平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

金魚屋古書店 芳崎せいむ

2009年04月04日 | コミック・アニメ・特撮
 漫画専門の古書店「金魚屋古書店」。
 そこには様々な<漫画好き>が集まる。

 まずこんなせりふがある。
 「人の身体がたんぱく質やビタミンで出来ている様に人の心は時間と思い出の成分で決まる。だから自分の昔を思い出すことは現在に自分の本当を知ること。自分の心がどんなモノからできあがっているか、そのことを思い出すんですよ」

 自分の心がどんなモノからできあがっているか?
 そう問われた時に思いつくのは何であろう?
 金魚屋古書店に訪れる人にとっては<漫画>。
 彼らは次の様な人達だ。

・昭和30年代の漫画「探偵ビリーパック」にのめり込んで探偵になってしまった男。
・「もーれつア太郎」を読んで、そのハチャメチャぶりに「何でもアリなんだなぁ」と思う真面目すぎる男。
 彼は「こうあらねばならない」「こうあるべきだ」とガチガチにこだわっていた自分を捨てる。
・こんな美大生ふたりもいる。
 杉浦日向子の「百日紅」を読んで自分は画狂人・北斎の様に絵に狂えないと思い絵を捨てる男。逆に絵を描く事以外自分は何も出来ないと思う女。
・単調な生活を送っている主婦もいる。
 彼女は漫画の主人公藤臣君(「千津美と藤臣くん」シリーズ)とは180度違う夫と結婚した経緯を思い出す。そして夫にときめいた瞬間の自分を思い出す。

 百人百様、人には人の数だけ漫画の思い出がある。
 漫画がその人の心を形作っている。
 果たして自分の場合は……?
 そんなことを考えさせてくれる作品だ。

 また金魚屋では店長と常連客とがこんなやりとりをする。
 それは店長が退院した時のこと。
「店長、おひさしぶりですぅ」
「やーキンコちゃん、『三国志』読破した?」
「今、4回目を読んでます」
「店長、これ深大寺の鬼太郎茶屋のみやげです」

 ここには漫画好きが集まり、漫画で人と人とが繋がっているのだ。

 <漫画>は人を作り、人と人とを繋ぐ。
 いいですね、すべての<漫画ファン>に読んでもらいたい作品です。

 芳崎せいむ著 「金魚屋古書店」(小学館 IKKICOMIX刊)


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