中川雅也(速水もこもち)。
 大学の仲間たちは皆、優秀に見える。
 劣等感、笑われたくない。バカにされたくない。
 やっと仕上げた絵には教授から「人に何かを伝えたいという気持ちがあるのかね」と批判される。
 もともと東京に来ることが目的で、絵の基礎も情熱もなかったから当たり前だ。
 大学に居場所がなくなる雅也。
 残された雅也の居場所は下宿。
 劣等感を抱え、貧乏でぱっとしない人たち。
 雅也にとっては劣等感を感じずに済む人たち。
 人は放っておくと易きに流れる。
 麻雀三昧。
 大学の仲間を坊ちゃんばかりでつまらないと言う大学に行かない言い訳。
 一方、金には苦労しているから一攫千金を求めて先物取引に手を出す。

 そんな雅也と同時並行で、息子を信じて懸命に働くオカン・栄子(倍賞美津子)の姿が描かれるから、観ている我々は「雅也、バカ野郎。しっかりしろよ」と言いたくなってしまう。
 大学を卒業して息子が立派な画家になることが夢だったオカン。
 そんな母に「大学を辞める」と言って悲しませた雅也に「何の努力もせずにそんなことするな」と言いたくなってしまう。

 それは雅也にいる人物たちも同じだった様だ。
 アパートのフリーライターは言う。
「東京に出て来たことがゴールになっている」
「大学の坊ちゃんたちの方が踏んばっているんじゃないのか?」
「ゴミだめにいる俺たちだって踏んばっている。食べていくために必死で手に職をつけようとしている。貧しい実家のためにやりくりして金を送っている。おまえといっしょにするなよ」
 風疹の看病でやって来た母も言う。
「何を弱気なこと言ってるの」

 栄子は基本的に甘い母親だが、言うべき時は言う。
 そうでなければ物語のバランスが崩れる。
 視聴者は思ってしまう。
「雅也は確かに弱い子だが、そうなったのもあなたが甘やかせたせいだろう」
 そうなっては今後の物語は成り立たない。
 非常にデリケートな作劇。

 それにしても今回見事だったのは、佐々木まなみ(香椎由宇)の雅也への言葉だ。
 東京タワー。
 雅也は初めて見た時が「一番輝いていた」と言うが、まなみは言う。
「そうかな。東京タワーを見ると、私はここからスタートしたんだなって思う」
 東京に呑み込まれ、すべてが色褪せてしまった雅也。
 それに対してまなみは、その後東京タワーだけでなく、様々な輝くものを見つけたのだろう。
 自分のまわりにどんどん輝くものが増えていったのだろう。
 この対照的な人物を描いて、180度違うリアクションを描いて、雅也を描き出した。
 雅也にとっては、どんな忠告よりも心に染みた言葉だったかもしれない。

 また作劇上の話になるが、
★直接的でない言葉で主人公に何かを伝える。
(まなみは自分の言ったことで雅也をどうこうしようとは思っていない。東京タワーの感想を述べただけである)
★180度違うリアクションを描いて主人公を描き出す。
 このテクニックは覚えておきたい。

コメント
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